ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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無題
日時: 2014/02/23 01:02
名前: SHAKUSYA ◆fnwGhcGHos (ID: cA.2PgLu)

げらげら。
げらげらげら。

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Re: 神様の懐中時計。 ( No.6 )
日時: 2010/10/29 21:21
名前: 友桃 ◆NsLg9LxcnY (ID: bFAhhtl4)


はじめまして、友桃です!
僭越ながらコメントさせていただきますm(__)m

最初このスレ開いたときは字の多さにひき返しかけたんですが(←)、文庫本だと思って読めば読めるんじゃないか!と試しに読んでみて……
本当に驚きました。
読みやすいです! 難しい言葉は正直すごく多いんですが、SHAKUSYAさんの文章力のお陰かな? つっかえることなくすらすら読めました。

“神様”っていうのも、なんとなく難しいイメージがあったんですが、この小説の神様はそのイメージと違ってすごく親しみやすいです!

また読みに来たいと思います。
これからも更新がんばってください!

Re: 神様の懐中時計。 ( No.9 )
日時: 2010/10/30 16:48
名前: 友桃 ◆NsLg9LxcnY (ID: bFAhhtl4)


またまた失礼しますm(__)m

なんか本当にすごい……っ
登場人物の心情が手に取るようにわかるっていうか……

特に閻魔(呼び捨てごめんなさい)の台詞の後から多聞が立ち去るまでのところ、すごく好きです!!
こっちまで緊迫感?が伝わってきました!!

更新が本当に楽しみですっ^^

Re: 神様の懐中時計。 ( No.11 )
日時: 2010/10/30 18:09
名前: 空 ◆EcQhESR1RM (ID: ViM8jUbu)
参照: 前作SBS—空の王者—に続き新作! 「となりの駄菓子屋さん」です!

サクシャ様。
どうもお久しぶりでございます。私は半年ぶり…ですねbb
新作、出来ました!w 電探からの長い付き合いですのでご報告を致しております。
よかったらどうぞ見てください。こちらにもちょくちょく顔を出しに参りますッ!!!

Re: 神様の懐中時計。 ( No.23 )
日時: 2011/02/08 18:15
名前: SHAKUSYA ◆fnwGhcGHos (ID: OTVrSGpZ)
参照: 三ヶ月ぶりの更新。

 漆黒の背広を肩に掛け、龍泉寺は何処となくピリピリとした殺気を感じながら廊下を歩む。
 彼の右隣には先程の緋色の髪を長く垂らした男、朱雀が仁王顔負けの憤怒の感情を身体全体で表現しながら歩んでおり、隙あらば誰かに撲りかかろうとでもしている風な雰囲気をふんぷんとさせていた。手や衣服に仁を撲ったときの返り血が未だに付いていることもあり、その様は朱雀とは思いたくないほど恐ろしい。
 ポケットの中で握り締めた護符が、余りに頼りなかった。
 何なんだよう、と口の中で小さく呟くと、戻ってきたのは露骨な舌打ち。これが本当に神聖な者のすることなのかと龍泉寺は心の内で猜疑心を湧きたてるも、膨れ上がった殺気と朱雀の額に増えた青筋と大きくなって返ってきた舌打ちで肝を冷やし、本音は心の奥底にしまいこみ、鍵を掛けておくことにした。
 僅かな床の軋み、懐中時計の秒針が進む音でさえ朱雀の神経はささくれ立ち、隣を歩む龍泉寺は生きた心地もない。右半身だけに異常な精神的ストレスと針の先で幾度となく突かれるような鈍い痛みを感じながら彼は歩み続けるが、朱雀は背を丸めて空間全てを刺々しく威嚇(いかく)し続け、言葉の一つすらなく、気まずい。
 筆舌に尽くしがたい気まずさだった。

 秒針が五回、鳴る。
 余りに気まずくなった龍泉寺は、殴りかかられることを覚悟で朱雀に尋ねた。
 「あの、何でさっき、あんなに喧嘩していたんですか。仁さん、死に掛けたんですよ」
 そして直ぐに身構え、次に放たれた声に肩透かしを食らう羽目になった。
 「そのことについては悪いと思ってらァ、さっき仁に謝ってきた。だけどな、俺はどうしても、どんなに諭(さと)されて弁解されて説(と)かれても、俺の眷属(ゾク)がやったことにゃあ踏ん切りが付けられねーんだよ。伝言なら稲荷に頼みゃあいいってのに、あいつは思慮不足なトコが多過ぎらぁ。仁は太陽の神様だ、けど、俺と違ってそんなに丈夫でもねーんだよ」
 なあ?
 独り言のように声を発し、最後は同意を求めるように右上がりの声を上げて、朱雀は壁を一回、全力で殴りつける。
 何かを口に出そうとしていた龍泉寺は予想外に響き渡った打突音(だとつおん)に喉まで出掛かっていた声を封殺され、そして直ぐに気を取り直して、音の余韻が消えないうちに小さな声で告げた。
 「それは、朱雀門龍華さんと言う名前ですか?」
 「嗚呼、一ヶ月くらい前に死んだンだってよ。惚れた男が」
 (暈してる心算なんだろうけど、絶ッ対龍華じゃないか……)
 一旦は温まった肝を再度氷より冷たく冷やしつつ、龍泉寺は漸く機嫌を直しつつある朱雀に悟られないようにして心の内で毒々しく呟いた。だが朱雀はそんな心の声を看破してしまったらしく、なにやらしたり気な笑みを浮かべて絞り出すように笑声を上げると、きっちり四回、龍泉寺の肩を叩く。
 「相思相愛〜、ってか? 彼女を娶(めと)ったら俺が義兄(アニキ)になるぜ」
 「凄く……厭です」

 露骨に厭そうな顔と声で龍泉寺は言ったが、朱雀はにやにやと笑って返した。
 「っふん、嘘に決まってんだろ、朱雀門龍華なんて奴は俺の眷属にはいねーよ。神経がか細すぎるぜ。あの子はどっからどー見ても人間の女の子だ、娶ったところで別に俺がアニキになるわけじゃあない。それに、そもそもお前は竜神様候補なんだぜ。人間と神様じゃ幾ら心が通じ合っていたとしても、絶対に実らね——ぇ?」
 ん?
 と言ったきり、朱雀の饒舌(じょうぜつ)が止まり、彼の翡翠色の瞳が不思議そうな表情を湛えて龍泉寺を見つめる。龍泉寺は不思議そうな顔の朱雀を不思議そうに見つめ、数秒後に頬を伝う冷たい水の感触を感じて、初めて自分が泣いているのだと気付いた。
 慌てて拭ってはみたものの、驚くほど冷静な心に対して、それは好き勝手に零れ落ちていく。
 「すいません、何か最近涙腺が壊れやすくて。何ででしょうか」
 「そんだけ神様らしくなったってこと。人間の間じゃ随分美化されてるけど、神様ってそんなもんだぜ。喜怒哀楽の起伏が激しく、人品骨柄(じんぴんこつがら)時折不良、世俗事情矢鱈(やたら)疎く、風俗事情矢鱈詳しく。人間が理想にする神様像を適(かな)えてる神様なんて、八咫鳥の仁と黄泉比良坂に突っ立ってる桃の木くらいのもんさ」
 朱雀は流れるように神を謗(そし)る言葉を放ち、それが己のことも貶(おとし)めていることには目を瞑ってけらけらと笑い、漸く少しだけ笑顔を見せた龍泉寺の背を平手で叩く。龍泉寺は寂しそうな笑みを浮かべたままポケットの中に手を突っ込み、表面で取り繕った穏やかな表情とは裏腹に、握った懐中時計を手が震えるほど強く握り締めた。
 朱雀も顔の表面では何も気付いていないようにへらへらと笑いながら、心中では(面倒な奴だ)と密かに毒づく。
 互いが互いを気付けぬまま、二人の姿は空の向こうに消えた。

Re: 神様の懐中時計。 ( No.24 )
日時: 2011/02/12 00:47
名前: SHAKUSYA ◆fnwGhcGHos (ID: OTVrSGpZ)



 雨天の下。
 雨水が音を立てて滴る薄暗い竹林に、激しい殴打音が数回響き渡ると同時、金髪や茶髪の如何にもワルそうな雰囲気を曝け出している青年たちがいともあっさりと吹き飛ばされていく。
 地面を引き摺られて鼻血を噴き出し、怨恨と憤怒と恐怖の混じった青年の視線が見つめる先には、漆黒の和装に鮮やかな緋色の長髪を垂らした、一見すると華奢な男——朱雀。その広い背の後ろには地面に膝をついて右の拳を構える黒背広の青年、基龍泉寺が居り、その更に後ろには、ワンピース姿の女、龍華が泣き顔で座り込んでいた。
 朱雀は歯と手で黒い着物の袖を細長く噛み千切り、僅かに震える拳にきつく巻きつけながら、その痩躯(そうく)からは想像もつかないほどの太く低い声を青年たちへ向かって投げる。
 その翡翠色の双眸(そうぼう)には、どんな言葉にも変えがたい哀しさめいた感情があった。
 「こんなトコロで腐って何してんだよ、莫迦野郎共がぁッ! 恋人のことを一日千秋(いちじつせんしゅう)の思いで待って待って待ち焦がれて、ようやっと会えるって時によォ。貴様等はそれを踏み躙ったんだよッ! 女の子にテを出すなって親から教わらなかったかァ? え? こーゆー健気な女の子をよ、寄って集(たか)っていいように蹂躙していいってだァーれが許可したんだ!」
 「っせぇ……こんなチンケなとこで一人で居るのが悪ィーんだよ」
 金髪青年の低い反発に、朱雀は突如、音量を抑えた声を突き刺す。
 「貴様等本物の莫迦だな、非があるのは貴様等の方だ。輪姦(りんかん)だろうが強姦(ごうかん)だろうが、不必要な慰みが互いの同意上のものでない以上、それは邪淫(じゃいん)に過ぎない。邪淫は罪、それが一回だろうと百回だろうと、絶対に罪なんだよ。お前等一回死んでみろ、そしてその身に受けてみろ。女の子を甚振(いたぶ)ることがどれだけ重い罪なのか」
 「やッ、やれるモンならやってみろよ!」
 精一杯の虚勢を張っているつもりらしい。耳につけた数多のピアスを光らせ、倒れている者達の中で最年長の茶髪の青年が、怯え震えた大声で怒鳴り散らした。朱雀はその声を受けて暫く呆れたような顔をして黙っていたが、やがてその口の端に残酷な笑みを浮かべ、黒い布切れを巻きつけた指をボキボキと不気味に鳴らして龍華を見る。

 泣き顔を緩慢に彼へ向ける龍華へ、朱雀は残忍な声で宣言した。
 「イヤだったろ? 仕返ししてやれよ。だけどイヤならいい、俺が勝手に仕返しするから」
 「い、いや——否、や……ります。今までヘンな力を使えるって言うだけで苛めてきた人達、認めてくれなかった両親(おや)、そしてたった今——あたしを嬲った人達への仕返しと、今まであたしを庇ってくれた皆への恩返し。……罪悪感がないわけじゃないけど、でも、それよりも憎たらしいんです、普通の人が!」
 「何言ってるんだよ」
 「五月蠅い——ッ!」
 振り絞るように龍華は声を張り上げ、青年たちを睨みつけた。朱雀は周りの空気が一変する刹那の前に退避、龍泉寺も朱雀の横に体をずらし、龍華ただ一人が青年と対峙する。龍華の鳶色の眼光は地獄の業火のような煮え滾る激情を宿し、地に尻をつく皆々はその刃のような激情に貫かれ、身動ぎすら出来ない。
 声は更に響き渡る。
 「普通に生きている人は、普通じゃない人がしている努力なんて何も知らないのよ。血を吐くような努力をして、自分自身の全てすら否定して、そうしてやっと掴んだ<普通>と言う希望さえ、貴方達は生まれながらにして掴んでた。それが当たり前だとでも言うように」
 脂汗が流れるほどの熱気が辺りに立ちこめる。
 「だけど、努力して努力して、それでも塞げなかった穴をうっかり見せると、貴方達は掌を返すように蔑むのよね? 化物とか怪物とか、挙句の果てには『自分はこんな子を産んだ覚えなんかない』とか『あんたとは元から友達の心算なんか無かった』とか。今まで信じてきた人達が皆離れていく、それがどんなに辛いことなのか、貴方達には分からないのよね?」
 地の底が號々(ごうごう)と重々しく唸り、竹の葉の水滴が蒸発して、辺りが水蒸気で白く染まる。
 「こんなあたしには、否、こんなあたしだけど、龍泉寺君って言うとても頼れる人がいた。だからずっと、会える日を待ってたのよ。今日だって色んな人達に掛け合って、何度も何度も皆に迷惑掛けて、やっと掴んだ希望(チャンス)だったの。なのに貴方達は、そんなたった一つのチャンスを、こんな神聖な場所で踏み躙った!」
 「し、神聖……?」
 「神様の祠の前で、よくあんなことが出来たものよねッ!?」
 肩を怒らせ、龍華が叫んだ瞬間。

 小さな火種が生まれた。


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