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Four Leaf
日時: 2010/11/10 18:42
名前: まいける ナミ (ID: tcDaiqqk)


まったくオリジナルの物語

いつの時代かもわからない
ヨーロッパ風潮の地で起こる
不可解な事件

主人公の名は ルイル・クロワ(16)
彼を中心として動く仲間達や
彼の所属する"CP"
彼等に関わる"仁の血"

そしてこの物語でもっとも重要な
"シハ"と呼ばれる四つ葉のクローバー

彼らの前に現れる"血の無い人間"

この物語の真相とは?

彼らの過去とは?


さぁ

開幕です


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Re: Four Leaf ( No.6 )
日時: 2010/11/20 19:49
名前: まいける ナミ (ID: tcDaiqqk)

第1章 *仁の血を継ぐ者*

一瞬時が止まったようだった

ある男は酒を飲み
ある少女は夢を見、
ある犬は暖炉の火のそばでうとうとしていた

その全部が一瞬
凍りついたようだった

そして、ある"みつあみ"の少女は
一人の少年の腕に抱えられ
先ほどまで自分のいた場所に
大きな獣がひっかいたかのような
爪痕が痛々しく残っているのを確認し、
今起こっていることに困惑させられていた

「な…何なの…。あれ…」

そしてその場にはもう一つ、いやもう一人なのか
黒い布のようなものが
ふらりふらりと浮かんでいた。

足はなく、びりびりと破かれたシーツのような
下半身になっており、
電球がカッと光ってるかのような
丸く大きな眼が
にこにこしながらこちらを見ている。

その不気味でかわいらしげな容姿に似合わず
大きな手、まるで爪のような両腕をもっている

「ニーナさん、こっちです。とりあえず走って!!」

ルイルはニーナの手を力強く握ったまま
外へと飛び出した
後ろを振り返らずにただただ
暗い街へと走り続ける

「…ここならひとまず大丈夫だ」

路地で二人は息を切らす
その息さえも許されないような
恐怖がニーナを包んでいた

「ねぇ…っ…なんなのっ…一体どうして」


酷くとりみだしたニーナとは真逆に
ルイルは冷静に口を開いた


「あれは四葉の中に棲む"四葉の精"です。誰かが願いを言ったときにしかめったに姿を現しません。」


彼女は願いを言った。
その問いにこたえるべく
姿を現したのが"それ"だ


「確かに精霊は伝説通り、願いを叶えます。しかしそれは









あまりにも卑怯なやり方で。」



この時ルイルは思い出していたのだ
彼が今まで生きてきた上でもっとも残酷な悲劇を

「どうして私を殺そうとしてきたの…!?私はただ両親に会いたいって…」

「だから会わそうとしたんです。"天国で"。」

「な…」

「言ったでしょう。卑怯なやり方で願いを叶えると。お金がほしいと願ったどこかの中年の男性が四葉のせいで強盗犯にされたんです。宝石店から無くなった大量の札束が彼の家から見つかったからです。」

「なんで…そこまで」

「わかりません。彼らは人の苦しむ姿が大好きなんです。願いを叶えるまで実行をやめません。今もあなたを探してるはずだ」


ニーナの体から血の気が引いた。
その瞬間夜の冷たさが先ほどより
突き刺さる

「とりあえず君はここに……」

そうルイルが手をつかもうとしたとき
ニーナはそれを振り払うようにはじき返した

「…っ!?ニーナさ…」

「…そうね。その通りよ…最初から私もいなくなればよかった話だわ」


混乱と恐怖が彼女を狂わせる。
その証拠に彼女の眼から涙がとめどなくあふれる

その背後に近付く黒い浮遊者は
もう腕を振り上げていた


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Re: Four Leaf ( No.7 )
日時: 2010/11/20 20:38
名前: まいける ナミ (ID: tcDaiqqk)

……続


傷ついたのは少女ではなかった
少年は倒れこみ腕を押えているが
それに刃向かうように
深く赤い血が止まることなく流れ出している

「…っぐ」

「…クロワ…く…ん…」


少女は少年に近寄った
一つ理解できなかった。
自分をかばった意味を、理由を
他人のために傷を負うことなど
彼女には分からなかった

「早く…逃げてください…」

「だ、だめよ。私っ…こんな…」

「…っう``あ``っ」


ルイルはうずくまったまま
動かなかった
それどころか傷口を強く握りしめたまま
酷く苦しんでいた


「精霊の持つ爪は……酷い憎悪と悲しみ、苦しさを持ってるんです…。少しの間体をそれに洗脳される…。どうせ僕は動けない。だからその間に…」


ルイルがそこまで言うと
頭部を大きな手にわしづかみにされ
そのまま壁へと押し込まれた

≪お前、"仁の血"。CP?≫


こどものような声が超音波のように響く

≪邪魔する??お前死ぬ≫


ルイルの目はうつろに光りを失っていた
彼の体力はもう限界に近い状態だった

「や…やめて!!!!」


ニーナは叫んだ
恐怖で震える体を地面に立たせて


≪先にお前殺す。願い叶える。≫


精霊はルイルを地面に放ると
ふわふわとニーナに近づいた

「…っ」

ニーナは覚悟を決めて
涙の止まらない瞳をぎゅっとつぶった

その瞬間
ひゅんっと風が吹いたと感じた瞬間に
その黒い悪魔が壁にめりこみ
それを蹴ったと思われるルイルが
まるで降り立った鳥のようにストッと
体制を整えた

「…強化。」

彼がそう唱えると
ルイルの左手に備わっていた
赤い二つのブレスレットがバチバチと音を立て
何周りともいうくらいに大きく姿を変えた


「もうこれ以上誰も傷つけさせない。」


その真っ赤なブレスレットが
ぎゅっと凝縮され、精霊の中からはじけ出す
その爆発とともに精霊はあとかたもなくきえた


そしてどれだけの時が過ぎたのか
月も沈みかけていた


「……四葉の伝説は人々に間違われています。それを止めることはできない。世界には数えきれないほどの人たちが溢れてる。だから僕たちCP(コレクトプロフェクター)は四葉をすべて回収するために地方を転々としているんです。」

ルイルは床に転がったまま
空を見上げて熱に浮かされたように
自分に置かれている境遇を話し始めた。
ニーナはルイルのそばでただただ耳を傾けていた

「どうして話してくれるの…?」

「はは。ここまであなたが色々見てしまったのなら、どうにもできませんよ」

「……」

「彼らを止めることができるのは、僕が持っている"仁の血"だけなんです」

「仁の血?」

「普通の人には流れていない血です。持っている人はほぼ少ない。もういないかもしれないです。それを武器化してるのがこの"血の腕環(レッドブレス)"なんです。」

「血を…武器…に…?」


「特別な血液だからこそできることなんです。僕の頬の傷、もうないでしょう?」

「あ…」


昼にルイルが負ったかすり傷は
もう跡形もなく消え去っている
それどころか戦闘で負った大けがさえも
ほとんど血がとまってきている

「すみませんでした。大嫌いなんてぶしつけな言葉を言って。」

「ううん。私が悪いの。全て私が間違ってたの」

「本当はあなたを意地でも止めたかったんです」

「どうして?あったばかりなのに」


「…僕は過去に








四葉によって大事な人を失っているんです。」





それは残酷で


悲しい事件だった


next

Re: Four Leaf ( No.8 )
日時: 2011/02/08 23:22
名前: まいける ナミ (ID: tcDaiqqk)


お久しぶりです

Re: Four Leaf ( No.9 )
日時: 2011/02/08 23:42
名前: まいける ナミ (ID: tcDaiqqk)


……続


いつも隣にいて
後ろについてきて

それが当たり前で
そんな存在だった

いとしい存在
唯一の僕の家族


妹……


「大丈夫??」

「えぇ、だいぶしゃんとしてきました。」



さきほどまで悲しみと憎しみに苦しめられていた
ルイルの青ざめた顔に血の気が戻ってきていた。

寒く暗い
月が煌々と照る夜の中
ニーナはまだ恐怖に震えていた。
まだ自分は命を狙われている

「……怖い…んですか…?」

「あ、あたりまえでしょ!!」

「でもこれが、あなたの"望んだこと"なんです」

「…」


ルイルは
昔にあったたとえ話をした

「僕の家族は、妹一人だったんです」

「…両親は?」

「いえ」

「そう…」

「だから僕の、唯一の存在です。」



その存在は



やがて無になることになる


「どこかの家の修理に、使うための木材が立てかけてあったんです。それがくずれてきて…」


「亡くなったの?妹さん…」




「いえ、












亡くなったのは僕です。」









「え…?」







ルイルは村で噂されていた四葉を
妹のために探し、見つけた。

渡してみれば妹は
とびきり喜んだ。

ルイルも嬉しかった

妹の喜びが、なによりの幸せ

妹もまた、ルイル存在が



絶対






≪お願い!お兄ちゃんを生き返らせて!≫



ルイルは目覚めた
横たわっている妹の死体を眺めながら


≪あ…りえ?≫


願いは交渉されたのだ
妹の命を対価に


≪なんだよ…お前ッ!!アリエに何をした!!!≫


ふわふわと浮かぶ
薄気味悪い黒布のような者に
肩を爪で打ち抜かれる


≪うっ!!!ぐアァあああっ!!!…うっ…うぅ≫


痛みにもがくルイルに
精霊は言った





≪おまえ、じんのち?≫


≪…?≫


≪死はこわいか?≫




≪な…なにを…い…って≫



≪こわいか?≫



ギョロリと大きな瞳でにらみ
不気味に笑う精霊を

たまらなく恐く思った


恐ろしい
恐ろしい恐ろしい!!!



助けてと叫びたかった



声が出なかった












まだ





弱かったんだ




--next

Re: Four Leaf ( No.10 )
日時: 2011/05/05 20:07
名前: まいける ナミ (ID: tcDaiqqk)


…続


「…もう帰っても大丈夫ですよ。」

「え?」

「さっきの精霊は僕が倒しちゃいましたんで、あなたの願いは取消し(キャンセル)になりました」

「…はぁ!?!?な、なにそれ!!さっきまであんなこと言ってたじゃない」

「すみません。少し嘘つきました。」

「……私をこらしめるため。でしょ」

「すみません」




ニーナは恐怖から解放されると
その場で静かに涙を流した


「!! すみません!!; そんなつもりじゃ…」

「私、両親に会いたかったんじゃないの。本当はね
本当は、


あの人をびっくりさせたかった

あの人に親友を合わせてあげたかった。

私の義父さんにお父さんを…彼の恋人も」




間違いだった


全て


欲望だけが渦巻いていただけで

何も分かってはいなかった。


「ねぇ、あなたがCPになった理由教えてくれる?朝がくるまでに」


「それであなたが涙を止めてくれるなら」


ルイルは笑った
もう彼女が二度とシハを求めないことを悟って。

それから

彼女の成長を祈って





第1章 完


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