ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- 無能と無慈悲と無駄遣い
- 日時: 2011/02/19 14:02
- 名前: 出雲 (ID: kDmOxrMt)
ハジメマシテ、出雲と申すものです。
今現在シリアス板で四つの作品を執筆しております。
内、三つは現実モノで病み気味。
内、残りの一つは妖モノになっております。
故に違うジャンルが書きたくなり構成を建てましたのがこの作品です。
バトルモノといいますか、皆様の作品を読んでいて書きたいと思っておりまして。
・更新が遅いのは嫌いだ
・初ジャンルでたかが知れてるだろう
・荒らしである
・出雲という生命体が嫌いだ
・高度な戦闘描写を求めている
・流血は無理
・上記に当てはまる方は戻ることをお勧めします
《言語紹介》
・無能
能力や才能がないこと。役に立たないこと。また、その人や、そのようなさま。
・無慈悲
思いやりの心がないこと。あわれみの心がないこと。また、そのさま。
・無駄遣い
必要のないことや役に立たないことに使うこと。
・受名
本名以外の呼び方。異名。別名。二つ名。
《主人公》
クドウ センリ
・久遠 千里
無慈悲と言う言葉を具体化したような人物。
一匹狼で計算高く、減らず口。
16と言う若さで端正で中性的な顔立ちをしている。
《無能》と知る人は呼ぶ。
ミナミ チサト
・三波 千里
馬鹿でお人よし、感情表現豊かな人物。
男のような性格をしており口調も悪い。
16という若さで顔立ちは悪くは無い。
《無能》と誰もが呼ぶ。
クドウ カイリ
・久遠 灰里
千里の兄で、政府の関係者。
大らかで実年齢よりも若く見られることが多い。
20歳で政府で働くという、頭脳の持ち主。
《目次》
プロローグ >>1
オリキャラ募集 >>11
参照100突破 >>14
第一章 無と有の境場より >>2 >>6 >>9 >>10
第二章 無力な己に語る
- Re: 無能と無慈悲と無駄遣い ( No.6 )
- 日時: 2010/11/23 18:05
- 名前: 出雲 (ID: kDmOxrMt)
「糞ったれ…!」
先手を相手に渡すような言葉を吐いて、女はその場に立ちつくした。
ただ、余裕の笑みを浮かべて。
千里は一度目を閉じた後、女めがけて何かを投げる。
何か。それは、銀に光るナイフ。
千里は着ていたコートの内側から手に握ることのできる数を取り出し、次々と放っていく。
「っ」
「あら?その程度…」
女は舞うように、ステップを踏み千里の手から放たれるナイフを軽々しく避けていく。
観客は千里に罵声を浴びせ、女に黄色い声をかける。
「私は無能じゃないっ」
千里は最後のナイフなのか、その一つだけを強く握りしめ女を切りつけようと前へ足を向けた。
額には汗がにじみ、心なしか恐怖で怯えている様子も見て取れるものだった。
「そう」
女は千里がナイフを振りかざし、近寄ってこようとも踊るようにしてその場で一つ。
回って見せた。
「私を…見ろ!」
言葉の瞬間、ナイフが甲高い音を上げて何かにぶつかる音がした。
弾き返す様な、硬い何か。
「傷ついちゃうじゃない、私の扇子が」
女は千里のナイフを口元にあてていた扇子で庇ったのである。
女の扇子は鉄扇子であり、ナイフと当り嫌な音を出したのだ。
「そんな」
呆気にとられてるように目を見開いていた千里の手からナイフが消える。
「小娘が」
扇子によって地に落ちたナイフは虚しくその場に響く。
それでも千里は立ちつくし、女によって向けられた扇子で胸を叩かれた。
『最高だぜ!』
『流石、《無音の舞》と呼ばれるだけあるぜ』
『何もしてねェよ…』
男達が女に向けて感嘆の声を吐く。
《無音の舞》と呼ばれた女は、今までにない冷酷な表情で千里に言った。
「これでも無能じゃないと?」
千里は目に涙を浮かべるようにして俯いていたが、女に情けは無い。
扇子によって人間業では無いかのように、千里は後方へと吹き飛ばされた。
「っぐぁ…っ」
痛みをこらえるかのような声が漏れる。
壁に当たり、地に這った千里は顔を上げる事が出来ない。
店内が客達の声で溢れかえる。
女はドレスの裾を掴み一つ頭を下げると、千里には目もくれないかのように歩き出そうとする。
そこに、客の声。
『力使ってないな』
「ええ、もちろんよ」
『当たり前か』
「そうね、小娘如きに力の無駄遣いはしないわ」
必要が無いから、そう淡々と述べる女。
だが、女はすぐに顔を強張らせて振り返った。
声の主を探すようにして、辺りを見渡す。
その女の突然行動にマスターが不思議そうな声を出した。
「どうした?」
「誰…?」
女が扇子をひらき、客等の歓声が鳴りやむ。
無音の舞の通り名に合わせたかのように酒場は静寂に包まれた。
女は汗をはじめて浮かべ、千里が下で蹲る酒場のカウンターへと目線を向けた。
音。
『利口だな、無音の舞』
椅子の軋む音が聞こえ、影が一つ。
女がその正体に気付いた時には既に、客は逃げるようにしてその場から離れていた。
「お前は、《無能》…!?」
- Re: 無能と無慈悲と無駄遣い ( No.7 )
- 日時: 2010/11/25 15:48
- 名前: アキラ (ID: STEmBwbT)
扇子っていう武器が可憐すぎなんですねぇ。しみじみ。
千里、キザじゃないですよ(^<^)
《無能》っていう人が出てきましたけど、味方なのやら敵なのやら。
- Re: 無能と無慈悲と無駄遣い ( No.8 )
- 日時: 2010/11/25 16:13
- 名前: 出雲 (ID: kDmOxrMt)
アキラ様>>
訪問ありがとうございますm(__)m
そしてしみじみ。
登場キャラの名前を何故同じにしたのか…
誰がどれで誰なんだか←
千里の方はただの男のような女ですから笑
そしてもう一度。
ややこしいですよね、無能と言う単語も多く出てきますし苦笑
- Re: 無能と無慈悲と無駄遣い ( No.9 )
- 日時: 2010/12/05 15:24
- 名前: 出雲 (ID: kDmOxrMt)
センリ
「千里…」
女が驚いたように声を上げて、マスターが離れた客を押しのけるようにして近づいた。
マスターが発したのは、目の前に現れた影の正体。
「売れ行きはどうだ?《有能》」
女から《無能》と、マスターから千里と呼ばれたその男は椅子に手をかけ立ち上がる。
その姿はまだ、青年では無く少年と言った方が合うであろう若さ。
「マスター?」
女が、《有能》と言う言葉に反応したマスターの名前を呼ぶ。
マスターは俯き、女が《無能》と呼んだ男を睨みつけ、そして響く。
クドウ センリ
「久遠 千里、私はもう《有能》ではない、知ってるんだろう?」
「もちろん、無駄遣いをして貴様は《無能》になった」
久遠 千里、その名前で呼ばれた男はマスターを嘲笑うかのように声を上げ、楽しくなさそうに下を見た。
床、彼の足元には先程女《無音の舞》によって飛ばされた
「コイツも《無能》なのか?」
チサト
千里がいた。
「まさか、お前と同じな訳がないだろ」
少女の持つ《無能》
少年の持つ《無能》
「なるほど」
男はただただ無表情で見降ろし、何かに頷いた。
マスターはそれを察したのか言葉を紡ぐ。
「彼女は《有能》だよ」
先程と違った、少女への呼び名。
《無能》と罵った少女の筈が、マスターは寂しげにその自分が少年に呼ばれた言葉を発する。
「ずいぶん、哀しい受名だったな」
意味ありげな言葉だったが、それ以上マスターは口を開くことなく一歩と足を下げた。
「《無能》何の用なの」
女はマスターとの会話が終わるのを待っていたのか、すぐに高い声を上げた。
先程よりも焦りが見えるような、早い口ぶりで。
「分かっているんじゃないのか?」
千里はすぐに返し、そして女に近づいていく。
ゆっくりとした足取りで。
徐々に、女の顔に疑惑が生まれ、汗がにじみ出る。
千里は無防備のまま女のすぐ傍まで近寄ると少し背の高い相手を見上げた。
「貴様の母親に会ってきた」
囁くように言われたその言葉に女は、目を見開き扇子を地に落とすと、拒絶するように千里から離れていった。
「な、何のこと」
驚きを噛み殺すようにして発した言葉は、隠すことなく怯えの色が見える。
「いや、義母と言った方がいいのか」
簡潔したその言葉に女は口を小刻みに動かしながら、次の言葉を探している。
千里はその隙に、足元に落とした扇子を蹴ると女から遠ざけ、無防備の状態を作る。
「貴方、何を言っているのか、サッパリだわ」
「言ってもいいのか?」
「…っ」
女は目を固く閉じた。
- Re: 無能と無慈悲と無駄遣い ( No.10 )
- 日時: 2010/12/11 11:09
- 名前: 出雲 (ID: kDmOxrMt)
「帰るわ」
女は目を開けると、簡潔にそう言うなり千里に背を向けた。
千里は無表情のままその姿を見送るように、目を離さない。
「 」
ハイヒールが床を打つ音が響き、マスターもまた女の跡を眼で追う。
女が扉に手を掛けようとした、その時。
千里が言葉を発した。
「また、何処かで会おうか」
千里の言葉に女は硬直し、振り返ることなく呟くように口を開く。
『逢えることを願っているわ』
風の音が開いた扉から鳴り、女の姿が酒場から消える。
《無音の舞》が去った後はやはり無で固められた。
「千里、どういうことだ?」
マスターの声。
「いずれ分かることだが、俺も深入りする気は無いのでな」
千里は自らが遠くへ蹴り飛ばした、女の扇子を拾い上げる。
意味ありげなその言葉に、マスターは一度眉間に皺をよせたが思い出したかのように鼻を鳴らす。
「また、政府に協力してるのか」
千里は扇子を眺めながら、マスターの方を見る事はせず声を漏らす。
「違うさ、利用されてるんだよ」
千里は利用されている、と言った。
政府。
この男には、裏の世界には脅威とされようとも言う、言葉。
「灰里のことをお前はまだ、恐れてるのか?」
徐に扇子を握りしめると、言葉が飛び交っていてもなお千里は歩き続ける。
向かう先はコートがかかっている椅子。
「恐れている?何を……」
自らのことであると思われる、影のコート。
「何故俺が、無能なアイツを恐れる必要がある?」
それを翻し扇子を仕舞うと、フードをかぶる為に手を後ろに回した。
「馬鹿言うな、アイツの無能と俺の《無能》は違う」
そう言った時には、既に千里はフードを深くかぶり顔を隠していた。
マスターが溜息をつくと、千里は懐からナイフを取り出し投げつけた。
壁。
少女が倒れ込むその場所、頭上5㎝にも満たないそこへナイフの先が刺さる。
ナイフには文字が刻まれていた。
「そこの《無能》に渡しておいてくれ」
そこの《無能》、少女、千里。
扉が開き、影がその言葉を残し去っていった。
残ったのは倒れ込んだままの少女とマスター、そして先程より知らぬ間に数を減らした客だった。
客は、突然現れたその影に動けなかった者達。
興味を持ったようにその場に残った者達。
全員がマスターの方を見る。
「心配はいらない、通りすがりの《無能》だよ。
アイツは」
マスターは首を横に振ると、呆れたように。
もしくは、何も言えないという表情で出したのがその言葉。
無能。
その言葉だけが酒場に響いた。
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