ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

Transmigration of the souls
日時: 2010/11/30 21:57
名前: ルーナ (ID: r3UXBQ7u)

こんにちは( ^ ^ )/ 
ビミョ〜に初心者なので見苦しいところもあるかもしれませんが(°°;))
ヨロシクお願いします(*‾‾‾‾∀‾‾‾‾*)ノ

(next ゜Д゜)ノ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

プロローグ 血塗られた瞳の主

1、魔導医シオン

(next ゜Д゜)ノ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
——登場人物について——
この物語には総勢35人の主人公がいます。35人の様々な思いや事情が重なり合ってTransmigration of the soulsの物語になっていきます。一回で紹介するにはあまりにも多いので、初登場の際にキャラ紹介します。御理解のほど宜しくお願いします。

Page:1 2



Re: Transmigration of the souls ( No.2 )
日時: 2010/11/30 23:13
名前: ルーナ (ID: r3UXBQ7u)
参照: http://キャラ紹介その1

——1章の登場人物——

ロンドリーネ・E・エッフェンベルグ

神の呪いルヴァ=カースに侵された少女。呪いをとくため、そして≪白の魔物≫を見つけ出すために、師に紹介された情報屋の男を探して王都を訪れた。

セルシア・フィリスライト

神託の盾騎士団ファラグラスきしだんの第四師団長総長補佐を名乗る女性。≪白の魔物≫に似た不思議な術を使う。

Re: Transmigration of the souls ( No.3 )
日時: 2010/11/30 23:08
名前: ルーナ (ID: r3UXBQ7u)
参照: http://魔導医シオン(1/4)

二章・魔導医シオン  

突然陶器で殴られた様な感覚が全身を襲った。それは痛みを伴い、同時に呼吸をも奪い去った。心臓が激しく脈打ち、背中に冷たい汗がゆっくりと流れていく。
この揺らぎの原因はすでに理解していた。時間をかけて、くだらない自問自答を繰り返す必要もない。
(落ち着け、落ち着け、落ち着け)
自身にまじないをかけるかの様に心の内で連呼したが、効果はまるでなかった。思い通りにならない現実が、さらなる焦りを招く。
思考の瓦解をもたらしたのは、たた今耳にした言葉ではない。真実かどうかも分からない情報が、数年越しで固めた覚悟に大きな亀裂を入れた。その事実が、僅かに残った理性すらも根こそぎ奪っていく。
別れを告げると受け入れていたはずの世界が、鮮やかな色をまとい、回っていた。
立っていられない。
「おい、大丈夫か?」
この街——今や世界の9割以上の人間の信仰を受ける教団、ファラグラス教団の拠点とも言える宗教自治区ファラーズ・ダアト——の守護と警備に当たる教団直属の軍事組織神託ファラの(グ)盾騎士団ラスきしだんの服を身に付けた若い女がすぐ傍にいた。
常時なら何らかの表情が浮かんでいる筈のその眼は何処までも空虚で……まるであの時に出会った真白の女を思い出させた。
「お前まさか……」
若い女は自分の前に左手を伸ばし、聞きなれない言葉の羅列を並べた。そして伸ばされた手に次第に輝きが集束し始め、やっとそれが何らかの魔法の詠唱である事に思い至った。
その行為が益々真白の女と重なり、私は恐怖に震えた。
しかし、それは私の杞憂だった。彼女は「安心しろ」と呟き、右手でそっと背中に触れた。
左手から溢れてきた荒削りな結晶は、あの真白の女のものとは違う、優しくて暖かい光を発していた。
その結晶はゆっくりと自分達の周囲を舞い始め、結晶が輝きを増した途端、体から痛みが、疲れが引いていくのを感じた。
体が動く……?……
私はその瞬間何が起きたのか理解できず、暫く彼女を見つめていた。
「動けるか?」
彼女のその言葉で正気を取り戻し、「大丈夫です」と簡単にお礼を済ませると、私は顔を上げた。そうしてようやく、自分が両足の支えを失い、床に膝をついていることを知った。震える手でテーブルを掴み、体勢を整える。徐々に視界は酒場の風景へと形を変え、騒がしい客の声も、食器の当たる音もすんなりと耳に入ってくる様になった。
ふと客越しに窓を見やると、酒を飲んで談笑する者に交じって、長い黒髪を一つに結った深緑の瞳の男がこちらを見返していた。切れ長の目には生気がなく、日焼けした肌には血の気がない。一瞬、見慣れたその男は自嘲を浮かべたような気もしたが、私は視線を外し、頭を振った。あれは自分ではない。あの様な情けない姿など。
隣ではさっきの若い女が自嘲を一瞬を浮かべ、元いた席に戻っていくのが見えた。
「王都に来たばかりなんだろう? 疲れがたまってるんじゃないのか?ちょっと座って食べていきなよ。もう遅いし、どこも開いてないだろ。安くしとくよ」
そう勧めてきたのは、これまでの成り行きを見守ってきた酒場の女主人であった。迫力のある体つきをしている女主人の顔に薄く刻まれたしわが、貫禄を滲ませていた。
さすが王都の酒場と言うべきだろう。大きさといい客の数といい、規模がまったく違う。この時間帯まで開いている手ごろな店が少ないせいか、特に人でごった返していた。冒険者や傭兵、商人だけでなく、地元の住人など、客層に職業人種関係ない様に見える。見回すと、自分と年の近そうな者も少なくなかった。中でもすぐに目についたのは、誰かを探しているのか、席にもつかず店内を歩き回っている青年と、少し離れたテーブルでカードゲームに興じる冒険者らしき風貌の青年である。特に前者の青年は、体のあちこちに包帯を巻いているのが印象に残った。この酒場でなんらかの依頼を受け、こなしている際、怪我をしたのかもしれない。
私としては、必要な情報さえ手に入れれば、すぐ宿に戻るつもりだった。しかし、ただ立っているだけだとやはり目立つ。ちらちらと周囲からも視線を感じ、私は観念して席につくことにした。カウンターなので、他の客には自然と背を向けることになる。それだけが幸いだった。
この酒場の店主の男性は、私が大人しく腰を落ち着けたことを見届けると、満足げに何度も頷き、口を開いた。
「で、なに話してたんだっけな」
「ヴィレティアという教会に……その、変わった医者がいると」
私が核心を外して躊躇いがちに答えると、男は軽やかに手を打った。
「そうそう! その医者がな……あれ、男だっけ? 女だっけ?」
「男の子でしょ」
「そうだっけ? まっ、どっちでも関係ないか。とにかく、すごいキレイな顔してるんだよ!この王都でも、あんな別嬪はなかなか拝めねぇ」
男は件の医者を思い浮かべたのか、下卑た笑いを刻んだ。酔っぱらいが相手だ。思うように話が進まない。私は適当に相づちを打ち、出された前菜にフォークを伸ばした。さりげなく話題を誘導することも忘れない。
「それで……そいつは、どんな風に変わってるんですか?」
「ええ? だから、ルヴァ=カースの研究をしてる? ……ん? してた? んだってさ。世の中には変わった奴もいるもんだよなぁ」
ルヴァ=カース——世界を覆う、死の呪い。
全身に震えが走ったものの、使っていない左手を握りしめることで、今度は激しい動揺から逃れることができた。私はゆっくり、少しずつ息を吐いた。
「あと、なんだ。その医者、浄罪の杖を探してるとかなんとか……あっ、本人が言ってるところを、ちゃーんとこの目で見たんだぞ」
間違いねえ、と機嫌よく男は言い切り、酒をあおった。そうは言ってもうろ覚えであるのか、歯切れが悪かったり、やたら最後に疑問符がついていたりする。よほどの誤りがあれば女主人が口を出すだろうと踏み、私はそれらの一切を気にしない事にした。
女主人はというと、酒の進みが早い男を横目で見ながら、でも、と呟いて首を捻った。
「そういや、最近あの子見ないよねえ」
「言われてみるとそうだなぁ。何処に行ったんだろうな」
男の話はそこで終わった。飲み仲間と思しき集団が現れ、ふらふらとそちらへ消えてしまったからである。

(1/4)

Re: Transmigration of the souls ( No.4 )
日時: 2010/11/30 23:10
名前: ルーナ (ID: r3UXBQ7u)
参照: http://魔導医シオン(2/4)

用は済んだ。
肩の力が抜け、ぐったりと体が重くなるのを感じる。私とて、長旅の疲れを自覚していなかった訳ではない。意識しない様にしていただけだ。
(さっさと宿に帰って寝てしまおう)
件の医者の詳しい情報を聞くことは叶わなかったが、今日はもう、改めて別の人間に尋ねる気にもなれなかった。その男が出入りしているという教会に行けば、おそらくもっと信憑性の高い情報がある。運がよければ、本人と対面出来るかもしれない。先ほどの会話からして、後者は可能性が低いだろうが、とにかく、すべては明日だ。
意志だけではどうにもならない疲労感と戦いながら、私は出された食事を黙々と胃袋に詰め込んでいった。
すると、さっきの若い女がすっと隣の席に腰を下ろした。
「いらっしゃい、セルシアさん。今日はどの様なご用件ですか?」
「あぁ、これを読んでくれ」
女主人は笑顔を振りまきながら、セルシアと呼ばれた女から渡された手紙を読む。
そして、その顔から段々笑顔が消え、眼差しは真剣ものに代わっていく。
手紙をすべて読み終わったのか、手紙から目を離し、またあの笑顔を浮かべ「分かりました」というと、カウンター奥の部屋へと姿を消した。
その場には私と彼女だけが取り残された。私は沈黙に耐えながらも、出されていた副菜を口に運んだ。
私も何度も沈黙を破ろうとしたが、この長い沈黙を破ったのは彼女だった。
「貴様、ルヴァリエンスか?」
「なっ……」
突然の彼女の質問に、というよりは彼女に私がルヴァリエンス——ルヴァ=カースに侵された者——だと見抜かれていた事に驚いた。
彼女は「やはりな」と言い、私から目線を外した。
「一時、奴もルヴァリエンスではないかという噂が流れた事があるんだ」
 「えっ……?」
私は手を止めて、渋い顔をする彼女を見た。誰のことを言っているのか、すぐに理解する。あの変わった医者の話だ。彼女は女主人の消えていったカウンターの奥を見つめ、言葉を紡ぐ。
「この世界にあの呪いを好き好んで研究をする者等いない。奴はルヴァ=カースに侵されてるから、助かりたいが為にそんな研究してるのだと皆気味悪がっていた」
一応、筋は通っている。私は黙って頷いた。気のせいだろか?彼女の横顔には何故か怒りの表情が浮かんでいた様に思えた。
「しかし、ヴィレティアの僧官……メデューサが違うと言い切ったんだ。奴本人も否定したらしい。それに」
「それに?」
「正式に免許を取ってるかどうかまでは知らないが、すごく腕のいい魔導医らしい。この辺に住んでる者達は、大抵世話になっている様だ。貧民街の子どもも無償で診てるようだ。今は奴を悪く言う奴はいないと聞いている」
「ありがとうございます。」
彼女の話が終わる頃には、皿は空になっていた。
食事代に加え、情報提供料として少々多めに金を払い、のろのろと席を立つ。出口へ向かって一歩踏み出し、私はふと、重要なことを聞いていなかったと思い当たった。慌てて先ほどまでいたカウンターを振り返る。彼女は、何事かと眉を顰めた。
「その医者、名前はなんていうんですか?」
すると彼女の表情が一瞬私を軽蔑する様なものに変わった気がする。
「いま、ヴィレティアに行っても奴には会えんぞ」
彼女は私の心を悟ったように言葉を発した。
「何故ですか?!」
「奴に会いたいのか……?」
私は黙った。私は期待していたのだ。その妙な魔導医がルヴァ=カースの呪いを解く方法を知っているかもしれない。
もしかしたら、上手くいけば……私はこの呪いから解放されるかもしれない。
この身体の所有権は、まぎれもなく自分にあるはずだ。
では、なぜこの身体は、自分以外の何者かの意志に侵され、不当にも命を奪われようとしているのだろうか。
両手をまっすぐ、視線の高さまで持ち上げる。肩からすらりと伸びる腕、手首、手の甲、指、爪。見慣れた形のそれらからは、いわゆる健康的な肌の色はほぼ失われている。
皮膚の上を蠢くのは、黒い痣であった。痛みを感じるわけではない。しかし、痣の輪郭から黒いインクのようなものが滲み、広がっていくたび、ひたひたと冷たい予感が腹の底から這い上がってくる。
これは病魔ではない。
神の意志。
神の呪い。
死か、または理性のない化け物に姿を変えろという絶対の導き。逃れる術はない。
(死ぬのか)
(嫌だ)
(では魔物となり、呪いを世界に撒き散らすか)
(嫌だ——!)
淡々と問いかける自分の声に、拒否の言葉を投げつける。
その間にも、神の呪いは広がり続けていた。肩から首筋、そして胸へと。
やがて、指の先が影法師のように黒くなり、獣の大きな腕へと形を変えた。それでも痛みがないのは、滅びを招く神の慈悲なのか。肉を裂き、骨を砕くような音だけを断続的に響かせて、黒ずんだ箇所から変形していく。魔物に理性はない。つまり、この変形が終わったその瞬間、自分という人間、意志は、この地上から跡形もなく姿を消す。
(死ぬこととなにが違うっていうんだ)
(どうして私なんだ)
(死にたくない——っ!)
もう声は出なくなっていた。

(2/4)

Re: Transmigration of the souls ( No.5 )
日時: 2010/11/30 23:12
名前: ルーナ (ID: r3UXBQ7u)
参照: http://魔導医シオン(3/4)

行き場のない激情だけが、思考の奥底でのた打ち回る。
誰かが、背後で嗤っていた。まだ変形を終えていない首を緩慢に動かすと、そこには真っ白な影が佇んでいた。
影は女の形をとり、薄桃の唇を開き、告げる。
「君に、ルヴァル=ティンゼアの負の恩寵を」
濃艶な声音に、激しい憤怒と怨嗟が噴きあがった。
(許さない——!)

でも、もしその魔導医が、方法はない、滅びるしかないと言えば……そう思うと、どうしても気持ちが纏まらない。
しかし、そんな私の様子を彼女は黙って私の決断を待ってくれていた。
(せめて、あと何日生きられるか分かればな…)
私は自嘲気味な笑顔を浮かべた。
やはりその魔導医に会うのは恐ろしい。だが、ここで何もしないまま滅びるのは嫌だ。——怖い。だからこそ、恐ろしいという感情を抱けている今だから、全てのルヴァリエンスの為なんて大それた想いじゃないし、結局は自分自身の身しか案じていないのと一緒かもしれないけど……それでも私は——この神の呪いと、何よりあの真白の女と戦いたい——!私にこれを寄こしたあの女と——!

「会いたい……」
俯きながらもそう呟いた。
「会ってどうする気だ?」
「……分からない」
私は首を振った。
「ここで何もしないまま滅びるのは嫌だ。——怖い。だからこそ、恐ろしいという感情を持てている今だから!全てのルヴァリエンスの為なんて大それた想いじゃないし、結局は自分自身の身しか案じていないのと一緒かもしれないけど……それでも私は……何もしないよりはあがいて見せる……」
しっかりと彼女を見据える。
「分かった」
彼女はゆっくり、そして私にしか聞こえない程の小さな声で私にそう呟いた。
「その魔導医は今はこの国には居ない。今奴……シオンはライヴトゥクロアにいる。明日其処へ向かう予定があるから支度を済ませてファラミス第三教会前に来てくれ」
「いいんですか!?」
彼女は私の問いには答えず、踵を返し酒場の出入り口の扉に手を掛け、何かを思い出したのかこちらを振り返る。
「そう言えば、名を聞いていなかったな。私は神託の盾騎士団第四師団師団長総長補佐、セルシア・フィリスライトだ」
「私はロンドリーネ・E・エッフェンベルグです」
「そうか……」
彼女はそう言い残すと早々と酒場を出ていき、私も後を追う様に酒場を後にした。

(3/4)


Re: Transmigration of the souls ( No.6 )
日時: 2010/11/30 23:04
名前: ルーナ (ID: r3UXBQ7u)
参照: http://魔導医シオン(4/4)

今宵は満月なのに加え、空は満天の星空だった。

(魔導医、シオン……)

私は不意にあの時の事を思い出した。あの真白の女と出合った夜——。
今日の夜空はあの夜の空に似ていた。
血と肉片を撒き散らし倒れている大人達……、段々冷たくなっていく、あの……少年の体。姉と繋いだ右手から伝わってくるか細い震え——。
冷たくて、
固くて、
——紅い———景色——。
あの日に起こった事全てが昨日の事の様に蘇って来た。
……怖い。
震えが止まらない程に。
誰でもいいから……傍にいて欲しい……そんな気にさせる夜——だった。

(4/4)


Page:1 2



この掲示板は過去ログ化されています。