ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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臆病な勇者達
日時: 2011/01/15 11:43
名前: 雷燕 ◆bizc.dLEtA (ID: l2k0mPFo)
参照: http://noberu.dee.cc/bbs/dark/read.cgi?no=34

決して勇敢だったのではない。
ただ、後ろに下がるのを恐れたのだ。


ふう。大幅(?)修正完了。
前より見やすくなったかな?

こんにちは。初めまして。こんばんは。雷燕(ライエン)と申します。
2話を書き終わるまで投稿は待とう……なんて思ってたんですけど、このままじゃいつ書き終わるか分からないのでもう投稿しちゃいます。
程よいストレスで執筆が進むのを期待して。
しかし執筆ペースが異様に遅い事に危機感を感じ始めた今日この頃。

不定期更新、多少のグロ注意です。


■目次
エピローグ
>>1
第一話 「大富豪からのメッセージ」
>>2 >>3 >>4 >>5 >>6 >>7



参照の方にあるのが原文ですが、読みにくいかも。

Page:1 2



第一話 ( No.3 )
日時: 2010/12/29 13:07
名前: 雷燕 ◆bizc.dLEtA (ID: buJGQ2Tw)

 建造物と言っても家等ではなく、鑑賞を目的とされたものだろうか。

 中心に高い塔があり、それを囲むように石の芸術作品と思われるものがあるが、これがデザインとしてどうかなどということは、芸術的センス皆無のオレには全く分からない。
 だがそんなオレでも、細部にまで施された装飾が凄いということくらいは分かる。それに、こんな洞窟の中にあるのだ。K.Jはかつての大富豪と言っても、相当な資産を削られたことだろう。

 ……この物体自体の価値が分からないオレは、そんなことばかり考える。

 頭上には岩石の天井があり、登頂部分に直径3メートルはあろうかというほどの大きな穴が開けられていた。そこから太陽の光が差し込んでいるだけなのでそこまで明るいわけではないが、暗闇に慣れていたオレ達にとっては眩しいくらいだった。

 その大きな穴から差す日の光で、力強く岩と岩の間に根を張っている雑草があった。感心していると、そんなことは全く気付かないシュウがそれを踏みつけて駆けて行った。

 シュウはだいたいオレのやることに乗ってくる。たまに事態を悪化させてしまうこともあるが、それはそれで面白いのでオレ自身は全く気にしていない。レオンはほとほと困っているようだが。運動神経が良くてオレの無茶な要望をだいたい叶えてくれる。馬鹿なのが玉にキズだったりするが、一緒にいると楽しいのでそれもいい。
 ついでに金に目が無いが、それは家のごたごたのせいだろう。

 そんな頼れる彼の行く先は、この建造物の裏側だろうか?
「気をつけろよー!」
「保護者みたい」
 レオンがシュウに向かって言ったので、オレは笑った。
 レオンはいつもオレ達の心配をしていて、オレが何処かへ行こう、何かをしようといったら十中八九止めてくる。まあ、オレが言うことも言うことなんだが……。だが、一度でも疎ましく思ったことは無い。実際今考えたらあれはしなくて方がよかったと思うこともあるし、テンションの上がったオレを冷静に止めてくれる。助かる。

 オレは後頭部の中央で大雑把に束ねた髪をほどき、また同じようにした。今までの道でずいぶんと髪が乱れていたのに気付いたからだ。
 オレがポニーテールなのは単純に床屋(美容院などもってのほか)に行く金がないからで、伸びすぎるとバッサリと切る。そのときはレオンやシュウと同じかそれ以上に短くて、いよいよ女には見えない、らしい。

 周りの人間の大部分は、「髪は長いほうが良い」と言う。「ケリーちゃんはかわいいんだから、もっとおしゃれしたらいいのに」冗談じゃない。「自分のことを『オレ』って言うのも止めなよ」御免蒙る。
 ついでに胸は全くと言ってよいほど無い。そんなもの邪魔だ、という思いが通じたのだろうか。レオンが言うに「普段様々なことをやり過ぎてその上食事も満足ではないので、そこに行く栄養が無い」んだとさ。

「保護者みたいって、お前らが子供すぎるんだ……」
 レオンが呆れたように言った。
「まだまだ子供だよ」
 オレは笑って答える。

第一話 ( No.4 )
日時: 2011/01/15 11:29
名前: 雷燕 ◆bizc.dLEtA (ID: l2k0mPFo)

 二人で話していると、石の塊の向こうから声がした。
「おーい、こっち来てみろよ! 何か書いてあるぜ!」

 オレ達は走って彼の元へ向かった。
 シュウはオレ達がいた場所とは反対の位置にいて、そこは建造物の日陰になっていた。こちらを見たシュウが指差した先には、確かに何かが書いてある。ただかなり上の方に書かれているため、ここからでは読めない。

「シュウ、登って読んで来いよ」
 オレは当たり前のように言った。当然、驚いたのはシュウである。
「おれ?」
「お前。さっさと行って来い」
 有無を言わせぬオレの言葉に、シュウは横の石の塊を渋々と登り始めた。小柄なだけあって、石の突起を使って身軽に登って行く。そういえば、突起が多く登りやすい形をしている。シュウは三人の中で木登りなどは一番得意だ。それを知っていなければあんなこと言えたものか。

 シュウがだいぶ高いところまで行くと、下を向いてオレとレオンに言った。
「読むぞー! 『ここにたどり着いた勇気ある者へ。最高の宝を手に入れたければ、決して開かぬ扉を開けよ。入り口は、陰の昇る夜にのみ開かれる。K.J.』——だってさ。どういう意味?」
 オレは思わず笑顔になった。ん? 「なった」ということは、今までオレは真剣な顔をしていたらしい。……シュウを心配しているのが、顔に出たか。
 まあそんなことはどうでもいい。本当に、本当に——

「本当にK.Jって書いてあるのか?」
「うん。書いてるけど」
 シュウが器用に降りながら言う。すると、オレは思わず声を上げた。
「すげえよ! とんでもないお宝見つけちまったかもよ。相当な額の何かかもしれない。絶対手に入れようぜ!」
「いや、まずは誰か大人に言うべきじゃないか?」
 すかさずレオンはブレーキをかける。ケリーは面白そうなことに目がない。好奇心と友のためなら喜んで死ねるような人間だ。何をしだすか分かったものじゃない……とでも考えているのだろう。悪いがその通りだ。

第一話 ( No.5 )
日時: 2010/12/29 13:20
名前: 雷燕 ◆bizc.dLEtA (ID: buJGQ2Tw)

 ただ今回は話題が悪かった。シュウが食いついてくる。
「それ本当か、ケリー?」
「恐らくは。つーわけで今回は堅いこと言わずにいこうや、レオン。子供向けの可能性も高いんだし」

 ここに来る前にオレが(レオンの家の本やレオンの家のパソコンで)調べた情報によると、K.ジョウンはかなりの子供好きだったという。さらに、ここへ続く洞窟はオレ達が通ってきた洞窟の他にももっと広い道があったそうだ。しかしそこは意図的に塞がれており、先へは進めない。
 だからここへ来るためには、先ほど三人が通ってきた子供がやっと通れる程の狭い洞窟を通るしかない。つまりこれは、子供に来てほしいのでは?
 ——と、来る前に三人で推測していた。

 迷っているレオンの顔を覗き込むと彼と目が合って、
「——分かったよ。ただし、危険だったらすぐにやめるからな」
レオンが折れた。

 先の事を案じているであろう彼の横で、シュウはまたどこかへ行き、オレは目の前の石の塊を写真に撮り始めた。オレはカメラなどもっていないので、レオンの最新のデジタルカメラだ。そんなものを買う金はオレやシュウには無い。
 たまに写真を見返すと、今までやってきたことが無茶ばかりで面白い。この前の洞窟探検で上から大きな石が落ちてきたことがある。
 そのすぐ近くにいて、よもや死ぬところだったシュウの驚いた、そして恐怖に満ちた顔もしっかり撮られていて、後で大笑いしたのを覚えている。今あの状況を考えると笑えないが。

 そんなことや、他にも森の奥で見つけた珍しい動物の写真や遠出して海に行ったときの写真なんかも入っている。二人がいてくれるおかげで、本当に毎日退屈しない。

 今回も、どうか最高の思い出ができますように——

 オレは、信じたことも無い神に向かって祈った。

第一話 ( No.6 )
日時: 2011/01/02 15:48
名前: 雷燕 ◆bizc.dLEtA (ID: ThA8vNRQ)

「ほら、ここ。やっぱりこれのことだよ」

 レオンの家で、レオンが言った。部屋中に本棚が置かれ、隙間なく本が並べられた部屋。本棚と本棚の間に、三人はいる。
「さすが! 伊達にまともな教育を受けてきたわけじゃないな」
 唯一の少女、もといオレが言った。
「その冗談、笑えないからやめてくれないか」
 レオンは苦笑する。確かにオレやシュウは年に見合った教育を受けていないが、レオンにとっては考えたくないことの一つらしい。

 そんなレオンが手に持っているのは、K.Jの代表作。親に読めと言われて前に読んだことがあるそうだ。オレはうっすらとしか知らないが、(オレなんかでもうっすらとなら知っているが、)確か主人公が妖精に出会ったことをきっかけに冒険に出るという類のファンタジーだった。
 その中の一場面で、開かずの扉を進もうとする場面があった。主人公はそれを、魔法で壊して先へ進んでいる。魔法はよくある、火の玉を相手にぶつけるもの。

「でも、オレ達魔法なんて使えないぜ?」
 オレが言ってみると、レオンは当たり前だろ、と頷いた。
「そんなにすぐに分かるものでもないだろう」
「でも、やっぱり分かりたいじゃないか」
 シュウが言う。そりゃそうだ。分からないものは置いといて、次の「陰が昇る夜」とは何なのかを話してみる。これも、レオンが手がかりを見つけてくれた。それも、本だった。

「K.Jの画集だ。この中に、『陰の昇る夜』という絵があるんだ。夜の風景画なんだが、星は出てるが月が出ていない。つまり、新月の夜ってことだろ。でも実際新月は朝の六時くらいに昇り始めて夜の六時くらいには沈んでるから、『陰の昇る夜』なんてのは……」
 後半の現実主義者の呟きは聞き流した。

 K.Jは、画家でもあった。小説家であり、画家でもあり、さらには楽器も万能だったと言うのだからたまらない。K.Jを知るほとんどの人間が、彼の才能に嫉妬していることだろう。嫌っている人も多いはずだ。
 オレも嫉妬していると言う面では例外ではなかったが、彼のことは好きだった。彼の描く絵は大好きだからだ。彼の華々しい人生とは裏腹な、どこか陰のある雰囲気に引き込まれる。

「それにしても、案外簡単だったじゃないか」
 率直だ、と呆れたオレはこう言った。やはり、子供が見ることを想像していたんじゃないのか? それとも、せっかく残したものだから見つからないまま、というのが嫌だったのだろうか。

 それから三人で、他の人に話すかなど、これからどうするかを話し合った。そして最終的に(レオンは不服だろうが、)シュウの出した、また明日洞窟に行ってみるという意見で一致した。おそらくシュウはあそこに行くのが楽しいのだ。それと、家に少しでもいたくないのだろう。
 明日やることが決まったので、レオンは立ち上がって、本を片付けた。
「もう遅いし、二人とも帰れよ。送ろうか?」
 おお、気が利くな。ありがとう——などと言っているシュウはお構いなしに、オレは苦笑しながら答える。
「いいよ。見送りなんて」

 そして三人で廊下に出た。

第一話 ( No.7 )
日時: 2011/01/15 11:44
名前: 雷燕 ◆bizc.dLEtA (ID: l2k0mPFo)

 廊下は、あまり派手に飾り付けられているわけではないが、広く清潔でいくつもの部屋につながっているおかげで裕福なことが容易に窺える。レオンの父親は有名な資産家だ。シュウやオレからするとこんな家に土足で入ってきていいものなのか、と思ってしまうものだ。
 二人ともレオンの家に来ることはあまりないので、つい周りが気になってしまう。といってもきょろきょろと周囲を見ていたのはシュウだけで、オレはそんなみっともない真似はしなかった。というよりできない。

 玄関につくと、レオンは懲りずに言う。
「でも、危ないだろ。やっぱり……」
 いい終わらないうちにオレは遮った。
「いいって。危ない状況なんて、今まで何度突破してきたと思ってるんだ?」

 俺は大歓迎だぜ——などといっているシュウの横で、レオンは諦めたようだ。あくまで女扱いはするなということを察してくれたらしい。まあ、前々からずっと言っていることなので今更だ。
 夜道の女の一人歩きが心配なのは仕方ないかもしれないが、あまり心配しすぎるのがオレに対しての侮辱にもなることは重々承知しているはずなので、そんな野暮なことはしない。途中まではシュウもいるし、大丈夫だ。

「——じゃあまた明日。気をつけてな。もちろん、シュウも」
 レオンがそういってシュウに笑いかける。すると、ふてくされていた顔がすぐにいつもの笑顔に変わった。
「またなー!」
「明日はいつもの場所に集合な!」
 待ち合わせ場所を決めるのは、いつもオレだ。

 実はオレは、そろそろこんな周りに迷惑をかけてばかりの生活は終わろうと思ってる。周りの奴らを見返そうと思ったら、いい加減に勉強というものをやらなければならないと思う。そろそろというか、今回のことが終わったら二人にも話すつもりだ。
 レオンは賛成する。分かりきっている。問題は、シュウだ。そんな話をしたら何と言うだろうか。とりあえず、賛成はしてくれそうにない。でも、たとえシュウが嫌だと言おうと、オレは気持ちを変えない——


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