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神々の力〜選ばれた者たち〜
日時: 2010/12/26 23:03
名前: ryo-2-1 (ID: pbINZGZ2)

初小説です!
至らないところもあるかと思いますが
どうぞよろしくお願いします

神の力を手にした若者たちのバトルものにしたいと
思ってます

現時点での登場人物です

柊良介(ひいらぎりょうすけ)
 『ガブリエル』に対応している。良介自信は天使間どうしの意思疎通が可能になったらしい。暴走時には『無帰』と呼ばれる天罰が使えるが、詳しいことは不明。

迎久留巳(むかいくるみ)
 主人公の幼なじみ。五年前の事件で両親を失っている。

アリス・クロッド
 『コカビエル』に対応。天体を司る。天性(オリジナル)の1人。

虚像世界(クライキープ)
 スターゲート計画の現時点での最高傑作。実験固体(シリアルナンバー)の1人。対応している天使は『ウリエル』

Dr.桐原
 天性(オリジナル)の1人。対応している天使の名前は不明だが、再生を司っているらしい。

柊豪卯
 良介の実の祖父にあたる。オペレーション・スターゲートの最高責任者でもある。さまざまなことに詳しいが、自身も適格者であるかどうかは不明。本心を明かすことは良介にも決してしない。

燃えて行きますよー

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Re: 神々の力〜選ばれた者たち〜 第5話:暴走 ( No.6 )
日時: 2010/12/23 14:22
名前: ryo-2-1 ◆/oAS1KZo5E (ID: uMmok.3B)

 力と力がぶつかる。世界から音が消える。光が消える。それでも2人はぶつかり合う。

「ぉおお!がァああああああああああああ!!!!!」

(こいつ、想像以上に『ミカエル』の力を引き出して・・)
血しぶきが舞う。だがその量は圧倒的にクライキープのほうが多かった。

「やりゃあできんじゃねぇか。でもその程度じゃまだまだオレには届かな・・」

バキィっとクライキープの顔面に拳が突き刺さった。

「がっ!はぁッッぁ!?」
直径200mある闘技場のほぼ真ん中から一直線に壁まで吹き飛ばされる。
(こいつ・・・力を引き出せてなんかいねぇ。ただがむしゃらに振り回されてるだけでこれほどの・・)
だが最後まで思考をさせるほどの時間もなかった。柊は100mもの間合いを1歩で詰めるとそのまま片翼でなぎ払おうとする。

「なめてんじゃねぇぞォォおおお!」
クライキープの絶叫が響く。赤褐色の片翼を床に当てて一気に天井高く飛び上がる。
(なめやがって・・水蒸気がこの部屋にある以上、オレの勝ちはゆるがな・・)
と、急にクライキープの天地が逆転した。

勢いよく地面に叩き落される。
「ごっ・・・・・・がァァぁぁぁ!!?」
これまで体験したことのないような痛みが全身を縛り付ける。

だが、同時にクライキープは疑問を覚えた。
(こいつはオレの水蒸気を操る攻撃に似てやがる。本質は違うみてぇだが・・・・)
そのまままっすぐ柊とかいう少年を睨みつける。

(まさか、あいつも『ガブリエル』と同じ力を扱えるってのか!?『ミカエル』ならなんでもありかよ・・・!?)

とはいえ、ゆっくり考え事をしているだけの余裕もない。見れば青白い片翼は大きさを増している。さながら狂気をえさに拡大しているように見えた。
「ぉぉぁぁああああああああ!!!!!」
けたたましい声を上げて少年はこっちに向かってくる。

もはや声が聞こえているかもわからない柊にそれでもクライキープは言葉を続けた。
「どぉやら実験固体(シリアルナンバー)のオレには所詮テメェは倒せねぇみたいだな。けどよ・・・」

その時、確かに柊の動きが止まった。

「あのガキ使ってテメェのココロをぶっ壊すことはできんじゃねぇのか!?ぁぁぁああああああああ!?」



柊はその時声を聞いた。
(久留巳が・・・あぶない・・・・・・・・?)
それだけははっきりとわかった。そしてそれだけわかれば十分だった。今度こそクライキープの息の根を止めるために片翼を振るう。超能力者だろうが生き物を叩き潰すには充分すぎる力だ。だから柊は迷わない。迷う必要がなかった。なのに・・・

「もうやめてぇぇえええええええええ!!!!!!!」
久留巳が目の前に立ちふさがった。
その存在は柊が力を欲する理由そのものだった。彼は彼女のために力を欲した。しかし、肥大しすぎた彼の『力』を止めるには、もはやそれさえも小さすぎた。

 ごぶっ、と肉をえぐる音がした。それはクライキープのものでも、ましてや柊のものでもない。柊は血に染まった自分の手を見る。それは今まで必死に守り続けていたものの血で染まっていた。だが、不思議と罪悪感はなかった。ただ今まで縛り付けられたものから開放されたことによるこの上ない喜びだけがあふれていた。なのになぜか涙があふれる。うれしいはずなのに。悲しいはずなんてないのに。なのにナゼ?

「うっ、うゥゥァァああああああああああああああああ!!!!!!」

 そして第二の覚醒が始まる。

Re: 神々の力〜選ばれた者たち〜 第6話:対応する天使 ( No.7 )
日時: 2010/12/24 14:03
名前: ryo-2-1 ◆/oAS1KZo5E (ID: 3xFJQilA)

 たとえようのない威圧感がまわりにひろまる。自分がここに存在していることに対する恐怖すらも与えてくる光景だった。つまりそれが天使。神に仕えるもの。信仰の強い研究者の中には頭を下げるものまで現れ始めた。

(ついにここまできたか。オペレーション・スターゲートも第2フェイズに移行した。あとはあれをうまく制御できれば第3フェイズへの準備が整う・・・・・・)

柊豪卯(ひいらぎごうう)は厳重に守られた闘技場最上位VIP室で1人策略を始める。


 あれは一体ナンダ?
アリス・クロッドはDr.桐原とともに頭に浮かぶ疑問をぬぐえていなかった。報告では柊良介は大天使『ミカエル』に対応していたはずだ。なのに彼から生えている片翼・・いや、今は両翼になりかけているそれは、おぞましいほどに青かった。

(青は『ガブリエル』の象徴じゃなかったのか!?まさか・・・!?)

だがその疑問を感じていたのは虚像世界(クライキープ)も同様だった。
(ありゃあどう考えても『ガブリエル』だ。間違いなく四大天使の一部を身体に宿しているオレにはわかる。じゃあオレはいったいなんだってんだ!?)
水蒸気を利用してこれまで闘ってきたクライキープは絶望を感じずにはいられない。

(そぉいやぁ前から何でオレの片翼は赤褐色なのか疑問に思ってたんだ。豪卯のヤロウが気にするなって言ってたから気に止めなかったッていうのによぉ!?)

だがもう遅い。柊は有無を言わさずこちらに突っ込んできた。あの得体のしれない翼をあおりながら。クライキープは己の死を確信する。

だが、いつまでたってもその命が消えることはなかった。

(・・・・・・・・・・・・・・・・・!!??????????)
間違いなく自分は死んでいたはず。だが身体には以前の感覚が残っている。恐る恐る目を開けると・・・・

天使が見エタ

はぁ?と思わず気の抜けた反応をしてしまう。だが違う。これは今まで押さえつけてきた何かが崩壊する気持ちだった。涙があふれる。でもそれは決して幸せからでるものではなかった。

「sajoeah..eaoha」

天使が何かをしゃべる。それは人の言葉ですらなかったけれど、クライキープには何が言いたいのかわかった気がする。

お前ハ『ウリエル』だ、と。

 今まで抜けていたピースがはまる感じがした。赤褐色の片翼は激しい後光とともに真っ赤に染め上がる。それは赤としか言い表しようがなかった。人の心をまとめて浄化する。そんな信念なるうつくしい色だった。

だが同時にその翼は語っていた。この『力』は今は闘いのために使うべきではない。天国への案内役を勤めたワタシのように、あの者ヲ導け、と。

おもしろい。クライキープは素直に考える。この際自分が『ウリエル』だろうが何でもいい。今まで水蒸気を利用できていたのも、『ウリエル』の気象や自然現象を司るという特性のおかげだろう。だが、『力』を手にすることさえ、目の前のクソヤロウをぶちのめす『力』さえあれば後はもうどうでもよかった。天使からの命令なんぞ関係ない。そんな瑣末ごとは他の実験固体(シリアルナンバー)にでも任せておけばいい。そんなことを考えていたが・・

おかしい。確かに『ウリエル』に認められたはずなのに、片翼のままだ。これでは本来の3割の力も引き出せていないだろう。
(なんだ!?何がたりねぇってんだよォぉお!?)

クライキープは思わず目の前の少年を見る。彼自身は完全に自我を失っているだろう。『ガブリエル』は神の力の象徴だ。そんなものが地上に堕ちてくれば、文字通り世界が終わるかもしれない。

柊、いや、『ガブリエル』はゆっくりと頭上を見上げる。「神のメッセンジャー」という特性を利用したものであろう全人類への叫びが響く。


 人類が体験する2度目の『無帰』発動まで、既に5分を切っていた。

Re: 神々の力〜選ばれた者たち〜 第7話:制御 ( No.8 )
日時: 2010/12/25 13:36
名前: ryo-2-1 ◆/oAS1KZo5E (ID: 3xFJQilA)

 柊豪卯はそんな若者たちを見てため息をついていた。
(まったく。やはりあやつらでは大天使の0.1%の力を引き出すのが限界か。これ以上『天使の力』を注入すれば肉体が崩壊するのが目に見えておる。ここらへんで強制的に『無帰』を発動させて力の定着化を図った方が合理的か・・)

「技術班、さっさと自分たちの仕事をしろ!最初の目標はウラジオストクだ。」
あわただしく運命が動き出す中、豪卯だけがこの世界に心酔していた。


力があるからこそ倒せないとわかることもある。クライキープの感情はまさにそんなかんじだった。
(こうなっちまった以上、本来の仕事を遂行したほうがオレのためになりそうだな・・・だがどうする?どうやってあんな力をやつに制御させる?今までの適合者とは違って天使を宿してはい終了ってわけにはいかなかったんだぞ!?それ以外のやりかたなんざ豪卯のやろうからは何も聞かされてねぇぞ!!)

クライキープも本来の仕事といえば、『天使の力』を適合者の肉体に召喚することだ。自信の大きな力にうまく引き寄せられてこれまでは何事もなく成功していたが、相手がこちらと同じ、いや、それ以上の大天使である以上、そう簡単にはいかないだろう。

「ちっ!Dr.桐原!!豪卯のやろうは何か言ってなかったのか!?こいつを手玉にとる方法ってのをよぉ!!」

「今聞いているところだ!!」
しばらくの沈黙の後・・・
「・・・・・・・・・・・豪卯さんが直接ここに来るらしい。君はそれまで彼を足止めしろとのことだ。」

ふざけやがって、とクライキープは毒づいた。まともに張り合えないのはあいつだって知っているはずなのに。

「まぁいい。足止めもできないんじゃ実験固体(シリアルナンバー)最高傑作の名が泣くよなぁ!!」

ごぅ、とクライキープの周囲の大気が渦を巻く。『気象や自然現象を司る』という特性を知った以上、能力の活用の幅は自然と増えてくる。不規則に吹き荒れる風の中に水蒸気の爆弾を無数に紛れ込ませる。

「烈炎風弾ってところかぁ?我ながら足止めには最適な技じゃねぇか」

だが、『ガブリエル』からの反応がない。
(よける必要性する感じませんってのか!!なめやがってェえ!!!)
水蒸気を一点に凝縮し、極小の雷雲を生み出したクライキープは雷撃を『ガブリエル』に向けて一直線にうちだした。吸い寄せられるように雷撃の槍は向こう側の闘技場の壁まで破壊して突き進む。
(威力だけなら本物の雷の5倍ぐらいいったはずだ。これで無反応ってんならオレにはもう打つ手がねぇぞ!!)

しかし、その『まさか』が実際に起こった。
『ガブリエル』は何か青黒い球状の物質を生み出す。
こんどこそクライキープは己の死を確信する。これが『天使』にさからったものの受ける罰なのだろうか?

青黒い物質は急に光り輝くと、闘技場にいた全員の視界を奪った。


━━━━━あれからいったいどれだけたっただろう。10秒かもしれないし、10分かもしれない。とはいえこれだけはわかった。『地球のどこかの都市の命が根こそぎ奪われた』そんな漠然とした感覚だけがいやな汗をにじませる。
目の前にはあの男が立っていた。
自分たちをこんなバケモノにした張本人が。悠然と立っている。

「ウラジオストクの住人約50万人分の『器』を良介の身体に流し込んだ。これで『ガブリエル』の力に振り回されることもないだろう。あの都市は極東に位置して日本にも近い。いい宣戦布告にもなるはずだ。」


 そしてここに新たなバケモノが生み出された。

Re: 神々の力〜選ばれた者たち〜 第8話:真実 ( No.9 )
日時: 2010/12/26 22:58
名前: ryo-2-1 ◆/oAS1KZo5E (ID: pbINZGZ2)

 ━━━━━━━━ここは、どこ?
 うっすらとする意識の中久留巳は必死に重たいまぶたを開ける。自分はどうなっていたんだろうか・・・確かりょうちゃんといっしょに『下』の闘技場みたいなところにいって・・・

はっ、と自分の置かれた状況を思い出す。彼は何か大きな力に振り回されていたのではなかったのか。そしてそれをとめるために自分は・・・
思わずその名を叫ぶ。
「りょうちゃん!?だいじょうぶなの?どこにいるの!?」

と、後ろからぼふっ、と何かがかぶせられた。

「ったく、うるせぇなーもう。りょうちゃんはやめてせめてりょうくんにしろって何度も言ってるだろう?」

聞き覚えのある温かい言葉が耳に響いておもわず涙がこぼれる。
「よかった。無事だったんだね。りょうちゃん・・」

「! ばか、泣くんじゃねぇよ。みっともないだろうが。」
そうはいいながらもしっかり抱きしめてくれるところは昔と変わっていなかった。

ただ、昔と変わっている状況もあった。
60代前後の老年がすぐ近くに立っている。その事実がひどく久留巳を不安にさせた。まだ、あの地獄は終わっていなかったのか?
忘れてしまいたい記憶が再び戻りそうになる。

「はは、そうこわがらんでもええだろう。わしは柊豪卯。良介の実の祖父にあたる。なんなら『おじいちゃん』と呼んでもらってもかまわんよ。」
気楽に話しかけてくれた。思わず緊張がほどけそうになる。が━━

「気軽に話しかけてんじゃねぇぞ。くそじじい。てめぇなんざ祖父でも何でもねえんだよ!!」
思わず久留巳は身を引いてしまう。良介はあの力に振り回されていたときも、もっと恐ろしい形相をしていた。

「まったく。祖父に向かってその口の聞き方とは・・あやつらはいったいどんな教育をしておったんだ。・・・・・それにしても、その様子ではしっかり『ガブリエル』は定着したようだな。『無帰』を発動させただけでこれとは、案外他の大天使も楽にいけそうかもしれん。」

「さっきから気になってたんだけどよ。」
良介が口を開く。
「何であんたがここにいるんだ?『下』にもぐって優雅な生活を送っていたんじゃなかったのかよ?」

「そりゃ豪卯さんがここの最高責任者だからだろうが。」
後方から別の主の声が届いた。この声は・・・

「虚像世界(クライキープ)か?」

「せーかい。んなことよりさっさと状況の説明をすませちまったほうがいいんじゃないのか?豪卯さんよ。」

「そうだな。ではどこから話そうか。まぁ、私の目的といったものから話しておこうか。」
ふむ、と豪卯は一呼吸置いて、続ける。
「ばっさりと言ってしまえば『神の召喚』といったところか。そのために四大天使を全てそろえる必要がある。」

「まて、四大天使がそろったからって、何で神が出てくんだよ?」
良介はすかさず質問を入れる。

「簡単な話だろうが。四大天使は神の御殿に使えるものたち。つまりその逆も言える。」

「四大天使がいるところが神の御殿になるってことだぜぇ。」
不意に第3者が入ってきたが、声の主はすぐにわかった。

「クロッドか!?生きてたんだな!」

「あはは、勝手に人を殺すな。」
クロッドは笑っているが、話に横槍を入れられたクライキープは今にも殺してやる、と言った顔でクロッドをにらみつけている。

こんなとこにはぜってー住めねえな。と、ひそかに心に誓った良介は話をもとに戻してさらに聞いた。

「じゃあなんでこんなに能力者がいるんだ?その言葉どうりなら4人で充分なんだろ?」

「そのとおりだ。だが一度目覚めさせるまで誰がどの天使に対応しているかがわからんのがこの計画の欠点でね。」

「そおいや、おやっさん。だいぶ前から気になってたんだけど、なんで柊君は『ガブリエル』だってわかったんだ?」

その呼び方はやめろと何度もいっておろうが!っとクロッドを一蹴したところで豪卯はこう告げた。
「なぁに、簡単なことじゃ。『ガブリエル』は『神のメッセンジャー』なのだよ。いくら人の中に入り込んでいるからと言って自らが発する電波のようなものは消しきれんのだ。そして同時に、今は良介にもその力が備わっている。天使間の意思疎通程度しか無理だろうが、わしの計画にはそれで充分だからな。他にも理由は多少あるが、これ以上重要なことはない。」

つまり、と豪卯は付け加える。
「おぬしに残りの『ラファエル』と『ミカエル』を探してきてほしい。
というわけだ。かわいい、祖父のためにひとはだ脱いでくれんか?良介。」

「だぁってろ。」
一口で切り捨てた。

「まぁまぁ、柊君。おやっさんが嫌いなのはわかるが君の協力は僕たちの未来にもかかわってくるんだ。頼むよ。」

「そういやクロッドさん。確か俺たちを救ってみせろ、みたいなこと言ってましたよね。それと何か関係あるんですか?四大天使が集まらないと他の天使の適合者は死んじまうとか?」

「あはは、それはないよ。それに正しく言うなら適格者かな?まぁとにかくそれのせいで俺たちが死ぬことはありえない。一応これは神様のご加護みたいなものだしね。」

「簡単な話だ。これを最初に立案したのはどこかよぉくその小せえ脳みそでよぉく考えてみろ。その程度もわかんねぇならオレは本格的にお前に失望しちまうよ?」
クライキープがすえおそろしい笑みとともに語りかけてくる。

あんなのと闘うのは2度とゴメンだね。うん。本日2度目の誓いを立てる良介。と、

「まってまって。私だけ話しについていけないよぉ〜〜〜〜〜」
久留巳がだだをこねてきた。よい子は聞いちゃいけないんだよ、と笑顔で諭していると・・

「いいや、その子にも聞いてもらっていたほうがいいだろう。彼女も何らかの適格者だからね。『おじいちゃん』として、わしがしっかり面倒を見てやってもいいが、良介もこの子とできるだけ一緒にいたいだろ?」

「どういうことだ!?まさか久留巳も俺と同じような目にあうのか!?」

「はやとちりするな。少なくとも天使の適格者ではない。おそらく神話の神か何かだろう。とはいえ、現時点ではそういった症例は少ないからな。具現化する方法は、はっきりとはわからん。」

「だったらわざわざ巻き込むことはないだろ!!」

「いいや、そうとも限らん。神々の力は人に宿った以上、適切な対処をしないと寿命を縮める可能性が高い。ならどうするのが最も得策か。優秀なわしの孫であるお主ならわかるだろ?」


 世界は望まなくても進んでいく。これは前進か、それとも・・・

Re: 神々の力〜選ばれた者たち〜 第9話:出発と女 ( No.10 )
日時: 2010/12/29 15:09
名前: ryo-2-1 ◆/oAS1KZo5E (ID: fS.QmYjo)

 「こちらA3。爆破準備は滞りなく進行中。B2そっちはどうだ?」

 「こちらB2。こっちも問題ない。さっさとすまして帰ろうぜ。」

 「こちらD1。まったくお前らは緊張というものがないのか。ロシアの行く末を左右する重要な任務なんだぞ。」

 「わかってますよ隊長どの。日本のバカに流れたあの資料を回収するがぶっつぶせばいいんでしょ?」

 「そうだ。くれぐれも気を抜くなよ。」

 『了解!』



 闘技場がずぅん、と音をたてて揺れた。
「なんだ!?」
良介はあわてて周囲を確認する。揺れのもとは地上だろう。

「あんずるな。予定通りだ。今ここにはロシア軍のコマンド部隊が攻めてきておる。」
コマンド部隊て・・・・そこにすかさずクロッドが突っ込む。
「いやおやっさん、そりゃ大事件だろ。今までにもミサイルで狙われたことは多々あった。でも部隊がそのまま攻めてくるってのは異例だぜ?


「なぁに。オレがいればあんなやつら1人で大掃除できる。どうする豪卯さんよ?」

「うむ。そうしてもらいたいのはやまやまなんだが、クラキーには別の仕事を頼みた・・」

「クラキーって言うなやぼんくらぁあ!!」
豪卯に天誅が下る。じじい、それは自業自得だぞ。

「ま、まったく。義理の親を殴り飛ばすとは・・・最近の子はこわいのう。」

「うっせえじじい。ギャグコメはいいからさっさと仕事を教えろ。」
豪卯の背後の空気をあやつってもとの位置に吹き飛ばす。俺のじいさんはもしかしてドMというやつなのではないだろうか。

「むぅ・・しょうがないのぉ。とりあえず良介には旅に出てもらうしかない。ここにいても、もはや安全地帯なんてないからな。もちろん久留巳もセットで行ってもらう。」
久留巳は頭に?マークをたくさんうかべいているご様子。お子様には理解が難しかったか。と、そんな視線を感じたのか
「りょうちゃん!さすがの私でも今が危ないってことぐらい理解できてるんだよ!」
はいはい、そーですね。と適当にいなしながら豪卯にこう切り出した。

「旅に出るのはかまわないけどよ。具体的にどこ行きゃいいんだ?まさかまだはっきりとはわかりませんとかいうんじゃねぇだろおな。」
上では爆発音がどんどん近くなっているのがわかる。のんびりしている時間はないのだが・・・

「わしもはっきりとは知らん。」
その場の空気が凍りつく。
「いや待てまて。それは『ガブリエル』にしか分からんのだ。天使通しのテレパシーでだいたいの居場所はつかめると思うが。良介、何か気配を感じたりとかはないのか?」

「言われてみればさっきからへんな胸焼けみたいなのがするな。誰かから呼ばれてるみたいだ。」

「りょうちゃんエスパーさんになっちゃったのー!!」
いや久留巳、それなんか違うぞ・・

「ふむ。ならそれに従って行動したまえ。わしには一切関与できん領域だからな。」

「んじゃあオレはあのガキと一緒に行動すりゃあいいのか?」
激しく拒否したい、と俺は神に祈る。

「いや、クラキーには別の仕事を頼みたい。良介とは別行動をしてもらい、目立ったアクションを起こすことで良介たちへの注意をひいてくれ・・」
ばきぃっとクラキーのけりが豪卯の腹につきささった。何はともあれナイスだじじい。クラキーといっしょに行動なんて死んでもごめんだぜ。

ダウンからもう復活した豪卯はクロッドを見てこう言った。
「良介の旅のおともにはお前を任命する。お前の天体を司る能力は微弱とはいえ、『ガブリエル』の力になるだろう。」

「了解したぜおやっさん。この子たちの命は俺が預かる。」

「んじゃあオレはもうそろそろ行くぜ?感動のお別れをしたいやつなんていないしな。」
クラキーが一足先に立ち去ろうとする。

「まぁまて。お前には今連中の迎撃にあたってる実験固体(シリアルナンバー)といっしょに行動してもらいたい。彼女がミッションを終了させるまで待機。」

「はぁ?あんたが別の仕事を頼みたいっていったんだろぉが。」

「話の途中で暴力に訴えたのはどこのどいつじゃ!だいたいの事情を把握していて欲しかったっていうのに!」

「あっそお、なら最初からそう言ってくれませんかね。」
そこでクラキーは何かに気づいたように豪卯に詰め寄ってこう言った。

「待て。『彼女』だと?そいつは男じゃねぇのか?」

「おや。思春期の男の子にはきつかったかの?まぁ実力は確かだ。そう心配せんでもええ。」

「まさかおやっさん、あの子をクライキープに同行させるつもりですか!?」

「本人の希望なんだからわざわざ断る道理もあるまい。反論は認めんぞ。」


 ロシア軍兵士たちはそのとき悪魔と闘っていた。彼らは文字通り地獄のような場所で今まで戦ってきたが、これまでとはあきらかに何かが違う。相手が人間であることすら疑ってしまう。しかもそれは女だった。

 彼女は虚像世界(クライキープ)の運命をどう変える!?


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