ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- 嘘吐きデスパレート
- 日時: 2011/02/21 22:10
- 名前: らう ◆ylmP.BhXlQ (ID: WPWjN3c4)
絶望だなんて、ここにはない。
在るのは、嘘だけだ。
◆
00.川澄都子×長沼真人= >>
01.白岩沙世×川澄都子÷雨森梨絵= >>
02.近状報告-浅沼都子×黒住真人- >>
◆
どうも初めまして、らうと申します。
文才のへったくれもないヤツですが、のんびりやっていけたらなあ、と。
更新速度はきっと遅いと想います、ごめんなさい。一話一話の長さもまちまちです。
生温い目で見守ってくれれば嬉しいです。
ぼやき。(2/21)
残念ながらしぶとく生きてました、お久しぶりですらうです。
ストーリーは見えてるのに執筆が進みません´・ω・`
月1でも更新できたらいいなあ。完結させたいっす。
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- 00 そのさん ( No.3 )
- 日時: 2011/01/19 21:30
- 名前: らう ◆ylmP.BhXlQ (ID: WPWjN3c4)
「遅いぞ、長沼真人」
「え」
教科書詰め詰めな重い鞄を肩に引っさげて校門をくぐった、そのときだった。透き通った、耳に馴染んできたころの、ひんやりとして心地良い声が耳に触れる。なんか変な意味で捉えられそうだが、あくまでも率直な感想を述べただけである。他意など一切無い。まあ、生まれてから十六年間、残念なことに一度も恋とか経験したことないからなぁ。
なんて回想にふけってしまいそうな思考はどうでもいい。さて、どうして川澄都子が俺を待っているのだろう。恐らく、俺を待っていると解釈していいはずだ。現に俺の名前を呼んだし。俺の目を見て。そういえば初めて目を合わせたっけ。目も綺麗なヤツだな。別に目に綺麗だとか汚いなんてあるかどうかには個人差があるだろうし、嫉妬なんてしなかったが。というより女の目が綺麗でそれに嫉妬するってどうなんだ。
「待ちくたびれた。全くお前は、放課後の教室に残って何をしているんだ?」
「いや……とりあえず、なんで俺を待ってるわけ」
事態が少々つかめずじまいなので、いつもの俺には似合わず遠慮がちな声音になってしまう。俺を待つ必要がどこにある。大した会話を交わしたことのない、阿呆らしいやり取りを五日前から四連続で繰り返しただけじゃないか。昨日の川澄からは、全くもって想像できない。川澄からの言葉を待っていると、淡い赤色の唇で、川澄は囁き声にも満たない儚い声を紡いだ。
「——君を守りに来た」
どこのファンタジー展開なんだ、なんて突っ込むことはしなかった。むしろ、できなかった。川澄の目は至って真剣で、いつもは不安定にぐらぐらと揺らいでいるその瞳はいまやきっちりと俺の目に焦点が合わせられている。どう反応すればいいものか。正直、困った。守りに来た、なんていわれても。ファンタジーや小説や漫画の中の世界じゃ、あるまいし。
そういぶかしんでいると、彼女は言った。俺に初めて、笑顔を見せて。綺麗な綺麗な、どこか妖艶ささえ漂わせる余裕に満ちた明るい笑顔で、言った。
「長沼真人、君は危ない」
危ない。つまりそれは、今から俺が車に撥ねられたり誰かに突き飛ばされてこけて打ち所が悪かったり、はたまた銃殺でもされるというのか。いや、まあありえない話ではない。けれどもそれは川澄が知りうることではないわけで。未来予知の能力でもない限り、そんなことがあったら今すぐにでも警察に駆け込みたい。なんだ俺、もしかしてファンタジーの世界にでも飛ばされたのか。
もしそうだったら、俺は主人公になるか、主人公の使えない序盤だけしかメンバーに入れてもらえない仲間になるか……もしくは、わけのわからず主人公にこの世界の危機を伝えるためだけに気持ち悪い魔物にでも惨殺される空しい役柄か。どちらにしても俺なんかが主人公になって魔王退治でも命じられたら、もうその世界は滅びたも同然だな。無念。
「もうすぐ君を、刃物を持った白岩沙世が襲いに来るよ」
それはまた、突飛な展開で……白岩沙世って誰だっけ。少なくとも聞き覚えは無い、はずだ。とはいえ人の顔とか名前を覚えるのは苦手だから、もしかするとどこかで顔を合わせていたりするかもしれないけれど。とりあえず今は、知らないということで通しておこう。問題はそれよりも、刃物を持って襲いに来るっていう部分か。なにか、今世界はウイルス菌での危機にでもさらされてて疑心暗鬼絶賛大発動中みたいな……それだと、俺を狙う理由が不明瞭になるが。あ、その菌を俺は持っているとかとかこれ以上変な方向へ進めていったら収集つかないので、尋ねてみる。
「……それは、冗談? それとも、」
「本気に決まっているだろう。つくづく愚かだな、君は」
罵られた。それにしても本気なら、結構大変なことじゃないのか。川澄が本当のことを言っているという確証は無いけれど、嘘を言っているという確証もなにもない。それに川澄は嘘をつくような人間じゃないはずだ。まともに喋って一週間しか経ってないというのは、気にするところではない。呆れたような表情を露骨に顔に浮かべて、川澄は嘲笑うように言った。
「君は殺されるかもしれないんだ。自覚しろ、それを」
そりゃあ、刃物なんか持って襲われたらひとたまりも無いが。護身術を習っているわけでも、サイボーグなわけでもない。刺されたら、死ぬ。致命傷じゃなくても放置やら何回も突き刺すやらしていると、あっけなく人間は死ぬ。簡単に、赤子の手を捻るより簡単に。殺されるかもしれない。なんだか新鮮な言葉だと、ぼんやりと思った。
珍しい。いつものマイナス思考が発揮されず、落ち着いてむしろコミカルに事を捕らえているというのは。なんだか、川澄といると落ち着くような気がする。なんていったら、完璧に好意を持っていると思われそうだ。というより、思われるだろう。事実なのは事実だが、人に言うべきではないと判断しておく。
「雨森綾斗と喋った。その行動が君をどんな運命へ導くか、知っているかい?」
知るわけないだろ。そんな返事をする前に、愉快そうに笑い声を上げて、川澄は言った。
「ヤンデレ乙女に狙われる、最近流行りの展開へ繋がるんだ」
ちょっと待て。俺には同性愛趣味なんかねえぞ!
- Re: 嘘吐きデスパレート ( No.4 )
- 日時: 2011/01/20 18:47
- 名前: 玖炉 ◆Vm6fYGPJtc (ID: Ql2tRr6x)
…ん? あの、はじめまして…?
らうと言う文字を見つけてクリックしてしまいました。あの、もしかしてしほんちゃん?
文章力の高さからしてそう思うのですけれども…間違っていたらごめんなさい。
あっちでは空屡と名乗っております、玖炉です。
話の進み方と言うか語り口につぼりました。みーまーに似てる様な。みーまーと同じ、シリアスだけど語り口にふふってつい笑っちゃう文です。つぼりました(大事なことなのでry
ヤンデレ乙女に狙われる…流行の展開…!?
俺ホイホイですね、分かります←
えっと、更新楽しみに待っております。
頑張って下さい。
- Re: 嘘吐きデスパレート ( No.5 )
- 日時: 2011/01/22 05:43
- 名前: らう ◆ylmP.BhXlQ (ID: WPWjN3c4)
>>くー(勝手にry
ば、ばれた……だと……?←
どうも、らうもとい紫奔ですー。
文章力高くないですおー。べ、別に嬉しくなんか(ry
有難う!なんていうか一人称書くときみーまー意識しちゃうっていうかwwまあ似せてるつもりはないけどねーww つぼったとか有難う、嬉しいぜ^p^
は……流行……だよね?←
ホイホイですかいいよねヤンデレ大好きだ(黙
ちょいちょいワードに書いていってるんで、ワードのほうが進んだら更新します^ω^
コメント有難うございました! 頑張るねー
- 00 そのよん・おわり ( No.6 )
- 日時: 2011/01/24 19:48
- 名前: らう ◆ylmP.BhXlQ (ID: WPWjN3c4)
「あなたが長沼真人さんですか?」
色々と適当にあしらわれ、とにかく無理矢理に一緒に帰路につくことを強制された模様。今初めて知ったのだが、川澄と俺は同じマンションらしい。階は一階と最上階とずいぶんな差があるが、今まで鉢合わせなかったのが不思議なぐらいだった。とはいっても、俺は大体学校へは駆け込み登校である。川澄はちゃんとチャイムの鳴る十分前ぐらいには学校へついているだろうから、逢わなかったのも不思議では……ない、と言い切りたいところだが、それが二年も続いたと考えると酷く不可解だな。
特に会話もせず、並んで歩く。頭の中で賞味していた思考を川澄へと向けてみようかと思った矢先、後ろから高いソプラノの声が聞こえてきた。大人びた、高い声。歌手にでもなれそうだが、残念ながら少し滑舌が悪いような気がする。早口言葉とか一度目でノックアウトだろうな。
後ろへ、振り向く。コイツが川澄の言っていた、“白岩沙世”なんだろうと予測をつけながら。容姿は、本人からは聞いていない。せめて髪の色や長さは教えてくれてもいいだろうに。どうせ見たらわかるの一点張りで、どうやらコイツは無駄なことが嫌いらしいと判断した。何回も同じことを言われるより、最初に説明して納得してもらうほうが時間短縮なんじゃないかとか考えたけれど保留。
「……あ」
見て、わかった。そういえばこんなヤツいたなあ、とぼんやり思い出した。白岩沙世。オッドアイの眼帯少女である。髪の色は淡い紫のミディアム。友人に聞いたような記憶がある。廊下ですれ違って“眼帯かよ”と突っ込んだことがある。完璧に頭から抜けていたが、成る程これなら川澄の言葉通りだ。眼帯してるヤツなんて大していないからな。というか白岩しか見たことがないような。生涯でも。そしてぼんやりと気を抜いていた、次の瞬間。
首筋に、鋭い痛みと骨の髄まで沁みるような冷たさが走った。
「なにがしたいんですか、川澄都子さん」
首筋で燃える痛みに全神経が反応し、はっきりと自覚したことによりさらに痛みが増幅した。白岩沙世の聞き取りにくい声が、耳に触れる。その言葉を、俺も川澄へとぶつけてやりたかった。どうして“俺を守る”と宣言した川澄が、白岩が真っ直ぐに俺に向かって突き出していた刃物を一瞬で奪い、それから何故俺に向けたんだ。向けただけじゃない、実際首筋に刃は潜り込んでしまっている。鳥肌が大合唱するような、感じたことのない圧迫感。
川澄都子は、酷く冷めた目で俺を見ていた。身長的には俺の方が上だから必然的に俺が見下ろす形になるのだが、しかし川澄のその目と合うと——なんというか、逆に俺が見下ろされているような不愉快な感じがする。張り詰めた圧迫感に緊迫感、きりきりと締め付けるような閉塞感。
呼吸を止めた。
音が止んだ。
白岩沙世が動きを止めた。
川澄都子は刃物を握る手に力をかけた。
電線に集っていた鳥達が一斉に飛び立った。
血の気が引いた。
あ、思い出した。
雨森兄だけが残っている教室へと踏み込んだのは、白岩沙世だ。
髪で、なんとなく判断できた。
川澄都子は、聖女の如くたおやかに微笑んだ。
俺は、なんの迷いもなく微笑み返した。
- 01 ( No.7 )
- 日時: 2011/02/22 17:13
- 名前: らう ◆ylmP.BhXlQ (ID: WPWjN3c4)
01.白岩沙世×川澄都子÷雨森梨絵=
「りーちゃん、川澄都子って知ってる?」
艶のある紫色の髪の毛を揺らしながら首を傾げると、白岩沙世はあたしにそう尋ねた。やっぱり滑舌が悪いというのは、とりあえずお空の彼方へ飛んでいかせておこう。顔は中の中、至って平凡。声は凄く綺麗だから、まあ化粧でもすれば栄えるんじゃないか……別に変な意味はなく、ただ思っただけだ。おかしな欲望など全くもって持っていない、生粋の純真な思考だといっておく。しかもあたしは女だ。
川澄都子。私が頼まれても絶対に近寄りたくないと思う数少ない、高校生活で関わりのある人間だった。というのも、虐められているというごくごくありがちな理由からだ。虐められているのに、わざわざ話しかけるなんて蛇が出るとわかっているのに藪をつつくようなものだろう。馬鹿以外の何物でもない行為だと、ぼんやりと思う。そしてあたしはそんなに非情な人間だったっけか、とどこか空虚さを感じさせる疑問がぽつんと芽吹いた。
「……クラスメイトだけど、どうかしたの」
自分でも驚くほど、冷え切った不快感を顕著に表しすぎた声音が出た。もしかしたら怖がられるかもしれないな、普段のあたしと全然違うし。なんて心配を少しだけしたけれど、特に気にかけてはいないのか白岩沙世はいつも通りにあたしの問いかけに返答してきた。図太いとかKYとかいうより、ただ単に無関心なんだろう、この子は。まあアノヒトに一直線だし、仕方ないか。
「あの子さあ、絶対人間じゃないよ」
ヤンデレなあんたには、誰も言われたくないと思うんだけどなあ。なんて、口に出して言ったわけがない。そんなこと言った瞬間に、きっと首が飛ぶだろう。その理由はたぶん……“私とあっくんが同じイキモノじゃなくなっちゃったよどうしてくれるのねえ責任とって”みたいなものだと思う。冗談だと思えれば、どれだけ嬉しいことか。男子と喋っただけでさえ刃物を持ち出すのだから、きっとこの子には常識なんてもの十分の一も通用しない。きっとそれが、この子の良いところなんだろうね。知らないけどさ。
「てことは、なに?」
「んー……ロボットとかの類じゃないかなあって私は予測してみた」
——だってあの子、感情なんてこれっぽっちも無いでしょう?
一体あんたが何を知っているっていうんだろうね。思わずそんな皮肉を叩きたくなるほど痛快そうにくしゃりと表情を笑顔に変えて、白岩沙世は言った。つまり、彼女が言うには。
川澄都子は笑わない。
川澄都子は泣かない。
川澄都子は怒らない。
川澄都子は喜ばない。
川澄都子には喜怒哀楽が無い。それだけじゃなく。
川澄都子は幸せじゃない。
川澄都子は不幸せでもない。
川澄都子は愛せない。
川澄都子は愛されない。
とどのつまり、川澄都子には存在していても、まるで価値が無いらしい。
思わず長く伸びすぎた、死んでしまうんじゃないかと思うほどの酸素を使った溜息がほぼ自動的に口から吐き出された。使われて、愛されることもなく、ただ朽ち果てていく、結局最後には捨てられてしまうロボット。それが、川澄都子。……白岩沙世のほうが、よっぽどロボットらしいと思うのはあたしだけだろうか。刃物を持ち出して、何の抵抗もなく人に向けることができる。必要ならば刺すこともできる。全ては彼女の思考という世界通りに、物事は進められていく。まるで製造者の欲望を叶えるためだけに作られた、殺人機械のよう。
「ロボットか。へー、じゃあ刺されても死なない?」
「ううん、まず刺されない。あの子、人じゃない動きするもの」
体育で一緒でもクラスが一緒でもない沙世が、どうしてそんなことを知っているのだろう。確かに川澄都子の運動神経は凄い。どうしてあれだけ大人しく虐められるがままのだろうと疑問に思ってしまうぐらい、いくら何人に囲まれても凌駕してしまいそうな機敏な動き。バレーやらテニスの時間で、生憎飽きるほど見てきた。文系的な容姿には全くに合わない、運動神経。虐めるのはそれに対する嫉妬とかも含まれているんだろうなあ、と今更ながらに気付く。
「私の手から、一瞬で刃物奪ったんだよ? 本当、見えないくらいの速さ」
続けて放たれた沙世の言葉で、納得がいった。またこの子は、人を刺そうとしたのか。何人犠牲者になりかけてきたのかわからない。それでも、実際に被害者となった人がいないのは。それは、よくわからないが何者かがこの子を牽制しているからだった。沙世曰く“気付かないうちに刃物が消えていた”や“いきなり殴られてはっと振り返ったけど誰もいなくてその時に逃がしてしまった”らしく、なんというか奇妙な人物だった。沙世のヤンデレ思考は、次の日アノヒトを見ることでリセットされる。そのため、その日逃れれば大丈夫なわけだ。
川澄都子が、雨森綾斗に話しかけたのか。そして刃物を持って襲い掛かろうとしたけれど、逆に返り討ちにあってしまったと。……ん、ちょっと待て。もしかして、川澄都子がこの子をずっと牽制していた人物なのか? どうも沙世の言葉を聞くと、それっぽい。だったら、なんでだ? 全くの他人であるはずの二人なのに。川澄都子が白岩沙世の凶行を止める理由など無いはずだ。
「苛々するー。もうどうでもいいけどね。どうせ、狙ったのは長沼だったし」
狙ったのは、長沼。ということは、今まで川澄都子が沙世を牽制していたのは列記とした事実ということになる。しかしそれがわかっても、どうして川澄都子が沙世を牽制するのか、という疑問の答えには繋がらない。……まあ、どうでもいいや。なんか凄く面倒そうなことだし、それにそろそろ部活が始まる時間だ。早いところ学校へ戻らないといけないから、半ば無理矢理に沙世との会話を断ち切った。
「あ、ごめん、もうそろそろ部活だから、学校行くね」
「そっかー、うん、わかった。部活頑張ってねー」
約一時間ほど座っていた喫茶店の椅子から腰を上げ、通学鞄のポケットから財布を取り出す。別に奢るというわけじゃなく、自分の分だけ置いていく。今からここのままで沙世は誰かと会うらしいから、割り勘だとか奢るだとかそういうことはできない。だからまあ、あたしはケチとかじゃないと一応言っておく。誰にだとかは言わない、自分に言い訳をしているの。なんて、馬鹿らしいか。それでもこうしなきゃ、どうしようもないんだから。
あたしはまた、今日も。
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