ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- バロック〜歪んだ恋愛〜
- 日時: 2011/02/01 15:06
- 名前: うそつき狼 (ID: 2cEGTv00)
プロローグ・・・
ひんやりした空気のたちこめた地下室のパイプベッドに横たわる女性
を見ながら俺は『この女性が目を覚まして俺の顔を見たらどんな反応
をするのだろうか・・・』そんな恐怖に似た感情を抱いていた
口と両手足をガムテープで拘束された寝顔からして美しい女性は
多くの男性にとってリビドーの対象だろう・・・実際俺もそのつもり
で「購入」したハズだった、いくじなしなのだろうイザ目の前にすると
そんな感情は消えていた・・・
- Re: バロック〜歪んだ恋愛〜 ( No.5 )
- 日時: 2011/02/01 18:23
- 名前: うそつき狼 (ID: 9AY5rS/n)
昼の街は苦手だ・・・恐怖ですらある・・・電車もバスも雑踏も・・・
人間が嫌いだ・・・
「もぉーじれったいな・・・」
この雑踏に拒絶されている俺に何度目かの言葉を言って優子は手を握っ
た
「なんで俯いてコソコソ歩くわけ、もっと堂々としなよ」
「いや・・・でも・・・」
「フードなんて被ってるから周りが見えないんだよ」
優子は俺のパーカーのフードを倒した、俺は思わず顔を隠してしまった
「あのさ庄助・・・皆そんなに人の顔なんて気にしてないよ?」
まるで子供に言い聞かせるように優子は俺に言った
- Re: バロック〜歪んだ恋愛〜 ( No.6 )
- 日時: 2011/02/01 20:12
- 名前: うそつき狼 (ID: 9AY5rS/n)
・・・この気持ちを何て呼ぼう
ふわふわしてて
あたたかくて
離したくないのに何処かこそばゆい・・・
この気持ちを何て呼ぼう・・・
「ねぇ土鍋とかあるの?」
優子に言われて我に戻った、もう持ちきれない程買い物をしている
「確か台所にあった筈」
「そっか・・・」
周囲から見たらどう映るんだろうか、そんな事にばかり心が動いていた
「聞いてんの庄助」
優子は俺の視界に入ってから怒った様に言った
「ごめん・・・」
「今日の晩御飯お鍋でいい?」
このショッピングモールには何回か来た事がある、でも正直苦手だ
「もぅ・・・一旦帰るよ」
優子は呆れた様に言って先に歩いて行った
「庄助が気にしてたらさ・・・皆気になっちゃうんだよ?」
タクシーに乗り込むと優子は呟いた
「そんな簡単じゃないよ・・・」
俺はそう答えるのが精一杯だった
家に着き一休みしているとリビングのソファーで優子は無防備に眠って
しまった、俺はなんだか凄い罪悪感に包まれた
- Re: バロック〜歪んだ恋愛〜 ( No.7 )
- 日時: 2011/02/02 02:17
- 名前: うそつき狼 (ID: 9AY5rS/n)
自分のベッドから毛布を持ってきた、彼女に触れない様にかけた
触れたら砂の様に消えてしまいそうだったから・・・
優子の寝顔は美しすぎて、触れたら壊してしまいそうだったから・・・
涙が流れた、涙は止まる事を忘れたかの様に流れた
「今俺は何を・・・何を望んでしまった・・・」
望んではいけない未来を欲しがってしまった・・・崩れ落ち額を床に
力一杯打ち付けた『こんな自分なんて消えてしまえば良い』
そう思った
「だからさ寝ちゃったのは謝るって」
焼肉屋で肉を焼きながら優子が言った
「起こせばよかったのに・・・」
それができたなら俺はこんな複雑な気持ちになってない
「明日鍋にしよう、決まり、だから機嫌直してよ」
優子が甘える様に言った
「怒ってないよ」
俺は顔を背けてビールを飲むしか出来なかった
家に戻り一休みすると優子はシャワーを浴びに行ってしまい俺は客間に
布団を敷く事にした
「ここか・・・」
シャワーから上がりタオルを首にかけた優子が客間へ来た
「今日からここに寝ろよ」
「いいよ地下室で」
優子は少し俯いて言った
「馬鹿な事言うなよ」
「だって私・・・買われたんだし・・・」
立ち上がった俺と視線があった
「どうせ・・・抱いてはくれないんでしょ」
優子は訴えかける様に言うと背中を向けた
「どうしてそんな事に・・・」
「女一人汚す勇気もないんだったら人なんて買うなよバカ」
優子は激しく言うと地下室へ戻って行った
- Re: バロック〜歪んだ恋愛〜 ( No.8 )
- 日時: 2011/02/02 02:43
- 名前: うそつき狼 (ID: 9AY5rS/n)
優子の言葉は真実だろう・・・俺は汚す為に彼女を買い、彼女は汚され
る為にここに売られてきた、それはルールだしそのルールを破ったのは
間違いなく俺の方だった・・・
そんな事を考えて居るとドアがノックされた、返事をするとやはり優子
が入って来た
「起こしちゃったかな」
「いや、起きてたよ」
俺が答えるとキングサイズの俺のベッドに優子が潜り込んできた
「いやぁ・・・地下室寒いわ」
布団を奪うとベッドの上に座って包まった
「だから言ったろ」
「ねぇ、チューして良い?」
茶化すわけでもなく優子が言った
「いや・・・だからさ・・・」
「どうして・・・どうして私を買ったのが庄助なの?」
初めて見る優子の涙だった・・・
「何かあったのか?」
「いいよ・・・言えないよ」
「言えって」
俺は優子の肩を掴んではっと気づいて手を離した
「私にはね・・・妹がいるの・・・」
優子はそんな俺の手を掴むと自分の頬にあてた
「その妹は?」
優子は小さく首を振った
「組織に電話してみよう」
携帯電話に伸ばした手を優子が掴んだ
「ダメだよ庄助・・・」
「手遅れになるかもしれないだろ」
「じゃあこれ以上私はどうしたらいいの?庄助の為に何をすれば良いの
か分かんないよ」
優子は泣き出した、優子を泣かせているのは俺、無神経で自分勝手な俺
「今夜はここで寝てろ、命令だ」
俺は部屋を出る事にした
- Re: バロック〜歪んだ恋愛〜 ( No.9 )
- 日時: 2011/02/02 03:07
- 名前: うそつき狼 (ID: 9AY5rS/n)
昼の雑居ビル、サラ金ばかり入ったビルの最上階の鉄の扉の向こうに俺
は居た、誰でもそうだろうがこんな『事務所』に1秒だって来たくはな
い、こんな事情じゃなきゃ来たくもない
「遠藤さんも好きモノだねぇ、姉妹で買うなんてさ」
札を確かめながら若頭は言った
「ま、色つけてもらったしこっちは万々歳だけどね」
数え終わると部下に合図をして娘を連れて来させた
「まいどありー」
用は済んだだろと言わんばかりに俺と娘は出された、まぁ言われなくて
もさっさと退散する気だったが・・・
「優子の妹さん?」
娘はうなづいた、姉と違って大人しそうだった
「あの・・・お姉ちゃんは・・・」
レンタカーに乗り込んでから娘は口を開いた
「家にいるよ」
他に答えようがなかった
満足な会話もないままにレンタカーを返却し家に戻ると優子が飛んで来
た
「ちょっと出かける時は・・・」
優子はそこに妹が居るのに気づくとすれ違った俺の腕を掴んだ
「どうしてこうゆう事するかな・・・」
俯き震えた声と力の入った手が痛かった
「私・・・私何もできないよ・・・」
「これは俺の自分勝手だから気にすんなよ」
そう・・・これは自分勝手・・・優子の笑顔を見たい俺の自分勝手
「敦子・・・この人はね・・・」
「俺は人買いだよ、それ以上でもそれ以下でもない」
怖かった、だから優子の言葉を遮った
十分、もう十分俺は幸せだと思った・・・昨日願った未来なんて来ちゃ
いけないんだ・・・
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