ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- バロック〜歪んだ恋愛〜
- 日時: 2011/02/01 15:06
- 名前: うそつき狼 (ID: 2cEGTv00)
プロローグ・・・
ひんやりした空気のたちこめた地下室のパイプベッドに横たわる女性
を見ながら俺は『この女性が目を覚まして俺の顔を見たらどんな反応
をするのだろうか・・・』そんな恐怖に似た感情を抱いていた
口と両手足をガムテープで拘束された寝顔からして美しい女性は
多くの男性にとってリビドーの対象だろう・・・実際俺もそのつもり
で「購入」したハズだった、いくじなしなのだろうイザ目の前にすると
そんな感情は消えていた・・・
- Re: バロック〜歪んだ恋愛〜 ( No.1 )
- 日時: 2011/02/01 15:30
- 名前: うそつき狼 (ID: 2cEGTv00)
第1話・・・
生まれたのは県立高校の教師と専業主婦の家だった
3歳の時妹も生まれ不自由なく育っていた
5歳の時、母親の不注意から顔にてんぷら油をかぶった
視力・聴力・五感を失う事はなかったが顔の右半分
頬から上は額、下は上唇までに及ぶケロイドが残った・・・
父は母を激しく叱責した、思えばあの夫婦にはこの頃から亀裂が入って
いたのだろう・・・
学校では顔のせいで激しいイジメにあった
俺が中学の時父親が自分の勤める学校の女子更衣室にカメラを仕込んだ
のがバレて辞職した、これはイジメの加速材料になったがそんな事より
ある日学校から帰ると置手紙を残し母が妹を連れて出て行っていた事の
方がショックだった・・・自分は捨てられたんだと思った
しばらく父は自暴自棄になっていたがは立ち直って海外で日本語を教え
現地の若い女と再婚した様だった・・・
高校を卒業しても俺は顔の傷のせいで就ける職種が限られていた
一人暮らしになった実家に住みながら俺は暮らしていた
そんな俺に幸運が舞い込んだ、たまたま買った海外の宝クジが当たり
65億の金が舞い込んだのだった
金が入った途端人が集まってきた、学生時代俺の事を避けていたクラス
のマドンナが「つきあっても良い」とまで言ってきた
反吐が出そうだった・・・だから買ったのだ・・・自分の奴隷を・・・
自分の為に生きる存在を・・・
- Re: バロック〜歪んだ恋愛〜 ( No.2 )
- 日時: 2011/02/01 15:57
- 名前: うそつき狼 (ID: 2cEGTv00)
ギシッ
ベッドの軋む音を聴いて俺は邂逅から戻った
『この女って何処から来たんだ?』
自然な疑問だった、業者は『聞くな』と言っていたが本人に聞く分には
問題ないだろう・・・
髪が顔にかかっている・・・やはり美しいと実感した、そして沸き上が
る恐怖・・・
「・・・・!!」
女は少し薄目を開けてから状況に気づいたらしく飛び起き恐怖を
浮かべた顔で俺を見ていた
「あ・・・俺は・・・」
いくじがない・・・どうしてもいくじがない・・・
「口のガムテープとってやるよ」
俺は振るえを必死に抑えながら彼女の口のガムテープを取った
「これ、どういう事ですか」
今度は強気になった、ヤバイいくじなしを悟られたか?
「質問の前に名前を名乗るのが礼儀じゃないか?」
「学校で習わなかった?人に名前を聞くときはまず自分から名乗りなさ
いって」
女はベッドに腰掛けた俺の対角線に小さくうずくまると目線を俺から
外さずに言った
「遠藤、遠藤庄助」
「大滝優子」
俺が名乗るとすぐに小さく答えてきた
「遠藤さん・・・私をどうするつもりですか?」
少しの沈黙の後そう優子が呟いた、実際どうしようとか考えてなかった
俺は少し戸惑った
「あの・・・服脱ぐから拘束を解いてもらえます?」
「え?」
「そういう事ですよね買われたって事は」
優子はずっと俺を見ながら言った
「逃げませんよ・・・逃げたって行く所ないし」
優子は吐き捨てる様に言った
「なんか食べるモノ持って来る」
俺はいたたまれなくなって地下室をあとにした
- Re: バロック〜歪んだ恋愛〜 ( No.3 )
- 日時: 2011/02/01 16:35
- 名前: うそつき狼 (ID: pakyHNO3)
コンビニに行った俺は何故だか袋いっぱいの食料を買ってしまった
腕の拘束を外すと優子はベッドに腰掛けクスクス笑いながら
サンドイッチを食べていた
「な・・・何がおかしい・・・」
「だって・・・二人しか居ないのにこんなに買って来てさ・・・それと
も閉じ込められちゃうのかな?私」
笑顔・・・自分に向けられた笑顔がこんなに美しいなんて初めて知った
「庄助さんは食べないの?」
首をかしげながら言う優子はとにかく可愛く感じた
「これ美味しいよ」
優子は食べかけのサンドイッチを俺に差し出してきた、これは所謂男な
ら一度は夢見る『アーン』という奴なのか?
「ダメだよこんな見え見えの手で心許しちゃ・・・女ってね結構ズルイ
んだよ」
優子は自分で足のガムテープを外すとそう言った
「泣き落としと親近感、お水の鉄則じゃない」
『逃げられるか?』
そう思ったが優子は靴を脱ぎ立ち上がると大きく伸びをした
「私も偉そうな事言えないよね、男に騙されて借金背負わされて売り飛
ばされたんだもんね」
優子はベッドに座るとペットボトルのお茶を飲んだ
「逃げてもまた捕まって今度はどこに売り飛ばされるか、だったらここ
でこうしてても良いかなってさ・・・庄助良い奴そうだし」
『良い奴』そう言われたのは初めてだった
「しても良いんだよ・・・買われた自覚はあるからさ」
少しの沈黙の後そう優子が呟いた
「遠慮しとくよ、気分がのらない」
俺は地下室を後にした
- Re: バロック〜歪んだ恋愛〜 ( No.4 )
- 日時: 2011/02/01 18:13
- 名前: うそつき狼 (ID: 9AY5rS/n)
朝になり地下室の鍵を開けると優子が飛び出して来た
「トイレ、トイレどこ?」
「玄関の手前の扉・・・」
十分後俺のスウェットに着替えた優子がダイニングテーブルに頬杖つき
ながらコーヒーを飲んでいた
「ねぇ庄助、私逃げないって言ったよね」
なんで優子が椅子に座っていて俺が朝食作っているのか不思議だった
「トイレ行こうと思ったらドアの鍵閉まってるしさ、我慢出来たから良
かったけどさ」
俺が台所に行っている間に勝手に干してあった俺のスウェットに着替え
たのだった
「私の生活必需品とかどうするつもりだったワケ?」
出来上がった朝食を食べながら優子は至極まともな事を聞いてきた
「それは・・・」
「近くに大きなお店ある?シャワー浴びたら行くよ」
こうして誰かと朝食を一緒に食べるなんて久しぶりだった
その瞬間「あの事」を思い出した俺は椅子から飛びのくとかけてあった
布巾で顔の半分を隠した
「どうしたの?」
そんな俺を優子は不思議そうに見ていた
「み・・・見たよな・・・俺の顔」
地下室には光が殆どない、今の様に朝日に照らされているのとは違う
「そりゃあ正面にいるからね」
「気持ち悪くないのか?」
「変なモノ入れたの?」
優子は手に持ったマグカップを指差した
「そうじゃなくて」
俺が言うと今度は目玉焼きを指差した
「俺の顔だよ」
「なんで?」
優子は安心したように食事を再開した
「なんでって・・・」
「庄助は良い奴じゃん、外見とか関係ないよ」
優子は当たり前の様に言った、そして俺は彼女と昼の街に出た
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