ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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神都のディスファイア
日時: 2011/07/25 16:13
名前: ハッチしゃn (ID: X96rB3AK)

ハッチしゃnです。よろしくです。読み方は「はっちしゃぬ」
rom専なので、あまりコメントとかしないです。さーせん。
テーマは「仲間」です。
シリアス&ファンタジー重視です。

【皆様へ】
夏休みとなりましたね^^
これからぼちぼちですが、更新していきます。
よろしくお願いしますm(_ _)m


プロローグ

この世界には、五つの都市がある。
その五つの都市には、序列階級も付けられている。

序列第五位 ゴルダの猛獣都市
序列第四位 サフレスとデウスの都市
序列第三位 上空と天空都市
序列第二位 地下と牢獄都市
序列第一位 ディスファイアの都市

これが、この世界にあるすべての都市だ。
そしてぼくらは、これらの都市には存在しない。
ぼくらは、都市ではなく、周りにいる農地や原野で暮らしている。
ぼくら農民は、都市の中で生きて行く事は許されない。
ぼくら農民は、世界の神である『ディスファイア』に、古き昔に命じられた。

『貴方達に都市で生きる権利はない。が、しかし。都市以外で生きる権利を与えよう』

そのあと、ぼくら農民は階級と名前を付けられた。

『序列第六位のパラメキア』と。


登場人物……>>005
※性格は出ません。読み取ってください。


第一話『ディスファイアの都市へ』…>>001 >>002 >>003 >>004 >>006 >>007 >>008 >>009 >>010

第二話…>>011
第三話
第四話
第五話
第六話
第七話
第八話
第九話
第十話
第十一話
第十二話

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第一話 ( No.8 )
日時: 2011/06/22 18:29
名前: ハッチしゃn (ID: X96rB3AK)


 私は、手で握っている剣を天使の胸元から抜き出し、震え落とす。
 鉄の剣が床に鋭い音を響かせ、振動を伝える。

 息が荒く、若干額に汗が滲み出ている。

 私の右腕の限界だった。限界が来ている右腕を垂らし、左手の甲で額の汗を拭い、落とした剣を汗が付着した左手で持ち上げる。
 そのまま背中の剣入れに戻し、まだ痛みが走る右腕を左手で震えないように抑える。
 私の疲労困憊の状態に心配したのか、後ろから声が響き伝わる。

  「お、おい! 大丈夫か!?」

 焦り声を上げながら、後ろから私の元へウォンが戻って来た。
 私の周りには数々の天使が息を止めたまま横倒しに倒れている。すべて私がやった。ウォンは足でそれらをどかし、私の元へ来る。
 私は先ほどの問いに返答した。

 「ああ。……大丈夫だ。少し、右腕が痺れているだけ」

 「なんだ、本当にそれだけか? 汗も出てるし、痛みがあるんじゃないか?」

 まったく心配性だな、と思いながらも、正直に私は痛みがあると頷いた。
 頷いた後から処置的なものをすると思ったので、その誘いを拒むために運転席へと急ぐ。

 「ちょ、ちょっと待てよ! 痛みがあるんだったら少しくらい休めよッ!」

 「時間がないって言ってるだろ。もしかしたら操縦役の『天使』が私が倒した集団の中に紛れていたかもしれないんだ。飛行船がこのまま落下したら残るものはなにもないぞ?」

 それも、そうなのか? みたいな顔をしたウォンを見て、呆れた私は、奥にある扉(だった入口)へ近づいて行く。

 そこはこの飛行船の運転機関室であり、この飛行船を操作する操縦席である。
 入ってサイドを見れば、やはり間違いではなかった。しっかりと操縦席があり、横には運転機関の機器が数多くのコードで繋がっているのだ。

 ためらいもなく操縦席に座り、前にあるモニターと数々のボタンを見て行く。
 モニターには現在の位置があり、全体図を表わしていた。
 モニター前の私の手が一番付きやすい所には、操縦用(飛行船の高度を上げるモノ)のレバーがある。

 操縦席の側に来たウォンを前にして、私は伝えた。

 「なんとか操縦できる。見たところ、天使の文字や数字は私達人間と同様らしい。このまま『ディスファイアの都市』へ直行する」

 「お、おう。分かった。真っ直ぐ神都だな」

 私はウォンの了解を聞き、操縦し始める。
 レバーを手前に引き、モニターのマップにある『ディスファイアの都市』を目指して運転を開始した。

第一話 ( No.9 )
日時: 2011/06/24 22:29
名前: ハッチしゃn (ID: X96rB3AK)

 『ディスファイアの都市』————。

 人間が古き昔から、そこに行っては未帰還者が増えた。
 まるで私達人間が、立ち入ってはならない領域に侵入したから罰を与えるように。

 確かに、私達の故郷の遺跡にある石碑には『人間は都市で生きる権利はない』と書いてあったが、そんなことでこの世界のあらゆる生態系が成り立っているとは思えない。

 なぜか、そう思う。
 私達人間が農作物や果物を育て、それを私たち人間が食べず、他の都市に輸出させているとか、そんな理不尽な事があって良いのだろうか? と、いつも思う。
 あれは人間には”味覚”があるから甘かったり、すっぱかったりの酸味が詰まった果汁、甘い果汁などがあるわけだ。

 人間ではない生き物が住み付いている”都市”に、人間と同じ味覚など持っているのだろうか? だったら、人間ではない都市で生きている生物も、私達と同じように序列第六位の『パラメキア』に住めば良いことだ。さほど変わらないだろう。生物という中では、今までよりさらに良い快適な生活が待っているはずだ。


 では、なぜ都市と別々に住んでいるのか。
 深く考えればおかしなことが浮き上がって行く。”しなくてもいい事”までもが、この世界では実現されているんだ。
 それを確かめる、というのも私が神都に行く事を決意した理由だ。

 だから、

 「……必ず、『神』とやらに会いに行って、目論見を吐かせる」

 私は両手でレバーをバランスを保つように、左右交互に引いたり戻したりして『死刑囚納船』の速度を上げながら、小さくそう口に出した。

 ウォンが隣の助手席に座りながら「なんか言ったかー?」と、訊いてきた。
 私は鼻で息を吸ってから、「なんでもない」と、伝えて置く。

 これは私個人の引っかかる疑問点であり、娘を心配しているウォンには関係がないことだ。いや、正しく言えば、アイツに言ってもなんにも利益がなさそうだから言わないだけだが。

 そしてついに、私達の視界から輝くクリスタルの都が見え始めた。
 進めば進むほど思っていたが、どうやら『ディスファイアの都市』は、上空の成層圏の高さまで浮上しているようだ。

 通りでいつも『ディスファイアの都市』を地上から眺めていても、都市全体の影で見えづらかったわけだ。これで雲が現れれば、地上からは何も見えない。

 鳥の翼みたいなクリスタルが何十羽も都市を囲んであり、中心には黄金と銀で作られた巨大な西洋型の城が佇んでいる。城の金と銀の場所が太陽の光で目が焼かれそうなほどの光を反射して照らし合わせている。

 驚いている場合ではない。私達はすでに操縦席から離れて、『死刑囚納船』の出口へと向かっていた。
 出口の扉を開けて、そのまま飛び込むことにしているんだ。

 それは私たちがいた、運転機関室のすぐ後ろにあったため、降りる準備はとっくに出来ている。まぁ、私だけだが。

 「って、おいおい! 待ってくれよ! 飛び降りんの!? 娘に会うとか、神に会うとかの前に、死ぬじゃねぇかァ!!」

 唾を飛ばずに話すのも気に掛けていられないのか、唾を飛ばしながら焦りを隠せずに慌てて必死に話しかけてくる。

 ここはおとなしくさせておこう。
 飛び降りるにも、無駄に心拍数を上げていたら、血圧が一気に上昇して意識が飛んでしまう。そうならないためにも。

 「大丈夫だ。私がいる。飛び込むのは一人じゃない。安心しろ」

 「ど、どう安心しろってんだッ! こ、こんな高さから落ちたら、し、死ぬしか道がないだろ!」

 「大丈夫だ。ここから落ちたって、多少怪我をするくらいだ。死にはしないさ。それに」

 「お、おぉおいッ! 今、今”多少怪我する”って言ったよな! 言ったよな!? 結局無傷でなんか降りれないのかよ…ッ! く、くそ————」

 「———悪い、今しか飛び降りれない!」
 私は出口から見える高度から見て、早口でそう言った。
 ウォンの心の準備に構っている時間はない。次の一声で、私はウォンの右手を握って出口から颯爽に飛び降りた。


 「—————行くぞッ!!」

 「ちょ、ちょーーー待ってくれぇえええええええッ!!」

第一話 ( No.10 )
日時: 2011/07/02 14:28
名前: ハッチしゃn (ID: X96rB3AK)


 私の正面。目の前。視界に映る上は青い空。下はディスファイアの都市。

 それらが今、次々と有余を与えずに迫ってくる。
 体は関節が外れそうなほどの勢いで風速が体全身を巡って行き、私の長い髪の毛はその風の荒々しさによって分け目がどこにあるのか見分けられないほどに、落下速度による疾風でボサボサになってしまっている。

 頭を下にしないように、右手で繋いでいるウォンと合わせてゆっくりと大の字に体の関節を拡げて行く。

 そうすることで、落下速度は少し遅くなり、落下と上昇が身に重なる。
 圧力が掛かるため、速く都市の地面に着地しなければいけない。
 ここから先は私が先行を取った。

 「一回離せ!!」

 「お、おうぅ?!」

 なぜ離すのかは分かっていないようだが、ちゃんと応答もして、指示通りに手を離してくれた。

 ウォンはそのまま大の字のまま落下するが、それよりも速く私が都市に着かないといけないので、頭を下にして、体をまっすぐ下にし、全体重を都市の地面へ目指して落下速度を上げる。

 「お、ぉおおい?! な、なにをやって————」

 ウォンが一人になって焦りだしたが、今は集中しなければ致命傷が待ち受けている。

 防護服のポケットから私は風圧に耐えながら、『電磁弾』を取り出し、それを目前に迫るディスファイアの都市のクリスタルでできた地面へぶん投げる。

 それはちょうど500mほど離れている私の頭上の位置と同じ場所で付着地し、紫色の磁界が広がる。
 私は磁界が展開されるのを見つつ、ポケットからもう一つ『防電弾』を取り出す。これを胸辺りに抑えて持っていれば、電子が私の体を包み、地面に着いた磁界に拾われるんだ。また、強力な磁力から物体に当たるダメージを軽減できる。

 無事には着地できない代物だが、打撲程のダメージだけで着地できる。頭を割られて死ぬよりはマシだ。

 「——————ぐぅっ!!」

 強力な磁力に体が引っ張られ、クリスタルの地面へと投げ出される。普通に地面へ当たれば、あばらが折れるだろうが、『防電弾』によって、磁力を断ったので、多少高いところから落ちた程度のダメージが、体全身へ与える。

 「っ!! 〜〜〜〜ッ!!」

 歯を食いしばりながら、体に走る痛みに耐え続ける。
 息が荒れ、特に腕や背中が麻痺をしている。

 しかし、こんなところで痛みに付き合っている場合ではない。

 私は震い上がる腕で上半身から起き上り、残り最後の『防電弾』を取り、上空からこちらに落下してくるウォンに向かって、力を振り絞りぶん投げる。

 その『防電弾』はウォンのおでこにちょうど命中し、電子を展開させる。
 まさかの額だったから、少し笑みが零れてしまったが、当の本人はそんなことに気を掛けている余裕はなく、地面に当たると認識して、この世の終わりみたいな顔をした。

 そして『電磁弾』による磁力がウォンを引っ張り、こちらに着地させる。


 「イッテぇええええっ!! 死んだ! マジで死んだ!!」

 痛みに敏感な方だったのか、着地した瞬間に、打撃による痛みで跳ね上がり、体全体の痛みを和らげようと必死になっている。

 男が頑丈な体で作られているとは兄から聞いていたが、まさかここまで痛がる人間がいるとは信じられなかった。

 私は少し、元気そうなウォンを見て、面白おかしく笑ってしまう。

 「ふ、はははっ」

 「わ、笑うなっての!!」

 腰辺りを押さえながら言われても、笑いが止まらないだけだ。
 まるで、何をしにここに来たのか少し見失いながら、笑みが止まらずにいた。

 しかし、ゆっくりと。
 私はディスファイアの都市へ来たのだという感覚が、実感へと変わって行くんだ。

第二話 ( No.11 )
日時: 2011/07/25 16:10
名前: ハッチしゃn (ID: X96rB3AK)



 ついに来た。
 私が五年前から来ようとしていた『ディスファイアの都市』に。

 地面の感触は、今までの土とはあからさまに違う。
 ダイヤモンドのような表面を削った硬い感じだ。

 この中心にある城に、神とやらはいるのか?

 馬鹿馬鹿しい、とさえ最初は思っていたさ。

 けどな、兄が戻ってこない真実から目を背けたって何もならない。
 取り戻さなきゃいけないんだ。こんなふざけた世界の奥に取り込まれた人達を助けるために。

 もういい加減にしろ、そう言いたい。神に会って、胸の底から。

 「痛みは、……引いたか?」

 尻を押さえたままのウォンに、私はそう聞く。

 「……一応だけどな。それよりも、こっから神に会えるって思うと、胸のドキドキが止まんないぜ」

 「私もだ。あまり期待はするなよ。神とやらが、どれほどの力を持っているのか、私も知らないからな」

 クリスタルが輝く地面の上で、私は青い上空を見る。
 濃い赤色と淡いオレンジ色の夕焼けが、青い上空の両端に射し掛かっていた。

 「そろそろ暗くなるな……」

 「ウォン、行くぞ。夜になる前に、ケリを付ける」

 私はウォンに振り向かないまま、足取りを城に向かわせて言う。

 白銀と金のような色合いで建たされた巨大な城。
 それはまるで、私達を待っていたかのように佇むままだ。

 いいだろう。堂堂と中に入ってやる。

 そう思いながら、門の前に足を止めた瞬間、周りが水色と緑の光を放っていることに気付く。

 「……何だ?」

 「え、ちょ、もしかして神とやらの御出座しかッ!?」

 その水色と緑色の光が混ざり合い、巨大な城へと白き輝きを放ちながら集まる。

 ————ッ!?、眩しすぎる!

 ウォンと同じく、閃光の直射を避けるために、腕を顔の前に回して、目を瞑りながらも、うっすら開けて城の中心へ意識を集中する。

 周りから少しずつ光の加減がなくなっていき、中心の物体も目に見えるようになっていく。
 ————しかし。

 「どうなっている!?」

 「お、俺にも分かんねぇよぉおッ!!」

 状況が掴めない。この焦りをなんとかしなければ。
 足を踏み違えればそこで終わりだ。
 少なくとも、戦上の場となるのは承知。問題は、この不意打ちからどう体制を整えるか、だ。

 「一旦、ここから———」

 「離れる、ってか!? 都市全体が眩しいのに、どこに行きゃぁ良いってんだ!?」

 「————クソッ!!!」

 少し、絶望感に陥る前に目が冴えていく。
 どうやら、不意打ちを喰らってから戦闘を開始するしかないようだ。

 「ウォン、このまま光が収まるまで待て! ここで戦う!」

 「は? このままって……神とやらが目の前に現れるまでおとなしくしてろってか?!」

 「他になにがある!?」

 苛立ちと一緒に口にしながら、目線は城の中心へと移す。


 それから、私達が『諦める事』を待っていたように、急に光が消えて行く。

 そのチカラ。その調節操作の自由さ、速さ。
 やはり、ここまでの差があるのか、と思う。
 甘くは見ていないが、こんなの、どう予測をしていた所で想像を遥かに超えていただろう。
 それほどに思う。そして、とてもじゃないが、ここまで差を見せつけられると勝てる気がしない。

 「目論見を吐かせるどころか、私たちが自ら釣られに来たような物じゃないか……」

 なんだったんだ今までの計画は。
 私が戦おうと、兄を助けに行こうとした意志をこんな簡単に捩じ伏せられて。

 私の背中から、努力と覚悟の無意味さという、絶望感に襲われる。

 誰か、私を助けろ。助けてくれ————、見捨てないでくれ。
 あ、ぁあああ、どうしてこんなに私は弱くなっているんだ!?

 強い気持ちを抱こうとすればするほど、恐怖心に心を包まれる。
 こんな気持ちになったのは、初めてだ。


 ゆっくりと、ゆっくりと自分の目の前に広がる光景を見る。
 アレが、アレが神と言うのか————?

 ウォンに視線を移そうとしても、身体が金縛りにあったように身動きが取れず、正面にいる『神』しか見れない。

 やめろ、見るな。私が何をした!? そんな目で見るな! 見るなッ!!


 『どうだ人間よ? ……怖いだろう? ……恐いだろう? 胸の中から身体全身に恐怖を包まれるお前の魂は』

 これがお前の求めていた”答え”だ。 私の胸から、そう声が響く。


 しかし、その声に疑問を抱く。
 『答え』……? いや、違う。私が求めていたのはそんな事じゃない。
 私にはまだしなきゃいけないことがあったはず。

 恐怖? 金縛り? すべて違う。私が求めていたのは————。

 お前の”目論見”と、兄の”居場所”だ。



 『まだ意識を保てていられるのか。諦めの悪い子羊だな』

 『いいだろう。見せてやろう。貴様に。この世の理と真実へ———』


Re: 神都のディスファイア ( No.12 )
日時: 2011/07/29 21:35
名前: ハッチしゃn (ID: X96rB3AK)

あげ


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