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入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- ミスティ
- 日時: 2011/02/05 22:56
- 名前: 南諏野 (ID: 84ALaHox)
今日の海にはめずらしく風がなかった。
波がおだやかによせてはかえっていく。
男は静かに目を閉じた。
##
殺し屋の話なので、
一部暴力的な表現があります。
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- Re: ミスティ ( No.1 )
- 日時: 2011/02/05 23:12
- 名前: 南諏野 (ID: 84ALaHox)
Ⅰ
普段のアルならば昼過ぎまで寝ていただろう。アルは扉がたたかれる音によって目が覚めた。一度は無視を決め込もうとしたが、しだいに音は大きくなっていく。しかたなく重い体をひきずって、リビングに行くが、同居人であるミラの姿はなかった。
まだ扉はたたかれている。簡単に服を着て、チェーンをかけたまま扉を開けてみると、そこにはまだ幼さを残した青年が、必死な形相で立っていた。
「あっ、あ……」
青年は口をぱくぱくさせながらアルのことを見つめている。突然のことで何を言うか忘れてしまったようだった。アルは小さくためいきをつくと、チェーンをはずして、とりあえずと青年を部屋へ招きいれた。青年も警戒などまるでせずに、素直に部屋へあがる。
「コーヒーでいいか?」
アルが聞くと、青年ははっと息を呑んで、急に饒舌になった。
「お、おれっ、ミトスです! ああ、アルさん! ですよね!」
「……わかったから」
うるさい、とアルが言うと、青年ミトスは恥ずかしそうに顔を赤らめた。ミトスは体つきこそ大人と大差ないが、心はまだ十二歳ほどの少年のようにアルには思えた。まるで──。見慣れた顔を浮かべていたアルに、ミトスがおずおずとたずねた。
「あのう、なんで俺のこと、いれてくれたんですか?」
アルは少し考えて、
「うるさかったから」
といった。恥ずかしさを紛らわすように、ミトスはカップのコーヒーを飲み干した。
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