ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- 青春バイバイ(一応バトル物だったりします)
- 日時: 2011/02/18 17:10
- 名前: ヌアッフ (ID: 12T.pym5)
まぁ、くつろいでください。
コメント大歓迎です。
登場人物。
山上一路
15歳。
この物語の主人公。
趣味。読書。
やや大人びた所がある。どちらかというと静かなほう。
慎重主義という名のビビリ。
山上秋房(やまがみあきふさ)
39歳。
一路の父。ちょっと性格が飛んでる。
山上千恵(やまがみちえ)
34歳。
一路の母。とてもとても優しい人。
- Re: 青春バイバイ ( No.1 )
- 日時: 2011/03/05 17:48
- 名前: ヌアッフ (ID: 12T.pym5)
序章
自分の部屋のベッドで寝ていた。そして、ぱちっと目を覚ました。
深夜二時。そろそろあいつらが生まれてくる。ほら来た。体を包む不快感。粘液に覆われているようなこの感じ。体を重くし、背筋がゾクゾクッとなって、気分を悪くさせる。
これがあいつらの気配。今日は学校の方から感じる。
最近ではこの感じにもすっかり慣れてきた。あるのと無いのでは全然違うけど。
窓を開けて、窓縁に立つ。途端に冷たい風が俺の体を吹き抜ける。
この部屋は風通しがとてもいい。でも、今は1月。昼は暖かいことが多かったけど、夜はやっぱり寒い。
服装は通気性抜群の学校のジャージ。青色をベースとした悪くないデザインで、動きやすい。
けどこの時期だと寒いんだよね。すぐに破れるし。でも、厚着すると動きにくくなるし……我慢、するか。
そして、窓から外へ飛び出た。
住宅街に密集している民家の屋根から屋根へ飛び移る。
人に会いたくないし、こっちの方が速い。
だけど足元は少し怖い。今日の月は、満月だけど雲に隠れがちだ
この能力に目覚めてもう二年経つ。
腰に帯びた刀をちらりと見た。月に照らされ黒光りしている。なんか、初めの頃と比べて長さが長くなったような……気のせいか。
最初はこの能力を使う事に抵抗があった。正体不明の未知なる能力。使う事によって何が起こるかわからない。
だけど、この能力を使っているうちに気にならなくなった。それに、この刀、驚くほど軽くて手に馴染む。なんか、刀を使っていると言うより使われているような。
学校の手前にある田んぼ道に、あいつらは居た。
街灯に照らされていた。
ピクルスみたいな、ウィンナーっぽい形をした、カラスぐらいの大きさの何か。まん丸とした真っ白い目と、くちばし。胴っぽい部分には、体の長さに合わない小さな羽根が生えている。なんとも滑稽な姿だ。
形は色々と種類があるらしいけど、基本的にバラバラ。強さで形と大きさが変わるみたいだ。
共通している事。それは、体を作っている物。
実体化した黒い文字だった。
大体が暴言やら怨み言葉。それの塊が上手いこと形を成してあいつらを作り出している。
文字は、ぎっちぎちに固まってるけど、たまに読めるものもある。
なんで言葉が実体化してるのか分からないけど、現に存在するものとしてそこにある。
とにかく意味不明何か、だ。
ズパッ!
ササッと近づいてズパッと斬る。
相手は倒されると一瞬動きがピタっと止まって、瞬時に無音を伴って黒い霧となって消える。変わりに白い玉が残る。
強い奴でも何回も斬ると同じように消える。
肉を斬る感触はあるけど血は出ないから助かる。
大きさから判断して相手は弱い。さっさと済ませよう。
二十分もかからないうちに全部倒し終えた。
とても弱い。特に攻撃もしてこなかったし。
昔はあんなに大変だったのに……。数は多いし強いしで、怪我ではすまない傷もたくさん負った。その度に言い訳をしたり、隠したりと大変だった。
今でもいくつか傷跡が残ってる。
でも、今ではこのとおり。
この地域の人たちの性格もだいぶ穏やかになった。
さてと、白い玉を集めて帰ろう。
もう一つ不明な存在。それがこの白い玉だ。
大きさは倒した奴の強さに関係してるみたいで、強い奴なら大きく、弱ければ小さい。実に分かりやすい。
真っ白で手触りは少しざらざらしてる。
あいつらを倒したときに出てくるのだが、用途は全く分かってない。
なんとなく重要な気がしたのでとにかく集めてる。今では気持ち悪いぐらい溜まってしまった。
仕事は終わった、さっさと家に帰る事にした。
- Re: 青春バイバイ ( No.2 )
- 日時: 2011/02/19 14:36
- 名前: ヌアッフ (ID: 12T.pym5)
夢を見た。ここに来て初めての時のものだ。
{回想}〜二年ぐらい前〜 始まり
田んぼ田んぼ田んぼ建物田んぼ田んぼ建物田んぼ田んぼ畑田んぼ田んぼ民家畑。
道路は広いのに、車は自分が乗ってる一台だけが走ってる状態になっていた。前を見ても後ろ見ても車は無い。
窓が映してくれる光景も、田んぼと畑、時々建物(民家含む)だけになってしまった。
音なんかラジオの電波届かなくなってから同じ歌手の歌聴き続けてる。もう何回目だよ。この局。
最初の方は建物しかなかった。音も、色々混ざって騒音になっていた。だけど、その両方に段々空白ができ始めて。建物と建物の間に大きな穴(畑or田んぼ&無音)が空くようになり、このありさま。騒音も一つずづ分解されていき。ついには無くなった。流れが自然すぎて自分でも気づかなかった。
それ以前に自分は疲れていた。
8時間。車に揺られて8時間だ。乗り物酔いはあまりしないほうだが、正直気分が悪い。
二時間おきに休憩は取ってる。…十五分ぐらい。
つまり、7時間。車に揺られて7時間だ。
俺は元凶である父を睨んだ。
父は、俺の視線に気づいたのか、少しこちらを見て苦笑いした。
「そう睨むな。」
父はすまなそうに笑ってまた前を向いた。
回想 〜こうなった訳〜 始まり
「農業をやろうと思うんだ。」
夕食のとき、父が急にそう切り出した。
父はとある会社に勤めていて、役職はそれなり。それに加えて、うちの家族はお金をあまり使わない。金欲があっても物欲は無い。
だから、お金の面で特に不自由は無かった。
そんなうちの父だけど、さすがの父にも今の職を辞めて家族を養っていけるとは思っていないだろう。うちには母もいるのだ。
どうゆうつもりだ?そう思っていた。すると父が新聞と宝くじをテーブルの上に置いた。
「当たったんだ。三億。」
「は?」
思わず箸を落とした。ついでにご飯のおわんも落としかけた。
「嘘だろ?もしくは数字読み違えたんだろ?」
「じゃあ、確認してみろ。」
父は、そう言って宝くじと新聞を差し出してきた。おそるおそる見てみる。
3億2千3百万。
番号、638479163
宝くじの番号、638479163.
あってる。確かにあってる。この親父ほんとに当てやがった。三億。
「な、合ってるだろ?でも旅行とかはあまり好きじゃない。だからさこのお金を使って思い切って引っ越す。…どうだ?」
「どうだって……いつ?」
「すぐ。」
父は一回言ったら実行する人だ。………どうしよう。
「引っ越すって、どこに?」
「田舎だ。農業やるんだから。」
父が当然だといわんばかりに言った。
「じゃあさ、せめて小学校卒業してからにしてくんない?」
行きたくない。と、言うのは諦めて妥協してみた。
「ああ、そうか。うん、いいよ、もちろん。っていうかそのつもりだったぞ?」
「今日から二学期始まったんだけど…」
「で?」
ほんとにわからんのか、こいつは。
「でもさっき「すぐ引っ越す」って言ってたじゃん。」
「うん。」
「……」
頭が痛くなった。
変なところであほなんだよね。父さん。
「一応考えだってあるんだぞ?空気はきれいだし。作物は自家製だから無農薬。それに見てて飽きるほどの大自然。それに不自由が多い事で家族の連携が必要になってくるだろう。今の山上(やまがみ)家にはそんなのが必要なんだと思う。」
母をちらりと見た。母は無表情で父の今言った意見について考えている様に見える。そして、頷いた。
「分かった、行くよ。」
父は途端に満面の笑みになった。
回想 〜こうなった訳〜 終了
「お前も結局は承諾したじゃないか。」
「うるせー!車で7時間は承諾してない。」
「また子供みたいなことを。」
「子供じゃぼけ」
ため息を吐かれた。ため息吐きたいのはこっちだ。さっきから建物がほとんど見えなくなった。どんだけ田舎なんだここは。
暗くなってきたし。
なんかもう、いいこと無い。
景色は変わらないし、暇つぶし道具も持ってないし。最悪だ、この状況最悪だ。
そんな時だ。この気配に気づいたのは。
何かどろどろとした何かに包まれてるような。体をズンッと重くさせて、さらには気分まで悪くさせる。
寒気までしてきた。なんなんだこの感じ。
怒り、悲しみ、恨み、僻み。色々な負の感情が流れ込んでくる。
吐き気までしてきた。
ヤバイ、何か分からないけど尋常じゃなくヤバイ。これは何だ。
つにはうずくまってしまった。このままじゃヤバイ。何とかしないと。でも、動けない。声も出ない。
…………一路…いちろ。
え?
………いちろ……いちろ。
この声は…
……いちろ…いちろ。
「母さん!!!」
「うわっと!!!」
車が大きく揺れて右往左往した。それに合わせて俺の体も右へ傾いたり左へ傾いたり。
父は車の運転を正常化させてからこっちを見ずに怒った。
「いきなり大声出すなよ!びっくりしただろう?」
「ご、ごめん」
俺の返事を聞いて、父はいつもより穏やかな口調でこう聞いてきた。
「夢に母さんでも出てきたのか?」
「夢?」
「お前寝てたんじゃないの?後ろ見てないから気づけなかったけど。」
ふと気づくと体を覆うあの感じは無くなってた。そうか、夢だったのか。
夢にしてはやけにリアルだった。…そうか。…夢か。
「一路?どうした?」
「いや、なんでもないよ。驚かせてごめん。」
途中で妙な夢を見たりしたものの、無事新しい家に着いた。
それは、オシャレな家が立ち並ぶ住宅街の真ん中にあった。
夢を見ている間に田舎町についたみたいで、田んぼと畑がたくさんある。けれど建物もたくさん建ってる。まぁ、田舎町だ。詳しくは俺も知らないので想像に任せる。
白い家。それが第一印象だ。
三階建ての雰囲気の明るすぎる白い家。そんな感じ。
「家具とかは業者さんが置いてくれたから。俺の指示通りに。」
「え?前にここ来たの?」
「いや、メモ渡しただけ。」
何で今カッコつけた。…まぁいいか。
「じゃあ、俺は母さんと家の中を見て回る。お前はどうする?」
「ごめん、ちょっと休ませて。」
「部屋二階にあるから。{いっ君の部屋}ってドアにかけてあるカら」
「顔面潰すぞ?」
「嘘です。{いちろの部屋}ってなってます。」
「おし。」
疲れていたので、家の中を見たりせず、部屋に直行して寝た。何も考えず。寝た
- Re: 青春バイバイ ( No.3 )
- 日時: 2011/02/19 14:38
- 名前: ヌアッフ (ID: 12T.pym5)
{回想}〜二年ぐらい前〜 途中
目が覚めた。
天井の色が見慣れない色に変わっている。
ガバっと起きた。そして、急いで周りを見た。
自分の使い慣れた勉強机などの家具が部屋に置かれている。
どうゆう事だ?ここはどこだ?自分は何故ここにいる?昨日何が……。
思い出して再びベッドに寝転んだ。
「引っ越したんだった。ド田舎に……忘れるか?フツー」
さっき慌ててた自分を思い出して自分で笑った。ダッセー、何焦ってんだか。
起き上がってまた部屋を見てみる。丁度いい位置に窓があるみたいで、日が差して部屋はとても明るい。壁紙が白いからなおさらだ。壁にかかってる時計を見た。
「12時。そんなに寝てたのか。」
そういえばお腹が空いた。食うもん探すついでに家の中見て回るか。
俺はベッドを降りた。
{回想}〜二年ぐらい前〜 終わり
目が覚めた。夢から覚めた。目覚まし時計は使っていないので、起き上がって、壁時計を見た。7時20分。ぐらい。
今日は遅刻はしなさそうだ。ベッドから降りた。
カーテンを開けて部屋に光を入れる。
ちょっと眩しい。
ふと、部屋を見てみた。2年間ぐらい使ってきたこの部屋。二年前と大した変化は無く、本棚がパンパンになってる事以外は特に変わりは無かった。壁紙も純白を保ち。勉強机も新品同様とは言えないがキレイだ。青いカーペットにはシミはおろか、糸くずすら落ちて……た。糸くずは落ちてた。拾って小さなゴミ箱へ。…何か悔しかった。
何故か、部屋に変化が無いことに寂しさを覚え、ちょっと汚してみたくなった。当然止めといたけど。
着替えを済まして、髪も適当に整えてから部屋を出て一階に降りた。
リビングに行くと、父はもう起きてた。食卓のいすに座って、いつも通り新聞を読んでいた。
「おはよう。」
「おう、おはよう。」
俺は父の正面に座って、用意されていたトーストにかじりついた。ちょっと冷めてる。また何か悔しくなった。
「ほっかほっかのトーストが食べたかったらもっと早く起きろ。」
父に笑われた。悔しい。今日は悔しい日だ。…どんな日だよ。
「母さんは?」
これまた若干冷めたコーヒーを飲んでから言った。
「まだ寝てるよ。」
「今日も一緒に畑行くの?」
「母さんを一人には出来ないだろ?」
「そりゃそうだ。」
その後、歯を磨いて鞄いじって外に出た。
閑静な住宅街の真ん中にうちの家はある。朝なんか特に静かで、生活の音はおろか、鳥のさえずりすらも聞こえない。寂しいところだ。昔は陰鬱な雰囲気が漂っていて怖いところだった。しかし、今は怖くない。今は田舎特有ともいえる暖かさが町を包んでいた。この町も変わった。いや、変えた。
十分ほどして明石中学校に着いた。
1学年4クラス。1クラスに約40人の生徒がいる。平均偏差値は学校全体で53。とてつもなく普通の学校だ。
形は真上から見ると「エ」の文字に見える。上の横棒がA棟。真ん中の縦棒が渡り廊下。下の横棒がB棟。
A棟は三階建てで主にクラスの教室がある。職員室もA棟にある。
B棟は二階建てで主に移動系の教室がある。家庭科室や理科室とか。
俺は三年一組。
教室に収まらず廊下もガヤガヤしてる。朝の休み時間だし、当然か。いい雰囲気だ。
教室のドアを開ける。すると、すぐ目の前で何かが落ちた。
「?」
足元を見ると黒板消しがあった。…なんでこんな古風な事を。
モサン
「!!!」
びっくりして一瞬体が硬直してビクッとなった。何かが後頭部に当たったみたいで、急いで振り返るとそこにはチョークのついてない黒板消しが紐で吊るされてプラーンとなっていた。
「よっしゃ大成功!!!」
窓際にいる男たちが揃って大騒ぎし始めた。なるほど、はめられたのか。一本とられた。黒板消し落としも進化したもんだ。…何で黒板消し落としから離れないんだ。っていうかすごい悔しい。そして恥ずかしい。
自分の席に荷物を置いて、まだ大笑いしている男共のいる窓際へ向かった。
「はめられてやんの!」
友達のA君がこっちを指差して笑った。
「うるせー!!っていうか古典的な事すんな!小学生か!!」
「でもそれにはまってんじゃんww」
「なっ!う、うるさいうるさい!!」
男たちの笑いは止まらず、いつのまにか自分も笑っていた。
これが俺の昼の日常。
この学校にはいじめが無い。全くもってない。喧嘩はあるけど、陰口は無い。集団同士の対立もあるけど、仲間外れは居ない。
皆清らかで穏やかな心を持っている。今時珍しい熱血系もいる。
でも、一年前は酷かった。人間関係はどろどろだったし、皆ピリピリしてて居心地が悪かった。教師ですら生徒をひいきしたりしてた。最悪な学校だった。
さらに、学校だけでは収まらず、この町全体がおかしかった。
今では愛想のいいご近所さん。気のいいおばさん連中。でも昔は違った。近所の人はいっつも難癖つけて文句言いに来るし、おばさん達も、いっぱい集まって何かいじるネタを探し出して皆に広め、意味不明な意地悪をしてくる。
皆極端なまでに新入り(引っ越してきた人)を拒んできた。異常なまでに嫌ってきた。
正直言って不自然すぎる。意味が分からない。世の中変な人が多い。しかし、ここの人たちは意味不明すぎた。とにかく何かぎこちなかった。まるで、そうしたくなくてもやってしまう。無条件にイライラする。何かが自分たちをそうさせる。そんな感じの人が多かった。とにかく変だった。異常だった。
しかし、今ではこの通り。ほのぼのと、皆のびのびとしてる。むしろ今度は逆に異常なまでに穏やかになった。良い事だけど。
実は、これについてはいつも俺が夜中にやっている仕事に原因があったりする。
- Re: 青春バイバイ ( No.4 )
- 日時: 2011/02/16 22:53
- 名前: ヌアッフ (ID: 12T.pym5)
回想{昔の起きてた事} 始まり
今日は日曜日。
冬の寒さも引いてゆき、ふと気づくともう五月中旬。気温が程よく高く、暖かくてすごしやすい時期になっていた。
ここに引っ越してもう二ヶ月。こっちの中学校に入学して一ヶ月。
父は早くも農業のコツをつかみ始めてる。母も、この土地が気に入ったのか、それとも前よりも父と一緒にいられるのが嬉しいのか、顔色が幾分か良い。ちなみに、今日は二人とも少し遠い所まで買い物に行ってる。色々と買いたい物があるらしいらしい。
そして、肝心の俺は、日曜日だというのに一人で自転車に乗って町の中を散策中だった。
日曜日は大体こうだ。当ても無く町中、たまに隣町までぶらぶらする。
そのおかげでこの辺がどうゆう地域か分かってきた。
ここはどうゆう所か?その答えは簡単だ。何も無いド田舎だ。
あるものといったら、田んぼと畑。廃れた商店街。図書館公民館小中学校。時刻表がほぼ読めないバス停。30分に一回しか電車が来ない駅。たまに店員がいなくなるコンビニ。錆びた遊具しかない小さな公園がいくつか。地域密着型のスーパー。人の気配をほとんど感じない住宅街。以上だ。
何も無いというのは撤回しよう。だけど、無いもの、古いもの、が多すぎる。
ここは、そんな所だ。
そして、俺は今過酷な環境な中で生きている。
田舎の人は穏やかだ。と、いうイメージがあった。皆ほのぼのと暮らしているイメージがあった。だけどそれは違った。実際は、酷いところだった。
学校では人間関係がどろどろしていて、いじめが盛んに起こる。陰口や仲間はずれ等といった陰湿なものが多い。俺は皆を避けて教室の隅で静かに過ごしてるから今のところは無事だ。
教師でさえ生徒にひいきをしている始末。
学校だけでは収まらない。近所の人だってどこかおかしい。
例えば右隣に住んでいるおじさん。
ほぼ毎日うちの家を訪ねて来てはは覚えの無い文句を言われる。
「お前の家から笑い声とかの騒音が聞こえる。静かに暮らせないのか?」
ここに越してから騒いだことも大笑いしたことも無い。
「あんたの家の前がゴミがたくさん落ちてて汚くて気分が悪くなる。」
いや、俺ら関係ないじゃん。
「この前お前の親がタバコ吸いながら歩いてるのを見たぞ。この辺に住んでる年寄りのことも考えろ。」
父さんタバコすわないし。母さんも吸わない。
みたいな感じですっごく無理やり難癖つけて文句言いに来る。しかも、一方的に文句言ってこっちの話なんて聞きやしない。さらに、決まって親がいないときに文句言いに来る。
不自然だ。三流のイジメ小説とかじゃあるまいし。こんなベタを通り越して意味不明な人たちがたくさん住む地域があるのだろうか。まぁここにあるわけだけど。
確かに、他の学校だって多少はイジメはあるだろうし、隣の家のおじさんみたいに変な人は世の中にいるかもしれない。
だけど度が過ぎる、酷すぎる、訳が分からなすぎる。とにかくこの町は異常だ。
みんな常にイライラしてて、行動の一つ一つに意味が無く、ぎこちない。なんか変だ。まるで無理してるような。無理して、訳も分からずイライラしてる。そんな印象を受けた。
そんな状況で俺は生きてる。
- Re: 青春バイバイ ( No.5 )
- 日時: 2011/02/19 14:40
- 名前: ヌアッフ (ID: 12T.pym5)
回想{昔の起きてた事} 途中
本日の町中散策も成果は無く。今日という時間を無駄に過ごしてしまった。
日はもう傾き、オレンジ色になって沈んでいく。
今日も人にはほとんど会わなかった。相変わらず寂しいところだ。厄介な人に会うよりは良いけど。
「あ…」
自分の家の前に、隣人のおじさんがいる。
おじさんの足元には、タバコの吸殻が散らばっている。結構な量だ。おじさんがどれくらい俺の家の前で待っていたのかが分かる。
俺の家の前汚してんのお前じゃん。心の中でつぶやいた。
文句言われるのが嫌なので、家に帰る時間を遅らせることにした。
住宅街の真ん中に小さな公園がある。そこで時間を潰すことにした。
動物の形をした小さな遊具があるのだが、塗装が剥がれてホラーになっている。砂場にも雑草がぽつぽつ生えていて、最近遊ばれていた形跡は無い。実際ここで遊んでる人を見たことが無い。
ブランコに腰掛けた。軽く漕いでみる。ギィーコーギィーコーと錆びた音がする。かまわず漕ぎ続ける。
「何やってんだろ、俺。」
引っ越すと言われたとき、ちょっとショックだった。慣れ親しんだ友との別れ。また、知らない場所に行くという恐怖。そして、新天地にかける期待。ありきたりで、引越しと聞いて誰もが感じるであろう事。
正直に言うと、期待のほうが大きかった。中学生になって0からのスタート。そう思うとわくわくドキドキした。
登校初日なんか柄にも無く自己紹介の文を何回も練習したりもした。
しかし、現実は厳しい。思い描いていた理想像を簡単に裏切り、このありさま。
「はぁ。」
ブランコを漕ぐのを止め、ため息を吐く。俺は途方にくれていた。
しばらくブランコに座ってボーっとしていた。
そして時が経ち。外はすっかり暗くなり、夜の寒さが辺りを包んだ。
公園の近くに一本だけ立っている街灯では、夜の闇を照らしきれず、ほとんど真っ暗な状態。一瞬自分がどこにいるか分からなくなった。
ハッっとなって気がついた時には自分の周りはそんな状況だった。
いったいどれくらいボーっとしていたのだろう。やっぱり最近疲れてるのか、長時間ボーっとすることが多くなっていた。
いい加減あのおじさんも帰っただろう。自分も帰ろう。外もだいぶ冷えてきた。
そう思ってブランコから腰を上げたときだった。
「!!!!!」
それは突然やってきた。何の前触れも無く、急に来た。
ドロっとした何かに体を覆われているようなこの感じ。気分と体を重くするこの感じ。そして俺は知っている、この感じを。
確か二ヶ月ぐらい前。ここに車で向かってた時の事だ。その時も何の前触れも無くこうなった。でもあれは確か夢だったはず。
しかし、二ヶ月前とは違って少し症状が軽い。動けないほどでもない。
これは早く帰った方がよさそうだ。何かの病気かもしれない。
公園から出て自転車にまたがる。
「?」
その時、妙な気配を感じた。まるでこの不快感を放出してる根源のような。その気配のする方向に不快感を強く感じるのだ。いや、この不快感そのものが気配。そのほうがしっくり来る。
一つ二つ……ダメだ数え切れない。たくさんの気配を色々な所から感じる。
ヤバそうだ、急いで帰ろう。
用心のためかけておいた鍵を外し、自転車にまたがる。
気配は避けて行った方がよさそうだ。
…近くに気配がある。こちらに向かって動いてきてる。
急ごう。こうゆうのは近づかないに限る。
ペダルに足をかけ、初めから全開で漕ぐ。住宅街を家目指して疾走した。
近くにあった気配とすごい速さで遠ざかり、ひとまず安心。したのがまずかった。
前方、しかもすぐ近くに気配を感じる。さっきの気配に気をとられて気づかなかった。そして、
ガン!!!
自転車が何かにぶつかり、体を投げ出された。
ぶつかった何かの真上をすれすれで通り過ぎ、その何かの近くに落ちた。
胸を強く打った。でも先に腕が地面についたから多分大きな怪我はしないと思う。
急いで起き上がって衝突した何かと向き合う。街灯は無く、月も雲に隠れてるから真っ暗だ。そのせいで向き合った何かが何か分からない。シルエットは人の形をしているが、何だが様子が変だ。
自転車にぶつかっても微動だにしないなんて、さすがに人間じゃ考えられない。
逃げよう。こいつもあの気配を放出している。危険だ。
そう思って背を向けた時。
スパーン!!
「ぐあっ!」
その何かに背中を弾かれて体が吹っ飛んだ。また前のめりに倒れる。
背中が熱い。多分切れてる。まるで鋭い鞭で叩かれたような感じだ。
「うぐあっ!!」
痛みに悶え、のたうち回る。渾身の力を振り絞り、何とか立ち上がって相手と対峙する。
丁度雲が晴れ、月が現れた。
月の光に照らされ、相手の姿があらわになる。やはりそれは、人ではなかった。
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