ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- ゴッドチャイルド
- 日時: 2011/02/18 23:47
- 名前: ニック (ID: 5R9KQYNH)
魔力を持つ者が魔力を持たない者を支配する世界—魔導世界
超大国グラナダは次々と他国に戦争を仕掛けて領土を拡大するだけでなく、神子の弾圧にも力を入れていた。
神子。背中に翼の様なアザを持つ「神の御子」。あまりにも莫大な魔力を持つ事から弾圧され、神子から奪った魔力でグラナダは軍事力を強化し、さらなる領土を求めた。
寒村で暮らす農夫、クラウスはある日、行き倒れた1人の少女を助ける。
クラウスのこの行動が後に、グラナダ全土を揺るがす事態へと発展する—
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「常なるものなど何もない。何かを得てもいずれ失う。最初から何も求めなければ良いのだ。最初から何も求めなければ何も失わない」
「戦乱こそ、闘いこそが人の生の本質だ!!」
「…我々は楽園から追放されたのだよ。だから永遠に苦しまなくてはいけない。それが人の生の本質だ」
「どうせ私が死んでも、悲しんでくれる人なんて誰もいないっ!誰もいないんだよ!!」
グラナダ史上最悪の内乱「グエン=シーリングの乱」は多くの人間の運命を捻じ曲げた。
守る者。
憎む者。
企む者。
奪う者。
癒す者。
殺す者。
逃げる者。
苦しむ者。
諦める者。
正義を貫く者。
戦いを求める者。
そして、答えを探し求める者。
—様々な人間の運命が戦乱の世で交差する—
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はじめまして!ニックです。
もともと本を読むのが好きで、どうせなら書いてみようという事で初めて小説を書いてみました。初心者なので文は拙く、誤字脱字もあるかもしれませんが、温かく見守ってください。
感想やレビュー大歓迎です!
今後の文章作りの参考にしたいと思っています。
基本、マイペースなので更新は不定期です。
ちょっとした時間に読んでもらえたらいいかなと思っています。
少しでも皆さんに楽しんでいただければ幸いです☆
- Re: ゴッドチャイルド ( No.5 )
- 日時: 2011/02/20 01:09
- 名前: ニック ◆nU4SagZwXU (ID: y/BzIObq)
「あぁ、今日はウチのガキがどうしても来たいって言うから連れてきちまったよ。悪いが少し相手をしてやってくれないか」
クラウスは内心舌打ちをする。
ガキは嫌いだ。ピーピーギャーギャーうるさいし、中途半端に懐いてくるガキは特に嫌いだ。ニドの親戚の子、アンディはその代表格だ。
「おじさん!また戦場の話しを聞かせてくれよ!」
(ほら見ろ。また始まった。そもそも中途半端に戦場の話しなんかしなけりゃよかったんだ)
クラウスはあからさまに嫌な顔をする。
アンディは11歳の子供にしては背が高い。その所為か黙っていれば大人っぽく見える。だが、喋るときはいつも大きな声を出すのでアンディと話す時は頭痛がする。アンディはいつ、どこでもハチマキを頭に巻いている。トレードマークなのだそうだ。何でも死んだ父親からもらった形見らしく、アンディはその形見を肌身離さず着けている。
そういう所は可愛いのだが、戦場の話しをねだる時は正直うっとうしい。
「あー、もう話す事はないから」
煩わしさを隠そうともせずクラウスは無愛想に返事をする。
「そんな事ないだろ!おじさんは軍のすごい兵士だったんだろ?いろんな話し聞かせてくれよ!」
なんでコイツがそんな事知ってんだ。答えは決まっている。クラウスは無言でニドを睨むがニドは知らん振りをきめこむ。ニドは嫌いではないがこの口の軽さは大嫌いだ。一度キツく言っておかなければ。
そう決意をしている間にもアンディのゴリ押しが容赦なく続く。
「そもそもなんでお前はそんなに戦場に興味があるんだよ。言っておくが戦場はそんなにステキな場所じゃないんだぞ」
半ば根負けして、ため息をつきながらクラウスはアンディに尋ねる。
「俺は兵士になりたいんだ!敵をたくさんやっつけて英雄になりたいんだ!そのために剣術も魔力の使い方も毎日特訓してるんだぜ」
少し前、今日みたいにアンディにゴリ押しされ、半ば無理矢理修行に付き合わされた事があったが剣術も魔力もそれなりに筋がある。クラウスはそう思っていた。だが、その程度の人間なら戦場にゴロゴロいる。
クラウスはまっすぐにアンディを見つめ、諭す様に言う。
「いいか。アンディ。おまえはアゴを吹っ飛ばされてのた打ち回っている奴を見た事があるか?腹から盛大に内臓をぶちまけて殺してくれ、早く殺してくれって泣きながら頼んでくる奴を見た事があるか?」
アンディは息を呑む。
「いや…ないけど…」
- Re: ゴッドチャイルド ( No.6 )
- 日時: 2011/02/20 01:11
- 名前: ニック ◆nU4SagZwXU (ID: y/BzIObq)
「それが戦場だ。いいか、戦場ってのは殺さなくちゃ自分が殺される。そんな場所だ。どんなにまともな奴でも戦場に行けばおかしくなる。殺す事が日常になっている奴が生き残るんだ」
そうだ。戦場とはそんな場所だ。どんなに生き残りたいと望んでも次の瞬間には首を吹っ飛ばされる。どんな慈悲も許容も存在しない。たくさんの犬死にを重ねて生まれるのは憎しみと悲しみだけだ。
「英雄って言ったってただ人殺しが得意なだけだ。刑務所に入ってる犯罪者と何も変わらねぇ」
かつての自分を思い出しながらクラウスはアンディに話しかける。アンディはもはや声も出ない。その顔は戸惑いの色が隠せない。
「戦場で死ぬ奴のほとんどは犬死にだ。その死には何の意味もねぇ。そんな場所におまえは行きたいのか?」
「犬死になんかじゃない!」
突然アンディは大声で叫び、涙を浮かべ、声を絞り出した。
「父さんは僕を守るために戦場に行ったんだ!命をかけてまで僕を守ってくれた!勇敢に戦ったんだ!そんな父さんの死は無駄なんかじゃない!」
そう言ってアンディは走り去ってしまった。
「…言い過ぎちまったみたいだな。すまん。ニド」
「いいさ。あんたに悪気がない事はわかってる。あの子は…不憫な子でな。あの内乱で自分の父親を喪って家族を失っちまった。たまたま俺みたいな親戚がいたから良かったんだけどな。普段は明るくしていても色んな事を抱えてる。俺に心配かけまいとそれを必死に隠してる。まだ11歳の子供なのにな」
「…」
「そんな奴だから放っておけなくてよ。自分の子じゃねぇが自分の子の様に育てたい。そう思うんだ」
「…あぁ」
「ちょっとしめっぽくなっちまったか。悪いな。クラウス。気を悪くしないでくれ。あの子はあれでもあんたの事が好きなんだよ。また相手してやってくれ。じゃあ、また明日来るよ」
「あぁ。アンディにはすまなかったと伝えてくれ」
そうあいさつを交わしてニドと別れた。
少し言い過ぎたか…。クラウスは自分の発言に後悔する。戦場にはアンディの父親みたいな奴もたくさん居た。家族を守るために戦う男達が。彼らの死までも犬死にと言うべきじゃなかった。
(水でも汲んでくるか…)
暗鬱な気分を晴らすつもりでクラウスは桶を持ち、裏山へと歩き出した。
クラウスは裏山から流れ出る水で生活しているため、水を汲みに裏山に行く事は日課になっている。
クラウスはアンディとのやり取りを反芻しながらすたすたと山道を歩く。やがて裏山の小川に辿りつき、水を汲んでいると奇妙なものを見つけた。
「なんだ…子供?」
そこには全身生傷だらけの少女が倒れていた。ピクリとも動かない。遠目からでは生きているのか死んでいるのかわからないため、クラウスは少女の側に行き、脈をとる。
(…脈はあるな。それにしてもなんで子供がこんな所にいるんだ?なんにせよ面倒な事になったな…)
クラウスは一瞬放っておくかどうか迷った。俺には関係ない。普段ならそう思う所だが、先ほどのアンディとの一件で妙に罪悪感が滲み出る。
(…やれやれ)
大きなため息をつき、水を満載にした桶と女の子を肩に抱き、クラウスはゆっくりと塒に戻っていった。
彼のこの行動が後にグラナダ全土を揺るがす事態に発展する事を、クラウスはまだ知らない。
- Re: ゴッドチャイルド ( No.7 )
- 日時: 2011/02/22 00:55
- 名前: ニック ◆nU4SagZwXU (ID: y/BzIObq)
少女は、なかなか目覚めない。
あれから2日経っても少女は意識を取り戻さなかった。生傷には既に薬草を塗り、包帯が巻いてある。
極度の疲労の所為なのか少女は衰弱していた。まだ名前も知らない子供だがいまさら放って置くわけにもいかない。クラウスは懸命に看病を続けた。
(なにやってんだかな…俺は…)
クラウスは自嘲する。俺がここに来たのは全てを捨てたかったからじゃないのか。もう誰とも関わらず、1人で死ぬためじゃなかったのか。
蝋燭が照らす部屋の中で自問が続く。
—常なるものなど何もない。何かを得てもいずれ失う—
かけがえのない大切なものを手に入れた。だが、それらは全てあの内戦で失った。心を引き裂かれる様な痛み。こんな痛みはもう味わいたくないと思った。最初から求めなければいいのだ。最初から何も求めなければ、何も失わない。そうすれば何かを失う痛みを味わう事もない。そう心に決めたはずだった。だが、どうしてもあの少女を見捨てる事が出来ない。
2日目の夜。少女はひどくうなされていた。全身に汗をかき、何かに怯える様に体を震わせながら—
「…行かないで…1人にしないで…お願い…」
少女は、何度も、何度も、呟いた。
(この子も誰かを失ったのか…)
誰かを失う痛み。それは言葉では表現出来ない痛み。あまりに突然で、あまりに理不尽に訪れる死。最初は涙も出ない。本当に悲しい時には涙さえも出ないのだ。そして、しばらくすると思い出した様に流れる涙。それからは永遠の離別を、ただただ嘆くのみ。
水で濡らした手ぬぐいで少女の額を拭いた。
少女はなかなか目覚めない。
- Re: ゴッドチャイルド ( No.8 )
- 日時: 2011/02/22 00:57
- 名前: ニック ◆nU4SagZwXU (ID: y/BzIObq)
その日の夜。クラウスは夢を見た。
とても懐かしい…自分が現役の軍人であった時の夢。
「クラウス。おまえは何のために戦うのだ?何のために敵を殺すのだ?」
突然、ダリウスはクラウスにこう切り出してきた。クラウスは戸惑った。ダリウスがクラウスにそんな事を訊いてくるのが初めてであるという事以上に、深い悲しみを宿したダリウスの目に動揺した。
「…生きるためだ。俺はそういう生き方しか知らない」
「いいか、よく聞け。クラウス。おまえが持つ武器の意味を知れ。武器とは相手を傷つけるためにあるのではない。誰かを守るために武器を持つのだ。今のおまえにはわからないかも知れぬ。だが、おまえもいつか、誰かを守るためにゲイヴォルグを握る日がやってくる。必ずやってくるのだ。決して、その事を忘れるな」
(…あんたの言う事は当たってるよ、ダリウス。それからしばらくして俺にも守るべきものが出来た。ミリアを守るためにゲイヴォルグを握った。)
…やめろ…
(押し寄せるアヴァロン軍にゲイヴォルグだけを携えて戦いを挑んだ)
…やめろ…
(血まみれになった。傷だらけになった。それでも必死に戦った。必死に戦ったんだ。だけど戦いが終わって見たものは…)
やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!
クラウスは絶叫して、跳ね起きた。体が冷や汗で濡れている。
「…クソッタレが…」
光のない闇の中でクラウスは小さく、呟いた。
- Re: ゴッドチャイルド ( No.9 )
- 日時: 2011/02/22 20:52
- 名前: ニック ◆nU4SagZwXU (ID: y/BzIObq)
それから2日経って少女は目を覚ました。
少女は薄汚れたベットからゆっくり起き上がり、未だ虚ろな目で周囲を観察する。
「…ここは…」
「俺ん家だ」
少女の問いにクラウスはそう答える。いつも通り愛想はない。
「ここはカーシャ村の端っこだ。」
「カーシャ村…」
そう言って少女は俯いてしまう。
「4日も眠ってたんだ。腹が減っただろう。今、スープを作っているところだから出来たら持ってきてやる」
「あ、ありがとうございます…傷、手当てしてくれたんですね。ご迷惑おかけしてごめんなさい」
「あぁ、いいよ。さすがに放っておくわけにもいかないから。ほら、スープ。」
クラウスは少女にスープが入ったお椀を手渡す。畑で獲れた野菜がふんだんに使ってあるから栄養はある。
少女は喉を鳴らす。だが、なかなかお椀に手を伸ばさない
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