ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- IFの理由 −完結−
- 日時: 2011/05/29 18:43
- 名前: 鵺 (ID: gfIXAr2y)
こんにちわ。また小説を載せることにしました。
どうぞよろしくお願いします。
※荒らしはやめてください。
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- Re: IFの理由 ( No.6 )
- 日時: 2011/04/10 00:46
- 名前: 鵺 (ID: Mcv4ElBd)
彼女は亜紗ちゃんというらしい。
見たところ5,6歳だろう。
亜紗ちゃんは時々私の所へやって来る。
そして思い切り泣いて、気が済んだら帰っていく。
私には心はあるが感情はない。この二つは似ているようでまったくの別物だと私は思うのだ。
だから私には亜紗ちゃんの泣くという行為が分からない。
でもまぁ、こんな小さい子のことだ。お母さんに叱られでもしたんだろう。
・・・・・・しかし、だったら何故こんな所まで来たのだろう?
人間という生き物は面倒くさい生き物だ。
それはきっと優れた頭脳、そして感情のせいなのだろう。
こんなにも幼き者にも例外なく与えられるもの。憶測に過ぎないが彼女の泣く理由もこれが関わっているだろう。
— あぁ、彼女はこの先、光ない道を歩むのだろう。
その短い生涯の中で耐えがたい苦しみを味わうだろう。
それでも逃げることは許されず、苦しい苦しいと叫ぶだろう。
あぁ、哀れ。あぁ、哀れ・・・。
- Re: IFの理由 ( No.7 )
- 日時: 2011/04/29 20:30
- 名前: 鵺 (ID: txYMsE4u)
亜紗ちゃんは今日もやってきた。そして、何も語らずただ静かに泣き、帰って行く。いつもと同じ。
そう・・・・・・いつもと同じ、だと思った。
「私、・・・死んじゃおうと思ったこと、あるのよ。」
初めて、少女が口を開く。
「ねぇ、あなたには分からないと思うの。」
゛あぁ、分からないさ。"
゛君は語らないし、私も気にならないからね。"
心の中で返事をする。
「私、きっと始めて会った時からあなたに惹かれてたの。あなたがいけないのよ?」
゛そうかい。"
「・・・ねぇ、私おかしいのかしら?だって私、他の友達とは明らかに違うのよ。」
確かに。この子は大人びてる。まるで、自分は聞き分けのいい賢い子でなくてはいけないのだと言うかのように。
「でもね、私それでもいいと思うの。だって人ってそれぞれ違うもの。分かるでしょ?」
゛さっきと言ってること、矛盾してないかい?"
「ねぇ、いいのよ?誰がなんと言おうと。ねぇ、聞いて?私、お母さんの前で泣かなくなったのよ?そしたらね、お母さんも泣かなくなったのよ?」
゛そう、よかったね。"
「泣かなくなったらね、今度は笑えなくなっちゃったのよ?そしたらね、お母さんはまた泣くようになったわ。」
「ねぇ、見て?・・・ほら、素敵な笑顔でしょ?無邪気な、子供みたいな笑顔でしょ?ねぇ、私、頑張ったのよ?」
亜紗ちゃんの顔に張り付いた、完璧な笑顔。その笑顔には違和感などなさすぎて、逆にそれが違和感になっていた。
「私ね、お母さんのためなら何だってできるわ。だって、私のたった一人の家族なんだもの!」
「人を愛するって素敵な事よ。でも、分からないでしょうね。あなたには心がないもの。」
亜紗ちゃん、それは違うよ。私には心があるんだ。人間と同じかは分からないけど、確かにあるんだよ。
あぁ、でもね亜紗ちゃん。君の言った通りだよ。私には理解できない。
でもね亜紗ちゃん。これだけは分かるよ。
君は歪んでる。
- Re: IFの理由 ( No.8 )
- 日時: 2011/05/13 23:16
- 名前: 鵺 (ID: Pa6wZ.rX)
゛笑顔の理由を知っていますか?"
−sied亜紗−
「私、死んじゃおうと思ったこと、あるのよ。」
私は初めて、この木に話し掛けた。
「ねぇ、あなたには分からないと思うの。」
もちろん、返事なんて返って来る筈もなくて。
それでも私は語る。何故だか今日は気分がいい。
「私、きっと始めて会った時からあなたに惹かれてたの。あなたがいけないのよ?」
ふふっ。初めて告白しちゃった。お母さんにもしたことないのに。
「・・・ねぇ、私おかしいのかしら?だって私、他の友達とは明らかに違うのよ。」
なんでみんなあんなに無邪気なんだろう。何も考えてないんだろう。
羨ましい・・・。私もああなりたい。そうしたら、私だって・・・・・・・・・。
「でもね、私それでもいいと思うの。だって人ってそれぞれ違うもの。分かるでしょ?」
・・・あ、最初の言葉と矛盾しちゃったわ。
「ねぇ、いいのよ?誰がなんと言おうと。ねぇ、聞いて?私、お母さんの前で泣かなくなったのよ?そしたらね、お母さんも泣かなくなったのよ?」
「泣かなくなったらね、今度は笑えなくなっちゃったのよ?そしたらね、お母さんはまた泣くようになったわ。ねぇ、見て?」
そして私は笑顔を作る。
「ほら、素敵な笑顔でしょ?無邪気な、子供みたいな笑顔でしょ?ねぇ、私、頑張ったのよ?」
完璧でなくては困るわ。そのために研究したんだから。
「私ね、お母さんのためなら何だってできるわ。だって、私のたった一人の家族なんだもの!」
「人を愛するって素敵な事よ。でも、分からないでしょうね。あなたには心がないもの。」
返答なんて求めてない。だってこの言葉は私の自己満足。私が私を納得させるためだけの行為。
あぁ、そうだ。私、この木を愛してあげよう。この木が愛することも愛されることも知らないなら、私がこの木を全力で愛そう。お母さんの次に。
どうやら私は報われない恋が好きらしい。
- Re: IFの理由 ( No.9 )
- 日時: 2011/05/21 22:10
- 名前: 鵺 (ID: HBzIqIh1)
あの日から亜紗ちゃんは私に色々話してくれるようになった。
ほとんどがお母さんのことだが。
しかし、それは一週間前までのこと。亜紗ちゃんは最近ここへ来ない。
(どうかしたのだろうか・・・・・・?)
その原因はすぐに知ることとなる。
教えてくれたのは、一羽の小鳥。
「最近まで此処へ来ていた娘さんがいただろう?あの子・・・・・・死んだとよ。」
(・・・・・・・・・)
「アンタにこんなこと言っても分からないだろうが・・・・・・一応報告さ。仲良かったみたいだからねぇ。」
(そうかい。ありがとう。)
心の中で小鳥に返事をする。もちろん、小鳥には通じない。
あの子は・・・死んだのか・・・・・・。ついこの間まで生きていたのに、何てあっけない。何て短い。
小鳥は理由までは語らなかった。
かまわない。あの子のしそうなことを考えればいいだけのこと。
理由を考えると自然と答えは出た。何だか笑いまで込み上げてくる。
あの子は、きっと・・・・・・・・・、
- Re: IFの理由 ( No.10 )
- 日時: 2011/05/29 17:06
- 名前: 鵺 (ID: gfIXAr2y)
゛IFの理由を知っていますか?"
−sied亜紗−
何も知らないことが一番の幸せだ。こんなことを言ったのは誰だったろうか。
まったくその通りだと思う。
私は自分の手首を見た。噴出す赤、伝う赤、広がる赤。赤、赤、赤。
あぁ、真っ赤だ。この赤は、あの人と同じもの。私とあの人との繋がり。
あの人が見たらびっくりするだろうな。ごめんなさい。
私は、弱かった。生きるのが辛いから、死を選んだ。
仕方がなかったのよ。あの人と一緒にいるのが辛かった。
幸せなのに、辛かった。仕方がなかったのよ。
心残りがあるとすれば、お母さんと、あの木のこと。
ごめんなさい。愛してあげるとか言っておきながら勝手に死を選んでしまって。
あの木には言わなかった。私が死ぬことを。
でも、本当に私は、あの木のことを・・・・・・・・・、
重くなる瞼に耐え切れず、私は目を閉じた。
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