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- 愛刀歌
- 日時: 2011/02/26 11:38
- 名前: 山崎直哉 (ID: DU1UqTFp)
山の近くの野原の中心に女がいた
その顔は生きているのか、死んでいるのかわからない
しかし、かろうじて動き、首を上げた
彼女は生気のない顔で月を見上げた
しかし、彼女にとってその月は赤い月のように見えた
彼女の周りは男の血で濡れている。男達が金や領地をめぐり、死を賭けてこの戦場に赴き、そして散った。
血は地面の上に赤い川を作り、その血がこの野原を育てているように思えた
彼女は白い布で包んだその体を愛おしそうに両手でかき抱いた。
死体は彼女を中心に・・・・・いや、死体の中心に彼女はいた
「わからんな」
いきなり、そんな声が聞こえてきた。女が振り返るとそこには
男が立っていた
しかし、その男からは鬼のような殺気が出ていて、それは人であって人ではないように思えた
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- Re: 愛刀歌 ( No.2 )
- 日時: 2011/02/26 11:54
- 名前: 山崎直哉 (ID: DU1UqTFp)
「ええ、それでもです」
男は静かに、ゆっくりと息を吐いた。この女は狂っている
男はそう感じた。
こちらを見ている女は何の表情も出さず、しかし、ゆっくりとこちらに殺気を放っている
「お前の主の、名は?」
男がそう聞くと、女は傍らにある刀を指差して言った
「愛歌刀」
「何だ、その名前は」
「私の主」
「わかっている、だが、なんで刀が・・・・」
そして、男は女が歌うのを聞いた。
いや、女が歌っている訳ではない。
刀が・・・・・・・・・歌を?
- Re: 愛刀歌 ( No.3 )
- 日時: 2011/02/26 22:49
- 名前: 山崎直哉 (ID: DU1UqTFp)
なんと言っているのだろうか?
その声は不思議と聞こえなかった・・・・
だが、歌っていることはわかった
どこから出ているのかさえ分からないその音は死体だらけの戦場に遠く、よく澄んだ音を奏でていく。
女は、その刀を愛おしそうに持ち上げ、その刀身に舌を這わせた。
切れないのだろうか、男は心配になったが、舌を離した女の口は切れてはいなかった
「お主は、鬼の子か?」
いきなりの女のその質問に、男は首を振る
- Re: 愛刀歌 ( No.4 )
- 日時: 2011/03/01 21:13
- 名前: 山崎直哉 (ID: DU1UqTFp)
「そうか、先ほどの殺気は気のせいか」
「殺気?」
「お主は何故ここにいる?」
男の質問はあっさりと無視された
「近くで戦があると聞いてね、珍しい刀でもあるんじゃないかと思い、立ち寄った。しかし、何もなさそうだな」
男は、戦場を見渡しながらそう言った
「武器商人か」
「いや、今はただの野次馬さ」
すると、なにがおかしいのか、女はキョトンとした顔になると、いきなり笑いだした
その声はまるで子供の声のようだった。
「どうした?」
すると、笑いすぎて涙目になった女は自分の目尻を拭いながら
「いや、すまぬ、しかし野次馬はなかろう?」
「いや、実際はただの農民さ、珍しい刀があればそれを売って生計が立てられる」
- Re: 愛刀歌 ( No.5 )
- 日時: 2011/03/01 21:29
- 名前: 山崎直哉 (ID: DU1UqTFp)
「ふん、なんかせこいなお主」
先ほどまで笑っていたのが嘘のような冷えた目で女は男を見た
男はその目に怯まず、その目を見ながら続けた
「この時代、何でもありさ」
「ふむ、なんだかお前が気に入ったぞ」
女はそう言って静かに立ち上がった
「お前の真名は何て言うんだ?」
その質問に対し、男は苦笑いをしながら答えた
「菊、 花風 菊(はなかぜ きく)だ」
「ははっ女子みたいな名前だな」
女はそう言って死体の山を降り始めた
「菊、お前の村はどこにある?」
「ああ、この道をまっっすぐ進んだ後の、山の中腹にある、神風花村って村だ」
「ほほう、村の名前も花の名前か」
珍しそうな顔で女は頷くと、先に歩き始めた
慌てて、男が呼びとめる
「おい、お前の名前も俺に教えてくれ」
女はこちらを振り向くと、「愛歌刀」をさすりながら言った
「私の名は 鬼川 歌刀(おにがわ とうか)だ」
「男みたいな名前だな」
菊がそう突っ込むと、歌刀は静かに微笑み、
「お主もあまり変わらんよ」
とだけ言って、前を向き、歩き出した
- Re: 愛刀歌 ( No.6 )
- 日時: 2011/03/04 22:19
- 名前: 山崎直哉 (ID: DU1UqTFp)
神の風が吹く花の村、それが神風花村。
この村の由来はそんな感じだったのを覚えている
「なかなかいい風が吹くんだな」
月が空を照らすなか、歌刀は村の入り口に立ちながら言った
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