ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- 貴方はアタシのナイトメア
- 日時: 2011/02/28 19:28
- 名前: 佑架 (ID: K68xY4Ax)
深い、深い……とても、深い、とても、暗い……とても、冷たい……
自分が誰かも……分からない……
——「アタシは誰ですか……?」——
ふと、呟いた……何時も毎日、何度も、何度も、呟いた……
そして、アタシは泣く……誰にも悟られずに……
でも、
ず…………っと泣いていたアタシを、助けてくれた貴方……ただ、
貴方はアタシの悪夢でしか無かった……
——————————————————————————————————
<登場人物>
名/性/歳 アタシ(アタシ)/♀/十代半ば
他色々 ・記憶が無い
・名前は一人称から取った
・他人からは『アンタ』や『オマエ』等と呼ばれる。
名/性/歳 夜士/♂/不明
他色々 ・アタシを見つけた張本人
・色々と謎が多い
・アタシに『悪夢さん』と言われている
<作者から>
どうも、作者です。今回の話は、グロ表現があります。
観覧の際には注意してください。
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- Re: 貴方はアタシのナイトメア ( No.3 )
- 日時: 2011/03/05 17:28
- 名前: 佑架 (ID: ZEjsU2TR)
「悪夢荘には他の人は居ないんですか?」
「えぇ。他の方々は何処かへ引っ越したんです……我々では嫌ですか?」
「そ、そういう訳ではないですっ!」
「ねぇねぇ、夜士は〜?」
「夜士は〜?」
「…………帰るって、言ってました……です。」
「「なぁ〜んだ。つまんないの〜。」」
「今日のおやつ何にすっか?」
「……フォンダンショコラ。」
「そりゃ、先週食ったろうが。別のにしろ。」
「……じゃあ、胡麻団子。」
「わーった。お前も手伝えよ。」
≪第三話 『悪夢荘』を探検≫
広い廊下を大勢で歩く。
悪夢荘は大きな館とは裏腹に、居住者は自己紹介をした六人だけ。
それ以外は何処かへ引っ越したらしい。
少し歩いていくと、『食堂』と書かれたプレートが貼ってある灰色の扉の前に来た。
「此処はダイニングキッチン。
此処以外に料理できる所は無いので、時間になったら此処で朝昼晩のご飯、三時のおやつを食べます。
隣のリビングにもテレビが在るので、暇潰しに使ってください。
調理場の管理は真偽に任せてあるので、もし使いたいときは
彼に声をかけてください。」
「たまに僕らが居るよ〜!」
「退屈だったら一緒に遊んでね〜」
「うんっ!」
広い調理場に、ゆったりした雰囲気のダイニングルーム。
ご飯の時間が楽しみになる。
……あれ?アタシご飯食べたことあったっけ?
ま、いいや。
「次は僕たちの部屋と、君の部屋を案内します。」
また広い廊下をぞろぞろと歩く。
後の方で紅鬼君と藍鬼ちゃんが真偽さんをおちょくっていたけど……
多分気のせい。
「僕たちの部屋は、其々の髪の色で分けているんです。」
「それは分かりやすくする為ですか?」
えぇ、と少し壱世さんが微笑んだ。
綺麗な顔立ちだと今更感じる。
広い廊下を進んでいくと、色とりどりの扉が蝋燭の灯りで照らされていた。
扉の前の廊下を左に曲がり、茶色の扉の前で壱世さんが止まる。
「此処は僕と弐成の部屋。
弐成は僕と一緒でなければ嫌らしいので、こうするしかないんです。」
目の前の茶色の扉を前に、壱世さんが困ったように笑う。
「その右隣の部屋が君の部屋。
扉の色が前に使っていた人の色だけど、気にしないでね。」
隣の部屋は臙脂色の扉に金のドアノブがついていて、真新しく見える。
くるりと方向転換し、また広い廊下の前に出る。
「で、その隣が紅と藍の部屋。
奇抜だから分かりやすくて良いと思うよ。」
「聞き捨てならないよ、壱世ぇ〜。」
「奇抜ってなんなのさ、奇抜ってぇ〜。」
紅鬼君と藍鬼ちゃんには悪いけど……確かに奇抜だ。
紅地に藍色のストライプは流石に目立つ。
紅と藍の扉を通り過ぎると、今度は控えめな黄色の扉の前で止まる。
「此処は……吊斬さんの部屋ですか?」
「そうだよ。で、奥の部屋が真偽の部屋。
後は空き部屋だから、案内しなくても良いね。」
あ、と壱世さんが何かを思い出す。
「トイレは部屋にないから、代わりにダイニングキッチンの向かいにあるトイレを使ってね。」
「分かりました。」
トイレは別なんだ……って、
アタシ今までトイレとか行った事あったっけ?
…………思い出せない……
「じゃ、此処で解散。
十八時になったら晩御飯だから、それまで自由行動。」
バラバラと個人の生きたい所へ行く。
リビングへ行く者、自室へ向かう者、外に行く者——
アタシはどうしよう?
「ねぇねぇ、一緒に遊ぼ!」
「遊ぼう!」
「う、うん。良いよ。」
「「やったぁ〜!!」」
紅鬼君と藍鬼ちゃんに手を引かれ、リビングで遊ぶことにした。
その途中、アタシは見てしまった。
廊下に飾ってある額縁からはみ出ていた
紅黒い、生々しい血痕を——
「「どうかした?」」
「……何でも、ないよ。」
「「……そっか。」」
このやり取りを見られていたことを、アタシは知らない。
≪第三話 『悪夢荘』を探検≫ 完
- Re: 貴方はアタシのナイトメア ( No.4 )
- 日時: 2011/03/07 21:03
- 名前: 佑架 (ID: Ryt8vfyf)
「「ねぇねぇ、ご飯まぁ〜だぁ〜?」」
そう言いながら、真偽さんのエプロンの裾を引っ張る二人。
さっきからずっとこの調子だ。
……短気な真偽さんの怒りが頂点に達しそうだ。
「っだああぁあぁぁあぁうるせぇ!!リビングでコイツと遊んでこい!!」
「だって、」「飽きたんだもん」
「「ねぇ〜!!」」
ついに爆発。その間三分。短いが、本人にとっては長いと思う。
アタシ達はトランプに飽き、調理場にいる吊斬さんと真偽さんの元に来た。
≪第四話 記憶の断絶‐前‐≫
当然の様に調理場から追い出されたアタシ達三人は、渋々壱世さんと弐成さんの部屋へ
行くことにした。
「ヒトの部屋には、いーっぱい絵本があるんだよ!」
「難しいのもあるけど、いつもニナが読んでくれるんだ!」
「へー……二人はよく壱世さん達の部屋に行くの?」
「「たまぁーに、だよ!」」
質疑応答をしている間に、壱世さん達の部屋に着いた。
「いらっしゃい。ゆっくりしていってね。」
「「おっ邪魔っしま〜す!!」」
「すみません。いきなり押しかけてしまって……。」
「いえいえ、お気になさらずに。」
「ハーブティーを淹れてきますね。」と一言断って、壱世さんは調理場へ向かった。
二人が椅子の傍で体育座りをしている弐成さんに駄々をこねる。
「「絵本読んで!」」
「良い、けど……何読んで、ほしい?」
「「仲良し姉弟シリーズ!!」」
「……分かった。」
仲良し姉弟シリーズ……確か、陽気な姉のサリーと頭の良い弟のリトのお話……だったかな?
お散歩したり、いきなり誘拐されたり……楽しいお話——
「う゛っ!!」
「「アーちゃん?」」
「……?」
「あ、がぁ……ぁ……あ゛ぁああぁぁぁああぁあぁあ゛ぁぁあ゛あぁああ゛ぁ!!!」
痛い。頭が痛い。痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い割れる割れる割れる割れる砕ける砕ける砕ける砕ける……
「先……この…………どう……です……」
「……重…………か……りま…………」
嫌だ。
「なん……子……ば…………」
いやだ。
「……に……ま………う……?」
イヤダ。
嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌
思イ……出シた……ク……なイ…………!!
———————————————————————————————————————
「こ、こは……?」
見慣れた場所……そうだ、壱世さんの部屋だ。
「気が付いたかい?」
「壱世……さん……?」
「そうだよ。調子はどう?」
「……大分楽になりました……。」
壱世さんがホッとしたように椅子に座った。
よく見ると、傍に弐成さんや紅鬼君と藍鬼ちゃんが寝ている。
「自分の部屋に帰れって言っても、アーちゃんが起きるまで一緒に居る。って聞かなくて。
困ったものだ。」
「すみま、せん……。」
「君が謝ることじゃないよ。ほら、ハーブティーでも飲んで。」
ほんのり甘みがあるハーブティーの香りが体中に広がる様に感じる。
すると、扉を軽く叩く音がした。
壱世さんが扉に向かい、ドアノブに手をかけ、回した。
——ズブゥッ
「壱、世……さん……?」
刺された。ドア越しに、一突きで。
「い、嫌……」
「嫌あぁぁあぁあぁぁあぁあああぁぁぁあぁぁああぁぁあぁ!!!!」
≪第四話 記憶の断絶‐前‐≫
- Re: 貴方はアタシのナイトメア ( No.5 )
- 日時: 2011/03/15 19:30
- 名前: 佑架 (ID: H6B.1Ttr)
ないている。
いつも
いつも
いぬさんと ねこさんが ないてる。
なかないで。
しろくまさんと いぬさんと ねこさんが はなしてる。
ねこさんが またないた。
いぬさんは だまって したをむいていた。
しろくまさんも ないているように みえた。
なかないで。
もう
なかないで。
そういいたいのに ことばがでない。
なかないで。
ナカナイデ。
- Re: 貴方はアタシのナイトメア ( No.6 )
- 日時: 2011/05/13 20:20
- 名前: 佑架 (ID: 1u4Yuzgf)
「嫌っ!!嫌ぁあぁ!!」
部屋に置かれたベッドの上、彼女は泣き叫びながら暴れてる。
「落ち着いて下さい!」
「アーちゃん!!」
「死んじゃやだよ〜!!」
「……アタ……さん……!」
周りは彼女をなだめるのに必死。
ああ……
ははは、はは、滑稽、滑稽……あははっははははははははははは!!!!
≪第五話 記憶の断絶‐中‐≫
ハーブティーを自分を含めて四人分、部屋に運んでいる時だった。
新しく入ってきた子の叫び声が自室から聞こえた。
ハーブティーを近くにあった台の上に置いて、急いで自室へと向かった。
嫌な予感がした。
見事に予感は的中し、床の上で倒れていた彼女を自分のベッドの上に運んだ。
その場にいた三人に話を聞いてみて、この三人が原因ではなさそうだった。
「つまり、その『仲良し姉弟シリーズ』を読もうとしたら、彼女が倒れた……と?」
「……うん。」
「急に叫んで、倒れちゃったんだ。」
「顔色も悪そうだったなぁ。」
なぜ彼女は倒れたのか。なぜ彼女は泣き叫んでいるのか。
「それは、あなた方の知る事ではありませン。」
場が固まる。
この男、急に居なくなって急に現れる。まるで猫の様な人だとは思っていましたが……
「窓から登場してんじゃねぇよ。床が汚れるだろ。」
「真偽の……言う……とおり……。」
「というか、いつの間に来たんですか貴方達。」
その猫が増えるとは思っていませんでした。
「飯が出来たから呼びに来た。」
「…………付き添い。」
「吾輩はお夕飯の出来る頃かと思いましテ。」
「はぁ……理由はともあれ、彼女を何とかしないと……」
「お夕飯が」
「食べられないのは」
「「ゼ〜ッタイ、イヤ!!」」
そういう問題じゃないと、双子を優しく叱る。
「そういうことなら、吾輩が何とかしましょウ。」
「……何かあんのか?黙らせる方法……。」
「えぇ、まァ。それに、このままでは死んでしまいそうですしネ。彼女。
ただし条件がありまス。」
「条件……ですか?」
はい、と彼が口角を上げて笑う。心なしか、眼は笑って無いようにみえる……。
「この部屋に居る人は、吾輩と彼女“だけ”にしてくださイ。」
「!!」
「何言ってんだテメェっ!!」
「……薄情者。」
「「そ〜だそ〜だ!!」」
「それは、……いくら、なんでも……酷い、と……思います。」
彼と泣き叫ぶ彼女以外、全ての住人が彼に批判を投げかける。
だが、彼は未だに笑ったままだ
「なら、吾輩は何もしませン。彼女を見殺しにしまス。」
「なっ!!」
「テメェ……いい加減に……!」
「……落ち着け、真偽。」
真偽が彼の胸倉を掴む。
それでも彼は笑ったままだ。
僕たちが此処に居たら自分は何もしない。ただ、彼女を見殺しにする。
でも、僕たちが出ていけば彼は彼女を助けるかもしれない。
自分の頭で冷静に考えてみた。
「本当に……本当に彼女は、助かるんですね?」
「えェ。そのところは保障しまス。」
「……えっ?」
「正気かよ!?壱世ぇ!」
「悪夢さん。貴方以外、治せないんでしょう?
なら、その僅かな可能性に賭けてみます。」
その場が沈黙する。
僕は自分の部屋から出て、先に食堂に向かうことにした。
数分後ほど経った……
真偽、吊斬、そして泣きじゃくった様子の双子を両手にした弐成が来た。
「「う゛あぁぁあぁあぁぁあん!!ア゛ーちゃーん!!う゛あぁああぁあぁ!!」」
「結局、全員追い出されたってところですか?」
「あぁ……ったく!胸糞悪ぃ!」
「……真偽……イライラ……良くない。」
「んなこたぁ分かってらぁ!」
……全く、この二人はもう少し空気を読んでほしいです。
弐成は双子をあやすのに手一杯ですし、目の前の二人は漫才を始めるし……。
「もう少し静かにできませ「やっっっっほほほぉーーウ!!」
……あれ、目頭が熱い。何でだろう。
「皆すぁーン!彼女がぁー目をぉー覚ましましたよォー!」
あぁ、こういう人の事をKYというのでしょうか……とてもウザイ。
真偽にいたっては青筋と同時に背後に鬼が浮かび上がっています。
「……それは、本当ですか?」
「はイ。これが証拠でス。」
彼の横に扉にもたれ掛っている彼女。治ったばかりか少し顔色が悪い。
「「アーちゃーん!!」」
「ごめんね、心配させちゃって。」
「良かった……本当に、良かっ、た……」
「っつーか手前ぇ。俺達に言う事あんじゃねぇのか。」
「はテ?お伝えする事はもうありませんけd「……謝れ。今すぐ」……すみませんでしタ。」
双子が彼女に飛びつく。弐成は嬉し泣きと言ったところか。
真偽と吊斬は夜士に苛立ちをぶつけている。
……後で手当てするの僕なんだけどなぁ。
≪第五話 記憶の断絶‐中‐≫ 完
- Re: 貴方はアタシのナイトメア ( No.7 )
- 日時: 2011/07/14 20:32
- 名前: 佑架 (ID: qDXfsznh)
「はァ。全く、相変わらず野蛮な人ですネ。」
「そうですね。」
「彼女も。吊斬もすっかり変わってしまっテ。」
「そうですね。」
「もうボコボコのボロボロで「そうですね。」……話聞く気無いでショ。」
えぇ。とだけ答える。
あの後、案の定SとTにズタボロにされた(自称)被害者Y。
それと、治療係の僕
……ま、完璧にアンタの所為だがな。
≪第六話 記憶の断絶‐後‐≫
「……ところで、少し聞きたいことが。」
「ほほゥ……構いませんヨ。」
僕は、目の前で気味悪く微笑む悪夢と向い合せになる。
どこからか切って張り付けただけの、感情のない、能面に似た彼と。
「彼女の……あの症状の原因は、何なんですか?」
フム、と少し悩んだ素振りをする。実に嘘臭い。
「彼女に記憶が無い事を知ってますよネ?」
「……ええ。」
「彼女は、あの本を見て、あの本の内容を『思い出してしまった』んですヨ。
彼女は何らかの理由で、記憶を『無くしている』のでなく『閉ざしている』のでス。」
「……」
「しかも、性質の悪い事に、本人は『閉ざしたこと』を忘れていル。だからかもしれませン。
彼女が本を見たとき、閉ざしていた記憶が漏れ出ようとしタ。
だが、彼女は、正確には彼女の中の『何か』が、漏れ出ることを拒んダ。
再び閉じ込めようとしたが、それに関連する記憶から、閉ざしておきたい記憶まで
漏れ出ようとしタ。」
「……」
「それを処理しきれず、彼女は半分壊れてしまっタ。
どうやら、その拍子に悪夢を見たようダ。決して、決して抜け出すことが出来ない悪夢ニ。
吾輩の手で脱出は出来タ。だが、まだ傷跡が大きイ。」
「……つまり、彼女は無意識のうちに思い出すのを拒絶した。
だから、それが脱出不可能な悪夢を見させるほどにまで壊れた。」
「……そんなところですネ。
吾輩は、この症状を『記憶の断絶』と呼ぶようにしまス。
暫くは彼女の記憶が漏れ出ない様にはしましたので、今後は
今日みたいなことは殆ど無いと思いまス。」
「そう、ですか……ありがとうございます。」
いえいえ、と彼が首を振る。
長話をし過ぎた所為か、十二時になりかけていた。
「では、吾輩はこれデ。」
「おやすみなさい。」
能面の彼は、終始、張り付けた様な笑みだった。
≪第六話 記憶の断絶‐後‐≫ 完
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