ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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此処は何処の細道じゃ?
日時: 2011/03/21 10:47
名前: 絢 (ID: WVvT30No)

 *此処は何処の細道じゃ 「プロローグ」



何故あたしを殺したの……




何故あたしを捨てたの……




何であの子だけは良くてあたしはダメなの?








教えてよ………










何でなの、








お母さん、お父さん………















始めましてホラーは初めての絢(aya)です、
どうか皆さん、よろしくお願いします♪



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Re: 此処は何処の細道じゃ? ( No.4 )
日時: 2011/03/18 22:56
名前: 絢 (ID: ptyyzlV5)

 *此処は何処の細道じゃ 3 「被害者の届かぬ叫び」



平和と思われたこの町に殺人事件が起きた。
その事実は殺人を主に捜査するこのチームに、
今まで仕事らしい仕事しなかった俺たちに活気付けた。


不謹慎にも事件が起きたことに、
大喜びする者も居るくらいだ。



そんな訳で俺たちは事件現場に向かった。



———



「これはまたドラマに出てくる殺され方っすねー」

「しっ!!不謹慎だぞっ!」



今年から入ってきた口が軽い新米は先輩に睨まれ口を閉ざす。
ちなみに彼は20歳で俺はたった21歳という一つ年上だ……


そんな新米をよそに俺は被害者を見る。




「被害者は森本彩香、主婦25歳か……」




被害者はお腹に鋭利な刃物による一刺しだと見れば分かった。
被害者の傍に札みたいなのが置かれていた——。




「何だ、この札?」



俺は札をつまみあげる。



「寺の次男に生まれた鑑識員に聞いたところ、氏子札だそうですよ」



さっきベテラン刑事に怒鳴られてた新米が言う。
いつの間に聞いたんだよ……。


「氏子札?なんだそりゃっ」

「ほら七五三があるでしょ、昔は何でも小さい子が生き延びることは、
 滅多にないので最後の7歳のときに氏神さまが守ってくれたとのことで
 氏子札を納めに神社を来たんですよ、それが七五三の起源でもあるんですよ」



初めて聞いた……



しかし何で被害者の傍にこの札があるんだ?
二人の子供は二人とも10歳は過ぎてると聞いたが。





「何であるんですかねぇ?事件は謎だらけっすね」

「全くだ……」





遺体は警察庁の霊安室に運ばれるそうだ。
俺たちは一旦は事件現場を引き上げた。


パトカーで乗るさいに視界の端で女の子が見えた——。



振り返るが、そこには誰もいなかった。
何だ。ただの幻覚か………



きっと俺は疲れてるんだろうな、死体を見続けたんだから
自分自身に言い聞かせて俺はパトカーに乗った。





霊安室は嫌いだ。
真っ暗でお線香臭いしそれに悲劇だからだ。




霊安室に寝かされてる被害者森本彩香の家族は泣いていた。
子供は二人とも女の子で名前は姉は唯で妹は雪らしい。
夫は森本誠司、ごく普通のサラリーマン。


幸せな家族は見知らぬしかも未だに捕まってないのに崩壊させられた。






本当に人生は訳分からないもんだ—。







俺は不謹慎だと思われるが思った。
突然愛しい人を殺された家族はただ泣き続ける。




二度と目覚め蘇えぬ愛しい人を思い泣く。







……だから、俺は霊安室は嫌いだ。









俺は被害者に手を合わせたあと、
静かに霊安室を出た。








事件の犯人が見つかったら、
尋問のさいにまず聞くことは









「本当に殺して後悔はないか?」










それを絶対に言おう……














Re: 此処は何処の細道じゃ? ( No.5 )
日時: 2011/03/19 21:50
名前: 絢 (ID: ptyyzlV5)

 *此処は何処の細道じゃ 4 「友情の決裂」



また事件が起こった。



確実に日々皆を震え上がらせていく。
最初は面白がってたくせに今では怯えるだけ。


馬鹿らしすぎる。
馬鹿まるみえで情けない。



だけど事件の影響で女子はほとんど車で迎えに来る。
あたしも例外ではなくお母さんがくるまで
玄関で待っていた。



「………芽衣」



あたしの名前を呼ぶのはリナだった。
隣に立ちあたしの方を見る。



やめて、そんな目で見ないでよ。
あの頃を思い出すじゃないっ……。




———



無事に受験に合格したあたしは桜舞う
この季節を今かと、待ちわびていた。


「桜が綺麗だなあ」

「ホントだねっ!」


あたしの隣で柔らかく笑うのはリナだ。
中学生の頃からずっと友達…大親友だよ。



大きな桜の木は本当に幻想的だった。
今年から毎年春になれば二人で見続けよう。


約束は糸も簡単に破られた—。



入学してから2ヵ月後に初恋を覚えた。
相手は藤原直哉という男子だ。


彼は本当に面白くて明るくあたしは惹かれた。
と同時に彼もあたしに惹かれていった。



「好きですっ……付き合ってくださいっ!」



この言葉からあたしの初恋は恋愛へと変わった。
毎日が楽しくて勉強もどんどんと進んだ。



勉強が苦手な直哉に教えたりもした。
例え別れても友情という形で続く。


あの頃のあたしはそう確信していた。



放課後に教室から忘れ物を取りに行った時のこと…。



あたしは教室に入ったさいに
とんでもない物を光景してしまった——




直哉に抱かれていたリナの姿。





直後にあたしが来た事に気付いた直哉は
リナを突き飛ばして離れるけど……





「………最低っ!」



耐え切れず教室を飛び出した。



「芽衣っ!お願い……違うのっ!」

「芽衣っ!」




二人の声は余計に腹立たせるだけだった。
あたしはずっと……弄ばれてただけなんだ。




悔しくて怒りは燃え上がる。
そして……




冷え上がる。










「……芽衣?」

「………何」





過去のことを思い出してたあたしに
リナは心配そうにこちらを見る。




後で風の噂で聞いたけど、
リナはあの後に直哉と付き合ったらしい。





人の事を心配してる素振りを見せて、
ちゃっかりと付き合うなんて
つくづく最低だ。





「あのさ……事件、怖いよね」

「気をつければ、大丈夫でしょ」

「………芽衣、私ね、怖いの」

「誰だって怖いわよ」




続かない会話にイライラしてきた。
早くお母さん迎えに来てくれないかな。





「今回の事件はあの都市伝説に似てるらしいよ…」

「都市伝説?」

「そう、都市伝説……」





何の都市伝説と聞く前にお母さんが来た。
逃げるように車に乗り込む。



答えが知りたかったがこれで良いのかも知れない。
あたしを見送るリナを窓から眺めた。





「さっきのリナちゃんでしょ」



お母さんがいつも通り明るく言う。



「うん……そうだけど」

「何で遊ばなくなったのよ?お母さん…心配だわ」



急に暗くなったあたしに心配するのは当然だ。
だけどあたしは進んで望んだんだよ。



「だけど辛くないようだからお母さん、安心したわ」



心配してるのか安心してるのか
良く分からない言葉だった。



「そう……」



車の外は小雨が降っていた。









Re: 此処は何処の細道じゃ? ( No.6 )
日時: 2011/03/19 22:59
名前: 絢 (ID: ptyyzlV5)

 *此処は何処の細道じゃ 5 「目撃」



緊急下校の所為で正午に帰された。


お母さんは迎えに来てくれたけど
すぐに仕事へと戻っていった。



誰もいない家に居てもつまらないだけだ。
暇潰しに家を出た。
散歩するのだ、暇潰しに。


学校の言う事なんか殆んど守られてない。
あたしもその内の一人なのだ。



本当に町は相次ぐ事件の所為で人気が無くなってる。
むしろ家に居たほうがまだ暇潰しになるのかも、


引き返そうとした時。





「芽衣……?」

「り…リナ」




後ろにいたのはリナだった。
何でここに居るのよ…。




「私ね、この前の答えを教えにきたのっ!」



あの時の会話の続き…?


別に知りたいとは思ってないけど
せっかく来たのに追い返すのは失礼だ。


仕方なくリナを家に招くことに。



歩いてる最中で何処からか悲鳴が聞こえた。
そして歌声も何処からか聞こえた。






 とおりゃんせ とおりゃんせ

 ここはどこの 細道じゃ

 天神さまの 細道じゃ

 ちっと通して くだしゃんせ

 御用のないもの 通しゃせぬ






「何……この歌」

「それよりも……あの悲鳴はっ?」




あたしたちは悲鳴が聞こえたほうに
走って向かうが時は遅し。




血まみれで倒れている——女の子を見つけた。





「きっ…きゃああああああああああっ!!!」

「きゅ…救急車と警察っ!」





あたしは携帯で救急車と警察に両方連絡した。





「もうすぐ…来るからね」

「……あ、りが……と……」





まだ息があった女の子はそう言うと
力尽きて目を閉じた——。




リナは女の子を抱き上げ泣きながら叫ぶ。





「ねぇ!お願いだから!!……目を覚ましてっ!」






女の子が目を再び開けることは
二度となかった……。









 とおりゃんせ とおりゃんせ

 ここはどこの 細道じゃ

 天神さまの 細道じゃ

 ちっと通して くだしゃんせ

 御用のないもの 通しゃせぬ



 






またあの歌声が何処からか聞こえた…。





一体誰が歌ってるの?





声からして子供だけど女の子っぽい
ということは女の子が歌ってる?





殺された女の子のほうを見るが
当然歌うことは出来ない。







じゃあ……誰なの?









「ねぇっ…芽衣っ!」

「落ち着いて、大丈夫だよ」







確信出来ないがリナに言った。
パニックになるくらいなら


確信ないが言ったほうがずっとマシだ。







ピーポーパーポー






パトカーの音だっ!







歌声はそれっきり聞こえなくなった。
ただ警察官と少し遅れて救急車が来たが、










女の子はすでに手遅れだった——












Re: 此処は何処の細道じゃ? ( No.7 )
日時: 2011/03/20 14:30
名前: 絢 (ID: ptyyzlV5)

 *此処は何処の細道じゃ 6 「出会い」



警察署に初めて来た。


普通なら滅多に来ない場所にだ。
悪い事をしたわけじゃないんだけど。


さすがのあたしも緊張する。
リナはさっきから辺りを見回してる。



「俺の名前は木村龍一だ、よろしく」



取調室に連れて行かれ目の前に若い男性がいた。
ドラマで良く目にするシーンと同じだ。
テレビみてるようだ。



「君たちの名前は隣に居る子が杉本リナさん、君が桜井芽衣さんだね?」

「はい」

「……はい」

「そうか、それでは取調べをするけど何か変わった事は?」



随分と率直的に言う人だな。



「先輩、率直すぎっすよ」


刑事さんの隣に立っていた男性が言う。


「軽い口調を話すお前に言われたくない、大西」

「……はい、あ、俺の名前は大西謙太っす!」



明るく自己紹介する同い年そうな刑事さん。
この二人、先輩と後輩だったんだ。



「じゃあ……改めて聞くが、変わったことは?」



変わったこと、か……。



唐突には思い浮かばなかった。
だけど……あるじゃないか。


あの歌だ——



「ありますっ!……現場にとおりゃんせという童謡が聞こえましたっ!」



リナが焦ったように証言した。
木村という刑事の顔が鋭くなる。



「とおりゃんせ?」

「はい…とおりゃんせ、とおりゃんせ…って信号機の音に使われてます」



そうだったんだ、初めて聞く事実に
あたしは釘付けになった。



「それに——都市伝説と似ているんです、今回の事件に…」

「何っ」



刑事さんの顔がまた変わった。
リナの言う事が信じられなかった。


たしか放課後のときの会話もそう言ってた…。



リナを見るとリナは真面目だった。
どことなくリナらしくなかった。





「——実は」






リナが口を開いて教えた都市伝説は
とても悲しい都市伝説だった













Re: 此処は何処の細道じゃ? ( No.8 )
日時: 2011/03/20 15:04
名前: 絢 (ID: ptyyzlV5)

 *此処は何処の細道じゃ 7 「裏切り」



江戸時代の中ごろにあたしは生まれた。
江戸の町外れた小さな農村に。



あたしたち家族もその内の一人だった。
そりゃ普通に暮らしていたわよ。



そんなある日お母さんが妊娠した。
あたしたち家族に喜ばしいことだった。




「おめでとうっ!お母さんっ!」

「良かったな、お百合」

「ありがとう…あなた、おゆき




やがて生まれた子は女の子だった。
あたしの妹だ。


名前を福と名付けられ幸福になるようにと願い。
あたしもそんな妹が微笑ましく可愛がった。



当然お母さんたちは福を可愛がり始める。
まあ最初は赤ちゃんなんだから仕方ないことだ。


妹がいる子たちも最初はそんなもんだ、と言ってたし。
大して気にすることもなく日々を過ごした。




突然に訪れたのは不幸だった———。



100年に一度にこの村に大きな祭りが行われるのだ、
お母さんは家を訪ねた村長さんに何か言われ泣き出した。



訳が分からず家に帰ったお父さんも泣き出し、
あたしは戸惑うばかりだった。




そんな次の日に村長さんが家に来た。
滅多に来ないのであたしは喜んで迎える。
お父さんたちはやけに暗く沈んだ表情のままだ。





「お幸ちゃんに贈り物だよ」

「本当ですかっ!」





村長さんに渡されたのは綺麗な着物だった。




初めて見る着物に心動かされた。
あたしはおそるおそる手に取った。



「わあ…!」



肌触りが良くやわらかい着物。
一瞬で虜になってしまった。


村長さんは固くどこかぎこちない笑みを浮かべ




「これを着てくれ、祭りの主役に選ばれたんだよ」

「ほ……本当ですかっ!」




正直100年に一度の祭りに選ばれたなんて
この上ない名誉だった。


あたしがこの祭りの主役に…!



すっかり乗り気になったあたしに
村長さんは話を続ける。




「お前さんにピッタリじゃよ」

「ありがとうございますっ!!村長さんっ!」




あたしは祭りの日が待ち遠しかった。
お父さんたちは喜んでくれた。


——どこか悲しそうに見える



だけど気のせいだと大して気にしなかった。
そしてとうとう祭りの日になった。
あたしは村長さんに貰った着物を着て着飾った。



「時間じゃ」



とお神輿みたいなのに乗せられた。
向かう場所は山だった。





山のなかに入りどんどんと進んでいく。
急に怖くなったあたしは降りたい一心だった。



「着いたぞ、降りなさい」



あたしはお神輿みたいなのを降りた。
目の前には岩の近くに祠みたいなのがあった。





「これ何?」

「今から…お前は山神さまの生贄になるんじゃ」

「えっ—?」





ザシュッ—!!




突然襲った鋭い痛みにあたしは目を疑った。
村長さんの手には……包丁?



真っ赤に染まった包丁。




それは紛れもなくあたしの血だった。
突然のことに呆然とするあたしは




脳裏に思い浮かんだ—






生贄に選ばれたんだっ!!





「きっ……きゃああああああああああああっ!」





夕暮れを迎えたときには





あたしは死んでいた。







村長や他の村人はいなくなった。
ただあたしの死骸は



祠に供えられているのみ。








——騙された、んだ








すでに使えぬ体を見続けていた
魂だけになったあたしは思う。






お母さんたちは





福がいるのにあたしを選んだ。








遠い昔に聞いたことがある……








生贄に選ばれる子は、
実は2・3歳の子が多いと…






だけどお母さんたちはあたしを選んだ。








お母さん……

お父さん……








何であたしを騙したの?







絶対に許さない……








あたしを騙した奴等が憎いっ!
絶対に未来永劫許さじっ!






子孫や生まれ変わりになったとしても






呪い続けてやるっ…!!







憶えてろ…







この恨み……






未来永劫呪い続けてやる。








それからあたしは生まれ変わりや
子孫を殺した時には



あの時、持たされた氏子札と
あたしみたいに


生贄にされた子を歌った





とおりゃんせを歌うようになった…。












「……これがとおりゃんせの都市伝説なんです」






生贄に捧げられた女の子の復讐。
恐ろしいけど所詮ただの都市伝説だ。



第一警察が信じるはずがない。






「上が信じないなら、俺たちが信じれば良い」




木村さんに言われあたしたちの視線が木村さんに向いた。




「違反だが、俺たちと組もう」

「組む……?」


あたしはオウム返しに言った。




「そう、俺たちは俺たちで調べるがお前等もお前等で調べる」

「でも先輩、やばいっすよ!!」

「事件解決になれば何とかなるさ、それに襲われたときはどうするんだ」



何も言えなかった。



あたしたちは組まざる終えなくなった。
リナを見るとリナは組むという意志を見せてる。




「組ましょう…」

「よろしくな、俺は木村で良い」

「あ…あたしは芽衣で」

「私もリナで」



残るのは組むことを目撃した…大西さんも。



「えっ、俺も!?……大西で良いっすよ」






女子高校生二人と刑事二人の





異色コンビが出来た瞬間だった









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