ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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紫炎の鷹
日時: 2011/05/04 02:27
名前: 比泉 (ID: ID28wqen)

中々よい案が出ないで困ってます・・・・

なんかいいネタはないだろうか・・・

風凪 閃杜(かざなぎ せんと)
主人公。若干ひねくれているのかもしれない。消極的否定的自暴自棄になる。部活には入っていない。いつも冷めた口調か、世の中下らないと思った口調。
中学三年生。大鷹中学三年一組所属。
備考
紫炎の鷹

梶山 広大(かじやま こうだい)
閃杜曰くそれっぽい大学のそれっぽい機関のそれっぽい職員。青年。通称おっさん。
それっぽい話に関してはやり手。
紫炎の鷹の封じ札を閃杜に渡した。
別称「第七九州組長」

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Re: 紫炎の鷹 ( No.4 )
日時: 2011/04/29 17:25
名前: 比泉 (ID: ID28wqen)

「中学三年生になっても何も変わらないなぁ君は・・・本当に」

「うるせえ」

余計なことを言う梶山さんはノートパソコンを開きながらタイピングしている。
きっと悪趣味な掲示板に書き込みでもしているんだろう。

「凪君・・・今余計なことを考えていたね」

「いや、なんのことですか」

ここで認めれば弱みに付け込まれるので根強く耐えるしかない。

ちなみに俺は風凪(かざなぎ)だから短く凪君と呼ばれることが多い。

梶山さんも普段は俺のことを凪君と呼ぶ。

ボロい部屋だ。

ここに入るたびにいつも思っていたことだが。

「ボロい部屋ですね」

「君・・・僕に借りがある分際でよくそんなことが言えるねぇ・・・感心ものだよ」

「どんどんしてくださいよ」

「いや・・・・開き直られても困るんだけどなぁ」

実際相当迷惑そうな顔をしていた。

そろそろやめよう。

「鷹はあの後から順調かい」

「いつも言ってるじゃないですか。大丈夫ですよ」

いつも繰り返す会話。

週一で繰り返してるが、鷹、というのは俺と出会った一体の鷹だ。

紫炎の鷹・・・・そうやつは呼ばれている。

伝説上の鷹だ。

この地に住んでいた気高い鷹だそうだがある日陰陽師に封印されてから札になったままだったそうだ。

それを何の縁か梶山さんが所持していた。

護符、という形で俺に譲渡して俺はそれを惜しげもなく使用した。

Re: 紫炎の鷹 ( No.5 )
日時: 2011/04/30 15:22
名前: 比泉 (ID: ID28wqen)

だが、何らかの手違いがあった。

不甲斐ない自分は使用法を僅かに間違えた。

あの日あの時、一匹の鷹を召喚してなぜか俺は自分の肉体を生贄にしてそいつを取りこんでしまった。

それがなぜかは分からない。

(———「貴様の願い、叶えようぞ」———)

鷹はどこか懐かしいように、

笑ってもないのに笑っているように見えた。

いや、笑ってるかなんてあの顔からじゃ何も分からない。

鷹の力は・・・・俺を殺そうとした魔人に匹敵した。

いや、圧倒していたかもしれない。

素人の俺には全くそういうことが理解できなかったが、少なくともは、あの鷹は強かった。

とてもとても、強かった。

魔人を追い払うと同時につぶやいた言葉は不思議と今でも覚えている。

(———「貴様は何を望む?金か?地位か?名誉か?人間だろう?何か欲しいものはないのか?———)

(———「そんなもんいらねえよ。今助けてくれただけで十分だ」———)

(———「人間にしては珍しいな。昔の人間はもっと威勢が良かったぞ」———」

(———「うるせえ・・・・助けてくれただけで十分だ・・・・俺は今はこれで十分なんだよ」———)

(———「何・・・?貴様は無欲か」———)

(———「違うよ。一人で静かにいたいだけだ」———)

(———「そうか・・・誠につまらん人間だな」———)

「———「うるせえ。一人で静かに生きて何が悪い」———)

(———「そうか。それが貴様の願いか」———)

(———「ああ?何が言いたい?」———)

「———「貴様の願い。しかと見届けようぞ」———)











無駄な会話を挟んでしまったのが一番の間違いだったのだ。

後で聞いた話だが、通常鷹は若干お喋りらしくて、人から欲望を聞きだしてはそれを自分の力を使って叶えて人間の反応を楽しむのが趣味らしい。

俺が金目の物が欲しいなんて要求していたらそれで済んだらしいのだが、俺があんな変な会話を挟んでしまったせいで、俺に住み着いたのだ。

しかし、正確には、もう俺の、存在はない。

Re: 紫炎の鷹 ( No.6 )
日時: 2011/04/30 15:41
名前: 比泉 (ID: ID28wqen)

「君はもう、鷹本体なんだよ。分かる?」

梶山さんは忌々しい事実をいつも突き付けてくる。

「分かってます。俺はもう、一人の人間じゃなくて、紫炎の鷹・・・ですよね」

紫炎の鷹。

ここ一帯の土地を占める伝説上の鷹。

妖怪にしろ神様にしろ何にしろ、怪異現象の根源である未知の生物は、本来存在意義と言っておかしくない大義名分があるらしい。

たとえば人間に悪さをする連中の大義名分は文明破壊。

地球に害を及ぼす物を蹴散らすのが役目らしい。

なので悪妖怪なんて言ったりするけど実際は惑星を守るため、土地を守るために存在する防衛機能みたいなものらしい。

所詮人間の都合なんだ。

他に例をあげるとして、俺と言う名の紫炎の鷹。

大義名分は、

『天照大神の抹殺』

らしい。

なんでも悪い神様を討伐するために出てきた神出鬼没の鳥らしいのだ。

あの不老不死の鳥・フェニックス(不死鳥)の仲間のような者らしい。

紫炎の鷹は本来、休眠しているのが原則らしいが、強力な力を持った神が悪行を働きだしたとき、始動する仕掛けになっているらしい。

なんでも創造神の名のもとに与えられた力は、

『破壊ではなく、洗浄と開明』

らしい。

よくわからないが、

洗浄は腐敗した神の存在意義を洗い直し、元の役割を担わせる力。

開明は土地の本来のあり方を解き明かす。

善と悪の違いを明確にさせる、天罰神の片割れのようなものらしい。

天罰神とはそのまんまの罰を与える神らしい。

それゆえに正義感の強い神様・・・。

しかし、天罰神が悪行を尽くすという例がある。

その時、その強大な力を防ぎとめることはほぼ不可能に近い。

天明の大飢饉のときに猛威を振るった『天罰神・緋慧(ひえ)』。

そういう神様がいたらしいのだが、

その時大体の神様が抵抗したらしいが圧倒的な力の前に全員なぎ倒されたらしい。

丁度その時、解放された紫炎の鷹がやっとのことでその神を打ち破ったらしい。

紫炎の鷹は、昔から、滅びを救う神の使者として有名らしい。

中では救世主、とも呼ばれている。

そんなやつに肉体を乗っ取られ、挙句の果てに自分は紫炎の鷹となった。

Re: 紫炎の鷹 ( No.7 )
日時: 2011/04/30 17:20
名前: 比泉 (ID: ID28wqen)

「まあ君の生い立ちを今頃掘り返しても拉致が明かないから、そろそろ仕事の話に入ろうか」

「あんたが掘り返したんだろ」

「細かいことは気にしてはいけないよ凪君」

「うるせえ、いい歳こいて変な言い訳してんじゃねえよ」

それはともかくだ。

俺は梶山さんから仕事について話を聞かされることとなった。




「最近は君の仕事ぶりも様になってきたみたいだからねぇ」

「そうですか。やっと解放ですか」

「いや、もう立派な関係者となった君にはそろそろここ一帯の仕事をまかせてもいいと思ってる」

「立派・・・って俺は正社員じゃないんですよ」

「何言ってるんだい。一年前はバイト。半年前は派遣。今はもう正社員だろ」

「いやいや!!そんな滅茶苦茶な理由で正社員にしないでくださいよ!!たまに手伝いとかしてる程度でしょ!!」

「正確には僕専用のパシリが欲しかったんだよねぇ」

「なら、そうと早く言って——ってちょっと待て」

「じゃあ、仕事の話に入るよー」

「さっき聞き捨てならない内容が聞こえたんですけど」

「実は最近、学校の裏山の方に天狗が現れたみたいなんだけど」

「人の話聞けよ」

「様子を見て来てほしいんだ。

小石を蹴るような真似をしながら梶山さんは若干感情が高ぶるのを抑えていた。

何か面白いことがあるんだろうか。

「様子見って言っても、大体そういうの怪物とバトルするフラグがすぐ立つじゃないですか」

「まあ、だから言ってるんだよ」

「納得してないですけど白々しい遠まわしな言い方やめてくださいよ」

「いいじゃないか。どうせ人権を放棄したような身なんだから」

「ええ・・・・・・・・・・」

何とも言えなかった。

あの契約書が実質法的な効果をもたらすとはとても思えない。

だけど、あれは敢えてもの覚書のように見えた。

警告だ。

仮にこの世界から足を洗おうとしても国の機関がそれを許さない・・・だろうか。

きっと余計なことをすれば抹殺されるのがオチなんだ。

いや、そもそも、もう俺は人間じゃない。

この人たちなくして、元の世界で平穏に暮らすなんてことはできないんだろう。

「まぁ、君はそこまで愚か者だとは思ってないけど・・・もう君は機密の一部なんだ。一人でいれば必ず狙われ、災厄となってしまう。そのときこそ災い神となって周りから人が消えていくよ。自滅だ」

そうやって言い聞かせるように梶山さんは静かに言い聞かせてくる。

「正直言って・・・・一度悪くなった視力に乱視が入ると、もうほとんど治る見込みなんてないよね。それと一緒だ。君はもう乱視が入ってる。治る見込みがない。もう鷹そのものになってしまった君の肉体から剥離するなんてことは不可能に近い。融合したようなものだからな」

段々抵抗することを諦めていく自分にどこかむなしさが募る。

もしも剥離できたら、なんてことはいつも考えていた。

いや、時々・・・だな。

でも、やはり、これが運命なんだろうか。

そう思うと、不思議と怖いというより、むなしさが募るだけだった。

寂寥感がこみ上げて普通と言うことに対する嫌悪と疎外感。

いろんなものが一度に来て、いつもに増してさらにネガティブになる。

俺はもう、本当に元の居場所は取り戻せないんだ。

そう強く思う。

だけど、

「そうじゃなくとも、俺はあの時死んでたことになってるんですよね」

「だろうね。君の命は貰いものだ。いずれ、また魔人と戦うことになっただろう。だから君は、取り込んだ鷹を使って、いや、鷹となって、あのバカヂカラを持った魔人を打ち倒したんだろう」

貰いもの。

俺の命は貰いもの。

それは確かな話だ。

だったらそれをどう使う?

自分なりに試行錯誤してるがやっぱり答えは出ない。

「ま、君は君の使命を果たせばいいよ」

「使命なんて自分じゃ何も分かりませんよ」

「自分が思うことだろ。いつかは自分で分かるさ。人から言われことは使命じゃなくて、ただの仕事だ」

梶山さんは鼻で笑いながら、

「もう用は済んだよ。まあ内の管轄は基本マイペースだから〆切なんてないし、君は君で自由に学校の放課後なんかに行くといいよ」

Re: 紫炎の鷹 ( No.8 )
日時: 2011/04/30 19:30
名前: 比泉 (ID: ID28wqen)

そう言って足早に追い出された。

本当はもう少し休みたかったけど、それを言うのもどこか尺なので、大人しく退散することにする。

帰り道もやはり長い。




「なんか毎日繰り返してると慣れるが足が・・・パンパンなんだが」

文字通りパンパンになった足を眺める。

「ハァ・・・・・分かっていても辛いもんだな」

翌日。

かなりハードな目に会うことを知らずに、

俺はまた明日が来るだろうと思いこみをしながら、

長い道のりを進むことになる


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