ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- 世界が壊れゆくとき〜The Ability〜
- 日時: 2011/06/19 15:23
- 名前: みすたー・えっくす (ID: BZFXj35Y)
数学の公式や英単語はすぐに忘れてしまうのに、なぜかこれだけは正確に明確に覚えている。
2012年 12月24日 午後7時30分44秒─────
俺はこの時、自宅のマンションで当時付き合っていた彼女とクリスマスを過ごしていた。苺のケーキを彼女と食べ、ワインに豪華な手作り料理を食べながら談笑をする。
そんな楽しい一時は、これからも死ぬまで繰り返されると思っていた。いや、我々の中では当然と化しているだろう。
しかしその概念は、東京に降り立った‘光輝く異性体の集団’により打ち砕かれた。
━━━━━━━
序章 >>002
第1章 『世界の終焉が何時かを知る者はいない、ただ我々は終焉を待つことしかできない』
>>001 >>006 >>007
- Re: 世界が壊れゆくとき〜The Ability〜 ( No.3 )
- 日時: 2011/06/16 20:54
- 名前: yu-hi (ID: ZGo4Gnz1)
何かドキドキします
のれから応援させてもらいます
頑張って下さい
- Re: 世界が壊れゆくとき〜The Ability〜 ( No.4 )
- 日時: 2011/06/17 22:21
- 名前: みすたー・えっくす (ID: BZFXj35Y)
おほっ!?これはこれは……嬉しいコメントthank youデース♪
のれから頑張っていきます!!
更新のスピードは遅いですが、どうかよろしくm(__)m
- Re: 世界が壊れゆくとき〜The Ability〜 ( No.5 )
- 日時: 2011/06/18 09:13
- 名前: yu-hi (ID: ZGo4Gnz1)
楽しみです!
- Re: 世界が壊れゆくとき〜The Ability〜 ( No.6 )
- 日時: 2011/06/18 18:50
- 名前: みすたー・えっくす (ID: BZFXj35Y)
「どういうことだ……なんで、電気が復旧しないんだ?」
マンションから表の大通りに出て確認しても、やはり同じ光景が目の前に広がった。
停電で闇に包まれた東京は、不気味なほど静かだった。とても今日がクリスマスとは思えない。
「携帯まで繋がんないし…………お母さん達、大丈夫かな?」
「僕のバイクで行ってみる?ここにいても意味ないし。」
由紀の実家は、僕の家からバイクで20分程走った先にある。
しかし、僕はここで予想以上に現状がオカシイということに気付いた。
大通りをよく見ると、車が立ち往生していた。いや、車のエンジン音が聞こえない。それが静かな状況の原因だった。
「んでエンジンかかんねぇんだよ!!!」
「おーい!!早く前進めよ!!」 「ちょっとー、エンスト?」
「携帯も繋がんないし……」 「電気まだ復旧しねえのか?」
「お巡りさーん!」 「くそっ、機械が全部オジャンになってる……」
周りから聞こえる批難の声。マンション下の駐輪場に向かい、自分のバイクにキーを差し込んだ。
しかし、エンジンはかからない。燃料も満タン、損傷している所はない……タイヤの空気もパンパンだ。
これは、この状況はオカシイじゃなくて‘異常’だ。先程の赤い光も謎のままだし。
由紀の冷たい手を握り、僕はマンションのエントランス付近で辺りを見渡す。冬の中、僕も由紀も薄着だった。
「冷えるね。コート着てても寒いよ。」
「僕のパーカー着てなよ。どうせすぐに、電気も復旧するだろう。」
僕は着ていたコートを脱ぎ、下に着ていたパーカーを脱いで由紀に渡した。男性用でも、女性は着れる。
「ありがとう、遊也…………え?」
由紀にパーカーを渡した直後だった。
僕の足もとだけが、赤い光で薄らと照らされている。足を動かしても、その赤い光は僕の足にまとわりつく。
「なんだこの光?」
光に顔を近づけた瞬間だった。
「わ、わァァァあぁぁぁぁァァァァァぁぁぁぁ!!!!!!!!」
赤い光は突如、強く眩く光り始めて僕を包み込んだ。
「遊也!?遊也!!!!」
由紀の手が僕の方へと伸びる。僕も精一杯手を伸ばし、由紀の手を掴んだ。が、握っていた力が、なぜか抜けた。
「ダメ!!離しちゃダメ!!!遊也!!遊也!!!!!!」
「力が……入らない…………」
視界も赤い光のせいで見えなくなり、やがて由紀の手から僕の手も離れた。そして、意識がプツリと切れた。
───────
『由紀!!死ぬんじゃない!!!』
『勇気があるから勝てるとでも?能力を持っていれば成功が続くとでも思ったか?甘い考えだな、人間よ。』
『それがお前の答えなら、お前は永遠の時を迎えることになる。』
『これが全ての答えだよ…………』
『樋口……遊也君………』
気絶している筈なのに、脳の中に響き渡る色々な人たちの声。聞いたことのない声が、頭の中を飛び回る。
全ての答え?由紀に何かあったのか?由紀の名前を叫んでいたのは、僕だ。僕自身だった。
能力とはなんだ?永遠の時って……死を意味するのか?
考えて悩んでいるその時、僕の目の前に謎の光景が広がった。
先程の暗闇の東京とは違い、東京は明るかった。しかしそれは、明かりのせいではない。
東京のあちこちから炎が上がり、空を見上げても青空はなかった。国運で埋め尽くされた曇天の空。
僕はゆっくりと、一歩進んだ。歩いている感覚はあるが、なぜ気絶しているのに………。
進んでいると、道端に自衛隊員の死体が転がっていた。どの隊員も肩から心臓に掛けて、鋭利な刃物で切られている。
「東京……だよな?ここは。」
まるで現実離れした東京の光景に、思わずここが東京ではないと錯覚してしまう。それほど状況は酷いものだった。
路地を抜け、渋谷109の大通りに出た。しかし、そこには人の姿はない。
渋谷も炎に包まれ、道は建物の残骸やガラスの破片で一杯である。
「あれ?」
大通りを歩いていると、数メートル先に誰かが立っていることに気付いた。
サラリーマンが着る様なスーツを着ている。だが、その後ろ姿はどこかで見覚えが………
「やぁ、樋口遊也。」
振り向いた男性。白い髪に蒼い目。その姿は紛れもなく「僕」だった。
「え……な、なんで僕が…………」
「考えるな。今はとりあえず、向こうへ戻るんだ。そして、君は由紀を絶対に死なせてはいけない。」
近寄る「樋口遊也」らしき人物は、僕の肩に両手を置くと蒼い目で見つめてきた。
「お前はこれから悲惨な運命を過ごしていくことになる。出会いよりも別れが多い人生となるだろう。だけど、お前の存在が人類には必要不可欠なんだ。由紀と共に前へと進め。その先で仲間となる者は大切にしろ。この先、非現実的な状況が襲いかかるが、それは全て現実だ。お前が必要なんだよ。お前が、お前が死ねば、全ては終わると言っても過言ではない。」
「樋口遊也」らしき人物は僕にそう言うと、スーツのポケットから蒼いビー玉を取り出した。
僕の左手をとり、蒼いビー玉を握らせる。
「これは後々、お前を助けてくれる品物だ。失くすなよ。」
「………あなたは、誰なんだ?どうして僕と同じ姿を……」
「俺はただの使者だ。お前の姿を借りている。少し髪の色とか違うけどな。」
「使者って、誰の使い……」
「もう時間だ。俺と握手した瞬間、激痛が走るが表の世界に戻れる。」
僕は彼の言葉を一瞬疑ったが、すぐに理解した。いや、理解するしかできなかった。
「向こうの世界に戻ったら、すでにお前には能力が受け渡っている筈だ。その力で、由紀を守れ。」
「の、能力って何?」
「戦って生き延びろ。俺よ。じゃあな。」
─────────
- Re: 世界が壊れゆくとき〜The Ability〜 ( No.7 )
- 日時: 2011/06/20 19:56
- 名前: みすたー・えっくす (ID: BZFXj35Y)
『こちらA部隊!!現在、東京タワーから東の方角にて異星人と交戦中!!応援を頼みたい!!』
遊也が気絶している間に、東京のあちこちで爆発音と謎の機械音が響き渡り始めた。
東京タワー付近では、数百人以上の自衛隊隊員が武器を持って‘何か’と戦っていた。しかし、辺りは砂煙と炎の壁に包まれて視界が悪く、最早何も見えない同然だった。
「応援部隊の到着はまだか!!もう弾が尽きるぞ!!」
「八坂隊長、こちらに向かっていた応援ヘリが二機とも墜落したようです……異星人にやられたかと…………」
部隊の先頭でマシンガンを両手に持った戦闘部隊隊長の八坂守は、隊員の言葉を聞いて愕然とした表情を見せる。
隊員は腰からライフルを取り出すと、スコープで砂煙の中を見渡す。
「一旦下がりましょう。ここでは犬死が目に見えてますよ。」
「……そうだな。他の部隊に伝えて、安全な南の方角に退去しろ。急げ!!!」
八坂の命令に、隊員は頷くと後ろの方へ下がっていった。
八坂はマシンガンを握り直すと、砂煙の中を見て苦笑いを浮かべる。
「ったく……異星人って…………まんま人間の形してんじゃねえか……」
八坂の目の前に現れた1人の人間──────
髪と肌は白く、目は蒼い。性別は男性か女性かも分からないほどの顔立ちで、体は黒いアーマーで包まれている。
両手には見たことのない形をしたバズーカ砲、太もも部分には小刀の様な物を装備している。
見た目は人間だが、放っているオーラは何か違った。
「くそっ!!待て待て!!!」
八坂の目の前に現れた異星人は、両手のバズーカ砲を向けると躊躇なく発射した。
「ふ・ざ・け・ん・なぁぁぁぁらぁぁぁぁァァあああァァァァ!!!!!」
八坂は2発ともスライディングで避けると、異星人の懐に入り込み、両足で顔面を蹴飛ばした。蹴りは見事に命中し、武装した異星人はフワリと空中に舞い上がる。
「なめんな……な、なんだ!?」
八坂が空中に舞う異星人にマシンガンを向けた直後、八坂の足元に赤い光が現れた。そう、遊也と同じ時の様に。
そして、赤い光は八坂を飲み込んで、その場から八坂と共に姿を消した。
* * * * *
「う、うぅ……痛たた……」
僕が目を覚ました場所は、マンションのエントランス前ではなく、どこかの道のど真ん中だった。
無論、由紀の姿はどこにもない。立ち上がってみると、そこは国会議事堂前の通りだった。
大通りには車が延々と停車したままの列が伸び、遥か先の空が赤い。火事でも起こっているのだろうか。
「お、おーい!!そこのアンタ、手を貸しくれ!!!」
僕が赤くなった空の方を見ていると、車の列の中から男性の助けを求める声が聞こえてきた。
「ここだよ!!ここ!!足を怪我しちまって、動けねえんだ!!!」
車を避けて駆け寄ると、茶髪で猫目の男性が右足の膝から大量に血を流して倒れていた。
「大丈夫…ですか?」
「大丈夫じゃねえから呼んだんだろ。頼む、手を貸しくれ。」
男性の肩を持って立ち上がらせると、近くの軽自動車のフロントに座らせた。男性はお礼を言うと、安堵の息を漏らす。
「あんがとよ。……ここは、国会議事堂の前か?どうしてこんなところに…………」
男性は右足を押さえながら辺りを見渡す。どうやら、雰囲気的に状況が僕と同じらしい。
「あの、まさかあなたも赤い光に……」
「そ、そうだよ!!あの赤い光が足もとに突然現れて、気付いたらここだ……はァ。」
男性は大きなため息を吐くと、そのままフロントに寝そべった。
「一体なんだよこれ……彼女に逃げられるわ、財布は盗まれるわ……クリスマスが台無しだよ。」
男性の愚痴が始まる。僕は男性に一礼すると、自宅であるマンションに向かおうとした。
「ちょ、ちょっと待てよ!!」
男性は起き上がって振り向き、僕を呼び止める。
「俺の名前は犬田一だ。助けてくれてありがとよ。」
「いえ…僕は樋口遊也っていいます。じゃあ。」
犬田に手を振り、僕は停車したままの車の間を駆けてマンションへと向かおうとした。その瞬間だった。
突如、僕の背後で鼓膜が潰れるほどの爆音が鳴り響き、爆風と熱風でバランスを崩して倒れ込む。
「わ、わァァァァあああぁぁぁ!!!た、助けてくれぇぇぇぇ!!!!」
再び聞こえてきた犬田の叫び声に、急いで立ち上がり振り向く。
そして、僕の目の前には想像を超えた非現実的な光景が待ち受けていた。
「な……なんだ…あ…………れ……」
国会議事堂を背景に、大通りの上に浮かぶ謎の人間。
不気味な暗い青光を放ち、僕と犬田を交互に見ている。しかし、あれは本当に人間なのか。
白い着物の様な服に身を包み、死人の様な白い肌、白い髪、そして蒼い目。明らかに人であって人ではない。
「ひ、樋口!!助けてくれ!!!」
地面を這いつくばって必死に逃げようとする犬田に駆け寄り、再び肩を貸して一緒に逃げようとする。
「す、すまねぇ……あ、あれは何なんだ!?」
「分かりませんよ!!とりあえず、逃げた方が良い!!!」
そうは言っても、人を抱えて逃げているために距離が一向に縮まらない。僕はふと振り向き、唖然とした。
浮いていた‘人間らしき生き物’は、両手をこちらに向けて何かを放とうとしていた。
「や、やばいかも……急いで!!」
僕は犬田に言うと、必死に前へと進む。犬田も振り向くことなく状況を察知し、片足で必死に進む。
『……哀れな人類よ。永遠の時を迎えよ。』
聞こえてきた雑音混じりの男性の声。僕と犬田が後ろを振り向いた瞬間、青光の球体がこちらに向かって飛んでくる。
避ける場所などどこにもない。辺りは車が並んだ大通り。
「もういい!!車の後ろに隠れろ!!!」
ダメ元で、僕は犬田の指示に従い、大型トラックの後ろに隠れた。