ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- 世界が壊れゆくとき〜The Ability〜
- 日時: 2011/06/19 15:23
- 名前: みすたー・えっくす (ID: BZFXj35Y)
数学の公式や英単語はすぐに忘れてしまうのに、なぜかこれだけは正確に明確に覚えている。
2012年 12月24日 午後7時30分44秒─────
俺はこの時、自宅のマンションで当時付き合っていた彼女とクリスマスを過ごしていた。苺のケーキを彼女と食べ、ワインに豪華な手作り料理を食べながら談笑をする。
そんな楽しい一時は、これからも死ぬまで繰り返されると思っていた。いや、我々の中では当然と化しているだろう。
しかしその概念は、東京に降り立った‘光輝く異性体の集団’により打ち砕かれた。
━━━━━━━
序章 >>002
第1章 『世界の終焉が何時かを知る者はいない、ただ我々は終焉を待つことしかできない』
>>001 >>006 >>007
- Re: 世界が壊れゆくとき〜The Ability〜 ( No.1 )
- 日時: 2011/06/13 19:40
- 名前: みすたー・えっくす (ID: BZFXj35Y)
「遊也、あの光何?」
彼女のその一言が、僕達の運命を変える始まりだったのかもしれない。
僕はワインの入ったグラスをテーブルに置くと、立ち上がってベランダにいる彼女の由紀の元へ行く。
由紀はまるで、不思議な物を見るかのような表情と目で一点を見ており、僕もその方向を見る。
マンション8階から見下ろすイルミネーションで彩られた東京の夜景は、絶景中の絶景といっても過言ではない。目を凝らせば、小さな車の光が忙しく道を動いている。
「あそこだよ、ほら、あそこ!!」
由紀は僕の腕を引っ張り、ちょっと離れた所に立つ高層ビルと高層ビルの間付近を指差した。
確かに見てみると、ビルの間にイルミネーションではない‘謎の真っ赤な光’が見える。
ここからは真っ赤の光までの距離は結構離れている。なのに、こちら側から見ても、その赤い光がどれほど強く発光しているのかが覗えた。最初、僕達には赤い光の正体が分からなかった。
「待って。スカイツリーの一番上、あそこも赤く光ってる!!」
視界を少し左にずらすと、そこには完成したばかりのスカイツリータワーが見える。そのスカイツリーの一番上も、先程の場所と同じく赤い光が発光をしていた。
「嘘!!向こうも光ってない!?え……あ、あそこも………」
この時、僕と由紀が見た赤い光の数はざっと数えて約20数個。真冬の夜の東京のあちこちで、謎の赤い光は確認できた。
「なにかのイベントじゃない?花火でも打ち上げるんじゃないの?」
「……遊也、怖いよ……………」
なぜか、由紀は震えていた。それは寒さや高さのせいではない。
細い白い手が、僕の腕を弱くも強い力で掴む。その、直後だった。
ボォォォォォォォォン!!!!!!
ズゥゥゥゥゥウゥゥゥゥゥン!!!!!!
ズドォォォォォォォォン!!!!!!
鼓膜を突き破る様な爆発音が聞こえた瞬間、僕と由紀の顔に熱風が襲いかかった。
「きゃぁぁぁぁぁ!?」
「由紀!!!!部屋の中に!!!!」
僕は‘何か’の危険を察知し、由紀の手を引いて部屋の中に戻った。
その瞬間、激しく横に揺れる地震が襲いかかった。
リビングに置いてあるテレビは床に勢いよく倒れ、キッチンの方からは皿やコップが割れる音が響き渡る。
「ちょ、ゆ、由紀!!おいで!!」
僕はパニックになりながらも冷静さだけはしっかりと保ち、由紀の手を引いて自室に掛け込む。
揺れに倒されない様に壁を伝い、由紀をベットに座らせると布団を被せた。
最早、最善の策はそれしか思いつかなかったのだ。
揺れは時間が経つたびに大きくなり、僕はとうとうバランスを崩した。
「うわっ!?」
直後、観音開きのタンスもバランスを崩して、運悪く僕の目の前に倒れてくる。
「う、わぁぁぁぁぁあぁぁぁぁ!!!!!」
そこで一旦、僕の記憶が途切れてしまった。
───────「……うや…………ゆ……や…………遊也!!!!起きてよ!!遊也、起きて!!!!」
聞き覚えのある声で、僕は目をゆっくりと開けた。
身体にはタンスが僕の数倍の重さはあるタンスが乗っかり、目の前には涙目で僕の名前を何度も呼ぶ由紀の姿が。
「由紀……大丈夫?」
「わたしは……大丈夫だよぉ…………でも、遊也の頭から血が……」
僕はかろうじで動く右手を、自身の頭に伸ばす。血は頭からでなく、額から流れている。だが、少し切れているだけだ。
僕は両手でタンスを少し浮かせると、その間にタンスの真下から抜け出した。
と、その瞬間に由紀が抱きついてきた。
「うぅ…もう怖くて怖くて……心配したよぉ…………」
「怪我はない?」
「うん。地震も止まったし、さっきの赤い光も消えちゃった。」
由紀の手を握って立ち上がると、自室からベランダに出た。外はまだ暗い。気絶していた時間は短かったようだ。
だが、明らかに気絶前とは光景が違っていた。
「真っ暗だな……赤い光も消えてる……」
先程までイルミネーションで輝いていた夜景は一変し、東京の街は暗闇の中に沈んでいた。
赤い光はおろか、見渡す限り「光」というものはない。勿論、僕の部屋の明かりも消えていた。
「携帯で電気の復旧目途を確認しよ……」
「無理だよ。携帯も使えなくなってる。」
「え?携帯は別に大丈夫なんじゃ…………」
使えなくなっている。携帯を開いても起動せず、電源を入れても入らない。いつも充電は満タンの筈だ。
この時、僕は、いや、由紀も異様な状況に嫌な予感を感じていた。
12月24日の東京の夜は、不気味なほどに静まり返っている。部屋の中にいる僕と由紀の呼吸音しか聞こえない。
「外に出てみる?ここにいても、状況がどうなってる変わらないし。」
「大丈夫かなぁ?」
「とりあえず行動を起こさないと始まらないよ。行こう。」
怖がっている由紀の肩に手を置いて声をかけると、僕と由紀は家を出た。
しかし、この行動は「初めての失敗」となるのだった。
無論、僕が預言者やエスパーでない限り、そんなことは知る由もない。
- Re: 世界が壊れゆくとき〜The Ability〜 ( No.2 )
- 日時: 2011/06/16 20:29
- 名前: みすたー・えっくす (ID: BZFXj35Y)
─序章─
2012年 12月 24日 午後7時30分44秒
地球と言う名のちっぽけな星に、幾多の流れ星が落ちてきた。
日本,アメリカ合衆国,中国,ロシア,イタリア,オーストラリア,太平洋海上…………───────。
「赤い流れ星」
やがて、赤く輝く流れ星は地上へ1つ、また1つ、次々と降り立つ。
それが天災なのか、それとも未確認生物なのか、はたまた‘それ以外の何か’なのか。誰も知る者はない。
そして、落下地点に偶然居合わせた人間は、流れ星と衝突した瞬間に赤い光の中へと姿を消した。
落下した筈の流れ星も、衝突した人間も目の前から忽然と姿を消す。
午後7時31分24秒
地上のあちこちで赤い発光体が現れ、やがて目も開けられないほどの輝かしい光を放った。
その直後に世界各地で大規模な直下型地震が発生し、都市機能は完全に停止をする。
機械は全ての機能を停止し、ライフラインも時間が経つごとに停止していく。
午後7時32分01秒
空に亀裂が入る。
午後7時34分55秒
落下地点にて、消えた人間が‘謎の焼き印’を体に刻まれて現れる。
そして、運命の7時35分00秒_______
世界の終焉に向かって、地球は狂い始める──────