ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- welcome to heaven 天国へようこそ
- 日時: 2011/10/03 08:16
- 名前: 王翔 (ID: RW071hbJ)
- 参照: http://ameblo.jp/686-7777/
瀬座は女です。男勝りな女の子です。
──────プロローグ────
真っ暗な闇が広がる夜空にぽっかりとまん丸の月が浮かんでいた──きれいな満月。
その日は、たまたま……あるいは、何かに誘われたのかもしれない。
さして自然物に興味のない俺がなんとなく外で月を見てみたいと思い、夜の公園でボンヤリと月を見上げていた。
けど、俺はバカだった。
こんな夜中に外を出歩くのは、良くないとは知っていたはずなのに……。
もっとも気づいた時には手遅れだった。
鈍い嫌な音が聞こえたと思うと身体に痛みが走り、背中から刺さったであろう黒と金の装飾が施された美しい剣の先が自分の胸を貫いていた。
きっと背後には犯人がいるんだろうが……振り返ることもできず、剣が身体から引き抜かれるとそのまま力なく倒れ、意識を手放した。
────────────
──お客様──【11名】
夏空様 (キサキ〜空の世界〜)
菊姫様
Saki*様 (〓殺し合い)
萌恵様 (死神は君臨する)
朝倉疾風様 (少女、影)
だいこん大魔法様 (Ebony girls dual Fencer)
ハゼタ。様 (神々の戯言)
クリスタル様(殺人少女の罪〜失われた記憶と祟り〜)
コーダ様 (獣妖記伝録)
みーちん★様(夢から覚めて!!夢から始まる死)
meta-☆様 (暗黒迷路)
コウタ様 (伝説の戦い)
*荊*様 (Bloody End〜染血の姫君〜)
ダイ様 (旋律のデス・ゲーム)
───────────
参照300突破 「嬉しいのですよー♪」
───画集───
瀬座 >>15 >>23
ラファン >>20
───いただきもの───
友梨様 瀬座を描いてくださりました >>24
拍犬様 瀬座を描いてくださりました >>29
だいこん大魔法様 ラファンを描いてくださりました >>35
山下愁様 宣伝を作っていただきました。 >>42
夕詠様 瀬座とラファンを描いてくださりました >>77
───キャラ紹介───
瀬座(女)男勝りな女の子。
ラファン(男)穏やかな性格で人当たりがいい。
レン(男)冷静で口がうまい。
レンレン(女)小人。レンとたまに入れ替わる。
───目次───
瀬座編
第一章 >>1 第二章 >>2 第三章 >>3 第四章 >>4 第五章 >>5 第六章 >>6 第七章 >>7 第八章 >>8 第九章 >>10 第十章 >>14 第十一章 >>18 第十二章 >>22 第十三章 >>25 最終章>>30
レン&レンレン編
第一章 >>32 第二章 >>34 第三章 >>37 第四章 >>43 第五章 >>45 第六章 >>51 第七章 >>56 八章 >>59
第九章 >>66 第十章 >>67 第十一章 >>72
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- Re: welcome to heven 天国へようこそ ( No.3 )
- 日時: 2011/08/23 07:59
- 名前: 王翔 (ID: EMu3eY/n)
第三章
「そんなに暗い顔しないでよ、困っちゃうから」
気付けばラファンが心配そうに俺の顔を覗きこんでいた。
どうやら、俺は考え込んでいるうちに難しい表情になっていたんだろう……自分の表情は自分で確認できないから案外言われるまで気づかないこともあるんだな。気をつけるか……。
初対面の相手を心配させるのはどうかと思い、俺は否定する。
「べ……べつに、暗いことなんて考えてないつもりだけど……」
「ふーん……それならいいや」
ラファンは朗らかな笑みを一瞬俺に向けると踵を返し、足を踏み出す。
「ところで、どこ行くんだよ?」
「家かな? 僕の家でいい?」
「いいって、何だよ」
「やっぱり、来たばかりは一人暮らしは不便だからね。死喰人が来たら大変だし、僕が引き取ってあげるよ」
引き取る、と言うのは俺の頭ではペットを引き取るとか子供を引き取るとかしか思い浮かばなかったので、少々機嫌が悪くなったが、それでも頷いた。
まだ他に知り合いがいない。今、頼れるのはコイツだけだし、無下に断るわけにはいかない。
◆
ラファンの自宅は、森の妖精さんが住んでいそうな可愛らしい外観の家をそのまま人が住めるサイズにしたような感じだった。
クリームのような可愛らしい形の赤い屋根にまるでケーキのスポンジのように黄色いレンガでできている。
天国の家は、どこもこんなにメルヘンなもんなのか。
べつに、気に入らないわけではないけど……。
家に上がらせてもらうとリビングに案内され、とりあえず俺はふわふわの雲のようなソファに腰掛け、目についたうまそうなクッキーをもぐもぐ食っていた。
ラファンはにこにこと営業スマイルのような笑顔でコップにジュースを注いで俺の前に置いてくれる。
うん、まぁ……それなりに親切な奴らしいことは分かった。
「瀬座、部屋は三つあるから好きなの使っていいよ。ラブリーなのとラブリーなのと、ラブリーなのがあるよ」
好きなの使っていいって、一種類しかないじゃないか。
コイツ、頭イってんのかね。
「あー……ラブリーなのでいいよ。つーか、それしかないんだろ」
「まあね」
ラファンは苦笑混じりに言う。
「女の子の好きなものって分かりにくいから、あんなのしか用意できなかったんだよね」
「女の子…前に一緒に住んでたのいたのか?」
「うん、何人か……まあ、受け入れるのは一人ずつだけど」
気付けば俺は、菓子を食うのをやめて暗い気分になっていた。
「まあ、みんなすぐ出て行くけどね」
「ふーん、そうなのか……」
俺はラファンの話に耳を傾けつつケーキを手で掴んで丸かじりした。
「それにしても、瀬座もやっぱり女の子だよね。お菓子が好きそうなところとか」
「フォークで上品に食ってなくて、手で掴んで食ってる俺がか?」
「うん、とっても可愛いよ」
ラファンは何かおいしいものでも食べた後のように朗らかに笑った。
それ、動物みたいとか言うんじゃないよな?
俺は愛嬌のあるペットと思われてないことを、クッキーに願った。
- Re: welcome to heven 天国へようこそ ( No.4 )
- 日時: 2011/08/23 08:02
- 名前: 王翔 (ID: EMu3eY/n)
第四章
いまだふわふわのソファでクッキーをかじりながら、俺はラファンに尋ねた。
「なあ、死喰人って出たらどうするんだ?」
「ああ、倒せばいいんだよ。誰でも低級の死喰人を倒すぐらいは訓練すればできるよ」
「じゃあ、俺も……」
その訓練とやらをして……と続けようとしたところで、
「危ないからしなくていいよ。もし出たら僕が守ってあげるから」
「……俺を下手に女扱いするなよ。自分の身ぐらい、自分で守る」
「……」
うわ、沈黙しやがった。さらにショックを受けて何かを飼い主に訴えかけるような眼差しだ。
これだと、俺が悪いみたいじゃないか。
「うん、君がそう言うなら。これを」
意外にもラファンはにこりと優しい笑顔で俺にある物を差し出した。
手渡されたのは刀身の青い短剣だった。
「低級の奴なら、それで斬るだけで倒せるから」
「ああ……うん」
コイツは、低級の奴は……と強調している。もし上級の奴とかが現れたら逃げろってことだろう。
今まで食材以外のものは斬ったことがないが、大丈夫だろうか。
まあ、その時になれば意外と何とかなるかもしれない。
自室に行った俺は、ピンク色のハート型のベッドに腰掛けた。
「それにしても……何をしたら…」
何をしてもいいとは言われたが実際、言われたら困る言葉だ。
思わず嘆息。
俺には明確なやりたいことがない。
まあ、これから考えても遅くはないだろう。
そう思い、ベッドに寝転がろうと体勢を崩しかけた。
コンコンとガラスが軽く叩かれる音を聞き取り、俺はハート型の窓を確認した。
ツインテールの小人が窓越しにふわふわ浮いていた。
口がパクパクしているので、何か喋っているようだが窓が防音仕様なのか小人の声が小さいのか、声は聞こえない。
窓を開けるとその小人はふわふわと浮いた状態で侵入してきた。
「はじめまして、ですよ!」
ぱあっと明るい表情で大きな声でそう言ってきた。 それなりのボリュームなので、どうやら窓が防音仕様だったようだ。
「あー…はじめまして」
「ボクは半小人のレンレンですよ! よろしくです、せーちゃん!」
「な、何で俺の名前を」
せーちゃんについては、突っ込まない。聞いたところで、どうせニックネームとか言うんだろう。
「ボクは、よく下界を見ていたので大体の人のことを知ってるですよ!」
「下界を?」
「天国から、下界を見ることができるですよ! ボクとレンはよく見てたです」
「レン?」
「レンはボクの中にいるもう一つの魂ですよ。結構、 入れ替わるですよ、姿ごと。レンの魂が表に出ると、普通の人間サイズなんで半小人ですよ! レンはいけめーんさんなんですよー!」
「へ、へえ……」
イマイチ良くは分からないけど、納得しておく。
「ボクの家は下界にあるです。下界のことが知りたくなったら、来るといいですよ」
「何を教えてくれるんだよ?」
「えーと……誰が誰に殺され……」
ガチャリと音が響き、不意にドアが開いた。
料理中だったのか包丁を持った不機嫌そうなラファンがいた。
- Re: welcome to heven 天国へようこそ ( No.5 )
- 日時: 2011/08/22 20:18
- 名前: 王翔 (ID: 3f2BBQD7)
第五章
むすっとした表情のラファンは特に足音もたてず、レンレンの目の前に行くと包丁を突きつける。
「レンレン、ここには来るなって言ったはずだよ」
「うー…いいじゃないですかー」
「君だけなら問題ないよ。けど、君の中にはレンもいるだろう?」
「ラファンは、レンに女の子何人か横取りされたこと根に持ってるですか?」
「べつに、そんなことはないよ。あの子達には、執着してなかったし。ただ、ああ言う人種が嫌いなだけだよ」
レンレンは納得したように手をポンと叩いた。
「レンに横取りされないか気になるですか?」
「レンレン、いい加減にしないと刺すよ」
ラファンは冷たい目でレンレンを見ながら、わずかに包丁を動かした。
ここは止めに入るべきか?
そう思い、動こうとするとレンレンが口を開いた。
「ごめんなさいですよ。刺されると、とーっても痛いのですよ。じゃあ、ラファンがお怒りみたいなんで、おいとまするです!」
レンレンは、にっこーと満面の明るい笑顔を浮かべるとサーっと窓から高速で出て行った。
解決ってことでいいんだろうか。
それにしても、レンレンの言ってた下界のことって……。
「ごめんね、瀬座。変なところ見せちゃって」
「いや…べつに、ただのケンカなんだろ?」
どうした俺。
どう見ても、今のはただのケンカじゃないだろ。
「うん、そうだよ。いつものことだからね」
包丁を下げつつにっこりと笑いながら返事をするラファン。
それにしても、あんなに可愛い小人に包丁向ける奴もいるんだな。
「じゃあ、もうすぐ昼ごはんできるから、待っててね」
「あ、俺も手伝っていいか?」
「いいけど……いいの?」
俺は、自信満々に笑ってみせた。
「もちろん。俺、料理には結構自信あるんだ」
- Re: welcome to heven 天国へようこそ ( No.6 )
- 日時: 2011/08/23 08:23
- 名前: 王翔 (ID: EMu3eY/n)
第六章
朝ご飯は、俺がゆで卵カレーを作った。
ご飯をお皿の上に平らに盛り、ゆで卵をのせ、その上からカレーをかけるといったものだ。
卵が嫌いな奴は注意だな。
「ゆで卵入りのカレーライスなんてはじめてだよ」
ラファンはカレーがかかり、茶色く染まったゆで卵を器用にスプーンで割りながらそう語る。
「その……うまいか?」
「うん、すごくおいしいよ」
ラファンは、頷きながら微笑む。
俺はゆで卵カレーを一定のスピードで口に運びながらラファンに質問した。
「ラファンは、何やってるんだよ?」
「僕は郵便屋さんかな。みんなから手紙を預かって届けてるんだ」
「それ、おもしろそうだな」
いろんな人と知り合いになれそうだし、手紙の中身とか見たらおもしろそうだ。
「じゃあ、瀬座も手伝ってくれる?」
「おう」
「あ、でも…勝手に人の手紙の中身を見ちゃダメだよ」
笑顔で念を押された。
「分かってるよ……」
「じゃ、瀬座にはこの手紙を頼もうかな」
一通の手紙を受け取った。どうやらある程度は思考を読まれているらしい。
「ここから、西に行ったところに、丘があってね……その家に届けてね」
「ああ」
★
「……」
しまった。
迷った……。目指しているはずの丘は見えず、気付けば森の中だった。
森の中は木々が生い茂り、太陽の光を妨げていて暗く視界が悪い。おとぎ話に出てきそうな不気味な迷いの森などを連想させる雰囲気だ。
何か……気味が悪いな……。そう思い、眉をひそめた。 すると突然、黒いもやもやした紅い目をギラギラさせる奇妙に蠢く歪な生物が現れた。
「魂……ほしい……ころされた、にんげん……」
「……っ!」
コイツがラファンの言ってた死喰人か……。
俺はポケットから短剣を取り出し、死喰人を斬り払う。 短剣は青いまっすぐな軌跡を描き死喰い人を両断する。
死喰人はあっさりと粒子となって消え去った。
「ふう……」
「たましい……」
「におい、する……」
「喰いたい……」
気付けば多くの死喰人に囲まれていた。
この数は……まずいかもしれない。
「この……」
攻撃を短剣で弾きながら後退し、隙ができたら青いきれいな軌跡を描きながら死喰い人を両断し、身体を抉り突き刺し倒し続けたが数が多すぎて全ての死喰い人の動きが把握できず背後から大きな衝撃が走る。
「う……!」
俺はバランスを崩し、そのまま膝をついた。
立ち上がろうにも傷が痛み、うまくいかない。
冷や汗が流れる。このままだと……やられる。ここで喰われたら次はない。身体の奥から恐怖のような形容しがたい何かが這い上がってくる感覚を覚えた。
不意に何かを切り裂くような音が森に響き、白と黒が入り混じる閃光が走り、いきなり死喰人が消え失せた。
「え……?」
雪を連想させるような真っ白な髪に金の装飾が施された漆黒のローブを纏い、白と黒の双剣を持つ青年だった。
何か冷たいオーラを纏っている感じがして、寒気がした。
「大丈夫ですか、瀬座」
ソイツは双剣をしまいつつ優しい表情をする。
「何で、俺の名前を」
「レンレンの中から、見ていましたから」
「え……?」
- Re: welcome to heven 天国へようこそ ( No.7 )
- 日時: 2011/08/23 08:26
- 名前: 王翔 (ID: EMu3eY/n)
第七章
「レンレンの中から、見ていましたから」
「え……?」
「私は、レンです」
「レン……」
レンレンの言ってたもう一つの魂とやらか。
じゃあ、今は入れ替わってるのか?
「ちょうど良かった。聞きたいことがあったから」
「何か、御用ですか?」
レンは優しそうな笑顔を崩さず、質問してきた。
「ああ、下界のことで……」
「ひとまず、私の家に行きましょう。ここで、立ち話と言うのも何ですからね」
「あ、ああ……」
俺は素早く立ち上がって頷いた。
不思議とさっき受けた攻撃による痛みは消えていた。
★
レンの家は、森の奥に建っていてこれまたメルヘンな家だった。
木の形をしたカラフルな家だ。
俺は客を迎えるための部屋らしい場所で豪華な赤いソファに腰掛け、レンを待っていた。
「すみません、紅茶を作るのに時間がかかってしまいまして……」
「ああ、いや……謝らなくても……」
レンは出来上がったばかりの紅茶を俺の前に置く。
その後、向かい側のソファに腰掛けると口を開いた。
「下界のことを、聞きたいんですよね?」
「ああ」
「教えるのは、かまいませんが……対価は払ってもらいます。ここにはお金がありませんから、ちょっとした、すぐにできることです」
「分かった。じゃあ、一つ、聞きたい」
俺は、迷わず聞いた。
「俺は、誰に殺されたんだ?」
「……すみません、ここのルールでは、殺された人間が自分を殺したのが誰か知らない場合、教えてはならないんです」
「そう、なのか……」
俺は、がっかりした。
諦めるしか、ないのか……。
「でも、ヒントなら教えられます」
「ヒント…」
ヒント、か。聞けば自分で犯人を突き止めることができるかもしれない。
「では、一つ、あなたは恨みを買ってはいなかった」
恨みは買ってない、か……となると、通り魔の仕業か?
「もう一つ、あなたを殺したのは、死者です」
「死者…?」
俺は思わず身を乗り出した。
それは、つまり……この天国にいるものなのか?
「これで全てです」
「ありがとう……」
「ところで、対価ですが」
「あ、何をするんだ?」
あんまり見当がつかないな。皿洗いとか、家事の手伝いか?
「私の相手をしてください」
「相手?」
「ええ、簡単ですよ」
レンはにこやかにそう言うと、俺のネクタイに手をかける。
いやいや、え? 何だ? 冷や汗がダラダラと尋常じゃないほど流れてくる。
俺はレンを必死に制止しつつ大声で叫んだ。
「や、やめれーーーーーーーー! 俺なんか、男みたいだし、おいしくないってーーーーーーー! やめれーーーーーー!」
不意に大きな音が響き、ドアが開いた。
そこに立っていたのはラファンだった。
ラファンは、部屋に入って来て俺の腕を掴む。
にっこりと微笑み、
「こんにちは、レン。この子がお邪魔しちゃったみたいだね。じゃあね」
そう言って、レンの家を出た。
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