ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- 償って死ね/処刑者の戯言
- 日時: 2011/07/26 22:45
- 名前: 莉奈 ◆703fA5c/sc (ID: ICvI0sBK)
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
—— 罪人が増えた、
だから、罪人を殺すのが、役目だ。
罪人が死ぬ運命なのだから。
今宵の犠牲者は誰?
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
初めまして莉奈(rina)ともうします。
初心者ですが、どうか大目に見てください。
それでは、稚拙ですが、よろしくお願いします。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
→ 注意事項
01/ シリアス、ダーク、猟奇的、死、の描写があります
02/ 荒らしや喧嘩、宣伝などは一切お断り。
03/ マナーを守ってください
04/ 事項を見ないでの苦情は一切受け付けません
05/ 短編集。オムニバスストーリー
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
→ 登場人物
*/ 春山 美歌 ( haruyama mika ) ♀
*/ 弓月 ルナ ( yuduki Luna ) ♀
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
Page:1 2
- Re: 償って死ね/処刑者の戯言 ( No.3 )
- 日時: 2011/07/31 22:27
- 名前: 莉奈 ◆703fA5c/sc (ID: ICvI0sBK)
#02
「何だ、このテストの点数は……」
硬い、呆れたような男の声だった。銀縁の眼鏡が光る、スーツ姿のエリートみたいな、人情味のない、冷淡な雰囲気の男。
神経質な表情、痩せて都会で学問だけしか育てられずに、普通の業績を上げた、いわばエリートぶった父親だった。
高級そうな虎柄のソファーに座って、揉み手をし、ぎらんと蔑んだ目で俺を見上げる。
隣に、これはまた神経質で俯き加減で脇に座っている、女。
俺の母さんだ。母さんは俺と目を合わそうとしない。
父さんが、はあ、と溜息を吐きだし、ソファーから立ち上がった。
「お前はろくに勉強も出来ないのかっ!?」
俺の顔に極端にテストの紙を前へ押し出し、見慣れた点数を見させた。
クラスでは、平均点代に入る、78点。別段まあまあな点数だった。
だけど、父さんや母さんにとっては、ありえない点数らしく父さんの額に青筋が走っている。
テストを持つ手も、若干、小刻みに震えていた。
「全く………」
と再びソファーに座り直した。母さんは高級そうなスカートを皺が出来てもまるで気にせず、裾を握り締めている。
裾を握り締めている手も、小刻みに震えていた。
「お前はいつになったら……爽太みたいに優秀になるんだ」
父さんの言葉で母さんは急に泣きだし、ポケットから取り出したハンカチでみすぼらしくなった顔の涙を拭う。
白いハンカチを振り絞って、ぎろっと俺の顔を見上げた。
軽蔑と嫌悪の混ざった—— 鬼女めいている、母親とかけ離れた女の顔だった。
「あのね、母さんたちはね、葉月の為にね、塾代やら家庭教師とかね、色々とお金をかけたのよね、たまに息抜きとしてゲームや漫画とかね、葉月の将来の為に色々とね、近所でレベルが高くて優秀な進学校もね、探しているのよ。遠くないように気を遣って、探し回って、見つけて、葉月の学力に、ちゃんと合うか、調べたのに………」
最後の語尾で口調が変わった。依然と白いハンカチを握り絞っている。
父さんも驚いたのか、肩に手を置こうとした瞬間、母さんは立ち上がって。
「何で何で爽太が死ななきゃいけなかったのよ!爽太は成績も運動も手先も器用で記憶力も良いし、それに性格だって素晴らしかったわ。真面目で他人に気配りが出来て、親である私たちに気が利いたプレゼントも、疲れた時は疲れが取れる紅茶や薬とか送って親孝行な子だったのにっ、何で何であの時……爽太はお前の風邪薬を買いに行かせたのよ、あの時、私にちゃんと言えば爽太は車に轢かれず、死なずに済んだわ。何でお前が生きているのよ。爽太の代わりにあんたが———」
そう言うと母さんの顔が変わった。無表情の顔に戻り、ソファーに座り直す。
白いハンカチをスカートのポケットに入れ戻した。
「あんたが死ねば良かったのに」
つんと尖った口調で言われた、死を望む言葉。
「……おい、百合子っ!」
「事実でしょ!?」
父さんの言葉でヒステリックに叫んだ、母さん。
目がぎらついてて、鬼女じみている。
「実の—— おい、葉月!!」
父さんの言葉を後にし、俺はリビングから出て行った。荒々しく扉をわざと閉めて階段を駆け上る。
後ろから、母さんの暴言が——— 聞かない振りして部屋の中に逃げ込むように入って鍵を閉めた。
未だ、体がわなわな、と震えだす。
思い出したくもない、過去を掘り起こされて、吐き気が込み上げてきて、両目に涙が洪水のように溢れ出た。
両手で顔を覆う。
—— 兄さん、大丈夫?
弟の声。これは幻聴だ。爽太は死んだんだ。2年前に死んだ。まだ14歳という若さで死んだ。
当時、俺はまだ15歳だった。
霊安室で弟と対面したとき、体の一部を包帯で巻きつけられ、変わり果てた姿だった。
風邪で気だるさも手伝い、俺はショックで家に帰ると眠るように、倒れたことも記憶に新しい。
「爽太………」
仄暗い部屋に世に存在しない弟の名前を呟いた。
.
- Re: 償って死ね/処刑者の戯言 ( No.4 )
- 日時: 2011/08/01 15:56
- 名前: 莉奈 ◆703fA5c/sc (ID: ICvI0sBK)
#03
「そうとう、追い詰められているわね……」
と閑静な住宅街、時間帯はもう既に真夜中の午前零時。足首まである、黒髪の小柄な少女が呟く。
葉月の隣家、梓の家の屋根上に立って、じっと葉月の部屋がある窓を見つめていた。
膝までしかない白いワンピース、靴は茶色のロングブーツというシンプルな格好をした少女。
見た目からして、まだ14,15歳くらいの少女だった。
こんな時間帯に外に出ても良い時間帯ではない。それ処か他人の家の屋根にいる時点で既に可笑しい。
「ルナ……」
にゃあん、と猫の鳴き声がした。少女の足元にいる黒い仔猫だ。
少女にルナと呼ばれ、腕に抱きかかえられる。
「行こう……」
と仔猫を抱きかかえて、何処かへと屋根から消え去ってしまった。
真夜中の閑静な住宅街は、何事もなかったように静まったまま。
○
俺はあの後、どうやら知らずベットに潜り込んで寝ていたようだ。
母さんの言われた—— ヒステリックな言葉を思い出す。
爽太の代わりに死ねば良かった、か………
どんだけ、俺。両親に出来損ないという〝レッテル〟と印象を植え付けられてるんだろう。
何で爽太が死ななければいけなかったんだ。
それは、俺も知りたいよ。
頑張って深夜まで勉強してるのに、休み時間も友達とふざけながらも、隙を見てはしているのに。
疲れたよ。
何で俺が苦しまなくっちゃ……現実逃避、とあの人等はきっと言うだろうな。
愚痴を零せば——
嗚呼、もう嫌だ。
嗚呼、もう死にたい。
ストーカーの件も爽太の件も、勉強の件も……何もかも、嫌だ。
いっそのこと、記憶喪失で世間からも存在を消されたら、きっと楽になる。
死にたい……苦しい……うんざりだ。
父さんも母さんも。世間も勉強も友達も、全て何もかも。
.
- はじむめまして!! ( No.5 )
- 日時: 2011/08/01 10:40
- 名前: さき (ID: wR.Qnrni)
はじめまして
さきです!!
リアルな話でとてもうまいですね!
タメオッケーですか?
よかったら、お返事ください
小説かんばってください\(^○^)/!
- Re: 償って死ね/処刑者の戯言 ( No.6 )
- 日時: 2011/08/01 15:50
- 名前: 莉奈 ◆703fA5c/sc (ID: ICvI0sBK)
さき様
初めてのコメント、ありがとうございます!現実味があるといえば、あるんですけど……
まあ、そこは秘密で(笑)。タメ、断然として………おけですよ—っ!!
むしろ、歓迎します(笑
というわけで、頑張りたいと思いますっ!
- Re: 償って死ね/処刑者の戯言 ( No.7 )
- 日時: 2011/08/01 17:06
- 名前: 莉奈 ◆703fA5c/sc (ID: ICvI0sBK)
#04
体が重い感じを覚えて目が覚めた。部屋はまだ薄暗くカーテンの隙間から淡い光が差し込んでた。
嗚呼、まだ—— 明け方の間近か、もうすぐかのぐらい、と。ふと、思う。
そして、俺の寝惚けた視界にぼんやりと映った、黒い真っ黒な人影も。
見覚えのある、影だった。
「葉月、葉月……お願いだから、死んでちょうだい。爽太、爽太。爽ちゃん。お願いだから、葉月を殺してちょうだい。母さんからの願いよ。早く早くお前さえ——………お前さえ死ねば、うちは恥晒しになんか、ならないわ。お願いだから死んでちょうだい。お願いよ……母さんね、葉月が早く死ぬように、仏様や神様……陰陽師の人たちにも願ってね、葉月が早く死ぬように、逝けますようにって……願っているのよっ!!」
それは母さんの身勝手な願望だった。それ以前に陰陽師とかの人たちに自分の息子の死を願ったのか。
そんなに、俺がいらないっていうの。
例えとして、死んだとしても、爽太はもう、二度と俺たちの前に現れないんだ。それを受け止めれない人。
現時点で、俺の死を一応、寝た振りしている体に馬乗りし、ヒステリックに喚いた。
未だ、俺の死を願う恨みの言葉を吐き捨てながら、喚き散らかしている。
「…………お願いだから」
母さんの口調が平生に戻る。
「死んで、お願いだから……事故死してちょうだい」
自殺は世間体の恥になるんだろう、して欲しくないわけだ。
母さんはベットから降りた後、部屋の扉を音立てることなく閉めた。
しん、と静まり返る。
寝ようにも寝れなかった。—— 寝れる訳がない。
実の母親に死ぬことを願望されている、非常識な家庭に育ったのだから。
眠たいけど眠れない。目を閉じても、全く眠気が襲ってこない……
○
今日は月曜日、しかし、夏休みで部活もなかった。
勉強をしよう、と思ったが、学校の課題は全て終えてしまっている。
テストの勉強をしようと思ったが、開け方の願望を聞いてやる気が失せた。
やらなきゃ。やらないとまた母さんたちに叱られる。
お小遣いを減らされ、漫画やゲームも捨てられてしまう。
だけど。何の為に頑張るんだよ、何の為にするんだよ。
母さんは死んで欲しいんだ。事故死とはっきり死因まで言って死んで欲しい。
死んで欲しい、死んで欲しい。死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね……
「——………やめろ、やめろ。やめろ」
頭の中で湧き出てくる、死への誘い。爽太が俺の前で手を振って、呼んで、俺を誘っているじゃないか。
早く此処に来てよ、と満面の笑みで言っている。子供みたいに、はしゃいで精一杯、手を振ってる。
あそこに行けば、楽になれるのかな。
「やめろ、やめろ、やめろ、やめろ、やめろ、やめろ、やめろ……!」
そうしている内にインターホン。家は誰もいなかったはず。
起き上がり、時計を見る。午前10時だった。
部屋を出て階段を下りて、訪問者が誰なのかを、玄関のドアを開いた。
結果、誰もいない。
ただの近所の子供の悪戯かよ、と苛立ったら、視界に映る—— 白い箱。
丁寧に赤いリボンを結んでプレゼントです、と物語っているな。
手紙の次はプレゼントかよ、ストーカー。
というか、何が入ってんだ。
確かめるの、怖い。
でも、好奇心に負け、紐を解く。中身は……写真。
「俺……俺、俺ばっか」
まあ、ストーカーは俺しか興味ないから、当たり前だろう。
それでも、怖い。
気持ち悪くて薄気味悪い。
一体、何処の誰が、俺のことを———…………背筋が凍った。
なんか。本当に怖い映画を見たときと同じ鳥肌が立った。
あの映画なんかより、今この現実が怖い。
誰かに見られてる。
そんな気がして、すぐさまリビング中のカーテンを閉め切った。
猛暑で暑いけど、クーラーをつけて、一安心。
不安を忘れる為、テレビをつけた。
大好きな俺のバラエティー番組が再放送されてて、それを見ることに。
番組が終わって、俺はテレビを消した。ふと……プレゼントを見る。
「捨てないと……」
どう始末しよう。仕方なく箱はゴミ箱に。写真は—— 使い道がない。
というか、使いたくもない。
変な奴が撮った写真なんか、気色悪すぎて、結局、捨てることにした。
母さんたちにばれようが、もう、どうでも良くなった。
全てどうでも良いや。
あはは……
あははは……
あははははは……
何もかも、どうでも良いや。
.
Page:1 2
この掲示板は過去ログ化されています。