ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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トロイの木馬
日時: 2011/07/29 16:33
名前: 比泉 (ID: MbtYH2rf)

制作段階の作品を載せます。
編集も済んでいない駄作ですが、暖かい眼で見てもらえれば嬉しいです。


未熟な自分の作品を楽しんでいたければ幸いです。

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Re: トロイの木馬 ( No.4 )
日時: 2011/07/29 16:50
名前: 比泉 (ID: MbtYH2rf)

第一話
 

戒め。


 どんな意味か考えてくれたことはあるだろうか。


 償いと言っても変わりない。


「終わったなアレックス・・・今日もお疲れ様」


 ブルクハルトが面倒にそう呟いた。


「うるせえ」


 そう返した。俺も面倒に。


 適当に。


 ナターシャという少女を紹介しておこう。


 俺は正直に言う。


 あいつのことがわりと好きだ。


 いや。際どい。かなり好きだ。


「おい、余計なこと考えてんじゃねえよ」


 親友であり旧友にかなり卑しい所を見抜かされちまった。


 かなり危ない状況だ。


「おい。ていうかここがどこか覚えてるのか」


 親友に呼び覚まされ状況を改めて確認する。


 第六師団本部。


 はっちゃけられない所にいることは明確だった。


 現在は中央ホームのエレベーターに二人乗り合わせている。


 普段あまり着ない礼装でちゃんと参ってきた。


 なんせ珍しい事態が起きたのだ。


 元大隊長がお出でなさったのだ。


 ついでに俺たちをお呼びに。


 一体何のようかは知らないがとりあえず当時の主要メンバーとして俺
とブルクハルトが呼ばれたのは事実だ。


「こんなもの無視しても良かったんだがな」


 紙っぺらを見ながらブルクハルトが無神経にそう呟いた。


 召集令状・・・とは違うがお誘いみたいなもんだ。
 

 走り書き———
 親愛なるアレックスとブルクハルトへ———
 


 破り捨てた。


「ちょ・・・・お前・・・・!!!」


 ブルクハルトが愕然としていった。


「さっさと行くぞ」


 俺はそう切り捨てて規定の階に来てから降りた。
 

「遅かったな。君たち」


 小綺麗に整理された部屋を訪ねた。


 ノックはちゃんとして入ったつもりだ。


「ノックは四回」


「・・・・すいません」


 うぜえな。


 かなり、うぜえな。


 そうアイコンタクトをブルクハルトと交わし、卓上に置かれた書類をまとめながら元上司は偉そうに椅子に座ったまま俺たちに告げた。


 端正な顔立ちでイケメンに部類されるだろうその男は感情を余り表に出さずに淡々と聞いてきた。


「この二年間何をしていた・・・?」


 この二年間?


「この手紙の意味から教えろよ」


 ブルクハルトが問い詰めた。いきなり詰めに入るのはどうかと思うぞ。


 お前、相変わらず俺より主人公属性強いな、と思いつつ上司に向き直る。


「軽く言えば招集。重く言えば収容。分かったか?」
 分からねえよ。


「相変わらず嫌な言い方しますね」


「次は俺の質問だ」


 おい。


「この二年間何をしていた」


「遊んでました」


「死んでいいぞ」


「冗談・・・です」


 俺は何となく謝った。


 ガチの人相手にふざけていると怖い眼に会いそうなので。


「で、何をしていた」


 腕を組み直して上司は聞いてきた。


「ラインホルト。お前また何か起こす気か」


 ブルクハルトは腕組みしたまま下らない上司を見下しながら言う。


「安心しろ。俺は物事は考えて実行する。それと上官を呼び捨てか」


「すいませんでした。フロイデンブルク」


「隊長はどうした」


「元隊長」


 糞ったれが。


 そうラインホルトが吐き捨てた。


 ストレスが溜まったのか葉巻を取り出した。


「健康に悪いですよ」


「たまにはいいもんだ」


「嘘付け。二年前も吸ってただろ」


 しかも取り出す仕草とオイルライターの扱いから見て習慣になっている。


「上官に対する遠慮も言葉遣いも相変わらず最低だ」


「落ちこぼれだってか?」


「生憎生半可じゃない部下を持った気分だよ」


 並大抵じゃないウィザードと特四だからな。


「まぁ、一応は恩返しだ。俺はそんな甲斐性なしじゃないしな」


 ブルクハルトは澄まし顔でやり過ごして、その後眼を瞑ったラインホルトに訪ねた。


「結局用件は何だ?」


「それを今話そうと思っていた」


 しばしの沈黙の後、ラインホルト・フロイデンブルクは瞑っていた目を開き俺たちに言った。


「最近・・・・ナチス党が政権を握ったそうだな」


「ああ」


 ブルクハルトは嫌な予感がするのか押し黙る。


 俺はその代わりに返事をしておく。


「連中は、軍部の掃除を始めている。プロイセン大革命を行う気だ」


「へぇ。それじゃあ・・・・逆に連中を掃除する気ですか」


「違うな」


 そう言ってラインホルトは再び眼を瞑った。


「上の具申で俺は再び実戦に復帰することになった」


「今まで事務だったんですか」


「まぁ・・・ご隠居してたんだよ」


 ラインホルトは動じずに饒舌で喋る。


「エリアス・アドルノは邪魔だ。消す」


 唐突に首相の名前を挙げた。


 エリアス・アドルノ首相。


 一昔前は政治や軍部上層部など幹部は昔から年を食ってる連中が多かった。


 しかし現在は一般民衆の考え方が変わったのか随分若者が組織の構成員に蔓延ったもんだ。


 政治家は今ではやたら若い連中が多い。


 そもそも何故こんな事が起こったのか。


 理由は実に簡単だ。


 今は少子高齢化は過去の実例だが多子若齢化が進行している時代なのだ。



 こんな時代に老いぼれが権力を握ろうとすること自体、老害。


 結局多数決が勝利を呼んでいるのだ。


 首相も普通じゃあり得ないぐらい若年だった。


 若干27歳。


 かなりの若人だ。


 ナチス党の党首であるが軍部ではあまりいい目では見られてはいない。


「すでに次の手を打っているが、お前達は気をつけた方がいいとの旨を伝えておく」

Re: トロイの木馬 ( No.5 )
日時: 2011/07/29 16:54
名前: 比泉 (ID: MbtYH2rf)



「おい。どういうことだよ。俺たちは招集を受け入れた覚えはない」


 ブルクハルトがいきなり口を開いた。


「お前達が来てくれた時点で了解の合図だと受け取ったつもりだが?」


 最もだ。


「まぁ、そういうつもりで構わないですよ」


「おいアレックス」


「いいんだよ。これも戒めだ」


「・・・・・・・」


 皆俺のこの言葉には弱い。


 戒めているというだけ。


 俺の間違い。


 ミスなんてレベルじゃない。


 明日から取り戻せる規模ではないのだ。


「下らないな」


 そう言ってもこの上官は甘くない。


 俺の考えを甘えだと酷評をくれた。相川らずタチの悪い人だ。


「少佐」


 急にそんな声が聞こえて隊長室の扉が開く。


「先日の依頼ですが。調査してきました」


 若い女性士官が入ってきた。


「ほう・・・・仕事が早いな。どれだけの人員が手を貸してくれるか目処は付くか?」


「いえ。ただ推定では2500人は集まるのではないでしょうか」


「そうか・・・・意外と少ないな」


「こんな内容に賛同する人間がこれだけいることは逆に奇跡のようなものだと思いますが」


 ラインホルトは笑った。


 その後書類を貰ってから帰っていいぞと残し、女性士官は立ち去った。


「今の子結構良かったですね」


「そう思うなら地の文で綴ってろ」


 余計な思惑は見透かされていたようだ。


「少なくとも戒めとやらがこの戦いで晴れるものならば、俺は推奨しておこう。さっさとその考えを悔い改めて前を向いていろ」


 更正しろ、と受け取っておこう。


「アドルノ首相についてですけど、俺たちのするべきことって」


 気づけばブルクハルトが勝手に出て行っていることに気づいた。


 おいおい。


「まぁ、いい。俺としてはお前達に仕事としてやってもらいたいことがある」


「初仕事ですか」


「ああ。党員を一週間に一人の割合で射殺していってもらいたいんだが———」


「すいません。それは俺たちの器量の領域を超えています」


 なんだ、情けない。


 そう言ってはメモを取り出すラインホルト。


「まぁ、いい。時期にお前は狙われる」


「え?」


「気にするな・・・そう焦るような時期には起きない」


「なんすかそれ・・・不安ですね」


「フェルゲンハウアー君はそれに勘づいているからあんな態度を取っていたんじゃないのか?」


 ああ・・・・。


「相変わらず柄に合わない・・・・」


 もう、この空間から抜け出してもいいだろうか。


「ああ、随分と嫌そうな顔だな。もう消えていいぞ」


「はいはい・・・・」


 遠慮せず消えることにする。

Re: トロイの木馬 ( No.6 )
日時: 2011/08/01 17:04
名前: 比泉 (ID: ID28wqen)

ついさっきの記憶。

力を出し切って完全にピンチになったナターシャを救うために食ってかかったブルクハルト。

が、アンドリューズ隊長とやらの能力の前に木っ端微塵にされてしまった。

やつが斥力を使うことに気づいていなかった致命的なミスだ。

最悪の状況下で木陰でひっそりと見守っていたアレックス・エッフェンブルクこと俺は「際どい・・・」などと考えながら観戦していたためか背後に迫るもう一人の金髪の女の子に気付かなかった。

「馬鹿な人間だな・・・・私たちを前にのうのうと観戦か。しかも隊員を見殺しに」

「気取られた!?」

要するに回想だ。

Re: トロイの木馬 ( No.7 )
日時: 2011/08/01 17:20
名前: 比泉 (ID: ID28wqen)

いきなり睨まれた。

元のの顔がいいだけにすごい迫力だ。

ただ残念な点を挙げるならば、

それが殺意だという点だ。

「ま、全く可愛いなぁ・・・・アハハ。俺が仲間が殺られるのを黙ってみている人間に見えるー?」

割と。

そう言う風に言っているような眼差しで睨まれた。

怖いよ。

距離はほんの数メーターも離れてはいない。

ウィザード同士ならざらにある距離だが普通に普通の人間ならまずこんなことはない。

いい加減木陰から出ようか。

迷い始める。

どうせ正体割れたんだろうし、そう考えたとき思わぬ激痛が走った。

それは脳震盪に近い。

誰でも一回はあるかはわからないが淡い経験だ。

「・・・・・・いってええええええええええええ!!!?????」

ひたすら叫ぶことしかできないのが辛い。

かと言って敵兵であるその子に助けを求めるわけにもいかないし、敢えてひざまづいた状態で見上げると見ていた。

その少女が。

その美しい碧眼に誤魔化されようと、いや心ときめかされようとしていたとき、

「馬鹿野郎アレックス!サイコキネシスだろうが!?よそ見すんな!!」

心の限り叫んだ親友の声が俺を浸透した。

「あ・・・・・?」
唐突に振り返るのと同時、

幾重にも、幾重にも、幾千ものナイフが襲ってきた。

Re: トロイの木馬 ( No.8 )
日時: 2011/08/01 17:44
名前: 比泉 (ID: ID28wqen)

全くもって気違いな光景だ。

どう対処していいのか全然分からない。

いやいや。

本当になんと言っていいか分からない。

俺はこの事態に大して多大な悩みを抱えている。

それはただ一つ。

まず俺はこんなことではお手上げにはならない。

単にこのアーマントゥルードとかいう女の子にナイフが降り注ぐことに対して抵抗があっただけのことだ。

まぁ、生憎そんなダサい死に方をするジェントルマンがこの世にいていいのかとどこかの誰かさんに問いただしたいが今は我慢する。

とりあえず今は痛みに。

「馬鹿野郎ぉぉぉぉ!!!」

なんでかそんな言葉が頭の中を通っていった。

「全く・・・・なんだこの人間は」

呆れるようにゆっくりとあの男が近づいていてきた。

「女を守るために討死か・・・・理想の軍人だな」

「だろ」

ぼんやりと浮かぶ男にそう伝えた。

いや、言ったが正しいな。

遺言めいたことになってしまった。

これは訂正しときたい。

「最後の言葉は何がいい?なんならタバコを用意するぞ。ん、そうか、あの少女と一緒に死にたいか」

滅相もないことを言う。

「とんでもない」

アンドリューズを見上げながら履き捨ててやる。

「俺はな」

そうつぶやいているところでアーマントゥルードがため息をつく。

「ウィザードをかばう馬鹿がどこに・・・」

まるで化け物の自分たちを皮肉ったように。

「安心しろ、俺はな」

無視して続けた。

「惚れた女を捨てて死んだりはしないぜ」

クライマックスはこれからだ。


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