ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- トロイの木馬
- 日時: 2011/07/29 16:33
- 名前: 比泉 (ID: MbtYH2rf)
制作段階の作品を載せます。
編集も済んでいない駄作ですが、暖かい眼で見てもらえれば嬉しいです。
未熟な自分の作品を楽しんでいたければ幸いです。
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- Re: トロイの木馬 ( No.1 )
- 日時: 2011/07/29 16:38
- 名前: 比泉 (ID: MbtYH2rf)
プロローグ
アレックス・エッフェンブルク。
それがプロイセンでの、いや、俺の名前であり居場所であり罪・・・だった。
国家社会主義プロイセン労働党・・・・忌まわしい記憶がこれを見るたびによみがえる。
いや、後悔とは違う。
嫌悪感とも違う。
俺の過去を抉る。
それだけの理由だ。
ただ上の命令を聞いて実行すればいいだけ。
軍人なんてのは簡単なことだった。
割り切ることができれば、それもまた軍人として間違ってなかったかもしれない。
少なくとも士官としては。
ただ、
軍人の精神とは無縁の俺には私欲にまみれた歴とした殺人を割り切るという行動で終わらせることはできなかった。
それだけだ。
こんなところで掘り返すことはないが、現状としては俺は戒めの戦いをしている。そう、戒めの戦いだ。
それがどんなものなのか、
どんな罪滅ぼしをしていくのかは順折りに語っていこう。
たった今、俺は本物の実戦区にいる。
とある戒めのために戦場に身を置いている訳だが、この戦いはただ銃を撃ちっぱなしていればいい問題ではない。
「敵さんはウィザード実装かい・・・」
ローレンツが叫び半分に言う。
ローレンツは内の副隊長だ。
プロイセン陸軍第六師団付属第三小隊。
俺はそこに所属している。
ウィザード・・・。
聞き覚えのないやつには言っておこう。
直訳すれば魔法使いだ。
ほかにも様々な語源があるとは言われているが、少なくともこういう認識で覚えてもらった方が俺としてはありがたい。
人と外れた力・・・・日常生活では全く必要のない邪魔な力。
それがどういったたぐいの状況下の中発動される物かは解明されてはいないが古来よりこう呼ばれている。
畏怖と敬意の総称とも呼ばれているが根強い差別地域が存在するのもまた事実。
そんなウィザードは国家社会主義プロイセン労働党という政党から多大な支援・・・いや、ウィザード支援政策を幾つも打ち出していく内にプロイセン中のウィザードから支持を得るようになった。
プロイセンは欧州の真ん中に位置する。
先の大戦ですべての兵器を狩られ、現在由々しき戦略変更が模索されている。
通称ナチス党などと呼ばれるその政党・・・。
俺とは深い因縁があるわけだが今はそんなことを言っている場合ではない。
「アレックス・・・おい特四、聞いてんのか?」
ローレンツが俺を呼んでいたことに気がつかなかった。
奴の階級は曹長。
小隊長のリボーリウスは前線偵察に行った。
小隊の基本戦術は生き残ることを基本としている。
よって敵部隊の撃滅を担当するのは基本中隊から大隊に当たる。
ただ小隊は威力偵察を兼ねることが多いので単騎として勝るウィザードを部隊に入れることが多い。
ウィザードは基本的に物理的殺傷能力を持ち合わせている物と広報連絡能力および情報を扱う能力に分けられる。
「あ・・・すまん」
「しっかりしろよ准尉さんよ」
准尉というのは少尉に準ずる階級だが、基本的には幹部はそういう教育を受けないと絶対になることはできない。
よって下士官最終階級に当たる准尉は元帥に相当すると言っても過言ではないだろう。
何せ特四という単語から説明しなければわからないだろう。
「お前がナターシャとブルクハルトが敵を追っ払ってる間に後方に回り込んで退路をふさぎ込め。ウィザードを前線に引っ張ってきてる間は敵部隊は妙な引っ込み方をする。お前が退路を先に塞いで乱戦に持ち込めば連中は味方ウィザードと同士討ちする。そこに俺たちが急襲する。特四の機動力・・・見せてくれよ」
・・・・・・了解・・・。
そう返事を返して戦陣に突っ切る準備をする。
特四・・・・特別第四担当者。
意味がわからないだろうが特三と言われる物がウィザードに当たる。
つまりはウィザードを制圧する能力を持ち合わせ尚かつ通常任務を行える人間。それが特四と言われる連中だ。
昔からこいつらの訓練法には悪い噂が絶えないが、自分はその特四として所属されてからはそんなことも気にしなくなった。
特四がウィザードに対抗する唯一の手段は肉体能力での超越だ。
常に人間の潜在的な力が引き出せるように鍛えられている。
それに加えて洞察力と観察力・・・・様々な能力を鍛えられているが要するに五感から何までが人間を越えている連中を指すのだ。
まぁ、軽いウィザード以上の化け物と言っても悪くはない。
緩んでいたヘルメットの紐を固く締める。
完全武装した状態で走り出した。
アサルトライフルを片手に。
戦場へ。
- Re: トロイの木馬 ( No.2 )
- 日時: 2011/07/29 16:43
- 名前: 比泉 (ID: MbtYH2rf)
ブルクハルト・フェルゲンハウアー 視点
「ウィザードが参ったぞ・・・」
そんな呟きが聞こえたのは十分前だっただろうか。
俺たちを畏怖していたかどうかは知らないがどこか恐れていたのは事実だろう。
ただ問題なのはそんな点ではないのだ。
今は戦争の時間だ。
俺たちの無駄な才能をいかんせん無く発揮できる時間なのだ。
ウィザードの怖さというのは一般人感覚から言えば何をされるか分からないの一言に尽きるだろう。
特異な能力は生まれつき持っているモノとは限らない。
覚醒したものもあれば気づいていなかったケースもあるほどだ。
そういうお先が見えない足下のおぼつく連中を拾い上げる側に回ったのが国防省だった。
要は戦力になりうるモノは全員収容が鉄則だったのだ。
こうなれば、何も悪いことなどない。税金の無駄遣いにもならないだろうな。
ただ居心地は当人として言わせて貰おう。最悪だ。
まるで収容施設にいるときは囚人のようにしか感じなかった。
まぁ、ただこうやって国防の一環を担う人材に自分がなってくるとそれも仕方がなかったことなんだと思うときもある。
それを許すなという意見も内部では蔓延してはいるが。
要するにウィザードの尊厳確立が内部では上がっているのだ。
少なくとも俺は今の内は平穏にしていたいんだが。
戦いの犠牲をちゃんと考えてから鷹派の連中には動いて貰いたいもんだ。
ともかく、俺は戦っている。
人間は案外拳より脚力が強い場合が多い。
いや、実際はそうなんじゃないだろうか。
自分も実際脚力を強化するパターンの異能を持ち合わせている。
その威力を示す一例として一つ挙げよう。
「くたばれ!」
思いっきり、そばに転がっている(?)戦車を回し蹴りで吹き飛ばした。
戦車の装甲とやらの固さはどの程度かは知らないが俺は容易に吹き飛ばせる。
傍観している味方の将校は唖然としている。まだ新米なのだろう。あと二、三ヶ三ヶ月もすればすっかり慣れることだ。
ウィザードの驚異は一時のことだ。
人間の適応性には驚く。流石だ。
3台目の戦車を吹き飛ばす頃には敵陣営の反撃を防ぐために味方の機銃掃射を援護射撃として貰った。
心強い味方をバックに迎えながらも常人ではあり得ない慧眼で敵の段幕をくぐり抜ける。
場所は正面前線。
所々に置かれた土嚢が硝煙と共に戦場の雰囲気を作り上げる。
火薬の臭いはまだ新しい。
たった十分しか経っていない真新しい戦場でただ一人ウィザードが———
「ブルクハルト・・・・あなたさっきから私のこと忘れてない・・・?」
不意に少女の透き通った声が聞こえた。
背後から目映い線香か知らないが極太光線が俺の顔を掠めて突っ切った事実を覗いてはちょっと嫉妬する女の子にしか見えなかった。
ナターシャ・ヴォルフ。
旧友であり親友であり・・・・どっかの誰かさんの・・・・惚れた女・・・なのか・・・・?
俺の紹介ばかりしすぎたのは問題があったかも知れない。
「すまん・・・!悪気はねえが・・・・はっきり言うと眼中になかったって・・・やっぱ何でもねえわ」
ナターシャは俺の返事を聞きもせず彼女だけの能力を発動した。
『ディストラクション・レイ(破壊光線)』
ざらにそう呼ばれているが、まさにそのまんまの意味だ。
破壊光線。
瞳術の一種だとは言われているが何があったのか眼から粒子光線を発射できる非常に便利な機能らしい。
周囲からすれば機嫌を損ねたら消されるの一言で収集が着いているが。
そんなことはともかく、破壊光線とやらは俺を突っ切った後に敵陣をあらよあらよと吹き飛ばすことで惜しげもなくその真価を発揮し両陣営に見せつけた。
その間にベテラン士官が参ったのか歩兵隊をこの局面で前進させて敵部隊を後退させようと気張る姿がちらほらと伺えた。
そんなとき、
「あーあ・・・こんなに好き勝手やってもらっちゃ困りますねぇ」
またもや、少女の声が・・・・。
「おいアーマントゥルード。今日限りは部隊長の命令を聞いて貰うぞ。俺は生憎部下の不祥事に笑顔で対応できるほど優しい訳じゃないんだ」
今度はどこからか男の声が聞こえてきた。
少女の方は不思議と段幕を全て避けているかのように、いや段幕が少女を避けているように少女の前進に抗う物は何もなくなっていた。
何というか、人間という感じがしなかったのが少し残念だった。
「いやぁ・・・私お仲間さんと殺し合うのって柄に合わないんですよねぇ」
- Re: トロイの木馬 ( No.3 )
- 日時: 2011/07/29 16:45
- 名前: 比泉 (ID: MbtYH2rf)
見事なブロンドを持つ碧眼のアーマントゥルードと呼ばれる少女。
その殺気はまさに一流の物と言っても過言じゃないだろう。
そう、ウィザード特有の。
アーマントゥルードは言葉自体には飄々としたイメージがあるがその眼光や殺気、表情は俺の行動を確実な物としていた。
「おいアーマントゥルード・ウォーレン。貴様また栄倉行きがいいか。俺としてはいい加減嫌気が差してくる頃合いなんだが」
「アーロン・・・」
「上官を呼び捨てか小娘」
「いや・・・失礼しました。アンドリューズ隊長?これでいい?」
なんと表現してイイか分からないがかなり愛らしい、いや憎らしい笑顔をアンドリューズとやらに見せていた。
「ほざけが」
そう切り捨てていつしか10メーターに及ばない距離に二人はいた。
「まあ中隊長自ら出撃してきたんだ。ウィザードのお二方?俺たちの手を余すようなことは、失望させるようなことはしないで貰いたいな」
「安心しろ。余すどころか現世を崇めることすら不可能にしてやるぜ」
後方に待機していた部隊員はちゃちゃっと撤退しようとしている。
いやもう撤退したか。
「ブルクハルト・フェルゲンハウアー。よそ見している場合はあるのか」
俺の反応を確認する前にそれは動き出していた。
俺の名前を呼んだアンドリューズと呼ばれる隊長は眼前まで迫っていた。
寸出で目潰しをかわしたが異常に握力が強いのか、いなした右腕がひどく痛む。
「いきなり目潰しかい・・・・」
「戦闘は早く終わるに尽きるだろう?お前もマイホームが恋しいだろう?」
「その前に二度とそんな光景は見れないと思うんだが」
失明すれば元も子もない。
「これはどうだ」
一瞬のモーションにしか見えなかったが右手を振った瞬間に地面が裂けて大量の砂が俺の眼をめがけて投げつけられた。
「・・・・・!!!」
この状況でまだやるか、と思いつつ物好きな連中の相手をするために俺も向かい撃ちにするため飛びかかった。
俺の能力
『マーヴェラス・ストロング(驚異の脚力)』
「テメエらも俺の気持ちを考えやがれええええええ!!!」
思いっきり地面を蹴り上げた。
アンドリューズ隊長殿・・・・ではなく、アーマントゥルードさんを目指して。
アレックス・エッフェンブルク 視点
「マジかよ。いや・・・・あれは・・・入り交じるべきか」
怪獣大決戦のような物を眺めながらため息を付いた。
ウィザードの暴れん坊将軍を見送りながら必殺の一撃をお見舞いするために忍び足で泥棒のごとく忍び寄る。
すると何故か大量の土砂が降り注いだ。
今日も晴天異常なし。
運が悪いアレックス・エッフェンブルク。
今日も愉快に日々を生きる。
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