ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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bleed wizard
日時: 2011/11/22 13:12
名前: 黎 ◆YiJgnW8YCc (ID: 5YBzL49o)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode=view&no=11214



はじめましての方も、そうでない方もこんにちは。
調子にのって、シリアスにまで手を出し始めた黎です。

ちなみに上のURLは複雑・ファジーにて書いている小説です。

今回は魔術系のお話がベースです。イギリスを舞台に裏社会などを交えて描きます。ここまで徹底して書くのは初めてに近かったりするので、頑張ります。

 まず最初に……

Ⅰ.流血シーン&グロい表現が有るのでご注意を。

Ⅱ.高クオリティーを求めてはいけません←

Ⅲ.荒しはしないでください

Ⅳ.不定期更新気にしないぜ

以上、この四つが平気だと言う方は是非とも見て行って下さいww
それ以外の方は回れー右!!
コメントやアドバイスはいつでも待ってます。してもらうと私が狂ったように喜びます←

【呟き】

やっと秋だと思ってたら、直ぐに肌寒くなってきましたね。
風邪にはお気をつけて下さいな。
ふぅ…そろそろまたテストが有るので、更に更新が遅くなります><

Story

prologue>>1

episode Ⅰ>>4>>7>>12>>16>>19>>20>>21>>22>>23>>24>>25
 登場人物

※近日更新


[私の心を支えてくれる素晴らしきお客様]

朝倉疾風様 比泉 紅蓮淡様 紅蓮の流星様


八月 一日 執筆開始

Page:1 2 3 4 5



episode Ⅰ ( No.16 )
日時: 2011/08/24 22:37
名前: 黎 ◆YiJgnW8YCc (ID: WbbkKfUP)



ウォルは机に肘をつきながら窓に目をやる。今朝はあれだけ晴れ渡っていたのに、今はどんよりとした暗雲がたちこめていた。

「でな、その時のあいつの顔が……おーい、ウォルさん聞いてますかー?」

 私服のシンプルなTシャツを身につけ、寝癖のついた茶髪の少年がすかさずウォルの様子に気づく。机の上に座りながら二重の空色の目でじっとウォルを見つめる。
 壁によっ掛かり、黒縁眼鏡をかけた少年も心配そうに見つめる。外国では珍しい黒髪に、一重のわりには大きい薄緑の目が目立つ。

「ごめん。ぼーっとしてて聞いてなかった」

 ウォルは人懐っこそうな笑みを浮かべながら謝る。二人の少年は顔を見合わせると寄り一層、不信感を募らせる。

「また勉強の事でも考えてたのかよ。まだ大事なテストまで一年あるんだから、もう少し気楽になれよ」

 Tシャツを着た少年はからかうようにウォルの肩を叩く。
 それに便乗するかのように眼鏡の少年も口を開く。

「本当だよな。学しかない俺から学年トップ奪わないでくれよ」

 その口調は冗談っぽさが一欠けらもなく、本気だということがひしひしと伝わってくる。

「んな訳ないだろ、その手の冗談はよせよ。僕は勉強好きじゃないし、この間結果が良かったのはムーディが勉強教えてくれたからだろ。」

 ウォルはため息混じりに語りかける。マイクは、なぁんだ、と安心したように胸を撫で下ろしていた。ムーディはまだ納得のいかないような表情を残していた。

「で? さっきの話しの続き僕にも教えてよ」

 ウォルは静まり返ってしまったこの場をなんとか明るくしようと切り返す。
 マイクの口角は見る見るうちに上がり、そんなに聞きたいんなら話してやる、と嬉しそうに話し出していた。ウォルもムーディも良く喋るマイクの会話に笑っていた。


 ウォルは学校が終わり、家へと足を運んでいた。魔術を使わずにこんなに歩くのは久々だと、鈍い疲れが出てきた両足を動かしながら思う。
 昼休みの後の普段は長く感じる外国語と数学の授業も、今日はあっという間に感じていた。授業をちゃんと聞いていなかったとか、寝ていたからとか、そんなんじゃない。授業の事ならほとんどの事も覚えているし、難しい問題をあてられても答える事が出来たのだ。平然にすらすらと答えた後に振り返って睨んできたマイクとムーディの表情を思い出して、ウォルは思わず笑みをこぼす。

 しかしそんな幸せに浸る事を神は許さない。彼は“表”にも“裏”にも属する人間だ。裏社会という底無しの泥沼に片足でも踏み込んでしまったら、逃げ出せない。理不尽だが表から完全に足を抜く事は出来るが、裏からは抜けだすことなど絶対に出来ないのだから。
 ウォルもきっとここまで深く考えずに足を踏み入れてしまったのだろう。だって彼は“取り戻したい”ただそれだけだったのだから。大好きで自分にとって唯一無二のものを。



——僕から……僕から魔術を奪わないでくれ!!——



 彼が狂い始めたのは裏に身を委ねたからではない。この国から“魔術”というものが禁止されてからだ。彼から魔術を取り上げたのだ。

 事の発端は今から一年前に遡る。何の前触れもなく国が“魔術禁止法”という法律を定めたのだ。今まで仕事や家事や学校の授業などにまで馴染んでいた魔術を使えなくなるという事を聞いて、国民は反発しようとした。しかし国は理由も何一つ語らなかった。そして魔術を使う者がいたら“殺す”と一言を残し、それ以上は語る事がなかったのだ。


 彼を壊してしまった全ての原因は国にあった。
 ウォルが“僕”だったのに裏の人間としても生きていけるために“俺”という人物をつくるはめになった理由も国にある。
 僕は僕で俺でもある。俺は俺で僕でもある。そんな二つの世界で生きていくのが彼にとって普通になっていた。

Re: bleed wizard ( No.17 )
日時: 2011/08/26 23:47
名前: 朝倉疾風 (ID: 0nxNeEFs)
参照: http://ameblo.jp/ix3x-luv/

ウォルは人懐っこそうな笑みを浮かべながら

ウォルは人懐っこそうな笑みを浮かべながら

ウォルは人懐っこそうな笑みを浮かべながら


……<●><●>

人懐っこそうな笑み……。

悪夢で苦しんでいて、誰にも気づかれないよう、自分自身も無意識のまま救いを求めていた少年が……人懐っこそうな笑み……だと…。

か、可愛らしい。
もう母性本能をくすぐられますね。 はい、すいません。
もう先に謝っておきますが、朝倉は各小説の登場人物を
誰か一人はお持ち帰りしなければ気が済まない人です。
もうウォルくんを救ってあげたい……。

でも、そうですよね。 彼は表と裏で生きている。
どうして魔術禁止令が出たんですか。
うぬ。

Re: bleed wizard ( No.18 )
日時: 2011/08/27 21:37
名前: 黎 ◆YiJgnW8YCc (ID: WbbkKfUP)



>>朝倉疾風様

どうぞ、どうぞお持ち帰りして下さい^^
そしてもう救ってあげちゃって下さい。
きっとウォルはなんだかんだ文句を言いながらも、お持ち帰りされますよ。

魔術禁止令はこの作品においてとても重要なのです。

コメントありがとうございました。

episode Ⅰ ( No.19 )
日時: 2011/08/28 16:48
名前: 黎 ◆YiJgnW8YCc (ID: WbbkKfUP)


表での生活の一週間はあっという間のものだった。
 主にマイクとムーディと共に過ごした久々の学校生活は楽しいものばかりだった。苦になることは何もなく、笑ってばかりの一週間を過ごしていた。しかしこれからはそうはいかない。頭を捻っても分からない問題にぶち当たるのとは比べものにならないくらい辛く、大変な事が待っているのだから。はっきり言ってしまえば“死”の危険性とは常に隣り合わせである。

「明日からいつまでの間、裏に身を置くんだか。三ヶ月より長いのか短いのか……」

 ウォルは苦笑を漏らしながら玄関のドアノブに手をかける。ふと背後に鋭い視線を感じ振り返る。振り返った先にあるのはいつもと変わらない少し都市からはずれた町並みの光景。数軒の家が建ち並び、小さな子供達がキャーキャー言いながら遊んでいる。こんな普通で何の変哲もない日常がウォルにとっては幸せだった。

 しばらく目の前にある日常を眺めてから、ドアノブにかけた手に少し力を加えた。

「ただいま。母さん? いるの?」

 ウォルは温かみを帯びた声を出しながら玄関にあがる。

「おかえり。今日の夕飯は何がいい?」

 奥の部屋からゆっくりと女性が歩いてくる。茶色い目に肩まで伸ばした輝かしい金髪がよく似合う。体型が細身なためかエプロンが大きく、長く見える。

「任せるよ」

 少し考えたようなそぶりを見せるが、それだけ告げると二階の自分の部屋へと向かって行った。ウォルの母親は少し困ったように微笑んだが直ぐにキッチンに行き、夕飯の準備をし始めていた。

 ウォルは自分の部屋に入ると乱雑にベッドの上にバックを放り投げる。今日は宿題がたんまりと出ていたがやる気にはならない、否、やらなくて良いのだ。

「ネル、いるんだろ。出てこい」

 ウォルはベッドに腰をかける。その声に気づいたのかそのベッドの下からネルが欠伸をしながら出て来る。

「私は夜行性なんだからまだ起こすな」

 ネルはウォルの目の前にちょこんと座る。その視線はウォルへと注がれ瞬きもしない。
 この部屋に一つだけある窓がかたかたと音をたてて揺れる。それに引き続き雨が打ち付けてくる音もする。

「ネル……どうかしたのか?」

 眉をひそめながらウォルはネルへと視線をやる。
 ネルは何も答えずにゆっくりと唯一音を放っている窓と窓の外へと視線を移す。ウォルは聞こえない程度にため息をつくと立ち上がり、頭を軽く振る。

「明日からまた頼むよ。上手く俺の変わりをやれよ」

「ウォル、ちょっと来てー」

 言うやいなや直ぐに一階から母親の声が届く。
 ネルはドアに目をやってからまたウォルを見つめる。

「今行く。ネル、頼んだぞ。今日は帰っていいから“明日”には此処にいろ」

 母親に対して大きく声をかけると、そのあとは小声でネルに言い聞かせる。そしてネルの有無も聞かないで、せわしなく階段を駆け降りていった。
 猫は耳が良いためか、足音に反応してネルの両耳がぴくぴくと動く。金色の瞳はウォルがいなくなった後も、彼を追うようにでていったドアをずっと見ていた。

「上手く変わりをやる必要があるのか?」

 ネルは一人、一匹きりになった部屋にようやく言葉を返す。しかし、それを受け取る人間は聞いてなど、聞こえてなどいない。そんな無意味な言葉が取り残される。
 それでもネルは満足そうに目を閉じてまた欠伸をする。

「今あいつの前を横切ったら、親に猫を飼っているのがばれて怒られるだろうな」

 ネルは少し声色を優しくしながらその場から消え去った。いつもとは違う声を残して。


 運命が狂いだす最高の舞台だけがようやく整った。彼は重要な歯車として、軸として、そして……抹消されるべき者として。そんな不安定な人物を中心にして話しは動かされていく。
 そこからはどう足掻いたって抜け出せないんだから。

episode Ⅰ ( No.20 )
日時: 2011/08/31 20:16
名前: 黎 ◆YiJgnW8YCc (ID: WbbkKfUP)



午前一時。雨は止むことを知らないように降り続ける。母親が眠りについたのを確認すると自らの部屋に戻り、掴んだコートを羽織る。暗闇にも目は直ぐに慣れ、ベッドを見れば自分自身が寝ている。普通ならおかしなその光景に安堵の表情を見せると窓をゆっくり開ける。

「ウォル、今夜は冷えるからマフラーを持って行け」

 窓の淵に足をかけていたウォルはその体制のまま声の主のほうを見る。ウォルの姿をしたネルは上半身だけを起こしていた。暗闇の中に二つの金色の目が眩しいくらいに光っている。
 普段ならこんな気にかけるような事をネルは言わないので、ウォルは口をきつく結び、何か伺うような表情を表にだす。

「ネルが俺のことを心配してくれるなんて珍しいな。頭でも打ったのか?」

 ウォルは少しだけ茶化すような口調になる。口元が緩んでいて笑っているのだと分かる。表の世界だけでしか見せないその表情を裏の住人に垣間見せた。
 ネルは一瞬だけ罰が悪そうに顔を歪める。そして気に食わなさそうにふいっと視線をずらすと毛布に潜り込む。

「お気遣いありがとう」

 机の上に置いておいたマフラーを手にすると、慣れない手つきでくるくると巻く。ウォルは躊躇することもなく窓から飛び降りた。
 ネルが見た時には不格好に巻かれたマフラーの先が風になびかれているのしか目に映らなかった。

 軽やかに地面に着地をしたウォルは素早く立ち上がる。
 
 外は既に所々に立っている街灯だけが今宵の闇を照らしていた。月も幾多の星たちも分厚い雲に覆い隠されていた。これだけ夜中だと起きている者もいないようで、周りに建っている数軒の家からもカーテン越しに明かりを感じることはなかった。
 ウォルは玄関へと向かい、古びた傘立てから紺色の傘を手にする。バサッと乾いた音と同時に傘が大きく開いた。

 雨が傘に降り注ぐのは不規則で歩いていても退屈することはない。自然という不条理を目で、耳で、肌で感じる。それは心にじんわりと溶け込むように染み渡る。

 今日もパブへと歩みを進める。雨の中を歩くのは面倒だから本当なら魔術を使いたいが、家から向かう際は万が一人に見つかった場合厄介だから徒歩で行かなければならなかった。見つかった場合は記憶を消してしまえば良いのだが、ウォルはそれを躊躇していた。

 大通りに差し掛かれば街灯の数が圧倒的に増えた。朝や昼間は使われないそれが夜ではなくてはならないものへと変わる。

 道にしたがって歩いて行けば駅が見えはじめ、バス停も目にとまる。雨や風が激しいと思っていたウォルは少し家を早く出てきたのだ。愛用の腕時計に目をやれば全然問題なくパブへと着く事ができる時間だった。
 
 ブライトン行きのバスを見つけると駆け寄る。今日は冷えるからだろうか、エンジンがつきっぱなしだった。バスに乗り込めば、熱風と言って良いくらいの風が頬にあたる。中を確認すると真ん中辺りには俯いた髪の長い女性、後ろには頭がボサボサで目を擦りながら紙に目を通している男性がいる。おそらく女性は疲れて寝ているのだろうと思いながらウォルは左側の前方に腰をかける。

「それでは発車しまーす」

 やる気のない気の抜けた男性の声が車内に響き渡る。その声の数秒後にぎこちない機会音をたてながらドアが閉まる。
 あれから本当にいろいろ変わってしまったとネオンの町並みを見ながらウォルはつくづく思う。
 今乗っているバスなんかはほとんど魔力で操作されていた。街灯の明かりも魔力で賄っていた。仕事も学校も家事もなにもかもが魔力……だった。

 ウォルは目だけをバックミラーへと動かす。相変わらず寝ている女性と紙を見つめる男性。この人達はまだ完璧に慣れてはいないが前に進んでいた。突き付けられた今のこの現実を。

「俺には無理だ」

 ウォルの口から勝手に出てきた言葉は雨脚が強くなった今、掻き消される。
 
 ウォルは前進することを躊躇った。


——もう一度取り返す為に——


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