ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- 死に向かう僕らの。
- 日時: 2011/09/02 16:27
- 名前: 忍足 ◆Z1VqT03YRg (ID: bUg9QOGg)
初めましてこんにちは、忍足と申します^^
今回、なんとなくちょこちょこと書いた短い話を上げさせてもらおうと思ってます。
なんと原稿用紙40枚にも満たない短さ。自分でも驚きの短さでした。
ですが書いてる自分は楽しかったので自己満足……といった感じで。
自分で言うのもあれですが、内容は極めて普通……です。
奇妙な思考の人物は出てきますが全くグロテスクな要素などはありません。
場違いでしたらすいませんorz
軽く注意書きをば。
・文章力に自信はありません。文法にもまるで自信がありません。無理な方ブラウザバック推奨です。
・上記のとおりとりあえず短いです。つまり内容も薄いと思われます。
・内容を要約すると→死にたい死にたい連呼する小学5年生の話
この時点で無理だと思った方もブラウザバックを推奨。
上記okな方は、宜しければお付き合いください^^
- Re: 死に向かう僕らの。 ( No.3 )
- 日時: 2011/08/27 12:41
- 名前: 忍足 ◆Z1VqT03YRg (ID: bUg9QOGg)
3
新しいクラスになって一週間。必要最低限以外には、クラスの人と口を利かないようにしてきた。理由は、面倒だったから。まあ、それだけのことだ。早く死ぬことを目標としている人間が馴れ合うことに全く意味が無いと思ったから。
ずっと一人で本を読んで過ごした。本はとても好きだったから、それが俺にとっては幸せだった。
ある日の体育の授業。俺たちのクラスを担任している教師は、五年生になってから初めて、この言葉を発した。
「仲のいい人同士で二人一組になってください」
その言葉はいつも苦痛だった。一人が嫌だったとかそういう訳じゃない。皆が俺に気を遣い、戸惑った視線を向ける。その状況がとても嫌だったのだ。
またこの台詞か、と一度溜息をつき、一人突っ立つ。少し経ったら組む人がいない事を先生に報告しなければいけない。その時、目を泳がせる先生の対応も嫌いだ。
「あら、イリエ君とミカサ君、組む人がいないの?」
先生の言葉を聞き、辺りを見回した。その時初めて、俺以外にも一人きりの奴がいることを知った。先生にイリエと呼ばれた男子は、俯いて服の裾をぎゅっと握り、一人でとても気まずそうにしていた。多分俺と似た心情になっているんだろう。自分を惨めに感じるような感情。
「えーと……じゃあ、イリエ君とミカサ君、組んでくれる?」
先生が俺たちの表情を窺いながら恐る恐るといった感じでそう言った。一体何を恐れる必要があるのやら。
仲良しの二人で組んでいるところに過剰分として入れられ三人組にされるよりも、元から一人だった奴と組むほうがよっぽどマシだ。もともと組んでいた二人に、気を遣われるかいやな目で見られるかの二択。最悪だ。
内心で安堵の溜息をつきながら、イリエの方に近寄り、隣に立った。何だかいつもの「二人組」よりも幾分落ち着くなと思った。
- Re: 死に向かう僕らの。 ( No.4 )
- 日時: 2011/08/28 12:46
- 名前: 忍足 ◆Z1VqT03YRg (ID: bUg9QOGg)
3
二人一組になったのは、準備運動のためだった。別に一人でも出来るだろ、というような事を無駄に二人でやったりする、よくわからない準備運動。
体を動かしながらずっと無言。いつもならそれでよかった。それがよかった。だけど、今日は何故か気分が違ったようで、俺にしては珍しく、会話目的の言葉をイリエに投げかけた。
「お前、イリエっていうんだ。なんか初めて聞いた気がする」
突然話し出した俺に、イリエは躊躇するような素振りを見せた。だがその後に、小さな声でちゃんと返事をしてくれた。
「自己紹介の時には、一応言った……けど……」
「あー、ごめん、自己紹介とか基本聞いてないんだよな、特に興味ないから。クラスの中で顔と名前一致する奴とかまだ数人しかいないもん」
イリエはとても小さく、そっか、と言ってくれた。ちゃんと会話をしてくれるという意思が、嬉しかった。その顔にはほんの僅か笑みが浮かんでいて、多分愛想笑いの類だったのだろうけど、それでもその表情が嬉しかった。
その時ふと、直感的にある疑問が浮かんだ。
そもそも俺がイリエに話しかけてしまったのも、この質問をしたかったからかもしれない、というような。そんな錯覚をさせる程の、イリエに聞かずにはいられない疑問。イリエの雰囲気が、勝手に俺にその質問をさせたような……。俺の口は、殆ど俺の意志でなく動いた。
「イリエ。死にたいと思ったことある?」
地面に足を大きく開いて座り、背中を押してもらって体を伸ばす柔軟運動の最中、俺が急にそんな突飛な質問をしたので、イリエの俺の背中を押す手が一瞬止まったように感じた。背中を押してもらっている俺の方から、イリエの表情は見えない。だからどう思っているのか、とかは全く分からない。
数瞬沈黙が続いた。
「うん、何度も」
確かにイリエの声だった。
正直、信じられなかった。あんなおかしな質問に答えて見せて、しかも、その答えが肯定で。
でも、少し、嬉しかった。何故か。
「そっか。なら一緒だな」
筋肉の伸びている心地よい痛みを感じながら、そう呟いた。少し間が開いて、イリエはやっぱり、ちゃんと返事をくれた。
「……うん。そっか」
その声に、少しだけ嬉しそうな響きを感じた気がした。
- Re: 死に向かう僕らの。 ( No.5 )
- 日時: 2011/08/29 11:45
- 名前: 忍足 ◆Z1VqT03YRg (ID: bUg9QOGg)
4
準備運動を終え、今日の競技の説明を先生がしていた。今日は適当な3つのグループに別れ、サッカーの試合紛いなことをするらしい。
俺とイリエは同じ、最初は試合をしないグループだったから、最初の時間は暇だった。
イリエの傍に行き、他のチーム同士のサッカーを横目にぼんやりと見ながら、イリエに声をかけた。
「俺、ミカサっていうんだ」
「知ってるよ、ミカサ君」
イリエも試合を見ながら、少し笑って言った。
「死のうとしたことある?」
「うん、結構たくさん」
今度は、イリエも躊躇うことなくすぐに答えてくれた。
「一緒だな」
「そうだろうなって、思った」
俺もきっとそうだろうと思ってたよ。
だからこそ、イリエに無性に惹かれたんだと思う。
「……もうちょっとで死ねるって時に死ねなかったこと、とかない?」
今のは、イリエの発言だった。正直、かなり驚いた。
「ああ、いっぱいある。包丁首に沿わせて、そこで怖くなったりとか」
「屋上で体十度くらい傾けて急に怖くなったり、とか……?」
「それあった」
「僕もやったよ……」
俺が声をあげて笑うと、イリエも微笑した。なんでか、とても嬉しかった。
「俺の生涯の目標。自殺することなんだよ」
「僕も。できるだけ早くに」
もう一度、大きく声を出して笑った。
すると、イリエも小さく声をあげて笑った。とても可愛らしい笑い方をするんだな、と思った。
この日、奇妙な同じ目標を持つ、初めての友達が俺に出来た。
- Re: 死に向かう僕らの。 ( No.6 )
- 日時: 2011/08/31 11:54
- 名前: 忍足 ◆Z1VqT03YRg (ID: bUg9QOGg)
5
それから、俺とイリエはよく行動を共にするようになった。
とりあえずの感想は、先生の言う「二人一組になれ」という言葉が辛くなくなった。これは結構大きい。
あと、よく、放課後に寄り道するようになってしまった。下校時間は三時なのに家に帰ったら四時半になっていた、とか結構よくあることだ。
両親がいなくなってからは、俺を助けてくれた叔母さんが俺の面倒を見てくれている。叔母さんは、かつて二度結婚し、二度離婚しているので今は俺と叔母さんの二人暮らしだ。
叔母さんは、俺が寄り道して帰ってくるのをいい傾向とみているようだった。イリエに会うまで友達は一人もいなかったし、わざわざ友達がいるなんて嘘を叔母さんについてやることもなかったからだと思う。
たまに帰るのが遅くなりすぎると怒られたが、叔母さんは仕事で帰りが遅くなることが多かったので、帰りが遅いのを見つかることは少なかった。
イリエとは寄り道をしながら、様々な会話をした。その中にはいかにも小学生、というような会話も含まれたし、自殺方法についての論議を繰り広げることもあった。
そうやってイリエと話していると、すぐに日が暮れた。俺もイリエも保護者に怒られる可能性を危惧しながら、急いで家へ帰った。叔母さんが帰っているかどうかを確かめる時のスリルなんかは、なかなか好きだな、と思った。
イリエの両親は、厳格だがとても優しいらしかった。イリエは「仲のいい時の母さんと父さんが好きなんだ」といった。当然の心理だなと思った。
- Re: 死に向かう僕らの。 ( No.7 )
- 日時: 2011/09/01 16:49
- 名前: 忍足 ◆Z1VqT03YRg (ID: bUg9QOGg)
6
ある日、なんとなくイリエに問うた。
「なんでお前は死にたいと思ったの?」
俺みたいに両親に何かあったとかそういう訳ではなかったのに、むしろ両親があんなに好きだと言っていたのに、どうして死にたいのか。そこにはただ、好奇心だけがあった。残酷な質問だと思うかもしれないが、その時点で俺にそんな考えは少しもなかった。
イリエが少し躊躇したように見えたので、はっとして付け足した。
「あ、嫌なら言わなくていいからな」
俺はそう言ったが、イリエは首を横に振り、いつもよりも小さく、弱弱しい声で話し始めた。
「前まで学校で虐められてたんだ……それだけだよ」
『それだけ』……イリエはそう言ったが、その声はとてもそれだけ、なんて思わせないほど暗かった。
「虐められてるのは特にどうでもよかったよ。別に普通に耐えられたし。でも、……僕が虐められてるって知った時の、父さんたちの、あの、悲しそうな顔が……」
「…………」
「父さん達に、あんな顔をさせた自分が嫌で、辛くなったんだと、思う。それだけ……それだけだけど、なぜか死にたいと思ったんだ」
俺にはイリエの気持ちはよくわからなかった。親に嫌な顔をさせたってだけで、と正直思った。だけど、俺が死にたいと思った理由を多分イリエは理解できないだろうと思ったから、何も言わずにいた。
生きたい理由が人それぞれなら、死にたい理由も人それぞれだ。
「……そっか」
だからいつも通り、相槌だけ打っておいた。話を振っておいて無視するっていうのは最悪なんじゃないかなと思ったから。
俺が死にたいと思った理由は言わなかった。イリエに聞かれなかったから、言うこともないと思った。ただ黙っていた。
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