ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- シンクロニシティ
- 日時: 2011/09/23 19:11
- 名前: 遊太 (ID: HhjtY6GF)
復活しちゃった……知っている人は知っている遊太(ゆうた)という者です。駄作者ながら頑張ります。
まあ、内容は簡単に説明すれば「超能力」です☆
結構時間かけて考えたんで、自分的にはOK!!な小説です。ではでは、お楽しみに〜♪
【登場人物】
前田兄弟>>004
協力者達>>009
【用語説明】
(1)>>006
─第1章 パンドラの箱─ 坂咲高等学校神隠し編
01話>>001
02話>>002
03話>>003
04話>>005
05話>>007
06話>>008
07話>>010
08話
09話
10話
- Re: シンクロニシティ─パンドラの箱─ ( No.4 )
- 日時: 2011/09/17 00:37
- 名前: 遊太 (ID: HhjtY6GF)
@前田 恵太 / Maeda keita
‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾
【能力:シンクロ】
能力者に触れることにより、その能力者の能力を使えることが可能となる。
上書き機能付きなので、一度に複数の能力は使用不可能。
【詳細】
主人公。坂咲高等学校の高校2年生で17歳。生徒会執行部。現在は次期生徒会長の選挙に出馬中。2−9組。
成績は学年トップ、運動神経は良い方、料理も出来ると完璧だが、超能力を持っていることにコンプレックスを抱いている。
厳しくも優しい性格で、その性格から京志郎や暗門からは「偽善者」と呼ばれることもしばしば。
同い年で双子の弟・京志郎がいるが、性格から全てが正反対のために合わない。両親は仕事のせいで放任主義。
父親の彦一は防衛省副大臣、母親の晴香は衆議院議員。家は世田谷区の高級住宅街に位置する。
@前田 京志郎 / Maeda kyoushiro
‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾‾
【能力:発火】
両手から炎を噴射することが可能。自由自在に操ることもできる。形状を変化することも可能。
京志郎の場合、感情の変化によって能力の威力や状態が変わる。
【詳細】
恵太の双子の弟。もう一人の主人公。坂咲高等学校の2年生。野球部のエース。2−1組。
恵太とは違い、成績は悪いが運動神経は抜群に良い。恵太同様に能力に対してコンプレックスを抱いている。
1年生で野球県大会に出場、プロからも注目されている。しかし、全てにおいて上を行く恵太に嫉妬している。
恵太とは常に対立しており、喧嘩が日常茶飯事。恵太の幼馴染であり、京志郎にとっては親友の八野まきが相談相手。
- Re: シンクロニシティ─パンドラの箱─ ( No.5 )
- 日時: 2011/09/18 22:57
- 名前: 遊太 (ID: HhjtY6GF)
【4.氷漬けの教室】
翌日、恵太と真敬は学校に遅刻しかけた。それもその筈、真敬と共に明け方までゲームをしていたからだ。
「それじゃ、放課後にオカルト研究部の部室な。」
「おう。」
恵太は自身のクラスである2−9の教室の前で真敬と別れた。教室にはすでに生徒のほとんどが揃っている。
「恵太君、おはようございます。」
恵太が席に着くと、隣の席で小説を読んでいた守が笑顔で挨拶をしてきた。
「おはよう。」
「恵太君、知ってますか?今朝早く、警察が学校に来てたんですよ。」
「は?」
恵太は守の言葉を聞いて唖然とする。
守は立ち上がり、「あれです。」と言って窓の外に指をさした。
恵太は窓から校舎の裏の道路を見た。普段、使用されていない東門の前に一台のパトカーが停車していた。
パトカーの中にはスーツ姿の男性が座っており、パトカーの外にもスーツ姿の男性が立っていた。
「どうして警察が?」
「詳しくは分かりませんが、5階の3年生のフロアで何かあったらしいですよ。3年生は来てないし、5階は行けないです。」
「何かって…………何だよ?」
「分からないです。」
恵太は再び、パトカーの方へ視線を移す。すると、先ほどまでいた2人のスーツ姿の男性が消えていた。
恵太はこの時、今までに感じたことのない緊張感を感じていた。その時だった。
『生徒会執行部の者は、今すぐに職員室前に集合してください。繰り返します……』
突然の放送にビクリと驚く恵太。
恵太は守の顔を見る。
「………気を付けてください。何か嫌な予感が…します……。」
「俺もだよ。」
恵太は守の肩をポンポンと叩くと、教室を後にした。
* * * * * * * *
1階の職員室前には、生徒会の腕章をつけた男女3名が立っていた。
「よぉ次期大将。これつけとけ。」
ウエーブヘアーの黒髪で左目の下に切り傷がある3年生の黒丸竜神は、恵太にそう言いながら腕章を投げ渡した。
「あ、あの、一体どうしたんですか?」
「3年生の1人が消えたの。しかも、教室が‘おかしい’。」
凛とした表情で、ポニテールがよく似合う3年生であり生徒会副会長の花城恋奈。
恵太は腕章を左腕に付け、唯一同期の役員である波岡風雅の隣に駆け寄った。
「消えたって……何?」
「さぁね。先生たちは家出で片付けようとしたんだけど、教室がな……」
「教室?」
恵太は風雅に聞こうとしたその時、職員室の扉が開いて教頭の山本明日夫が出てきた。
山本は白髪交じりの髪をオールバックで整え、その姿は大企業の社長そのものだった。
「生徒会執行部諸君、おはよう。」
「おはようございます。」
4人は揃って山本に挨拶をした。山本は「感心感心。」と呟きながら何度か頷く。
「朝早くからすまないな。君たちを信頼して、あることを頼みたい。とりあえず、まずは5階に行こう。」
山本はそう言うと、生徒会役員4名を引き連れて5階の3年生フロアへと向かう。
向かう途中に4階の2年生フロアで、5階の階段前に集まっていた生徒を警察と思われる男性2人が止めていた。
「下がりなさい。……関係者の方は、こちらからどうぞ。」
生徒を止めていたのは、先ほどパトカーの付近にいた男性たちだった。
男性は2人は「KEEP OUT」と書かれた黄色のテープを貼り、立ち入ることができないようにする。
山本と恵太たちはテープを潜り、問題の3年生フロアへと足を踏み入れた。
「……寒い。な…なんだよ……これ…………」
恵太は5階に足を踏み入れた瞬間、言葉を失った。
8月という季節だが、このフロアは夏を忘れさせるほどの寒さを感じさせた。
それもその筈、廊下、天井、壁、とにかく5階の物は全て薄い氷の膜が張っている。
「私も最初に見たときは言葉を失ったよ。今初めて見るのは、前田君だけかな。」
「は……はい………。」
恵太は山本の言葉に頷く。歩く度にシャリシャリと場所に似合わない音が鳴り響く。
「何がどうなってこんなことになったのか……ハッキリ言って、私たち警察ではお手上げです。」
スーツ姿で眼鏡をかけた頭の良さそうな刑事が言った。
「それじゃあ、問題の教室です。」
眼鏡の刑事はそう言いながら、3−2組の教室の前で止まった。
「この教室で恐らく何かがあった。それだけは言えます。」
教室の中央に聳え立つ、天井まで伸びた氷の柱──────
机や椅子は全て、氷で壁に張り付き異様な風景が広がっていた。
3−2の教室だけは廊下側の窓ガラスが大破し、氷の柱の付近には何者かの足跡が複数ある。
「明らかに事故ではありません。断言しましょう。詳しい捜査は1時間後には始まります。」
眼鏡の刑事は山本と恵太たちにそう言うと、もう一人の男性刑事の方を見る。
眼鏡の刑事より若そうな男性はお辞儀をする。
「警視庁捜査一課の杉村と申します。今回、坂咲高校の生徒会の皆様には、……生徒の監視をしてもらいたいのです。」
「……監…視?」
恵太、風雅は首を傾げながら復唱した。竜神と恋奈は表情を険しくさせただけである。
「今回の事件は明らかに普通ではありません。私達もこのようなことは推測したありませんが、犯人は恐らく学校関係者と思われます。教師の方々全員は可能ですが、生徒全員を事情聴取することは不可能です。そこで、あなた方信頼できる生徒会の皆様には、生徒の監視をしてほしいのです。嫌な気分になるとは思います。しかし、反対に何もなければ生徒何百人の無実が潔白されます。無理を承知で決めたことです。どうか、我々警察のために動くという誤解はしないでください。あくまで事件の解決と被害者の発見のためです。」
杉村は頭を深々と下げてお願いしてきた。
恵太と風雅は先輩である恋奈と竜神を見る。竜神は副会長である恋奈を見た。
「……分かりました。生徒のためなら、私達は動きます。その代わり、消えた私達の友人を必ず見つけてください。」
「ありがとうございます。必ず、事件を解決します。」
この時、恵太は恋奈の姿に見とれてしまった。
目の前でペコペコとお願いしている杉村は大人だが、恵太にとっては恋奈の方が大人に見えた。
恋奈は3人の方を振り向き、白い息を吐きながら言った。
「亜堂会長はいつも通りいない。私の指示で動いて、そして、このことは当たり前だけど誰にも言わないように。」
「分かりました。」
恵太はこの時、教室を見渡して何かを感じた。
まるで、懐かしいような初めてではないような感じ。とにかく、何かを感じ取っていた。
隣で立っていた風雅は恵太と肩を組み、「早く下りようぜ、寒い。」と言い強引に引っ張る。
「それじゃあ、頼むよ。」
山本は4人にそう言うと、眼鏡の刑事と杉村と話を続けた。
とりあえず、生徒会役員4人は1階の生徒会室へと向かったのだった。
- Re: シンクロニシティ─パンドラの箱─ ( No.6 )
- 日時: 2011/09/18 11:14
- 名前: 遊太 (ID: HhjtY6GF)
※物語上、最初の設定は2013年。
[超能力 / super ability]
‘それ’が自然的な物のか、人為的な物なのかは知る者はいない。
超能力を持つ者は元々の運動神経系が異常発達し、人並み外れた運動神経を得ることができる(個人差もある)。
しかし、過激な刺激やスリル感を求めるパーソナリティ障害を持つデメリットがある。
超能力の中には感情などで攻撃力を増す力も存在し、あまりに使いすぎると普通ではいられなくなる。
[超能力者 / super ability person]
超能力を持つ人間の総称。
[坂咲高等学校 / sakasaki high school]
東京都内にある強豪野球部で有名な高校。なぜか、超能力者が多く存在する。
創立60周年で改装して校舎は綺麗だが、神隠しの一件で校舎5階は再び工事となった。
校舎は「コ」の字型の5階建て。5階は3年生フロア、4階は2年生フロア、3階は1年生フロア、2階は特別教室フロア、1階は職員室や校長室等と振り分けられている。
度々能力者絡みの事件の被害にあっているため、校舎は常に工事中。
[神隠し]
坂咲高等学校で生徒や教師が被害にあっている事件。
[ミヤミチ・カーニバル]
宮道家に20年前から代々受け継がれている世界的にも有名なサーカス団。メンバー総数約100名。
2013年の現在は日本のあちこちで活動中。大型のデコレーショントラック4台で移動を続けている。
- Re: シンクロニシティ─パンドラの箱─ ( No.7 )
- 日時: 2011/09/19 09:58
- 名前: 遊太 (ID: HhjtY6GF)
【5.襲撃、生徒会】
1階の生徒会室に戻ってきた4人は、それぞれのデスクに座った
生徒会室には5つのデスクがあり、部屋の奥は会長専用のデスク。後は副会長、庶務、会計、書記のデスクが並んでいる。
全員が席に着くと、恋奈は恵太、風雅、竜神の顔を見る。
「警察の方に言われた通り、今日から生徒の監視を始めるわ。出来る範囲で行って。後、決してばれないように。」
「でも先輩、どうして僕たちにやらせるんすか?警察の人がやった方が良いんじゃないですか?」
風雅の質問に恋奈は首を横に振って答える。
「警察の監視の下の学校生活なんて、生徒たちが安心して送ることができないし授業にも影響が出る。教頭の判断よ。」
恋奈の説明で風雅は納得できたようだが、竜神は未だに納得できていなかった。
「餓鬼の監視を餓鬼がやれと、しかも校長ではなく教頭の判断。俺はしないぞ。副会長さんよ、俺はパスだ。」
竜神は恋奈にそう言い残し、生徒会室から出て行った。
「………黒丸は口では言っても、やる人間だから大丈夫。」
恋奈は恵太と風雅に優しく言う。
「でも、さっきの光景凄かったな。まるで映画みたいだったよな。」
「確かに凄かったね。事故じゃなかったら、一体誰の仕業…………」
「超能力者。」
ふと、恵太の耳に女性か男性かも分からない声で、囁くように聞こえた。
恵太は辺りを見渡すが、生徒会室の中には風雅と恋奈以外誰もいない。窓もドアも閉まっている。
「……気のせいかな。」
恵太は徐に立ち上がり、大きく背伸びをした。その瞬間だった。
「波岡君、棚の上の箱は何?」
恋奈は風雅と恵太の後ろにある木製の3段棚を指差した。
普段は荷物置きに使用している棚。一番上の段に小さな白い箱が置かれてあった。
「なんですかね?取ってみます。」
風雅は棚の上の箱に手を伸ばし、静かに掴み上げると、自身のデスクの上に置いた。
箱には「割れ物注意」というシールが貼られているだけ。
風雅が恋奈の顔を見ると、「開けてみて」と恋奈は言った。
ガムテープをはがして箱を開けると、中には無数のビー玉に埋もれた指輪ケースぐらいの箱があった。
「なんだよこれ……開けてみますよ。」
風雅がそう言いながら、指輪ケースぐらいの箱に手を近付けたその時だった。
──────シュゥゥゥゥゥゥゥゥ
その箱から突如、大量の白煙が溢れ出してきた。
「きゃ!!」
「うわっ!!」
箱を持っていた風雅は、驚きのあまり床に尻もちをつく。その拍子に箱はデスクの下に落ちてしまった。
「部屋から出ましょう!!危険な薬物かもしれないわ!!」
恋奈は2人にそう言ってドアへと駆け寄る。その直後だった。
白煙が一瞬にして生徒会室の中を飲み込み、完全に3人は視界を失った。と同時に、誰かの声が聞こえた。
「ちくしょう!!大人しく捕まれよ!!」
男性の声だが、それは恵太と風雅の声ではなかった。
声が聞こえた瞬間、「きゃっ……」と恋奈の小さな悲鳴が聞こえたかと思うと、「うっ!?」という風雅の呻き声も聞こえた。
明らかに、何者かに攻撃をされていた。
恵太は身をデスクの陰に隠し、シンクロ能力で京志郎から得た発火能力で、左手を炎で包み込んだ。
「やっと黙ったか……さっさと行かないと、まだ怒られちゃうよ。」
恵太の耳に先ほどの声が聞こえた。真正面からだ。
「うらぁぁぁぁ!!!」
恵太は声を上げながら、真っ赤な炎で包まれた左手で見えない相手を殴った。その瞬間だった。
「ぎゃぁぁぁぁ!?」
白煙の中に一瞬だが、男子生徒が見えた。男子生徒は気絶した恋奈を抱えている。
「誰だ!!花城先輩を返せ!!!」
「ぐっ……くそっ!!!」
男子生徒は顔を俯かせたまま、体を白煙に変えて走り出す。
そして、そのまま窓ガラスを突き破って、恋奈を抱えたまま外へと飛び出してしまった。
「おい待て!!!くそっ、ちくしょう!!!」
恵太は割れた窓から外を見るが、すでに白煙に変わった男子生徒も恋奈の姿もいなくなっていた。
生徒会室を包み込んでいた白煙はいつの間にか晴れ、床には風雅が頭から血を流して倒れていた。
「風雅!!大丈夫!?」
「うっ………だ、大丈夫……」
風雅は一言そう言うと、そのまま気絶してしまった。
恵太はもう一度、割れた窓の方を見た。
あれは明らかに人間ではない。この坂咲高等学校の制服を着ていた男子生徒だったが、あれは能力者だ。
「……この学校、能力者が多すぎる………」
恵太はそういうと、風雅を抱えて生徒会室を出たのだった。
* * * * * * * *
高校の屋上。空から白煙が舞い降り、その中から恋奈を抱えた男子生徒が出てきた。
「おいおい、永尾。さっきの窓ガラスが割れる音は何だよ?」
恋奈を抱えた2−3の生徒である永尾釜彦は、息を切らせながら恋奈を置く。
先ほど恵太に喰らった攻撃で火傷した左肩を見る。左肩の部分だけ制服が燃え尽き、火傷した皮膚が露になっている。
「や、やられた……俺らの他にも能力者がいたんだ………………」
釜彦は目の前に立っている同じクラスで友人である、司馬冷斗に言った。
綺麗な白肌で髪が若干青い冷斗は、釜彦のその言葉を聞いて表情を変える。
「詳しく聞かせろ。」
「恐らく、生徒会で2−9の前田恵太って奴。今、会長選挙に出てるあいつだよ。手を炎に変えて殴ってきやがった。」
釜彦は左肩を手で押さえながら、痛みに耐えながら冷斗に言う。
冷斗は不気味に微笑むと、両手から冷たい冷気をジワジワと出す。
「炎と氷。どっちが強いか試したいな。」
「とりあえず、これからこいつを運ばないと。怪我の手当てどうすればいい?」
釜彦が尋ねると、冷斗は少し悩んでから言った。
「保健室には行くな。運が悪ければ気づかれる。黙って帰って、なるべく遠い病院に行け。」
「わ、分かった。後は頼む。」
釜彦は左肩を押さえたまま白煙に化け、そのまま屋上から飛び去った。
「この学校、やっぱ普通じゃない。」
冷斗は笑いながらそう言うと、気絶した恋奈を抱えて屋上を後にした。
- Re: シンクロニシティ ( No.8 )
- 日時: 2011/09/19 18:37
- 名前: 遊太 (ID: HhjtY6GF)
【6.高速移動】
生徒会室襲撃の後、全校生徒は理由も告げられずに強制下校となった。
ガランとした学校の各フロアには、スーツ姿の警察が2人1組で常にパトロールしている。
恵太は負傷した風雅を手当てするため、保健室に訪れていた。
「大丈夫、波岡君?」
「はははっ……大丈夫っすよ…これくらい……」
養護の宮本小百合は、風雅の頭に包帯を巻きながら心配そうに尋ねる。風雅は笑って答えているが、実際は不安の筈だ。
恵太は手当てされている風雅を見ながら、何者かに連れ去られた恋奈のことを考えていた。
「しかしよ、絶対に誰かいたぜ。あの煙に紛れて生徒会室に入ってきたんだって。そして、花城先輩を拉致したんだよ。」
風雅は手当てされながら、恵太に懸命に言う。恵太は「あぁ。」や「そうだね。」と軽く受け答えするだけだった。
「よし、もういいよ。後は頭に強い衝撃や激しい運動は避けてね。」
「はい!!ありがとうございます!!」
宮本は大学卒業したばかりの新人養護教諭。それなりに可愛いし、男子生徒や教師陣からも人気はある。
2人はお礼を言って保健室を出て行く。すると、保健室の前には3−2で会った眼鏡の刑事が立っていた。
「やぁ。僕のことは覚えているだろう?3−2で会ったよね。僕は警視庁捜査一課の三浦だ。少し時間をいいかな。」
三浦はペラペラと喋り、目が笑っていない笑顔で2人に尋ねる。
恵太は一瞬迷ったが、風雅が勝手に「いいですよ、」と言ってしまった。
「ありがとう。じゃあ、職員室に来てくれ。」
三浦に付いて行き、保健室のすぐ隣にある職員室に入った。
職員室の中には教頭の山本、2−9の担任である長谷川正義、そして車椅子に乗って制服を着た男子生徒。
恵太と風雅は車椅子に乗った男子生徒を見て、表情を唖然とさせる。
「あ、亜堂会長!!」
2人はそう言いながら、生徒会会長である亜堂新之介に駆け寄った。
「や!元気だったか。てか、波岡頭どうしたんだ?」
「怪我しちゃいまして。」
「……相当、状況は芳しくないんだな。」
「その通りです。」
三浦が新之介の言葉に乗せて言った。
「病院からわざわざ駆けつけてありがとうございます、亜堂さん。」
「いえいえ。僕の幼馴染まで被害にあっては、いてもたってもいられません。是非、参加させてください。」
新之介は心臓に重い病気を抱えており、1年前から病院で生活していた。
恋奈とは幼馴染で、毎日お見舞いに来ていてくれた人物でもある。そのため、新之介にとって恋奈はかけがいのない存在。
新之介は真剣な眼差しと懸命に説得して、病気を抱えながらも事件解決に協力したのであった。
「亜堂さん、協力感謝いたします。そして山本さんに長谷川さん、生徒会の2人もありがとうございます。」
三浦は深々とお辞儀をして、胸ポケットから警察手帳を取り出した。
「今回の生徒会室襲撃、この事件で花城恋奈さんが現在行方不明です。そして、我々は職員と生徒からの情報を得て、ある一つのことに結び付けました。皆様は知っているでしょう、神隠しを。」
━神隠し━
その言葉が出た瞬間、職員室にいた三浦以外の人間は目を合わせた。
山本、長谷川、亜堂、恵太、風雅の5人は神隠しのことを知っていた。
「皆さん、知っているようですね。確か半年前に、こちらから警察に極秘で調査依頼が来ていました。これが仮に神隠しだとすると、現在の被害者は4名。ここで止めなければ、被害は更に拡大するでしょう。事件を解決し、被害者4名を救い出す。」
三浦は拳を握りしめながら言う。
「それで、我々には何をすればいいのかな?」
山本が三浦に尋ねる。
「はい、あなた方5人には今回の…………」
三浦が手帳を開きながら説明を始めようとした、その瞬間だった。
「─────参る」
「あらよっと!!」
どこから湧き出てきたのか、突如黒いコートに身を包んで刀を持った男性と、白髪の若い男性が現れた。
刀を持った男性は鞘で山本と長谷川の首をつき、一瞬で気絶させた。
白髪の若い男性は新之介と風雅の頭を鷲掴みする。すると、2人は急にパタリと崩れ落ちた。
「な、何者だ!?」
三浦は恵太を自身の後ろに避難させ、スーツの裏ポケットから拳銃を取り出して2人に向ける。
「氷川、捕らえるのは後ろの餓鬼だろ?」
「ミラージー。その男は俺に任せて、お前は餓鬼を捕獲しろ。」
刀を持った氷川は、ジャンプして刀を振りかぶる。三浦は恵太を後ろに突き飛ばし、ギリギリのところで避けた。
氷川は校長のデスクに着地すると、すぐさま職員室の出入り口に向かう三浦に向かってジャンプした。
「さらば、男よ……うがっ!?」
氷川が刀を振りかざした瞬間、背中に炎の弾が当たり、派手に職員デスクの上に叩きつけられた。
恵太がデスクの陰から、発火能力を使って氷川を攻撃した。
ミラージーは一瞬驚いた顔を見せ、苦笑いと冷や汗を流しながら後ずさる。
「おいおい……俺は戦闘向きじゃねえぞ……。氷川、俺はどうすりゃいい!?」
「ぐっ……お前は逃げた男を追って‘記憶を消せ’!!!」
氷川がミラージーにそう言うと、ミラージーは慌てて職員室から出て行った。
「待て……なっ!?」
恵太も立ち上がって追おうとしたが、目の前に刀を持った氷川が立ちふさがる。
「司馬の言った通り、どうやら小僧が能力者らしいな。」
氷川は不気味に笑いながら言い、なぜか刀を腰にしまう。
「それなら、超能力者同士、能力で戦おうではないか。」
氷川はそう言いながら、前屈みになる。その瞬間だった。
パッ
氷川の姿が、一瞬にして恵太の目の前から消えた。
「え?」
恵太は辺りを見渡すが、氷川の姿どこにも見えない。しかし、すぐにその理由が分かった。
窓から差し込む日。職員室の壁に物凄いスピードで動く人影が映っていた。
「……能力者、高速移動?」
恵太は両手を炎で包み込み、目を細めた。
「花城先輩を返してもらう。」
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