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シンクロニシティ 
日時: 2011/09/23 19:11
名前: 遊太 (ID: HhjtY6GF)

復活しちゃった……知っている人は知っている遊太(ゆうた)という者です。駄作者ながら頑張ります。
まあ、内容は簡単に説明すれば「超能力」です☆
結構時間かけて考えたんで、自分的にはOK!!な小説です。ではでは、お楽しみに〜♪

【登場人物】
 前田兄弟>>004
 協力者達>>009 


【用語説明】
 (1)>>006



─第1章 パンドラの箱─ 坂咲高等学校神隠し編
01話>>001
02話>>002
03話>>003
04話>>005
05話>>007
06話>>008
07話>>010
08話
09話
10話

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Re: シンクロニシティ ( No.1 )
日時: 2011/09/13 20:25
名前: 遊太 (ID: HhjtY6GF)

【1.プロローグ】

また、新たな春が来た。
桜で埋め尽くされたアスファルトの上、川沿いの道を2人の男子高校生が並んで歩いていた。
制服の胸部分には、東京都内で有名な坂咲高等学校の校章が刺繍されてある。
「またメンドクサイ授業が始まるなぁ。課外の授業なんて絶対きつそうだな。」
「ははは、そうだね。」
学校指定の鞄を背負い、爽やかな短髪が春風で靡く。前田恵太は、愚痴を友人に向かって言う。
恵太と同じクラスメイトであり幼馴染である小坂守は、眼鏡を掛け直して、笑いながら受け答えした。
「メンドクサイけど……もう2学期かぁ。早いよな。」
「昨日学校に来た感じがしないわけじゃないね。」
「後、半年で高校3年生になって受験。今頃になって、高校生活は早いっていうことが実感するわ。」
恵太は半笑いで言うと、鞄から黒いビニール製の腕章を取り出す。
腕章には‘坂咲高等学校 生徒会執行部’という刺繍がある。
守は腕章を見ると、優しく微笑んだ。
「生徒会長選挙、順調?」
「ボチボチだな。やっぱり俺以外にも有望な立候補者がいるからな。」


「まーた、そんな弱音吐いてるぅー。」


2人の間に、強引に1人の坂咲高校の制服を着た女子生徒が割り込んできた。
「まき。お前、もう部活終わったのかよ。」
2人の間に割り込んできたのは、恵太と守の幼馴染である八野まきだった。
まきは満面の笑みで恵太を見ると、恵太の持っていた腕章を取り、恵太の胸に押し当てた。
「恵なら絶対、絶対に会長になれるよ。自分を信じて、頑張って。」
恵太はまきの言葉を聞くと、真剣な眼差しでまきを見て頷く。
「じゃあ、私はこれから友達と買い物に行くんで。ばいばーい。」
まきは2人に手を振りながら、物凄いスピードの速さで走り去った。
恵太と守は、まきの足の速さに呆然とする。まきは、日本で4番目に足の速い女子陸上部の勿論エースだ。
「……制服でスカートなのにあの速さ。化け物だな。」
「僕らも‘似た様’なものですけどね。」
守は冗談交じりに言うが、恵太は冗談を冗談とは思っていなかった。
恵太は左手を拳にして前に出すと、勢いよく開いた。



         ボゥ!!



皮膚から、直に赤い炎が発火した。しかし、恵太は熱さも何も感じない。
その非現実的な光景を前にして、守は表情をピクリとも変えなかった。
「こんな超能力、別に使うことなんかない。神っていうより、悪魔からの贈り物だな。」
「弟さんの能力ですよね。弟さんは……その、少々荒っぽい部分があるから気をつけないと。」
「流石にそれは、京志郎も理解してるよ。こんなの世間にバレたら、俺らは世界から追放されちまうかもしれないしな。」
恵太は足を止めると、川沿いの道をコンクリートの階段から下りて鉄橋の下へと向かう。
身の丈よりも伸びている草むらを掻き分けると、生い茂った草も何もない河原が出てきた。

「やっぱり!!ここは最高だな!!!」

鉄橋の下で生い茂った草むらで隠れているため、この場所は誰も知らない。2人だけが知っている。
恵太は靴と靴下を脱ぎ、ズボンを膝まで捲りあげると、透き通った川に足を突っ込んだ。
「くぅー!!気持いぃぃぃ!!!!!」
守も同様に足を川に突っ込み、2人並んで川の向こうの青い空を見る。



       超能力者



   例え、超能力者であっても人間には変わりない。


泣く事だって笑うことだって、悲しむことだって怒ることもある。
冷たさだって感じる。青い空を見て、青春を過ごすこともできる。


   2人は当たり前の様に思っていた。これからも、こんな生活が続くのだと。



   しかし、すでに歯車は動き始めていた______

Re: シンクロニシティ ( No.2 )
日時: 2011/09/18 22:56
名前: 遊太 (ID: HhjtY6GF)

【2.相対の兄弟】

「じゃあな、守。また明日。」
「はい。また明日。」

恵太は守と別れると、世田谷区の高級住宅街へと歩いて行った。
規則正しく並んだ2階建ての家。レンガで作られた外国風の家々は、外から見るだけで高級感を漂わせていた。
恵太は‘前田’と表札の掛かった家の門を開け、鍵穴に鍵を入れた。その時だった。
「あれ?開いてる……」
ドアには鍵がかけられておらず、恵太はキョトンとした表情でドアを開けた。
玄関には、無造作に散らばる2足の靴。学校の鞄、野球道具が階段の前に積まれて階段が塞がっている。
「おい!!京志郎、お前部活はどうしたんだ!!!」
恵太は家に上がると、2階の部屋ではなくキッチンに向かった。
キッチンには、ジュース片手に携帯を操作する恵太の同い年の弟・京志郎が座っていた。
京志郎はジュースを飲み干すと、突然大きな溜息を吐いた。
「兄貴、俺たちは特別だぜ。超能力のせいで、スリル感を無くしちまったんだよ。それに、他の部員はショボイ。」
京志郎は指パッチンで人差し指から炎を出す。机の上で脚を組むと睡眠に入ろうとする。
「あのな、別に好き好んで超能力者になったんじゃないんだから、能力のせいにして部活を休むな。」

「うるせぇよ。兄貴は何とでも言えるよな。学年トップの成績、運動神経も良い、オマケに生徒会長立候補者。」

京志郎は皮肉たっぷりに言うと、恵太を見て不気味に微笑んだ。
恵太は何も言わずに椅子に座ると、天井を見上げて京志郎に言う。
「1年生で県大会出場。プロからも絶賛されている。それ以上に何が不満なんだ?」


「この能力だよ!!!!」


京志郎は机を思いっきり叩いて立ち上がり、恵太に向かって大声で叫んだ。
気のせいなのか、京志郎が立ち上がった瞬間に火の粉が舞ったような気がした。
京志郎は息を荒げ、自分の両手を睨みつける。
「この超能力のせいで、俺は人生が……。兄貴だってそうだろ?大人になるまで、この力を背負い続ける気かよ?」
「お前はこの力を邪魔に思っているけど、この力を人のために使おうとは思わないのか?」
「人のため?発火能力を世のため人のために使えって?使ったら使ったで、化け物を見るような眼で見るだろ。」
京志郎の言葉に、恵太は何も言えなかった。

「馬鹿な大人、ピーピーうるせぇ子供、俺らの能力は邪魔以外何でもないんだよ!!そうやって偽善者ぶるな!!!」

京志郎は怒鳴り散らすと、走って家から出て行った。
恵太は追いかけず、再び天井を見上げる。静まり返った家の中、外から聞こえる近所の住人の声が聞こえる。

チリリリン♪ チリリリン♪

静寂に包まれた家の中に、突然電話の音が鳴り響いた。
恵太は一瞬だけ肩をビクつかせると、大慌てで電話を取った。
『はいもしもし。』


『けっいったっく〜ん!!!今日さぁ、泊まり行っていい?』


電話の向こうから聞こえてくる高い声。恵太のクラスメイトであり親友の宮道真敬だった。
真敬はクラスでムードメーカー的な存在であり、家がサーカス団‘ミヤミチ・カーニバル’であり、ちょっと変わっている。
『いいけど、そっちはいいの?』
『親父たちがデコトラで近畿の方に日帰りで行ってんだ。俺は学校あるしよ、それでお前を頼ってるわけ〜。』
『分かった。じゃあいつでもいいよ。』
『オッケー!!準備したらそっち行くわ。んじゃ。』
真敬は嬉しそうな声で電話を切った。恵太にとって、真敬は大事な親友であり、超能力のことを知る人物である。

「それじゃあ………夕飯の準備でもするか。」


 * * * * * * * * 


同時刻 坂咲高等学校5階 3年生フロア


「コ」の字型で5階建ての坂咲高校は、今年で創立60周年である。
60周年記念で改装され、校舎は新築同様に綺麗である。
校舎5階の3年生フロア、3−2の教室には未だに1人の生徒がいた。
「何だか寂しいな………」
今年で卒業する原田亮平は、教室を見渡しながら呟いた。
掲示板には3年生初めの頃に撮った集合写真、最後の学級通信、受験までのカウントカレンダー等が掲示されてある。
彼や3年生にとって、この学校の物1つ1つが思い出の品だった。
「今までありがとう。」
亮平はそう言うと、机の横の鞄を手に取った。その時だった。

ガチャ

亮平の後ろで、教室の扉の鍵が閉まる音がした。
「ん?」
亮平が後ろを振り向くと、閉まったドアの前に学生服を着た2人の男子生徒が俯いて立っていた。
「……誰?」
亮平が首を傾げながら尋ねた。その瞬間だった。

   ボフッ!!

1人の男子生徒の体が、一瞬にして煙となり、教室の中を白煙が包み込む。
「わ、わぁぁぁぁ!?」
亮平は驚いて後ろに逃げようとするが、机に躓いて派手に倒れる。
煙のせいで視界が悪くなり、亮平は手探りで辺りを探る。危険を感じて立ち上がらず、四つん這いで教室のドアを目指す。
ふと、亮平の手に冷たい‘何か’が触れた。
「な、何だ?」






            「先輩、さようなら」





Re: シンクロニシティ ( No.3 )
日時: 2011/09/16 21:03
名前: 遊太 (ID: HhjtY6GF)

【3.噂の神隠し】

電話から約10分経って、真敬は恵太の家にやってきた。
「おーす!!」
真敬の足元には、1日しか泊まらないのにトランクスーツが置かれていた。
恵太は苦笑いしながら真敬を家に入れる。真敬は靴を脱ぎ棄てると、当たり前のようにリビングの方へ向かった。
「相変わらず誰もいねぇな……弟もいねぇのか?」
「喧嘩して出てったよ。朝には帰ってくるし、大丈夫だ。」
「まぁ、京志郎は喧嘩にも慣れてるし、襲われても能力を使えば一発だな、ハッハッハッ!!」
真敬は豪快に笑っているが、恵太には笑えなかった。
リビングには恵太手作りのハンバーグにスパゲッティ。テーブルの中央にはサラダ盛られたボウルが置かれている。
真敬は急いでテーブルの前に座ると、手を合わせた瞬間に食べ始めた。
「うまっ!!やっぱ恵太は最高だな、料理もできるし勉強もできるし。」
恵太は真敬に絶賛されながら座り、自身の手料理に手をつけた。
そのあとは他愛もない話で盛り上がり、食べ終わる頃に真敬が‘ある話’を始めた。

「そういや、恵太は‘神隠し’知ってるか?」

突然そう聞かれても、恵太は首を傾げるしかなかった。
真敬はハンバーグを食べ終えると、お茶を一杯飲んで話を始めた。
「ここ最近だと、1年生で1人、2年生で1人、教師で1人だな。俺のダチからの情報だから絶対だ。」
「それ本当なのか?」


「あぁ。ちなみにこの3人が被害にあって、もう半年は経つ。」


真敬のその一言で、恵太は身震いした。
「……それって、マジか?」
「だから本当だって。学校側は俺ら生徒や他の教師に黙っているが、親は未だにカンカンだ。」
真敬はリビングに置いてあった自身のトランクスーツを開け、一枚の紙を取り出す。
紙には3名の顔写真、名前や詳細が書かれている。
「1年生の境太一。部活動はサッカー部、成績は中の下、彼女アリ。神隠しにあったのは、恐らく下校の時。」
「おいおい、一体どうやって調べたんだよ。」

「オカルト研究部の暗門影也。」

恵太はその名前を聞いて、言葉を失った。
オカルト部は坂咲高校では有名な部活である。部活動の内容は知られていないが、部員はそこそこいる。
中でも2年で部長である暗門は、2年生で知らない人間はいないだろう。
見た目は暗くトロそうだが、運動神経は抜群で成績も必ず学年5位に入る。見た目とはかけ離れた中身を持っている。
「てか、お前みたいなハイテンションと暗門が友達って……」
「あいつは良いやつだよ。見た目で人を判断するな。」
真敬は再び紙に目を移す。
「2年生の井出久美。帰宅部だが、学校外で塾や塾や塾……いわゆるガリ勉だ。神隠しには、その塾の帰りにあったぽい。」
そして、最後の1人を真敬は読み上げた。

「田中栄次郎。2−3の担任で英語担当。パッと見はチョー普通の教師だが……よく分からん。恐らく神隠しの被害者。」

「恐らく?」
恵太は、真敬の最後の言葉に疑問を持った。
「こいつは本当分からない。暗門でも詳細に分からないからな。とりあえず、五分五分で神隠しの被害者だろ。」
真敬は全て読み上げると、キラキラとビー玉の様な目で恵太を見つめる。
恵太は一瞬、嫌な予感がした。
「な、なに?」
「俺らで解決しようぜ!!ここで活躍すれば、間違いなく生徒会長になれる!!!!」
真敬はガッツポーズをしながら勢いよく立ち上がり、恵太の隣に来て肩を組む。
恵太は鬱陶しい表情を見せたが、心のどこかでは‘解決したい’という気持ちもあった。


   京志郎の言っていた失った「スリル感」─────



 恵太も心のどこかでは「スリル感」を求めていたのだろうか─────



   これは、超能力者にしか分からない感情……なのか─────



恵太は悩む間もなく、しっかりと頷いた。
「っしゃ!!考えるよりも行動だ。明日の放課後にオカルト部行こうぜ。」
「暗門に頼ってばっかだな。」
「あいつ以外に頼れる奴はいねぇよ。それに、お前らの能力を知っているのは学校で俺と暗門、小坂と篠畑ぐらいだろ。」
恵太と京志郎が超能力者であるということを知っているのは、坂咲高校に4名。
守と篠畑武道は恵太たちと同様、能力者である。だが、真敬と暗門だけは違う。
この2人は能力者でも何もない。昔、彼らが中学時代の頃に2人は‘ある事件’がきっかけで知ってしまった。
知ってしまっても真敬と暗門は誰にも言わず、今まで黙っていてくれている。
恵太は暗門のことを嫌ってはいるが、心の底から嫌っているわけではない。

「それじゃあよ、テレビゲームでもして明日に備えようぜ♪」

真敬は笑顔でリビングから2階の恵太の部屋へ向かって行った。
「何の備えだよ……」
恵太は呆れながらも笑い、食器をキッチンに運ぶと2階へ上がった。



 * * * * * * * * 



家を出た京志郎は、家の近くの公園のベンチに座っていた。
日は完全に落ち、辺りは街灯と月の明かりだけで、不気味な暗さである。
「どうすっかな……今から家に戻っても、また兄貴の世話になるからな………」
京志郎は夜空を見上げる。星が散らばる暗い空、京志郎の視界に一番輝いている星が目に入る。
「あれが兄貴で……横で弱弱しく光っているのが俺かな。」
京志郎は1人で呟くと、次は笑い始めた。
「はははっ……」

「何してんの?」

突然聞こえた声に、京志郎は目の前を見た。
京志郎の目の前には、幼馴染であり恵太の友人でもある八野まきが立っていた。
「なんだ、お前かよ。」
「また喧嘩したんだ。相変わらず、恵と気が合わないんだね。」
「俺と兄貴は正反対だからな、何もかもが。」
京志郎がそういうと、まきは首を横に振って否定した。


「2人は見た目や中身が違っても、兄弟じゃん。」


京志郎はまきの言葉にイマイチ共感できないが、心のどこかで何かが動いた。
まきは京志郎の隣に座ると、満面の笑顔で背伸びをして夜空を見上げる。
「私が読んだ小説は双子が主人公。絶対に欠点があった。だけど、良いところも絶対にある。2人は仲は悪いけど、最後の最後には仲直りをしたよ。長い年月をかけてだけど。別にいますぐ仲良くなれって言ってるわけじゃない。京君のペースで恵と仲良くなればいいよ。」
まきはそう言って立ち上がると、少し歩いて京志郎の方へ振り向いた。
「じゃ、私は帰るね。ちゃんと仲直りしてよ。」

「……あぁ。」

まきは京志郎に手を振ると、そのまま走って暗闇の中へと消えた。
まきが行っても、京志郎はずっとベンチに座って夜空を見上げたままである。




「兄貴と仲良くなんて……無理…だよ………な。」







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