ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- 愛しているの
- 日時: 2011/09/13 22:47
- 名前: 葵沙 ◆7ZaptAU4u2 (ID: /iUvxDbR)
葵沙と読みます、変な名前ですね;
初めまして、暖かい目で見てくださると嬉しいです。
じゃあ、頑張りますっ!
目次|注意事項
01 / シリアス、ダーク、グロ、死、猟奇的な描写が出ます、ご注意を
02 / 更新度が何度もゆーよーに、亀様並み、亀の方が早いか(
03 / 宣伝は軽ければ良いです、しかし、見るのが遅い(
04 / 荒らしや口論、苦情は受け付けませんので笑
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- Re: 愛しているの ( No.5 )
- 日時: 2011/09/17 13:57
- 名前: 葵沙 ◆7ZaptAU4u2 (ID: /iUvxDbR)
——— 何の為に生きているのか、分からない。
誰しもが、一度は考えたことがあるだろう言葉、思想、感情。現時点でそう思っている。理由はとても単純で家庭不和が原因だ。彼等曰く百点は取れるテストで九十点しか取れなかったから。
それで両親は大激怒した。彼等は自分の将来の為とか、世間体だとか、等。
自分の願望、自己満足をルナに押し付け、無理やり勉強を強いれて、結果、ルナが人間関係が全くできない人間になれば、彼女を責めた。
自分達が奪った挙句、決まり言葉は〝私達の為に頑張って〟なのだ。
心底で憎くて鬱陶しくて仕方ない両親でいた。ルナの不機嫌が増す。
「聞いているのか!」
お決まりの言葉で右頬に痛みが走る。平手打ちされたのだ。
これは、まだ序の口。酷い時は腹を何度も蹴りあげられたりする。母は一切その行為に咎めも止めもせず、見て見ぬ振り。
狂った家庭だ、と他人事のような眼差しで彼等を見ていた。酷く父の説教と言う名の怒鳴り声が煩く聞こえた。
莉絵と彼等のどちらが性悪の勝負をすると、良い勝負。というか彼等の方が圧倒的に圧勝しそうな感じだ。
父は暖かな暖色系のソファーに座り直す。身を沈めるように埋もれる。母も隣で白いハンカチを爪で抉って嘆く。
傍らの棚に写真立て。〝家族四人〟の写真———。
「どうして〝ルイ〟みたいになれないの!どうして!ルイは良い子だったのに!運動もお勉強も何でも出来たわ!だけど……うぅ!どうして、どうしてルイが死ななければいけなかったの!?何でアンタはそんなに、出来損ない———」
責め立てる母の肩を自分の方へ寄り添い、支える父。母は父の腕の中で泣く。哀れ、と感じる。何て哀れな人間だろう。
自分達が、兄を〝追い詰めた〟癖に、だ。
兄は優秀な人物だった。明るくて秀才でそれで謙虚な性格だった。だから、両親に溺愛され、ルナは疎外されて育った。
けれども、兄は決してルナを疎外せず、暖かく平等に接してくれる。そんな優しい人間でいた。
でも、兄が恋に落ちた。その人物は少年院から出て過去の罪を償い、今は立派に更生中の同い年の子だ。
当然その子と交際するのを二人は反対した。兄は追い詰められ、恋人は兄の為に自殺。兄は彼女の死後、狂って後追い自殺を成し遂げた。
それ以来、両親の過大な期待、願望、自己満足を一心に背負う羽目になったルナが、今、二人に責められていた。
「可哀想だね」
何となく一言、呟いた。
「何を!?」
茹でたタコみたいに顔を赤くする父。
「だから、可哀想だねって。お父さんとお母さんは何にも分かっていない。兄さんが死んだのは、二人の所為で死んだんだ。ね、分かる?罪を償おうとしている人間に屑だと言った。兄さん、激怒したでしょ——?つまり、兄さんはそんなアンタ等が大嫌いだとあの後、あたしに言ったよ。だから———— 可哀想だね、って」
二人の顔が青ざめる。ルナは構わず、二人を残しリビングから出て行った。階段を上る途中、母の呻くような悲鳴が聞こえてきた。
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- Re: 愛しているの ( No.6 )
- 日時: 2011/09/18 13:55
- 名前: 葵沙 ◆7ZaptAU4u2 (ID: /iUvxDbR)
視線を感じる。白い霧が立ち込める空気の向こう側に人影が映る。
そして視界が拓いていく。自分は、何かを忘れてる気がした。
向こう側の人影は誰だろう、と怪しむ訳でも、警戒する事もない、ただ一言、〝久しぶりね———!〟と言った。
久しぶりの後の言葉が思い出せない、誰だ。誰だろう。気付くと手を差し伸ばしていた。だけど向こうの人影が離れていく。
必死に追いかけた。理由は分からない。
けど追いかけなければいけない気がしたからだ。追いかけたけど決して人影に届く事はなかった。
■
「誰、………あ?」
——— 差し伸べた先は、空振りした。
机から伏せて寝ていた上半身を起こす。数学の勉強をしていて問題は全問正解だ。両親は当たり前、と言うのだろうけれど。
先程の夢を思い出す。白い霧で視界が遮られている状況、そこで見た人影が、自分に手を振っていた。
自分は、何故か手を差し伸べていた。
すると、人影が去ってしまう。
何故か慌てて追いかけたけれど、人影の距離が遠くなって、もう一度、手を差し伸べた瞬間、目が覚めた。
「ルナ!ルナ!起きなさい!早く部屋から出なさい!」
母のヒステリックな声がドアを隔てた向こうから聞こえる。仕方なくルナは椅子から立ち上がってドアを開けた。
お盆にコーヒーとデザートを持った母が、ヒステリックな甲高い声で、喚き散らし、リビングへ戻ってしまった。
散々、言い訳を聞かず好きなだけ罵り、本題は勉強の息抜き用のデザートを持ってきただけだった。思わず、溜息を漏らす。
「置くという選択はなかったのかな?」
まあ、悪い事じゃない、と言って中へ戻る。
勉強机に置いて隣のベットに寝転んだ後、滅多に鳴らない携帯が鳴った。
「誰?………結城莉絵からだ」
内容は明日の正午に忠犬ハチ公の銅像前、とシンプルなメールが来た。
送信しない自分も悪いが、彼女の頭に配慮という言葉はないらしい。
そして読み終えたころ、廉からのメールが来た。序でに見てみる。
内容は彼女の行いに対する謝罪文。つくづく苦労人だな、と同情した。まるで彼女の奴隷みたいだ、と感じた時、違和感を覚える。
「…………あ、あれ……何か、気の所為?」
脳裏に誰かの姿が浮かんだ———。
だけど、すぐさま、奥へと追い込まれた。
何か、可笑しいと思うけど気の所為だと思い返し、目を閉じる。
時計の動く音、自分の遠のく意識の中で響く寝息の音が混ざって静寂を際立たせている。
睡魔が襲った。
最後の意識の中、また誰かの姿が思い浮かんで消えてしまった。
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- Re: 愛しているの ( No.7 )
- 日時: 2011/09/21 18:53
- 名前: 葵沙 ◆7ZaptAU4u2 (ID: /iUvxDbR)
- 参照: 台風で四限しかなかッたよ!
忠犬ハチ公とは、主人の帰りを駅で毎日ずっと待ち続けてた犬。その主人は既に世を去った後でも。
犬は本当に忠誠心が高い、と思う。片耳が折れてる、瞳はずっと駅の方を向いている、気がした。ルナは感慨深く銅像を見た。
台風が近く接近する日だ。暴風が酷く傘を差しても、雨が風と共に勢い良く吹き荒れてて、体を濡らした。
今度にする、という選択は選んでないようで廉からのメールは、10分前に、やはり彼女の行為に対する再度の謝罪文だ。
これ程まで、不憫な人間だと思ったのは、人生初の出来事であった。待ち合わせ時間が午後1時。後10分で1時丁度になる。
「天城ルナ!来てやったわよ」
「否、お前が強制的に誘ったんだろ」
「黙りなさい!アンタ、アタシに人の事を言えるつもり?」
傍から見ると、SMカップルの喧嘩を見ている感じだ。台風の所為で人通りが少ないけど、視線はしっかりと感じられる。
二人に羞恥心の言葉がないと見えた。今すぐ家に帰りたいと思った。
待ち合わせ場所に着いた二人が、雨と風が激しいので近くの喫茶店に入る。そこで、やっと立ったままの体が席に着いた。
「こんな気候で呼んで悪かったわ」
珍しいこともある。あの、自分の非を一切認めないという噂の莉絵が、素直に謝罪したのだ。
先程の会話とは打って変わった印象である。
廉も口パクでたまにある、と伝えた。
莉絵も謝る時もある、と学んだ。注文を適当に頼んだ後、何の話題を話すか、分からない。
二人とも、そうであるらしく黙ったままだ。
莉絵に計画性があるのか、疑問に思える。
莉絵のことだから気まぐれで遊ぼうと言いだしたに違いない—— 頭が痛くなった気がした。
そんな沈黙を打ち破るように、莉絵が喋り始めた。
「あの、さ。天城ってハーフなの?」
良く言われる話題だった。ルナが慣れている話題だが。
黙って首を横に振る。
意外にも、彼女の目がやや見開いた。
「薄茶髪だし、目は黒だけど。肌も白いし——」
「生まれつき、色素が薄いんだ」
「そうなんだ。アンタって華奢な体だし、ハーフかと思ったよ」
無駄に痩せて貧弱な印象の、この体を華奢と表現した彼女。
ルナも死んだ兄も、家族揃って小食だから、余り物を食べないだけだ。
「そういや、何で〝ルナ〟って外人みたいな名前なんだ?」
一番痛い処を突いて言われる。
余り話さない家庭の事情を、彼等に話す。
「……母方のイタリア人とイギリス人のハーフの祖母がいるの。お母さんがその〝日本人〟とのハーフで二十歳まで曾祖父の住んでたイギリスに住んでて、二十歳のころに日本に来たの。それでお父さんと知り合って、間にあたしと……死んだ兄がいたの。あたしがまだ中学2年の時、兄さんが大学一年生だった。だけど、ある日、自殺したんだ。理由は少年院で罪を償って更生した少女と交際してたけど、両親に反対されて、その人が自殺して悲しさの余り、気が狂って精神科病棟の施設に引き取られたけど、脱走して自殺、したんだ。つまり、あたしは、生まれつき色素が薄いことも反してイタリア系イギリス人とのクォーターなんだよ」
重く悲惨な過去を当たり前に話す自分が悲しく思えた。
ルナが真剣な表情になった二人を見て、しまったと思う。焦ったのは久しぶりだ。
重く暗い雰囲気を一層するべく、話の続きを進める。
「それでお母さんが名付けてくれたんだ。あたしが産まれた日は、とても満月の綺麗な夜だったと。それに、お母さんはあたしより、兄さんの方が可愛かったんだ。産まれたあたしを疎ましく邪魔だから、……そうだね、西洋では月は不吉だとされてるから。英語で〝ルナティック〟という日本語で気違いとか悪い意味の英語があるんだよ。もう分かったでしょ、ルナティックのルナから名付けられた。適当に、名付けられたんだよね。お祖母ちゃんは反対してあたしには、満月の綺麗な晩だったから、と言ってくれたけど——」
痛くないと感じた胸が、痛くなった。
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- Re: 愛しているの ( No.8 )
- 日時: 2011/09/23 17:09
- 名前: 葵沙 ◆7ZaptAU4u2 (ID: /iUvxDbR)
前言撤回、重く暗い空気を一層するはずなのが更に、重くなっている。
己の更なる失態に内心パニック状態だ。帰りたいと体が訴える。
どう、やり過ごそうかと考えてる最中。
莉絵の同情めいた視線、でなく玩具を手に入れた子供のような、好奇心の目で見られていた。
背筋が凍った。
彼女がルナを呼んだのは、単なる〝好奇心〟なのだ。おそらく本来の性格と人間を〝観察〟する。
彼女の性で周囲の人から避けられてた要因だろう。
背筋が凍った気がし、ルナの不安定な心中が見られてる気がしてならない。気分が悪くなった。
「雨」
ようやく廉が口を開いた。重い空気が少し、晴れた。
「雨、酷いぜ。俺の家、駅の近くですぐそこだから、泊まってく?」
「あら、乙女を獣の家に招待する気?ふん、良いわ。ちゃんと乙女が喜ぶ接待をしなさいよね?」
「お前は俺ん家を何だと思ってんだよ、ていうか、俺の家だし」
傲慢な莉絵の発言で廉が恨めしく睨んだ。
「黙らっしゃい!廉の隣家のアタシん家に決まってるでしょ!この言葉でアンタの家よりアタシの家だと言ったのよ!」
初めから、そう言えば良い。争いに巻き込まれたくないのでルナは二人を傍観する。
二人は何となく、壊れている。
莉絵の傲慢や我儘に強い自己中心。廉の物静かさや大人しさ、気弱さに莉絵の〝奴隷〟みたいな扱いに強く鬱憤が溜まっている。二人は壊れている。
「別に」
何となく言ってしまった。二人の見えない争いが治まる。
「あたしはこのまま帰る。じゃあね」
席を立って二人の傍から離れた。
あんな二人と付き合っていると、いつかルナ自身も壊れそうだから。
■
両親は壊れている。兄の自殺の原因を自分達だとルナに突かれた時から、何かが、彼等の中で崩れ落ちてしまったらしい。
その日以来、夫婦の間で良く見せた笑顔が無くなっていた。そしてルナを呆然とした眼差しで見つめている。
部屋で引きこもるルナが、時折聞こえる音は夫婦喧嘩だ。
「壊れてる、あの二人もお母さんもお父さんも、何もかも、壊れてる」
頭を手で押さえながら、呟く。
外の天候は最悪でさっきから暴風雨が激しく吹き荒れていた。
完
- Re: 愛しているの ( No.9 )
- 日時: 2011/09/24 16:31
- 名前: 葵沙 ◆7ZaptAU4u2 (ID: /iUvxDbR)
■第二章[逃げ続ける卑怯者は誰だろうか]
逃げ続ける卑怯者は誰だろうか、という小説の題名に視線を落とす。
何となく今の状況に合っている。因みに純文学小説だ。
内容も情緒不安定な母親と元アルコール依存症の父親の家庭に育った一人娘が、人間を冷めた目で観察する話。
以前、噂で情緒不安定な母親と家庭内暴力を揮う父親の家庭、と莉絵の家庭の噂が流されたのを思い出した。
あの父親は母親しか暴力をふるわないはずだ、とも。
書店で見つけた新人小説家のデビュー作。
手を差し伸ばした。
ルナの腕にしっかりと抱えられた本は会計の処へ持って行かれ、無事ルナの所有物だ。気休め程度に読む本だと考えていた。
書店を出る。
外は生憎の雨で本を鞄の中に仕舞い込んだ。ビニール傘を広げて一歩、足を進める。
水たまりが、跳ね飛び靴下を濡らす。泥水が混じって汚くなる。
町の片隅、細く長い川が流れる沿いの細道、その端で人影を見つけた。
奥村廉だ。
彼は雨の日だが、傘を差さずに歩いている。顔に張り付いた虚ろな笑顔を作っている。人通りが皆無な分、浮いていた。
雨と共に溶けてしまいそうで、焦ったルナが一気に彼の元へ駆け出した。
「奥村」
滅多な事がない限り、同級生と口を聞かないルナが初めて廉に呼びかける。理由は無い。でも、話しかけないといけない気がした。
「………、天城か」
薄く軽い笑顔を返して声を落とす。雨は音を吸収するのか周囲の音が、廉とルナ以外の音を通していないような気にさせる。
俯き加減で廉が語った。
何故、自分がこんなに落ち込んでいるのかを。
「もう、疲れたんだ」
彼が哀愁深く漂わせた言葉を紡ぐ。まだ若い青年が纏う雰囲気でない。纏うのは、渋く大人の男で良いのだ。青二才は逆に痛々しい。
仰向くと顔に雨が一身に降り注がれる。横顔が寂しく感じさせた。このまま溶けて死んでしまえ、と思ってしまった。
ぞっとした。背筋が凍りついて冷凍したかと思った。
まるで莉絵のような傲慢さを抱いた。ルナはそのことで恐怖を覚えた。無感情に生きてきた神経が鋭く研ぎ澄まされる。
「莉絵の〝お守〟をするのを、さ」
奴隷の間違いでは、と言いたくなった。
言ったら彼の壊れかかった精神が完全に壊れてしまうので言わない。
「嫌なら、断れば良い。嫌なら、反抗すれば良い。逃げ続けていても、何にも変わらないよ」
ドラマに出てきそうな臭い台詞を言えたものだ、と感心してしまう。
「そうだよ、な」
雨で白く煙った視界の中、彼の姿が良く判別できない。
今にも、消えて溶けてしまいそうだ。
■
事件が起こった。教室に入ると同級生が滅多に話しかけないはずだが、ルナに話しかけてきた。話題は廉の自殺未遂の話題だった。
表情に感情が昇る事が滅多にないルナの顔が僅かに驚く。同級生達は珍しいものを見たさに集まってくる。
内心うんざりしたけど、とりあえず同級生の話題を聞いてみることに。
自殺の理由は、疲れたの一文だけだった、とある女子が語る。
吹奏楽部のツインテールが似合う、お洒落好きの可愛らしい女子だった。
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