ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- 日常!ハチャメチャ百合がーるず
- 日時: 2011/10/17 23:17
- 名前: ぶりぶりざえもん (ID: Hsu/pkT7)
題名で同性愛!?とか思っちゃうかもしれませんが決してそんなことはないので安心してください(笑
楽しく可愛い女の子達を書いていけたら嬉しいです!
何が起こっても誹謗中傷は悲しいのでお止めくださーい(^^;)
最近、事故率が高くなって参りました。
あと鬱注意です。
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- Re: 日常!ハチャメチャ百合がーるず ( No.3 )
- 日時: 2011/10/05 19:15
- 名前: ぶりぶりざえもん (ID: Hsu/pkT7)
架弥ちゃんが帰った後、私は図書室へと向かった。
階段を昇り、四階の古びた図書室の重いドアをぐいっと押した。
「……こんにちは」
受付にはいつも居る司書さん。
といっても学生で、司書になる為の資格を本当に持っている訳ではない。
……当たり前か。
胸下まである三つ編みに、黒縁の眼鏡。真面目、という言葉がぴったり。
上靴が緑色なので、私と一緒の一年生。名前は知らない。ただ、首からぶら提げているカードに綺麗な字で「めいじ」と書かれていた。それが名前なのか、苗字なのかは分からない。
……普通は苗字を書くものだと思うのだが。
「こんにち、は」
慣れない挨拶を不器用にして、私は受付を通り抜けた。
受付の前辺りに置かれた学習机には誰も居ない。
夏休み明けだからか、皆頭をまだ動かす気はないのかもしれない。
皆が考えることはわからない。
私は受付から一番遠い机を選んで、鞄をすとんと降ろした。
チャックを極力音のならないように引っ張り、中から一番不得意な数学の教科書とノートを出した。
ちゃりん。
筆箱を机に落とすと同時に、大きな鈴の音が図書室に鳴り響いた。
受付の「めいじ」さんがこちらに視線を向けた。
「あ……っ。すいま、せん」
慌てて謝ると、めいじさんはじっと筆箱に付いている鈴を見つめた。
眼鏡が窓から入る光に反射して、瞳を見ることが出来ない。
今、不快な思いをしているのだろうか。分からない。それが、不安を強調させる。
「あの、」
居たたまれなくなった私は、思わず声を出した。
「これからは、煩くしないように、気をつけます」
めいじさんは動かない。
一寸も、時が止まったように。
思わず俯いた。
怖かった。めいじさんの見えない視線が。
上靴の音。
近づく足音。
謝ったのに、どうして何も言わないのだろう。
何故近づいてくるのだろう。
ただ、鈴の音が鳴っただけ。謝った。
私とめいじさん以外に誰も居ないのに……!
下を向いた視界の中に、私以外の緑の上履きがにゅっと出てきた。
はっとして顔を上げると、上から見下ろす冷たい目。
「ひ……っ」
その瞳の中の暗闇が、私をしっかりと捕らえている。
逃げられない。
怖いくらいに無表情な彼女に、私は一歩後ずさった。
その瞬間、腕を掴まれる。
外を余り出ない私よりも、怖いくらい白い肌が腕を掴んでいる。
まるで異世界から来たように感じた。
反射的にその現実から浮き出ているような手を、掴まれていない手で掴んだ。
いくら引き離そうとしても、なかなか腕は離れない。
「いっ……!」
一際強く力を入れられ、私はめいじさんの顔を直視した。
「その鈴……。あなた、誰から貰ったの……?」
「え、っ?」
「その鈴、その鈴は……。誰のもの?」
「これ、は……」
「その鈴は私のものよ!」
「あっ」
恐ろしい程に低い叫び声を上げためいじさんは筆箱に付いていたストラップを取ると、窓へと向かった。
「めいじ、さん?」
「これは、私のものなの」
「めいじさん!?」
がたんと、窓を開け放っためいじさんに、私は未来を予想出来た。
「やめて!」
「あの人から貰った、私のもの、なのに……」
「やめてよ!」
「ふふ……いやね。これは私の物なの。あなたにどうこう言われる必要は無いわ」
「いや!」
私が走り出したと同時に、めいじさんの桃色の唇が艶かしく歪んだ。
「あなたがあの人に干渉する必要は無いわ」
ちりん、とさよならを告げた鈴。
脳裏にあの人の笑顔が蘇る。
「さよなら」
鈴が弧を描いて落ちていく。
どこか懐かしい声がした。
私が忘れ去っている記憶。
一つ、失くして、思い出す。
図書室には狂った笑い声。
めいじと書かれたカードが揺れる。
私は崩れそうになるのを我慢して、鞄を持って図書室を走り出た。
- Re: 日常!ハチャメチャ百合がーるず ( No.4 )
- 日時: 2011/10/05 19:26
- 名前: ぶりぶりざえもん (ID: Hsu/pkT7)
それは昔の物語。
セーラー服の少女の話。
煩い蝉の声に負けじと声を張り上げた、あの日。
私はまだ太陽の下を歩いていた。
- Re: 日常!ハチャメチャ百合がーるず ( No.5 )
- 日時: 2011/10/16 16:28
- 名前: ぶりぶりざえもん (ID: Hsu/pkT7)
「暑いね、倒れちゃいそう」
「倒れるなよ。また病院まで運ばなきゃならなくなるから」
私の横に座っている幼馴染みがしかめっ面で言った。
「何言ってるの。ここが病院じゃない」
「あ、そうか」
丁度今くらいの時間。
終業式が終わって、夏休みになるということで、これから何をしようか、とはしゃぎながら歩いていた昼のこと
「宿題を早く終わらせて、架弥ちゃんとプールに行って、それからお祭り行って、……」
「お前、はしゃぎすぎだろ……。落ち着けよ、まだ時間なら余る程あるんだからさ」
「もう、夏休みなんて一瞬なんだよ?」
「そうか?俺にしたら十分すぎる程だけど」
「来年は受験生だから、夏休みは勉強しかやっちゃ駄目なんだよ?だから、今回の夏休みは有効的に!無駄がない様にしなきゃ!」
「わかった、わかった」
「何その言い方ー。馬鹿にしてる!」
「別にー」と少しにやけながら言う彼に、心拍数がかなり上がっていた。
お祭りに誘おうとしていたのだ。
でも、中々機会を見つかることができず、もんもんとしていた。
どうしよう。
このまま別れたら、滅多に会う機会がない。
きっと夏休みが終わるまで会えなくなってしまう。
そうこうしている内に、あと一つ角を曲がればもう家に着いてしまう距離にまでタイムリミットは近付いていた。
ただでさえ強い日射に汗を垂らしていると言うのに、焦りと緊張で更に握られた拳の中は酷い状況だ。
「あ、あの、ね」
「何だよ」
「その、夏休みのことだけど。暇だったら、お祭り行かない?」
「い、いいけど」
汗が一粒道路に落ちた。
恥ずかしさと、達成感が交互に襲ってきて、どうしようも回避できなくなって私は「じゃあ」と言って、角を曲がった。
「あ、おい、!」
「え?」
私は宙を舞った。
弧を描いて、彼の前に鈍い音と共に地面に帰った。
私の横をスレスレに車が過ぎ去った。
轢かれたんだ。
そう理解した時には、彼が走って来て私の手を掴んでいた。
「大丈夫か!?」
「う、……あ、」
大丈夫、と言おうとしたら上手く声が出せなかった。
どうしよう。このまま死ぬのだろうか。
お祭り、行きたかったな。
涙が溢れかえって、道路を濡らした。
「大丈夫、こんな傷じゃ死なない」
彼は明るい声で私に微笑みかけた。
後ろには太陽があったから、彼の事が天使か救世主のように見えた。
彼が私の手を握り、そして背中におぶった。
「い、いた、い」
「病院までの辛抱だから。なるべく揺らさない様に歩くから勘弁な」
とは言われても、体のあちこちが悲鳴を上げていたので、無理な話だった。
私はしきりに叫びながら病院へ連れて行かれ、所々捻挫と骨折をしていると言う事が判明した。
全治一ヶ月。
丁度夏休みが終わる頃まで入院だ。
- Re: 日常!ハチャメチャ百合がーるず ( No.6 )
- 日時: 2011/10/17 23:19
- 名前: ぶりぶりざえもん (ID: Hsu/pkT7)
「おーい、起きろよ」
ドアが開く音と共に、私を起こす声。
徐に目を開けると、弟の翔がドアから顔を出していた。
「遅刻するぞ」
「今、何時?」
「八時」
「嘘っ!?」
「ほんと。七時に一回起こしたけど姉ちゃん起きなかったからな」
「う……」
「じゃあ、俺先に行くから」
「中学生はいいよね。家から徒歩で通えて」
「それでも受験生は忙しいんですよ」
「わかってるよ、そんなの。体験者だもん」
翔は中学三年生の私の弟だ。
生意気だし反抗期だけど、頭が良くておまけに運動神経も良い。
バレンタインにチョコを沢山もらっていたと思う。
本人の前では言わないが、なかなか自慢出来るよくできた弟だ。
最近、彼女ができた様にも感じる。
もう部活動は受験の為に停止になったのだが、帰りが遅かったりするからだ。
受験生の癖に余裕らしい。
「って、そんなこと考えてる場合じゃなかった!」
学校は八時半から。
自宅から学校までは一時間くらい掛かる。
「完全遅刻か……」
だからと言って、ゆっくり行っては一限目の出席まで落としてしまう。
手短に用意を済ませ、ドアの鍵を掛けてから家を出た。
高校には電車に乗って行くのだが、その前に家から駅まで行くのに二十分掛かる。
早足で歩くと、汗が道路にぽつっと雨の様に染みを作った。
「ん?」
何だか奇妙な感覚に囚われた。
最近感じた様にも思えた。
でも、曖昧で、夢の中に居る、不思議な体験だった。
目の前の信号が変わった。
一歩踏み出した。
「きゃああぁぁぁあ!!」
「え、?」
青い空に投げ出された。
それは鈍い音をして、空を飛んだ。
がんがんと早鐘を打つ心臓と、認めたくないと強く思う願い。
固い道路の上に、それは大きな染みを作った。
「椿、さん」
足元に流れて来た赤黒い液体。
それは、知り合いの、クラスメイトのものだった。
- Re: 日常!ハチャメチャ百合がーるず ( No.7 )
- 日時: 2011/10/29 20:31
- 名前: ぶりぶりざえもん (ID: Hsu/pkT7)
乳白色の壁が彼女をまるで檻の中に居るかのように感じさせた。
長い時間。ずっと丸椅子の上で表情を変えずにいたせいか、まるで人形の様な気分だった。
「椿さん」
ピ、ピ、と規則的に鳴る音に耳を傾けた。一定の速度を守っている心臓はまるで規則に縛られた私達人間のようにも思えた。
虚しくなって、自分ではどうすることも出来なくて、ひっそりと頬を濡らした。
もう、ずっとこのままなのだろうか?
不意に訪れた恐怖に、私は思わず立ち上がった。
からん、と倒れた椅子。
私も出来れば倒れたかった。
そう、いっそのこと気を失って、この場から立ち去れば全て忘れ去られる様な気がしたから。
無駄だとわかっても、私は逃げ出したかった。
目の前に落ちてきた椿さんが、何か思い起こさせたからだ。
多分夢か一瞬の想像の産物。
血が足元にまで及んだとき、確かに私の時は一瞬止まった。
それは最小で数分、最大で数十分の少ない時間の出来事だ。
何故なら、誰かが救急車を呼ぶ声と、救急車が彼女を連れて行った後のピーポーというサイレンを聞いたからだ。
そうだ、私は彼女が搬送された直後に現実へと戻ったのだ。
私はその夢か何かにおびえている。
理由はわからないけど、どうも体が異常を起こしていることだけはよく分かっていた。
だから、私はもうその夢の内容が何かだなんて考えない。
多分これから一生。
ごみ一つ無い床にへたり込んだ。
もう、疲れた。
その時、足に付いた血が床を汚した事に気が付いた。
どきりとして思わず血が付いたところに手を伸ばすと、ドアが開いた。
「え……?」
振り返ると、男の人が立っていた。
黒い髪に、黒い瞳。
切れ長の目がすっと細められた。
心臓が早鐘を打った。
世界が今、変わった瞬間。
私の手は血に付いてしまった。
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