ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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私は壊れ、家族は死んじゃった
日時: 2011/11/05 23:51
名前: 綾乃 ◆eRcsbwzWZk (ID: /iUvxDbR)

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私は悪くない。私は悪くなんかないんだっ!
もう、限界だった。未来も過去も全て崩壊限界寸前だった。

だから、私は…
嗚呼、神様は許してくれるはず。

ううん、絶対に許すはずに決まってる。
私は悪くない。私は悪い事をしていないんだから。

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登場人物

田中 鈴(たなか すず)
黒髪のロングヘアと二重の目が特徴の色白な子。
極度の被害妄想を持ち、狂気性を秘めている。

田中 雪(たなか ゆき)
心優しく大人しい、黒髪のショートヘアが特徴の子。
鈴の妹で生まれつき、酷く体が弱い、病弱体質。

奥村 廉(おくむら れん)
田中姉妹と幼馴染で友達の間柄を持つ。
運動神経が抜群だが、何故か女子にモテない。

山崎 美玖(やまざき みく)
鈴と同級生。噂好きだが、気弱な一面も。
鈴とは良く遊ぶ間柄。

村井 大地(むらい だいち)
廉と親友の間柄。雪に片思いを抱いてる。
鈴の狂気性を見抜いている節がある。

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Re: 私は壊れ、家族は死んじゃった ( No.4 )
日時: 2011/11/08 17:14
名前: 綾乃 ◆eRcsbwzWZk (ID: /iUvxDbR)

  #04


晩御飯をどうしようかな、と当てもないまま町をさ迷い歩いている私。何だか無性に悲しくなった。友達が出来ないのも、いつも雪の所為だ。雪が病弱な上、両親が多忙で看病が私に任され、友達と遊べる機会も少なくなって、気付くと一人だった。
私もたまには思いっきり遊びたい。だけど、雪が良い機会に邪魔する。何なの、あいつ。何でこうも私の存在を消すような真似をするのかな。ああ、イライラしてくる。ムカつく。やり場のない怒りを何処かの家でのんきにドックフードを食べてる可愛い白犬に石を蹴って当ててやる。
すると、怒って吼えてきた。懸命に吼えて馬鹿みたい。何の騒ぎかと、家の人が来る声が聞こえ、慌てて電柱に隠れた。何処の誰かが吼える愛犬の原因が分からずじまいで困り果てていた。
良い気味だ。ざまーみろ。
また、ふらふらとその場を去った。
しばらく歩いてお腹が鳴った。町中だったけど人混みで様々な音が混じり合っててどれが何の音だが、さっぱり。赤信号の信号待ち。イライラするな。早く早く何処かで何か食べたい。向こう側のコンビニで弁当でも食べようか、隣のマックで済ませようかな。
お腹が鳴る。
でも、人の耳に届かないはず、だ。ああ、お腹すいた。やり場のない怒りが込み上げて如何しようもない程、悲しくなって苛立ちが募ってて、町をさ迷い続ける私。病弱な妹に当たる自分。哀れすぎる。悲しいよ。
携帯が鳴った。鞄から取り出し画面を見ると相手はお母さん。ボタンを押して出る。

「もしもし?」

心配げな声が届いた。

「鈴。何処へ遊びに行ってたの?早く帰ってきなさい。ご飯はちゃんと食べてくるのよ、分かったわね。今から、雪を病院へ連れて行くから、留守番をよろしくね。お父さんは、残業で遅くなるそうよ。早く帰ってくるわ」


また雪が発病したんだ。
雪は喘息の持病があって、具合が悪くなるとすぐさま掛かりつけの病院へ行くのだ。まあ、小さな病院で個人でやっているんですか、と言われるくらいの規模が小さい病院(でも、腕前は凄くて私の持病だった片頭痛もそこへ相談したら治ったくらい)だ。
そうか、またか。電話が切れたコールが頭に響いてくる。雪がまた喘息で倒れ、一人で留守番をしなきゃいけない。帰る気が、どっと失せた。当てもないけど町中を歩いたほうがマシ。足が勝手に動いた。帰路への道からどんどんと遠ざかっていく。
帰らなきゃ。
帰っても、意味ないのに。
帰らなきゃ。
また独りぼっちなのに。
帰らなきゃ。
寂しい思いをするだけなのに。
帰らなきゃ。
親の良い子を演じる羽目になるのに。
———このまま、家出しまおうかな。
そうしたら、きっと凄く寂しくて悲しいけど、少し気が楽になるのかな。町中の無駄に明るいネオンが目を焼きつける。ああ、眩しすぎて、私の居る居場所がない。初めからある訳ないのに勝手に絶望して。
自分が馬鹿で仕方ない。
疲れた。
何処かへ消えてしまいたい。もう、良い子を演じるのは、嫌だ。



思考が取り戻せた。晩御飯は適当に食べたけど覚えてない。部屋のベットで寝転がった際やっと思考が戻ったのだ。髪が濡れていて風呂でも入ったんだろう。ひんやりしてて、部屋の空気と同じ。暖房を入れないと寒くなってきている。リモコンを探す気力もない。
ああ、疲れた。喘息の薬を飲んでしまおうか。息苦しくなって、息が詰まって死んでしまいたいな。何の為に生まれ生きて勉強し大人の綺麗事を聞き続けなくちゃいけないの。疲れた、疲れた。大人の勝手な思いで疲れる思いは嫌だ。
お父さん。あなたは残業で疲れてても雪の事を気にかける。私は無いんだね。お母さん。あなたも雪の事しか見ていない。私の存在感は無視ですか。あなた達、私が〝良い子〟だと思わないで。あなた達が希望する〝親の言う事をちゃんと聞く子〟だと思わないで。
私は絶対、いつか仕返ししてやるんだ。
今までの恨みを込めて。



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Re: 私は壊れ、家族は死んじゃった ( No.6 )
日時: 2011/11/08 17:49
名前: とろわ ◆DEbEYLffgo (ID: 4yuxSnKU)

どうも、初めまして。とろわという者です。

普段シリアス・ダークには来ないのですが、たまたま開いた時にタイトルでつられ、見事にハマりました。
こういうの好きなんです…!表現も素敵だし、なにより鈴ちゃんが狂気可愛いw
是非友達になってあげたいです…なんだか過去の自分見てるみたいで切なくなります。


すみません、よく分からない文章で。日本語が…orz
また来させていただきます、乱文失礼しました。

Re: 私は壊れ、家族は死んじゃった ( No.7 )
日時: 2011/11/08 18:32
名前: 綾乃 ◆eRcsbwzWZk (ID: /iUvxDbR)

    とろわ様

コメント、ありがとうございます。ハマるとは嬉しい限りです。
更新が遅くなるかも知れませんが、どうぞよろしく。
たしかに、鈴を見ていると書いている、こっちも切なくなります。
それでは、失礼します。

Re: 私は壊れ、家族は死んじゃった ( No.8 )
日時: 2011/11/09 18:33
名前: 綾乃 ◆eRcsbwzWZk (ID: /iUvxDbR)

  #05


嫌な事があった昨日だけど今日は文化祭。今年は事情で合唱コンクールを行われない。なので皆のんびりした雰囲気でお化け屋敷とかミュージックコンサートを楽しんでいた。私は一人で見回るつもり。雪は学校に来れない時が多い癖、友達は一杯持っている。それで皆で回るらしい。
嫌だ、狡い。妬みで苛立ちが募る。ああ、こんな自分が嫌になる。友達が作れないのは結局どれもこれも自分の所為だ。どうすれば皆と仲良くなれるのかな。私より病気で時間が少ない妹はとっくに取得していた。悔しいな。雪に負け続けで慣れてきている。慣れるのを覚えてしまう。それだと、どんどんと負け続けちゃう。
一人で図書館の片隅、大人しく椅子に座って本を読んでいる。他の皆は中心で喋ったり、トランプしていて楽しそう。辺りを見回していたら、奥村と村井の姿が映る。大勢の仲間と遊んでそうなイメージが崩れる。

「あいつ等も此処に来る事があるんだ」

まだ高校一年だけど、初めての文化祭だけど、今まで図書館に居た姿は入学したての頃、説明する為にクラスで聞いていた時ぐらいだったけ。まあ、自分に関係ないから良いか。視線を本に戻した。安藤絵里の小説シリーズがこれで最後だったりする。読み終わったら、文学でも見てみようかな。
何にしよう。坊っちゃん、人間失格、、伊豆の踊子、それとも吾輩は猫である。色んな本が此処にある。全て読破しているものばかり。好い加減、飽きてきた。本を読破するまで孤独だったのか、自分は。座り心地の良い椅子でさえ、腹が立った。
また、イライラしてる。
イライラしてても、意味がないのに。悲しいね、自分。
パタンと本を閉じる。その音に釣られたように奥村が声をかけたのは、同時だった。

「田中!」

かけられた方を仰いだ。あのころと変わらない笑顔で顔を覗き込んでいる。傍らに村井が付き添って。良いな。良いな。私も友達が欲しいな。欲しい。欲しい。欲しい。何で奥村は手に入れれるの、雪は手に入ったの。憎たらしい、憎たらしい、憎たらしい。

「………田中?」
「あ、…なに」
「なに、じゃねぇ。お前、中学ん時は友達と一緒に連れ回ってた癖に、今はこんなとこで本を読んでるのかよ」
「別に良いでしょ」

そっぽを向いてやった。横から微かに苦笑いした声が聞こえた。

「お前の妹を見習えっての」

そう続けると、制服のボタンについた埃を払う。
他にないか、と目を泳がせて。

「うるさいな、それより何で此処にいるの?」
「ここの文化祭、しょぼすぎ。すっごいつまんねぇ」

顔を顰めて、呆れたようにも退屈しきった顔を見せた。友達と一緒に居れば退屈はしないだろう。話題のネタ探しにも冷やかしにも使えるんじゃない。一度だけ友達を作れた経験で、知っている。
でも、奥村がさっぱりした顔で言ったのだから、言い返せなくなる。私が友達がかつて居たという過去を知っている彼をむやみに侮れないし。村井も教室で静かに浮いてる存在の私の過去を聞き、僅かに驚いてたし。
そんなもんでしょ。自分の存在感なんか。

「んじゃ、俺らはまた何処か回ってくる」

くるり、と村井の方を振り向いて。

「なんか、歌上手い奴、いないかな」
「さあ、お前が歌えば」

鋭い切れ長の目をしている村井の低い声。髪も艶があって綺麗。容姿もそこそこ良いし、密かな人気もある男子。奥村も以下にも明るい容姿で目も垂れ目気味、運動神経抜群で大の虫嫌いで苦手。女子の人気は皆無な、ある意味お似合いコンビ。
図書館の入り口を出て彼等の姿が見えなくなっても、じっと見続けた。私もあんな友達が欲しい。でも、全部あいつが、雪の所為で作れない。あんな奴。本当、早く死ねば良いんだ。何も知らず姉を慕う雪の姿を見て、イライラしてくる。本を持つ手が、震えている。



「なあ、廉」
「何だよ、大地」

女子トイレを通り過ぎる直前、村井が立ち止まる。女子トイレ入り口、付近で止まるなよ、と小言を言いつつ、奥村が村井の横顔を見る。何時になく真剣そのものだった。奥村も表情を一変させる。村井が先を続けた。

「田中鈴の事だけどさ、なんかあいつ……怖くない、か」

私の事だ。個室のドアに隠れて盗み聞きする。

「はあ、お前、なにを言っちゃってんの?田中が怖い。怖くなんかねぇよ。あいつ、ただ大人しくなっただけだっつの。あのころはさ、可愛かったのになあ。ほんと、如何したんだろ」

奥村の可愛い、の言葉が何度も頭の中にリピートする。今まで一度も言われなかった言葉。まして男子に言われる日が来ただなんて、嬉しさより、ぞっとする感覚。自分は、普通とかけ離れているんだ。そう思い知らされた。彼等の言葉が、聞こえなくなっていた。
個室の中で佇んだまま。


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Re: 私は壊れ、家族は死んじゃった ( No.9 )
日時: 2011/11/12 14:16
名前: 綾乃 ◆eRcsbwzWZk (ID: 4CQlOYn7)

  #06


もう数時間が過ぎたころ。限界だ。好い加減に、目を覚まして欲しい。ああ、早く早く。酷いなあ。そんなに私が、嫌いだったという意味ね。酷い酷い酷い酷い、悲しい悲しい悲しい悲しい、苦しい苦しい苦しい。寂しい寂しい寂しい寂しい。



夜。久しぶりに息抜きできた雪が楽しそうに食卓で文化祭を話してる。お母さん達は嬉しそうに頷きながら、味噌汁を啜る。中の具は、じゃがいもと玉ねぎの細切り。私の大好きな具材だ。
それで雪の事を恨めしく思わなくて済むし。白い炊きたてのご飯を一口、頬張る。暖かいご飯の上に、麻婆豆腐の辛さが広がる。美味しい。でも、ひとつだけ悔しい。何故なら私にも聞いてこない。去年とかは、ちゃんと私まで聞いてきたのに。何で雪しか会話しないんだよ。狡い、狡い、狡い、憎い、憎い、憎い。

「お姉ちゃん……?」

私を見ながら、雪が訊ねた。
答える気がしなくて、ただ黙っていたら。

「鈴、あなたね。ちゃんと雪が聞いているのに答えなさいよ」


—— 何かが、中で崩れ落ちる感じが、した。

箸立ての中で入っているフォークとナイフの二つ。迷わずナイフを取った。突然の奇行で固まる三人。お母さんの目が、まるまると見開いて、お味噌汁の入った茶碗が、床へ零れ落ちる。中身が、飛び散った。
お父さんもご飯の入った茶碗を落とすまいとしっかり、持っているけど驚きを隠せないようだ。雪も、烏龍茶の入ったコップを持った手が震えてる。じろり、と三人を睨んで。

「………っ、死んでしまえ!」

最初は、お母さん目がけて、ナイフを振り下ろした。



好い加減に目を覚まして欲しい。何で三人仲良く何時まで寝ているの。私は仲間はずれ。また独りきりだ。永遠とね。酷い酷い酷い、悲しい。もう、うんざりだ。寝たままのお母さん達を庭の倉庫へ運ぶ。大の大人をまだ高校生で、しかも女子の私が運ぶのは一苦労どころじゃない。
雪が病弱だった所為で体が軽くて、容易に運べた。あんまり中身の少ない倉庫で眠った三人を放り投げる。全く動かなかった。どれだけ寝ていれば気が済むんだろう。そのうち、気付くかも。鍵を掛けて閉めた。

「お母さん、お父さん、雪。悪戯だよ!」

くすくす、と笑いながら、中へ戻った。





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