ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- Nice to meet you,and Good bye.
- 日時: 2011/11/29 18:45
- 名前: 伊莉寿 (ID: r4kEfg7B)
こちらでは初めまして、伊莉寿という者です。主に二次で活動しています。
私が以前書いた物をリメイク(ほぼ同じかも知れませんが)して投稿しようと思い、このスレッドを立てました。
感想等、下さると嬉しいです。
*注意*
・短い。
・駄文で急展開。
・誤字、脱字には注意していますが、あるかもしれません。
・荒らし等はお戻りください。マナーを守りましょう。
以上の事を許せる、守れる方はお進みください。
+character+
名前:冬堂 有紀 (トウドウ ユウキ)
職業:中2男子
サッカー部キャプテン。思いやりがあり、鈍感。僅かながら霊感がある。
名前:水守 瞬 (ミズモリ シュン)
職業:中2男子
元・陸上部エース。有紀の幼馴染で影響を受け、2年になってからサッカー部に入る。
名前:姫雷 風花 (キライ フウカ)
職業:中2女子
陸上部女子のエース。驚異的な足の速さを誇る。有紀と瞬の幼い頃の友達で、家が中華料理店。味覚が変だった。
名前:東 冴香 (アズマ サエカ)
職業:保健室の先生
冬堂達が通う中学校の保健室の先生。6年前から務めている。
サッカー部マネージャーS
・天野 莉子(1年) ・花園 晴香(2年)
主にこのメンバーで進みます。
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- Re: Nice to meet you,and Good bye. ( No.3 )
- 日時: 2011/11/29 17:53
- 名前: 伊莉寿 (ID: r4kEfg7B)
第2話
保健室に寝せたは良いものの、そこから先は風花の目が覚めるのを待つしかなかった。急に屋上で倒れた風花だけど、何も倒れる要素なんて無かった気がする。…だからこそ、余計に心配だった。
冬堂と俺と風花、3人で平和に食べた弁当は懐かしい味。梨を分けてくれたのも保育園に通っていた時みたいで、変わらないんだな、って少し嬉しかった。あの頃の風花もいるんだ、って…。
「…ん、しゅ…ん君……」
「風花?!」
かすれた声が聞こえて顔を覗き込むと、ゆっくり目を開ける風花がいた。良かった、と心で言ったつもりだったのに気付けば声に出ていた。すごく安心している自分がいた。
彼女は何度か驚いた様にまばたきを繰り返してから、状況をある程度理解したらしい、大丈夫だよ、と俺が握りしめる手に少し力を入れた。……あー、軽く涙出て来た。その時、保健の先生が戻ってきた。風花が目を覚ましたのを見て心底安心している。
「……良かった、戻って来てくれて…」
「先生、大袈裟ですよ^^;」
「本当に…」
涙をふく先生は、まるで風花が戻って来ないと思っていたかのように感動していた。何でそこまで…。
そして俺は知る由もなかった。この時は。
「『…ごめんネ、センセ』…」
まさか、風花が先生を見てこう言っていたなんて・・・・・・
*
「風花、良かったな!!!」
「心配掛けてごめんね、もう大丈夫だから!」
冬堂に向かってVサインを繰り出す風花に、クラスの生徒は一安心した。6時間目に入る前の休憩時間に、彼女はクラスに戻った。とりあえず放課後病院に行く予定だが、恐らく問題は無いだろう。そう想わせるほど、すっかり回復していた。水守は次の英語に備えて教科書類を出していたが「瞬君、」と呼びかける声に顔を上げる。
「あの、放課後家まで送ってくれない?先生に誰か付き添いと一緒に行けって言われたから、お願いしたいな、って…///」
女子数人が周りで応援している様に水守は見えたが、とりあえず即答だった。「良いよ」と返すと女子軍から歓声が上がる。
(「キャー」ってやめてくれないか???!!)
「ごめんね、ペース速くするから…」
「え、ああ大丈夫ダッシュで部活出るから!」
女子の歓声に冷え切ったのか、すっかりいつも通りの表情で風花は言った。周囲の女子に何か言われそうな所で先生が入ってきた。出席簿で頭を叩かれた事のある女子は急いで席に戻る。姫雷は授業出て大丈夫か、という先生の声に、元気な返事を返す風花がいた。
「『…まだ学校に居たんだ。』」
「?」
「あっ、何でも無いよ^^;」
通路を挟んで隣の席だからか、水守に呟きが聞こえる事は極稀にある。ただ、声がどこか冷めきっている今のテンションで呟きが聞こえたのは初めてだった。何でも無い、とジェスチャーも交えて言う彼女が…焦って見えたのは、水守だけだろうか。
(……。)
何かあったのは、確か。
何でも無いと言うのが嘘なのも、確か。
*
他愛もない会話。でも弾んだ会話だったから、雷風堂まであっという間だった。風花がペコリ、と頭を下げてありがとう、と礼を言った。そこまでされる程の事じゃないと思う水守は、何だか照れくさくなって慌てて背を向ける。走って部活に行かないと、と無理矢理口実を作ってその場を立ち去りたかった。…なんだか恥ずかしい。
「あっ、瞬君!」
「!」
忘れてた、と言う感じで風花が店の入り口から叫ぶように呼びとめた。——彼は、一瞬彼女の背後に闇色の蝶を見た気がした。
「あの、えと……部活終わったら、雷風堂寄らない?部活帰りだったらお腹すいてるだろうから、何かサービスす…」
水守が近寄って、ぽん、と彼女の頭に手を乗せる。
「!///」
「今日は遅くなるって監督言ってたから。屋上で倒れた身だぞ?早めに寝た方が良い。」
「!!………うん。」
「また今度な。」
最後の言葉に、彼女は頷かなかった。俯いて頭を撫でられて、大人しくしていた。じゃあな、と立ち去る水守を笑顔で「頑張ってね〜!」と見送る事は出来るのに。でも出来なかった。今度なんて約束、したくなかった。————だから寂しげな笑顔で見送る。
「…ばいばい。」
「…『賭けはあたしの勝ち、ね。』」
———————また、いつか———————
*
「今朝は風花さん来ないですね。」
莉子がきょろきょろ辺りを見渡して言った。晴香が水守に心当たりがある?、と聞いても彼にだって分からない。そもそも来ないのが正しい形なのだが、陸上部の練習が無いのに彼女がいないと言うのは、少し不安になる事だった。
「昨日屋上で倒れたって聞いたけど…」
「でもあの後はすっかりいつも通りだった。」
「俺も水守と同じ意見だ。……でもきっと大丈夫だ!」
晴香が不安そうにすると、冬堂が大丈夫だ、と言って安心させた。多少強引ではあるけど、練習中に気になってしまう部員がいたら怪我してしまうかもしれないし、実際彼自身そう思っていた。強く、強く…。
「練習始めようぜ!」
*
まさか、だった。
「姫雷さんが体調不良のため、本日欠席です。」
「「!!!!」」
先生がそう告げた瞬間、警報が水守の中で鳴り響いた。すぐに彼女の家に向かいたかった。
こんな事になるなら昨日の放課後行ってやればよかった、と後悔も少しした。
「…り!水守!!」
「!え…ああ、冬堂か。」
「次教室移動だぜ。」
こんなにも、考えてしまうのに…。
*
ベッドのシーツを握り締めた。
薄暗い部屋のベッドだった。風花の部屋だ。布団を被って横になる少女は眠れない…。でも眠る気すらないのかもしれない。ただ、学校を休む口実が欲しくてこうしているだけだから。欠席することが目的。そして親がいなくなる事が目的。
なのに、こうしているとどうしても別の事を考えてしまう。例えば…自分の事とか。
「…んで、あたしがっ…あたしが…」
悔し涙を流しても、変わらない事実。それがあっても。
「『……せめて、願いを叶えてあげる。ずっとあなた達は一緒…』」
((こうすると、決めたのだから。))
- Re: Nice to meet you,and Good bye. ( No.4 )
- 日時: 2011/11/29 17:57
- 名前: 伊莉寿 (ID: r4kEfg7B)
第3話
雷雨だった。遠い雷鳴が聞こえ、その度に女子数名が小さく悲鳴を上げる。土砂降りの雨に警報が出され、早めに帰れる事になったは良いものの、帰る事さえ困難に思えた。外の様子を見ようと窓を見ても、暗い表情の水守瞬が映るだけだ。
取りあえず、冬堂に声を掛けて一緒に帰る事にした。そう言えば風花は大丈夫だろうか、今日体調不良で休んでいる彼女の様子が気になる。早めに帰れる訳だし、目と鼻の先にある家だ、ついでに見舞いに行ってみよう…。
「そう言えばサンザシ事件さ、父さんが変な事言うんだよな。」
雨音にギリギリかき消されない位の大きさで、帰る途中に冬堂が言った。冬堂の父さんは時々真面目な顔して霊の話とかするからおもしろい人なんだよな…。それにしてもサンザシ事件、か。犯人として捕らえられた女子中学生は未だに犯行を否定しているらしい。
「あの犯人現行犯で捕まったんだけど、通報した人が言うには何かに取り付かれた様にしてたらしいんだ。だから幽霊が取り付いてたんじゃないかって…」
「お前の父さんらしいな。」
苦笑して答える。確かに取り付いてたなら記憶が無いのも納得…ってそんな訳…。非現実的すぎる。
「じゃあ気を付けて帰れよ。」
「水守もな!」
俺の家の近くの十字路で別れた。冬堂の家はこれからもう少し歩いた所にある。
傘に当たる雨の音が心地良い。…まあ、風が大して無いからあまり制服は濡れないけど、勢いが凄過ぎる。視界が悪くなるほどだ。風花の家の前に来ると、丁度家の扉が開いた。出て来たのは彼女の母親で、相手も目を丸くしている。
「瞬君…」
「どうしたんですか?」
母親は出かける所だった。どうやら先日キャンプへ行った時に果物ナイフを忘れたらしく見つからなかったため、買いに行く所らしい。そのナイフは俺も知っている。西洋の面白い柄だった。
「風花の見舞いに来たんですけど、会えますか?」
母親は顔を伏せて戸惑っている。都合が悪いのだろうか…?
「ごめんなさい、風花、何か学校に行きたくないって…」
「え……」
「友達に会いたくないみたいなの、だからお見舞いも全部断って、って…」
そうですか、と力の無い声が出た。それは…ショックすぎた。何で学校に行きたくないって…。俺が見ている限りいじめられている訳でも無いし、勉強で悩んでいる様子もない。突然の不登校の理由が分からなかった。
仕方なく自分の家に帰った。扉を閉めて溜め息を吐く。
「何で…風花が。」
答えがほしい訳でも無い、ただ自分の中で渦巻く感情が分からなくて、彼女が学校へ行きたがらない理由も分からなくて…。
自問自答を、ただ繰り返していた。
*
翌日、登校して1時限目が始まる前に保健室を尋ねた。せめて来ていないか、と思っての事だった。この日は雨が上がっていて、雨上がりの匂いが漂っている。
保健室に入ると先生しかいなかった。20代後半の女の先生、一昨日大袈裟に風花が目を覚ました事を喜んでいた先生だ。風花来ていませんか、と言うと来てないけど、と答が返って来る。
「何か学校来たくないって…」
「そうなの。……私みたい。」
思わず驚いた表情をすると、数年前の話、と両手を振って否定する。生徒と問題でもあったのだろうかと想像していたが、次に聞こえた言葉は予想外の言葉だった。——思わず耳を疑う。
「……私、人を……生徒を殺しちゃったの。」
*to be continued...*
- Re: Nice to meet you,and Good bye. ( No.5 )
- 日時: 2011/11/29 18:03
- 名前: 伊莉寿 (ID: r4kEfg7B)
第4話
人を、殺した。
水守はその言葉に凍りつく。そんな彼が言葉を発するのを待つかのように、保健室の先生——冴香は顔を覗き込んだ。徐々に頭の中が落ち着いてくると風丸は彼女の言葉を否定する。こんなにあっさり殺人を明かす訳が無いし、そもそもこんな所で勤め続けられる訳が無い。
勘違いか思い込みだ。
「私がこの学校に来た最初の年…学校のリーダー的存在な男子生徒がいたの。当然クラスでも人気者で、隅っこに居る様な子にとっては憧れでもあったし別世界の人間でもあった。」
突然語りだす彼女に驚いて、水守は顔を上げた。
「隅っこに居る様な女の子の1人が、その子と話したいけど緊張して話せないって良く相談に来てたの。アドバイスしてそれを実行していたら彼の視界に入れた、クラスの運営のために、って時だけだったけど話しかけてももらえた。でも返事をしようとしても、自分から話しかけようとしても言葉が出て来ないし時々自分を無視されてるようにも感じて話し掛けられなかった。」
片思いの女の子。
「2学期最後の日…私はもう精神的な問題だって思って神社に行ってお祈りでもして来なさい、って言った。大丈夫、って思ってればきっと話しかけられるよ、って。……それが、いけなかった…あんな風に言わなければ…」
「・・・え?」
「3学期の初めの日、その女の子が神社で事故死したの…前日の大雨でぬかるんでた土の上に彼女が乗る事で土が崩れ…て、それで落ちて…」
1人で行ったの、と涙声になりながら冴香は言う。朝早くに1人で神社に、と。風丸の中に少女が崖から落ちる様子が映像で作りだされた。大好きな人と話したくて、なのに死んでしまった少女。
「……」
自然と無言の空間が生まれた。あまりにも衝撃的な話に水守は何も言えなかった。しかし沈黙は1分後、冴香によって破られる。
「雷影神社…」
「え、」
「その子が行った神社…雷影神社、って言うの。」
知ってる、と水守が呟く。自分が毎年初詣に風花の家と行っている神社だ。幼い頃は冬堂と風花と3人で行っていた。
(…あれ、確かあの神社…)
神社の風景が蘇った。何かが引っ掛かる。
それは放置されていた記憶の中の、ほんの一部。必死に思い出そうとして、額に左手を当てた。
「ずっと、想って来た子と話したかったはずなのに、私の…私の、せいで……今でも、あの子の声が蘇るの。」
『センセ、今日…君が話し掛けてくれたのっ!』
『…君が私の名前覚えてくれたよ!』
涙が溢れて、とうとう冴香は泣き崩れた。学校に行きたくなるのも当然な事情だった。女の子が毎日の様に相談に来ていた保健室に入りたくなくなるのは、当たり前だろう。
「…雷影神社。」
『何かに取り付かれた様にしてたらしいんだ。だから幽霊が取り付いてたんじゃないかって…』
「…まさ、か…」
『ずっと、想って来た子と話したかったはずなのに、』
怖くなる考えだった、ただその考えを否定できない。
冴香が不思議そうに水守の顔を見つめる。唇をかみしめて、彼は保健室を出て行った。先生が彼を呼ぶ声が聞こえて、それでも止まらなかった。ただ、昇降口の所で聞き慣れた声が、立ち止らせた。
「水守っ!1時間目、もう始まるぞ?!」
「冬堂…」
理科の教科書とノートを抱えて居る冬堂だった。きちんと水守の分も持っている。1時間目は1階の理科室で実験だった。
「みずも…」
「ごめん、俺ちょっと帰る。」
「え?!」
「直ぐ戻って来るから!」
———それはとっさに口から出たコトバ。
「みっ、水守!!」
止めないと、ってとっさに思った。そうしないと…水守が手の届かない遠くに行ってしまいそうで。何でかは、冬堂にも分からなかった。理由の無い直感で何やら事情がありそうな彼を止める事も出来ず、ただ昇降口から遠ざかる親友の後ろ姿を見る事しかできなかった。もう一度、親友の名前を呼ぶ。かすれた声で、小さくて、もう見えない場所へ行った彼には届かない。
ほら、もう届かなくなってしまった。
「……直ぐ、戻ってこいよ…?」
冬堂は、水守の理科ノートを強く握りしめた。
*Next story is final.*
- Re: Nice to meet you,and Good bye. ( No.6 )
- 日時: 2011/11/29 18:10
- 名前: 伊莉寿 (ID: r4kEfg7B)
全ては、彼女の手のひらで踊っていただけだった…??
——全ては冷徹なる
「やっと、来てくれたんだ。」
「[血塗られた慈悲]なんて、素敵でしょ?」
——最後の約束は…?
「きっと、直ぐに戻って来ます。」
「ハジメマシテ、そして………・・・サヨウナラ。」
「どうして、気付いてくれなかったの…?」
赤い実の纏う謎、風花の行方、事件の真犯人、そして———…。
冷たい笑顔は、全てを欺く。
冷たい声は、全てをトメル。
彼女が作るのは、幸せか、はたまた地獄への道か。
助かる道は、既に通り過ぎた。
*では、最終話をどうぞ*
「あら、水守君は?」
理科が始まろうとしていた。授業開始の号令の前に行う生徒の確認で、教師は水守がいない事に気付く。彼女は冬堂に説明を求める様な視線を向けた。2人仲が良い事は全校生徒と全教師が知っている。
「…帰りました。」
全「!!???」
帰った?、と教師が呟く。通常では有り得ない選択肢、それは勿論冬堂にも分かっていた。
「直ぐに、戻って来るって…水守は言ってました。」
仲間なのに。
自分は、その仲間を信じられていない。
「きっと、直ぐに戻って来ます。」
上辺だけでも信じていよう。笑顔で言えたら、きっと少しは嫌な考えが消えてくれる……——。
*
走った、ただ1つの疑惑を解決するためだけに。
風花のことが解決する訳ではなく、その為の1つのステップとして。サンザシ事件のことを理解するステップとして。
「はぁっ、はぁっ…!」
辿り着いたのは、雷影神社。鳥居を見て安堵したのか、急にわき腹に痛みが襲った。さすがに元陸部でも辛い距離だ。
切れた息を整えながら、ゆっくりと痛みを落ち着けるように鳥居をくぐる。その先に、小さいながらもさい銭を入れる所があって、そしてその隣に……。
「…サンザシ…」
正確にはヒマラヤトキワサンザシと言うのだと、神社の掃除をしている人から聞いた。水守は木に近寄って幹に右手を当てた。そうだ、この木の少し奥で転落事故があったのだ、と思い出す。恐らく先生が言っていた女子中学生だろう。
「…サンザシと事故は繋がっていたのか…?……、!」
気配を感じて振り向く。それは鳥居の辺りから感じた。
「!!!!」
目を見開いた。それは、感じた恐怖に近い気配からは想像できない人物。———彼ととても仲が良い人物。
「ふう、か…?」
「やっと、来てくれたんだ。」
冷たい、背筋が凍るような声だった。にこ、と姫雷風花は笑う。水守が、一度も見たことの無い笑顔。何処か、違う。
「・・・お前、事故死した女子中学生だな?」
少し驚いた様に目を丸くして、それから彼女はふふ、と笑った。勇気を振り絞って声が震えない様にして言った言葉に対する返事…彼は更に恐怖を覚える。
まるで、大した事を聞いていないかのように笑う彼女は。
「1つ、聞いて良い?」
一歩一歩、近付きながら彼女は言う。
「どうして、気付いてくれなかったの…?」
「!!」
「ねえ、何で?」
彼女の頬を涙が伝う。風花、と呟かずにはいられなかった。
あの声、あの表情…全てが記憶の中の風花と一致する。水守は全て理解した。彼女の身に何が起きたのかを。例えその考えが普段信じない様な非科学的な事だとしても、それが正しいのだと。そして、自分は彼女を救うチャンスを与えられながらも、それを逃したと言う事も。
「ふ、」
「もう、遅いよ?大丈夫、貴方達はずっと一緒だから…」
泣いている表情に似合わない冷たい声。ふと、彼女が左手に持っていた何かを投げた。ころころ、と転がるそれを風丸が良く見てみると、赤い木の実だった。———サンザシの実。
「っ!!!」
サンザシの実は、崖の下に落ちた。彼女は言う。そこが貴方の死に場所だよ、と。——水守は命の危機を感じた。
「最後に教えてあげる。サンザシの花言葉は[慈悲]。でも私が見た感じで言うと、慈悲なんてヒトカケラも無いの。だから血に染めてあげた——、[血塗られた慈悲]なんて、素敵でしょ?」
水守は目を見開く。そうだ、やはり彼女が…、あの女子中学生が。
と、彼女の右手で何かが光る。目を凝らして見ると、見慣れた柄の果物ナイフ。風花の家で無くなったと言っていた物だ。にこ、とまた彼女が微笑む。涙が光った。
「あ、挨拶忘れてたね。」
ごめん、と心の中で呟く。俺、風花を救えなかった。気持ちに気付いてやれなかった。
彼女が消えた、いや速過ぎてそう見えただけだ。風花はスタートダッシュが何時も速かったな、と心の中で思う。もう抵抗する気なんてなくなっていた。
直ぐに自分の顔の下に彼女の顔が見えた。
彼が知ったのは、体が急に重くなって、何かで殴られたような衝撃、落ちていく感覚。
彼が見たのは、ぼけた絵の中の、慈悲の無いサンザシ。
そして最後に聞いた、全てのピリオド——冷たい声の言葉は。
「ハジメマシテ、そして………・・・サヨウナラ。」
*Nice to meeto you,and Good bye.*
- Re: Nice to meet you,and Good bye. ( No.7 )
- 日時: 2011/11/30 15:59
- 名前: 伊莉寿 (ID: r4kEfg7B)
*。エピローグ。*
一体、何人あの世へ送れば、気がすむのかな。
早く楽になりたいって心の中で想っても、心のずっと奥では、まだあの人に会いたいと願ってる自分がいるのかもしれない。
…ううん、いるんだ。
そんな想いに負けて。
「やっ…めてよっ…!!!」
『どうして?あの男の子と、ずっと一緒に居たいんじゃないの?』
「でもっ!」
私は、また片思いの女の子を、操るんだ。
「そこが、貴方の死に場所よ。」
右手にナイフを、左手に赤い赤いサンザシの実を、携えて。
「ハジメマシテ、サヨウナラ…」
ダレカ、ワタシヲトメテクダサイ。
*fin.*
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