ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- 願い 〜叶える物と壊す者〜
- 日時: 2012/01/09 13:53
- 名前: コーダ ◆ZLWwICzw7g (ID: ZdG3mpMH)
どうも〜!おそらく初めましての方が多いと思います。私コーダと申します。
先に言っておきますが、この小説はかなり異端ですのでご注意を……
それでは摩訶不思議な世界へ……
・読者様
風猫さん
ハーレム事件簿:>>2 >>3 >>4 >>5 >>6 >>7 >>8
豊作事件簿 :>>9 >>12 >>13
- Re: 願い 〜叶える物と壊す者〜 ( No.1 )
- 日時: 2011/12/22 03:23
- 名前: コーダ ◆ZLWwICzw7g (ID: 2zVo1PMY)
予備知識
住民たち……
この世界には4種族の人が生活している。
頭の上に、2つのふさふさした耳と1本の尻尾が生えており、狼みたいな人——————ウルード族
自然と同等の存在を持ち、その姿は妖精を連想させるくらい小さな人——————シルティー族
悪魔のような黒い羽と黒い尻尾が生えていて、口から見える牙は吸血鬼を連想させる——————ドラーペシュ族
神々しい白い羽と頭の上に輝くわっか浮かせる人。その姿は正しく天使——————ラージエル族
クリスタル……
この世界には至る所にクリスタルが眠っている。そのクリスタルにはさまざまな効果がある。
だが、基本的にクリスタルは何かが起こらないと効果は発動しない。
その何かは思いである。思いを感じ取り、クリスタルは思いを願いに変えると言われる。
願いをかなえたクリスタル。つまりそれがクリスタルの効果である。
- Re: 願い 〜叶える物と壊す者〜 ( No.2 )
- 日時: 2011/12/22 04:25
- 名前: コーダ ◆ZLWwICzw7g (ID: 2zVo1PMY)
ある日の夜。男女のカップルの姿があった。
2人の背中には大きくて神々しい翼と頭の上には輝くわっかがある。
一目見て、ラージエルのカップルだと言う事が分かった。
中心に大きな噴水が置いてある公園。近くには白いベンチも置いており、座って噴水を見るのも1つの楽しみ方。
周りに立っている街灯は優しい光を輝かせており、公園を明るくさせている。
この公園はデートスポットとして有名で、毎日カップルが訪れる場所。
今日はラージエルの男女。2人はお互いの手を握り合いとても良い雰囲気だった。
——————その様子を恨めしそうに見つめる者。
公園の茂みに隠れて、毎日カップルの姿を見つめて嫉妬するラージエルの男だった。
金髪の髪の毛は腰にかかるくらい長く、前髪は目にかかっている。髪の毛と同じ色の瞳をしていたが、それは右目だけで、左目は眼帯で隠れていた。
白いトレンチコートを着用しており、その姿はどこか紳士らしかった。
背中には白くて神々しい翼が生えていたが、頭の上にわっかはなかった。
カップルが喋るたびに、男は右目を見開き嫉妬の瞳で睨む。
羨ましい。そんな思いが全身から伝わってくる。
しかし、その行為を何度もやっているうちに、男は疲れて後ろに生えている木に背を預けてしまう。
実はこの男、ラージエルなのに頭の上にわっかがないという理由で、女性から全く興味を持たれなかったのだ。
容姿や顔つきは普通に良い。だが、生まれた時に障がいとしてわっかがなかった——————
それだけの理由で、相手が見つからない。
あまりの理不尽さに、男は思わず口を開き、
「モテたいな……」
叶うはずのないことを呟く。
そして、男はゆっくりと目を閉じる——————
〜ハーレム事件簿〜
朝の洋館。中に住んでいる人はまだ寝ているのかとても静かであった。
窓と思われる場所には紅いカーテンがかけられており、朝の日差しが入らず薄暗い。
そんな洋館の中で誰かの足音が聴こえてきた。
足音のリズムはやや早く、どこか焦っているように感じ取れる。
「あぁ……もう……」
廊下を歩いていたのは、1人の女性だった。
紅い髪は二の腕までの長さまであり、前髪は目にけっこうかかっていて、瞳はルビーを連想させる紅色。
紅いドレスを着用しており、どこかのお嬢様を連想させる格好。
頭には紅いリボンが2つあり、可愛らしいところもあるのが伺える。
首にはコウモリをモチーフにしたアクセサリーをつけていて、腰には東洋の魂である刀があった。大きさ的に、打刀だ。
背中の大きな黒い翼と黒い尻尾が生えているところを見ると彼女はドラーペシュ族だというのが見て分かる。
彼女は、右手で額を叩きながらある所へ向かっていた。
そして、とある部屋の扉の前へ来ると、
「フェーン!早く起きなさい!」
勢いよく扉が開く音と高い声が洋館に鳴り響く。
「おや?こちらはもう起きていますが?」
部屋の中には1人の男性が、のんびりイスに座って本を読んでいた。
頭の上にはふさふさした2つの耳と1本の尻尾が生えているところを見ると、彼はウルード族だというのが分かる。
灰色の髪の毛は首くらいまでの長さがおり、前髪は目にけっこうかかっていた。
瞳は青緑色をしていて、目が悪いのかメガネをかけていた。
黒いスーツの上に、科学者みたいな白いコートを着用しており、血の気の多いウルード族にしてはかなり珍しい格好である。
「起きているのでしたら、早く朝食を作ったらどうですこと?」
腕組をしながら、つんとした表情を浮かべる女性。
フェーンと呼ばれた男性は本をテーブルの上に置き、やれやれと言葉を呟く。
「もうそれくらい、自分でやったらどうですか?プリファーナさん」
「わたくしは、朝の紅茶担当ですわ」
プリファーナと呼ばれた女性はにこやかな表情を浮かべ、この場を後にする。
一方、フェーンは右手でメガネを上げながら部屋を出る。
○
洋館のカーテンは全てフェーンの手によって開き、朝日が差し込む状態になる。
先まで薄暗かった内部はとても明るく、気分をよくさせた。
「朝ご飯の用意ができましたよ」
「こちらも紅茶の準備が出来ましたわ」
洋館のキッチンに、先程の男性と女性が居た。
朝ご飯の用意をするのはフェーンで、紅茶の用意をするのはプリファーナ。
お互いの作成した物をテーブルの上に置き、お互い対面するようにイスに座る。
「いただきますわ」
「いただきます」
座った瞬間、2人は朝ご飯に手をつける。
プリファーナは自分の淹れた紅茶を一口飲み、尻尾を震わせていた。
「う〜ん……やっぱり朝は、すっきりとしたニルギリが1番ですわ」
実は彼女が紅茶を入れる担当になっているのは、趣味で茶葉を栽培しているからである。
プリファーナは根っからの紅茶マニアで、1つ1つの味も理解している。
だから、このように朝はすっきりとしたニルギリをチョイスした。
「朝は必ずニルギリですよね?プリファーナさん」
一方、フェーンは自分がオーブンで焼いたトーストをベーコンと一緒に食べていた。
紅茶の知識はないが、こういった家事は全てフェーンが担当する。
「朝はニルギリしかありえないですわ。それ以外を飲む輩は表へ出ろですわ」
「……この前は茶葉を間違って刺激の強いウヴァを飲まされましたね」
この一言に、プリファーナは黙ってトーストを食べ始める。
その様子が面白かったのか、フェーンは薄く笑う。
「所で、今日は町へお出かけをする日でしたわよね?」
「あれ……そうでしたか……?」
フェーンはスーツの裏ポケットから手帳を取り出し、今日のスケジュールを確認する。
「おや、バッチリ書いていますね」
手帳を閉じ、また薄く笑う。
プリファーナはむっとした表情を浮かべ、紅茶を飲む。
- Re: 願い 〜叶える物と壊す者〜 ( No.3 )
- 日時: 2011/12/22 14:55
- 名前: コーダ ◆ZLWwICzw7g (ID: PAeJS2fQ)
白を基調とした建物が隙間なく並び、中央には大きな凱旋門が人々を見渡していた。
ここはゲートビジーという町で、商業活動が活発な町だ。
商品を運ぶために、蒸気機関車が忙しなく動いている。ついでに、人を乗せる交通手段でもある。
まさに、人とお金を動かす町。ここに訪れる人は、大抵買い物という目的である。
「ここはいつ来ても賑やかですわね」
町の一角で、嬉しそうな表情を浮かべる女性。プリファーナが居た。
黒い翼を隠すくらい、大きな紅い日傘をさして太陽の光を浴びないように歩く。
ドラーペシュ族はもともとドラキュラが進化した種族なので、日光を浴びると肌荒れを起こしてしまう種族。
特に女性は肌に対する意識が強いので、日傘をさしている者が多い。
町全体を見てみると、日傘をさしているドラーペシュは数えきれないほどいる。
そのためか、人々が歩く道路は日傘を考慮してやや横に広い。
「ところで、この町へ来た目的は……?」
プリファーナの隣を歩くのはフェーン。傍から見ると、主と従者のように見えた。
尻尾を振って、彼女の目的に興味を沸かせる。
「言わなくても分かりますわよね?わたくしがここへ来る目的は、ショッピングしかありえないですわ」
何を言っているんだという表情を浮かべ、プリファーナは黒い尻尾を激しく動かして言葉を飛ばす。
そんな彼女に、フェーンは2つの耳を動かして深い溜息をする。
「どうせ、荷物持ちはこちら……ですよね?」
「当たり前ですわ」
ウルード族は狼の血が流れているため、男女ともに力がある。
だが、力の変わりに知識の方は若干乏しく。1番モラルの低い種族と言われている。
しかし、フェーンは少し稀なウルード族。知識の方は豊富で力が乏しい存在だった。
そんな彼に荷物持ちをさせるプリファーナは、正しく悪魔である。
「フェーンはウルード族ですことよ?それに、レディーの荷物は持つのは紳士たる者、当然の行為ですわ」
「はいはい……」
ずれたメガネを右手で調整して、フェーンは彼女の勢いに辟易(へきえき)する。
2人はいつもこんな感じで、日々のやりとりをしている。
仲が良いのか、悪いのかはその人その人の解釈が別れる。
だが、お互い嫌そうな表情を浮かべていないところを見ると、なんだかんだで信頼し合っていると伺える。
○
2人は町に1軒しかない、リボン専門店へ入る。
そこに陳列されているリボンは多種多様な色とデザインがあり、専門店という名前に恥じない数があった。
正直、男性が入るにはかなり抵抗のある場所だった。
「相変わらず……リボンにはうるさいですね」
フェーンもその1人だった。可愛いリボンに囲まれ、どこか落ち着きがなかった。
しかし、プリファーナの傍を離れると彼女から何を言われるか分からないので、仕方なく店内へ入っている。
「リボンはレディーを輝かせるアイテムですわ。フェーンには一生分からない代物ですことよ?」
少々小馬鹿にしたような表情を浮かべ、言葉を飛ばすプリファーナ。
彼女は紅茶の次に好きな物はリボンである。特に、紅色のリボンは血を連想させるから1番好き。
毎日、自分の頭にリボンをつけているのはそのためである。たまに、刀の鞘や黒い尻尾にリボンをつけたりもするくらいだ。
プリファーナ曰く、リボンはツェペシュの贈り物らしい。
余談だが、ツェペシュというのはドラーペシュ族の先祖にあたるドラキュラの名前である。
「このリボンは可愛いですわね。あっ、このリボンも捨てがたいですわ!」
両手にリボンを持ち、気持ちを高揚させるプリファーナ。
「どれも同じようなリボンに見えますけどね……」
お洒落に疎いフェーンは、彼女に聞こえないように言葉を呟く。
そして、右手でメガネを調整し店内を見回す。
——————ふと、窓を見つめるフェーン。
6人くらいの女性が、外を勢いよく走っている姿を確認する。
「………………」
眉間にしわを寄せ、尻尾を動かしながら深く考える。
女性が勢いよく走るほどの出来事。これは何かあると勘づく。
「プリファーナさん。急用が出来ましたよ?」
「えっ、わたくしはまだリボンを選んでいませんわ!」
「リボンは後にしましょう。少々きな臭い出来事が起きたかもしれません」
フェーンは彼女の右手を取り、店内から勢いよく出ていく。
プリファーナはどんどん自分の元から離れていくリボン店を見つめながら、彼の勢いに任せるしかなかった。
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