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春の産声、桜の泪
日時: 2012/01/06 13:30
名前: 藤田光規 (ID: TZln3PE9)

こんにちは。藤田光規です。
今回は僕の集大成ということではりきってカキコしたいと思います
アドバイス、感想、どんどんこいやああ!!

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Re: 春の産声、桜の泪 ( No.4 )
日時: 2012/01/07 14:46
名前: 藤田光規 (ID: 7gBpjPib)

あの事故から2ヶ月。冬休みが終わり、3学期が始まった。
僕はあのときの罰で学級委員をすることになった。
実力テストも終わり、2日たったある日、僕は先生にお願いして一時間だけ学級の話し合いの時間をもらった。
考えが無いことはない。冬休みの間考えたことをみんなの前でいうだけだった。
「今日は、僕から、みんなに提案があります。」
緊張を噛み殺して言の葉を吐く。様々なこえが聞こえてくる。
「なにー?」「ええーっ?」「どうかしたのか?貴明。」
それらは僕のなかで響き渡り、大鐘の音のような波が僕を襲う。だが、そんなのに負けてはいられない。
「三月の末、終了式と並んで三年生の慰霊式を開きたいと思います。皆さん・・・どう思いますか・・・」
反対の意見が出たらすぐに席に戻るつもりだった。罵倒の声があったらすぐに撤回するつもりだった。
だが僕に向かってきたのは、それらとは違う、なにか暖かい賛同の言葉だった。
席からはさんせーいという声が聞こえてくる。奇跡だ、と思い僕の話を黙って聞いていた先生の方を向く。
「俺はいいと思うが、職員会議で通るかどうかもわからないぞ。だいたいどんな事をするんだ。考えはあるのか。」
先生は苦笑いを浮かべ声を漏らす。誤算だった。肝心の内容を考えていなかった。がっかりする僕だが突然声が飛んできた
「考えならありますよ。」
声の主は弦だった。ぼくの方を向いて僅かに微笑み、弦は話を続ける。
「ほら、よくあるじゃないですか。壁に写真を貼ったり、メッセージをよんだり・・・他には・・・歌を歌うこともできますよ!僕たちコンクールで賞を取っていますよ。どうですか。反対意見なんかでませんよ!」
弦はあっという間に教室を一つにした。流石の手腕というべきだろう。
「じゃあ・・・いいですよね。」
僕の弱々しい声に先生も首を振り得なかった。

Re: 春の産声、桜の泪 ( No.5 )
日時: 2012/01/09 13:24
名前: 藤田光規 (ID: rYvWlEkT)

「ったく。なにをいうかと思ったら・・・俺に任せてたら大丈夫って言ったろ。あやうくネズミに負けるところだったじゃんか。」
授業が終わった休み時間。弦をふくめ4人が僕の机にきた。僕は弦だけにこのことをいってたのだ。ちなみにネズミというのは担任のあだ名である。
「ほんとだよ。私達に言わないで一人だけでこそこそするなんて。]
ぼくの横には莉愛が口をとんがらせている。怒ってると言いながら目は笑っている。
「俺なんか仲間外しにされたと思っていたんだぜ。なあ、拓也。」
京介はいきなり後ろの拓也を振り返った。京介の方が10cm以上上背があるので完全に隠れている。
「そうだよ。なにかおかしいと思ったら・・・僕たちにも相談してよ。」
「ははっ、ごめんごめん。反省してるよ。そういえば今日美沙は?やすんでんの?」
「お前反省してねえだろ・・・」
弦が呆れた顔で呟いた。代わりに莉愛が答えた。
「美沙は今日ピアノの県のコンクールらしいよ。明日には帰ってくるから京介、安心して。」
京介は顔を赤くした。京介と美砂は付き合ってるのだ。
「あっ。そういえばさあ。知ってっか??ここいらで冬休み中に自殺未遂騒動があったっていう。」
「えっ!何のこと?教えて教えて。」
弦が僕の机に座りながら言った。前これを先生に見つかってめちゃくちゃ怒られたのだが、まったく懲りてない。
「ほら。3年生の事故の唯一生き残った人。あの人って事故当時、トイレでさぼってたんだよ。それで自分一人だけが生きているという罪悪感で首つったんだけど結局は失敗。今は病院で手当中だ。」
驚いた。僕は全く知らなかったのだ。そういえば確かに珍しく救急車が大きな音を立てて走っていったような・・・
「じゃあさ。今度言ってみようよ。そしてどうにかしようよ。この5人でさ。」
「6人な。美砂を入れて。」と京介がいった。莉愛は舌を出してごまかしていた

Re: 春の産声、桜の泪 ( No.6 )
日時: 2012/01/08 11:45
名前: 藤田光規 (ID: TZln3PE9)

次の時間は体育だった。
内容はバスケだったが僕は集中できずにいた。
そう。あのただ一人生き残った三年生のことだ。
弦に聞くと彼の名前は船越義文、かなり内向的な性格で友達も少なかったらしい。
コートを見ると、弦と京介はなかなかの運動神経で次々と点を決めている。それに比べて僕と拓也はかなり鈍く、今もこうして並んで隅っこでボーっとしているのだ。
「体育館って寒いな・・・拓也。」
「まあ寒いけど・・・何だいきなり。もしやなにか企んでいるだろう。」
「企むなんて悪い言いぐさだな。考え事だよ。か・ん・が・え・ご・と。」
「なんだよそれ・・・」
拓也は震えながら笑った。頬が赤く染まっている。つられて僕も笑う。
「そういえば貴明、お前なんでいきなり慰霊祭を開きたいなんて言ったんだ。なにかわけでもあったのか?」
「理由なんてないよ。」僕は座り込む。「なんとなくだよ、なんとなく。ただ、寂しかっただけだよ。何もいえずにどっかいっちゃって。お別れの言葉が言いたいんだよ。」
「なるほどね・・・」拓也は頷いた。ゲームは絶えず動いている。
「拓也!!取ってゴールの中に入れろ!!」
京介からの絶好のパスが来た。だが上手く取れずに頭にバウンドする。
みんなは笑っている。勿論、ぼくや拓也、京介もだ。だがそのボールが高く飛んで、すこん。とゴールの中に入る。再び笑いの渦だ。
「ほら。偶然やまぐれというのは恐ろしい。けど、確かに僅かな幸せももたらすんだ。覚えといてよ。」
僕の耳元で拓也が呟く。眼鏡が少しずれているのを見てまた僕はおかしくなって笑った。
じゃあとにかくやってやるぞ、と僕は決意してボールを取った。

Re: 春の産声、桜の泪 ( No.7 )
日時: 2012/01/09 13:46
名前: 藤田光規 (ID: BUG11FhX)

休み時間となった。僕、弦、拓也、京介の4人は屋上に来ていた。
午後になると制服から青い学校指定ジャージに着替えなければいけない。冬はその上からウィンドブレーカーを着ていいことになっているがデザインが嫌われているため着用する人は少なかった。
「おおっ、寒っ!!ここの方が寒くね?戻ろうぜ。」
京介は震えている。シャツを出しているから冷たく感じるのだろう。まあ、忠告はしないが。
「外の空気吸おうと言ったのは京介だろ。戻るなら一人で戻れば。しかもそんなに寒くないよ。」
「そうはいってもさあ、拓也・・・もう吸い飽きたぜ。教室にはストーブも点いてんだよ。風邪引きそうだ。」
拓也の冷たい言葉を受け、京介は「さみい、さみい。」と飛び跳ねている。ちなみに拓也はウィンドブレーカーを着ている。少しは寒さをしのげるだろう。
「そういや、貴明。お前その慰霊祭で何するつもりなんだ?俺が言う前何か考えがあるような顔には見えなかったが。」
弦が痛いところを突いてくる。なにも考えが無かったわけではないが特別、何をするかは考えていなかった。返事に困る。
「まあ、お前の言ったとおり歌でも歌おうかな、とね。あとは・・・」
「ほら、何も出てこないだろ。まったく・・・お前という奴は・・・」
弦は呆れている。えへへとわらってごまかす。すると拓也が口を開く。
「俺、体育の時間に考えついたんだけどさ。」
弦はすっかり僕より拓也の方に心がいった。少し悔しい。
「今回の事故で傷ついた人は俺たちだけでは無いさ。それを誰にも言えないままいるとどんどん風船がふくらむように大きくなる。だから僕たちがその人達の風船をしぼませることができたらいいなってさ。」
拓也は本を読むようにすらすらと言った。僕はそれを夢中になって聞いていた。だがしゃべり終えたとたんに京介が言う。
「でもよお。その俺たち以外の傷ついた奴ってのは誰なんだ?それを決めなきゃ話になんねえぞ。考えてんのか?」
「勿論考えてるさ。いるだろう。3年生の唯一の生存者、船越さんが。」

Re: 春の産声、桜の泪 ( No.8 )
日時: 2012/01/14 15:42
名前: 藤田光規 (ID: rYvWlEkT)

学校が終わった。耳には拓也の言葉が残っている。自分にもそんな事ができるのだろうか?全く存在も知らなかった人のために立ち上がることができるのだろうか?それはとても素敵なことだろう。でも本当に僕にも誰かを幸せにするようなチカラがあるとは思えない。
「人助け、かあ・・・・」口に出して呟いてみる。狭い部屋に悲しく響いた。
携帯が鳴る。メールのようだ。確認してみると莉愛からだった。
(弦達と何か企んでいるでしょ。水くさいよ。私にも相談して!)
莉愛からにしては少し地味なメールだった。地味といってもいつものが派手過ぎるのだが。返信を打つ。
(すんまそん。言うの忘れてた。詳しくは拓也から聞いて。そいじゃ。)
自分でもびっくりするほどの明るい文体ができあがった。今度はパソコンに向かってキーボードをたたく。
(平成22年 11月 23日)あの事件の日だ。
(官房長官記者発表)(宮城石岡祭り)検索するとたくさん出てきた。僕のめを引いたのは最後の記事だ。
(**県**中学校の一階理科室から出火 三年生31人と教師1人が犠牲に)
僕はひとおもいに泣きたくなった。理由は分からないが鼻の奥が熱い。これが拓也の言っていた心の傷の風船なのか・・・僕は思った。
すると、唯一生き残った船越という人はどんな気持ちなのだろうか?一つのことが頭によぎる。終わる事のない冬を一人過ごしているような、そんな気持ちでは無いだろうか?それでは寂しすぎる。
僕はCDをプレイヤーに差し込む。
弦にいわれた時なにも浮かんでいなかった訳ではない。いいだしっぺが無策なわけはない。
プレイヤーから流れるピアノの旋律とどこか悲しい歌声が綺麗にマッチする。僕は決意し、前に拳を突き出した。


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