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英雄の微笑
日時: 2012/01/19 00:51
名前: 猫飼あや (ID: 1SIM78Ht)



 みなさま、こんにちわ!
 猫飼あやですvvv

 私の小説ページを開いてくれてありがとうございます。
 小説を書くのは初めてなので、温かい目で見守ってやってください。

 ご意見、ご感想はいつでもお待ちしております☆

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Re: 英雄の微笑 ( No.6 )
日時: 2012/01/20 00:49
名前: 猫飼あや (ID: mUcohwxZ)  

第3章『入れ替わり』


「あはははははははは」

その日は、朝から笑い声が響いていた。
アレックスが朝から開拓地に来ているのだ。
先ほどから奴隷をからかっては馬鹿笑いをし、意気揚々と過ごしているのだ。

「全くなんだいアレは」
隣で作業していた老婆が小声で呟く。

...僕があの少女と会ってから約半月が過ぎた。
今も僕の頭には、少女の顔と声が響いている。
結局、彼女を忘れることはできなかった。
報われることはないと分かっているはずなのに。
思い出の一部として見れたらどれだけよかっただろうか。
僕は、僕自身がこんなにも諦めの悪いやつだとは思わなかった。
どうしても、あの少女を忘れられない。

「あっ・・お兄ちゃん」
そして、今日も僕はアレックスに見つかった。
ずいぶん機嫌が良いのかニコニコ笑いながら、こちらへ向かってくる。
思わず僕は、ため息を吐いた。
「あいかわらず辛気臭くて泥くさいね。」
今日のアレックスは黄色のコートに身を包んでいた。
きっと、あのコート1枚で僕たち奴隷の数か月分の食事が買えることだろう。
「フフン。ちょっと手をとめてよ、お兄ちゃん。今日は重大発表があるんだ」
僕は、仕方なく作業の手を止めアレックスを見た。
「なんでしょうか?」
老婆も同じように手を止める。

「前に、僕が学び舎の先生に同行して王宮に行くって話はしたよね。それでさ、同行したときに王宮の人に学術を教えたら管理職の人に気にいられちゃってさ、王宮勤めしないかって誘われちゃったんだよ」

「・・・それは、おめでとうございます。アレックス様」
王宮勤めは、とても名誉なことである。
うまくいけば、貴族とも交流ができるし自分の家系の株をあげることだって不可能ではない。
きっと父親も鼻が高いだろう。
「うんうん。だからさー、もし僕が王宮勤めになっちゃうと、しばらくお兄ちゃんとは会えないかもしれないんだよね。」
こちらは、別に会いたくもない。
「王宮勤めしている間に、お兄ちゃんが死んじゃう可能性もあるから、今日はお別れを言おうと思ってきたんだ」
アレックスはやけに「王宮勤め」という言葉に力をこめてはなす。それほど、それが名誉で自慢したいことなのだろう。
「・・・ご活躍をお祈りしております」
アレックスはウンウンと頷き優越感に浸った笑みを浮かべた。


「んで・・・」
 そして、なぜかアレックスは僕に向かって手を出した。
握手を求めているのではない。
「・・・なんでしょうか?」
僕はその白く細い指をみつめた。
「何って・・・お別れだっていったでしょ。だ・か・ら新しく巣立つ僕に餞別くれるでしょ?」
アレックスは嫌みったらしくニコリとした。
(・・・何を言っているんだコイツは)
奴隷に餞別を要求するなんて、頭がどうかしている。
「・・・・・っぷ」
僕が、しばらく沈黙していると、いきなりアレックスが吹き出した。
「あはは。そうだよね〜。お兄ちゃんは奴隷だもん。僕にあげれるものなんてないよね」
どのように育ったら、こんなにも嫌味な性格になるのだろうか。僕は思わず、こぶしを握りしめた。
「だからさ、僕、餞別のかわりにお兄ちゃんにしてほしいことがあるんだ」
 アレックスはニコニコと笑っている。
どうせ苛めをするのだろう。
「・・・なんでしょうか?」
僕は、最悪の覚悟をしてアレックスに聞いた。

「崖の真ん中あたりにね、と〜ってもきれいな青い花が咲いているんだ。だから、それを取ってきて餞別変わりに僕にちょうだいよ」

 それは、アレックスにしては簡単な命だった。
 指さした崖も、ここから近くにあるそんなに急斜面ではないちょっとした崖である。
 断って、暴行を受けるよりは簡単なアレックスのワガママを聞いたほうが身のためだった。
だから、僕は無言でうなづく。
するとアレックスの顔がパッと明るくなった。
「じゃぁさ、今から2人で行こうよ。あいつらには僕が言っておくから」
そういって、アレックスは雇っている男どもに話をつけに歩いて行った。




「ふふん。こうやって2人だけで話すのは初めてだね。お兄ちゃん」
崖への移動中、アレックスは嬉しそうに僕に話しかけてきた。本当に2人きりだ。護衛もいない。
「きっと今なら、僕は簡単にお兄ちゃんに殺されちゃうかもね。そうしたら、お兄ちゃんはどうするの?逃げる?」
アレックスはニヤニヤ笑っている。
(・・・馬鹿かコイツ)
僕は、無言で歩く。

そして崖がみえてきた。
やはり、そんな急斜面ではない。
崖の下を見下ろすと、青い小さな花が真ん中くらいの岩の隙間に咲いていた。
「あれだよ。あの青い花をとってきて」
アレックスは花を指さした。
僕は、命綱もなしにその崖を手と足を使い降りていく。
爪は、毎日の過酷作業ですでに割れてしまっているが何とか指の力だけで体重を支えられていた。
崖の上からはアレックスの楽しそうな笑い声が聞こえてくる。
こんな状況でも、彼は僕に自慢話を話そうとしてくるのだ。

「そうそう、王宮でね、王様には会えなかったけどお姫様には会えたよ。」
もう青い花の近くまで降りてきている。
手を伸ばせば青い花をとることができるだろう。
僕は片手に全体重をまかせ手を伸ばした。
「そのお姫様って、すごい綺麗なんだよー。ほら、昔父様が買って屋敷においていた天使の彫刻、あれに似ているかな」
アレックスはひとりではなしている。
僕は、そんな彼の話を耳に入れながらも必死に花へ手を伸ばしていた。
「金色の目でね〜、髪の毛は桃色!すっごい色白で本当にかわいかったな」
(・・・金髪の瞳に桃色の髪)
僕の頭の中で、あの少女の顔が浮かんだ。
その瞬間、指先に触れた花を思い切りひっぱり茎の部分を無理やり切った。
そしてポケットにその青い花をつっこむ。
(もしかして・・・)
僕は、一気に崖をのぼりはじめた。

「あれー早かったね。お兄ちゃん。崖のぼり得意なんだね」
岩に座っていたアレクスが立ち上がり、登ってきた僕に近づいてきた。そして花を受け取ろうと手を出す。
「・・・・」
だが、僕はポケットから花をだそうともしなかった。
「・・・?どうしたの、お兄ちゃん?まさかとれなかったとか?」
僕は首を振り、ポケットから花をだす。
しかし、アレックスに渡そうとはしなかった。
「・・・・アレックス様、そのお姫様のお名前は何というのですか?」
僕はアレックスをみつめた。
「えっ?お姫様の名前・・・エリス様だけど」

Re: 英雄の微笑 ( No.7 )
日時: 2012/01/20 01:24
名前: 猫飼あや (ID: mUcohwxZ)  


僕は、確信した。
あの日、僕が出会ったのは彼女だと。
しかし、彼女が王国の姫ならば僕にとっては手も届かない存在である。
だが・・・僕は彼女が忘れらない。
もう一度でいいから会いたい。

「でも、どうしてお兄ちゃんがそんなことを聞くんだい?」
アレックスは花が受け取れないのが不服なのか頬を膨らませた。
僕は黙っている。
「・・・もしかして、お兄ちゃん。お姫様に会いたいとか?あはは...無理だよ。それはム〜リ!お兄ちゃんは奴隷でしょ!お姫様が奴隷になんて会うはずないでしょ」
ごもっともな答えである。
しかし、わかりきったことを他人に言われると、なおさら腹がたつというものだ。
「まぁ、僕みたいな〜お金持ちで、なお今度王宮勤めする立場だったら、お姫様と会うこともできるし上手くいけば結婚もできるかもしれないけど、お兄ちゃんは奴隷だもん。身の程をしらなくっちゃ」
僕は苛々していた。
顔もほぼ同じ、父親も同じ
それなのに僕とアレックスはこんなにも違う。
もし、僕がアレックスなら・・・・
そんな考えが頭をよぎった。

「はい。これを」
僕はアレックスに花を向けた。
アレックスは嬉しそうに花に手を向ける。

その瞬間、僕は力をこめてアレックスを花ごと押した。

「うわあああ」
アレックスは崖に落ちる瞬間、奇跡的に岩に手をつけた。
「な・・なにするの、お兄ちゃん」
アレックスは初めて僕を見上げた。
僕は、今までにない以上に冷たい目をしていたと思う。
そして、唯一アレックスが体を支えている両手に足を近づける。
「や・・やめてよ!ちょっと!」
アレックスの顔は青ざめている。
「・・・普段苛めている奴隷と2人きりでこんなところに来るなんて危機感がないよアレックス。」
僕はアレックスの片手を蹴った。
アレックスは悲痛な顔をする。
「ま・・待ってよ!ぼ・・僕は、僕は、ただお兄ちゃんと思い出がほしかっただけなんだ。いつも苛めてたけど、本当はお兄ちゃんと話したかっただけなんだよ!ずっと一人っ子で寂しかったんだよ僕!」
アレックスは涙を浮かべ懇願する。
「こ・・この花も、あとでお兄ちゃんにあげるつもりだったし、こ・・これからは一緒に生きていこうお兄ちゃん」
アレックスの指先が赤くなってきた。
「ありがとうアレックス」
僕は、久しぶりに笑いアレックスの手に自分の両手を乗せた。
きっと、ひきあげてくれるのだろうとアレックスは思い込んだ。
しかし、いつまでたっても引き上げてくれる素振りはない。

 アレックスは奴隷の目を見た。
それは、自分と瓜二つのくせに、光のない冷め切った目をしていた。
「ぼ・・・僕は、これから王宮に勤めるし、けっこうな地位がもらえる。そうしたら、今、父様の下で働いている奴隷・・・いや労働者達にもいい賃金が払えると思うよ」
だんだんとアレックスの声が震えてきた。
それほどまでに恐怖を抱いているのだろう。
急斜面ではないとはいえ、ここから落ちれば下手をすれば命を落とす。
助かったとして手足の何本かは確実に折れるだろう。

「大丈夫だよ、アレックス」
僕は、そんなアレックスに微笑んだ。
「それは、僕がやるから。僕が君になってやりとげてあげるか心配しないで。だから君は・・・」
そういって僕はアレックスの手を放した。
途端にアレックスの体は下へ落ちて行った。

「奴隷として永遠に眠ってくれ」

崖下から、ドコッと衝撃音がした。
下をのぞくとアレックスが横たわっている。
どこも動いていない。

僕は、気を付けながら崖をおりていき、アレックスの横に立った。
彼は死んでいた。
僕は、すぐさま近くの小川で身体についた泥を落とした。
そしてアレックスの衣類と僕の来ていた衣類を交換する。

異母兄弟だけあって、ほとんど本人そのものだった。
僕はアレックスの遺体に1回だけ手を合わせその場を立ち去った。青い花を持って。
そして、開拓地へ戻ると僕は皆の前でこういった。
「もう嫌になっちゃうよね!あの奴隷、崖から落ちて死んじゃったよ。まったく使えない。」
驚いた表情を見せたのは老婆だけであった。
あとのものは、奴隷の1人のために表情をかえることもしない。
そして、僕は黄色いコートを羽織り開拓地を出た。

アレックスとして。

Re: 英雄の微笑 ( No.8 )
日時: 2012/01/20 02:13
名前: 猫飼あや (ID: mUcohwxZ)  


第4章『アレックス』



 僕は町へ出ていた。
 町なんて何年ぶりだろう。
 最後に町に出たのは、アレックスに遣いをさせられた時だった。
あのときから、もう何年もたっているが、この町はほとんど発展していない。
だから、アレックスの屋敷を探すにも苦労しなかった。


 アレックスの屋敷はかなり大きい。
 僕は1度だけ、掃除をするためにこの屋敷によばれたことがあった。
 「おかえりなさいませ」
 僕が、現れた途端エプロンをつけた女性がかしずいてきた。
 使用人までも僕がアレックス本人だと思い込んでいる。
 僕は一瞥だけすると、そのまま屋敷の中へ入っていった。
 そして足が止まる。
 あまりにも部屋が多すぎてアレックスの部屋がどこかわからないのだ。
 自分の部屋の場所を聞くなんて怪しいことはもちろんできない。
 思わず、僕は自分のポケットに手を突っ込んだ。
 すると指に柔らかな感触がある。
 出してみると、先ほどの青い花だった。
 しばらくそれを見つめたのち、僕はいい思案が浮かび近くにいた使用人に声をかけた。
 
 「この花を僕の部屋に活けてちょうだい」
 ちっぽけな花だということをのぞき、使用人は疑わずに承諾して僕から花を受けとった。
 そして、僕はその使用人の後ろをコッソリをついていく。

 すると使用人は、一つの部屋の前にとまり扉を開けた。そして中に入り花瓶をひとつもってくると水を入れに部屋を出ていく。
 どうやら、ここがアレックスの部屋らしい。

 中は、それほどまで華やかではない。
 金箔の壁もないし、天蓋つきのベッドもなかった。
 クローゼットの中の衣装は、僕ら奴隷からみれば豪華な衣類だが、そこまで高価そうな衣装は数点のみであった。
むしろ、宝石などの装飾より、この部屋には書物が多い。
壁一面に本棚がつくられていおり、ビッシリと書物が並んでいた。
王宮から誘われるだけの知性がアレックスにはあったということなのだろうか。
書物の中には線をひかれたものや、何度も読みすぎて紙が破れてしまっているものまでもあった。

トントン
ノックの音がした。
僕が合図すると、先ほどの花瓶をもった使用人が入ってくる。
「お花を活けてまいりました。」
青い花は、花瓶にいれられたせいか少しばかり豪華そうに見えた。
「ああ、ありがとう」
僕は、それを机の上に置くように指示した。
「あの、アレックス様。ちゃんとお別れの言葉はいえましたか?」
使用人は、花瓶を置いてから僕にそういってきた。
「お別れの言葉?」
「ええ。昨日おっしゃっていたじゃないですか。しばらく会えなくなるから、開拓地のお兄様に挨拶をしてくると」
・・・どうやら、この使用人はアレックスと親しかったようだ。
(・・・まずいな)
正体がばれるのではないかと、僕はヒヤヒヤした。

「うん。大丈夫だよ、ちゃんと言えた」
それを聞くと使用人は安心したかのように笑顔を見せた。
「それは、ようございましたね。いつも意地悪をしてしまうといって言われていたので心配していたんですよ。」

 どうも話がおかしい。
 この話の内容だと、まるで僕たち兄弟は仲が良いみたいではないか。

「・・・あのさ〜、あいつは奴隷だよ?」
 僕がそういうと使用人はキョトンとした顔をする。
「ええ、伺っていますよ。でも奴隷階級だって兄がいて嬉しいっておっしゃっていたではないですか」

 嬉しい・・・?
 あいつが・・・アレックスが・・・?

「仲良くなりたいけど、他の人の目もあるし、つい意地悪しちゃうって言ってたじゃないですか。だから、今日は2人きりで話す機会をつくるために、お花をとってくるよう命を出すんだって」

そういって、使用人は花瓶に挿した青い花を見る。
きっと花からして、僕ら兄弟がうまくいったのだと思い込んでいるだろう。
僕の頭の中では「まさか」という言葉だけが響いていた。

そして使用人が部屋を出て行ったあと、僕は深い後悔をする。
もしかして僕は、自分を認めてくれていたたった一人の弟を殺してしまったのかもしれない。
ベッドに倒れこむように寝ころんだ。
(そういや・・・あいつ、崖で僕に殺される直前に僕と思い出が欲しかったとか言っていたな)

たったひとりの弟アレックス
僕は殺してしまった。
しかも、今僕はその殺してしまった弟になりきって生きていこうとしている。

「あぁ・・・アレックス・・・」
布団をかぶり僕は声を押し殺して泣いた。
自分でやってしまった罪に
もういない弟に



だけど、やってしまったことは取り戻せない
ましてやアレックスが生き返ることもない。

Re: 英雄の微笑 ( No.9 )
日時: 2012/01/20 21:31
名前: 風猫(元:風  ◆Z1iQc90X/A (ID: G9VjDVfn)
参照: http://loda.jp/kakiko/?id

此方では初めまして。 リク版のほうでは何度もお世話になっていますね。
風猫です^^

まだ、途中までですが感想書かせてもらいます。
貧富の差と言うものが赤裸々に書かれていて特殊な力とかそう言うのがなくてリアリティが有りますね。
凄くメッセージ性が有って良いと思います。

しかし、こうやって他者を押さえ込んでいた政権は何れも壊滅していますゆえ……
独裁政権が、潰れる様が見たいですな。
まぁ、そんな簡単に潰れられても詰まらないですが(苦笑

個人的には、最初の方の女が殺されても反応もしないと言う様や視察のときの役人たちの態度などが好きです。

読み終わったらまた、来るです!

Re: 英雄の微笑 ( No.10 )
日時: 2012/02/02 22:41
名前: 猫飼あや (ID: zjmgeTG7)  


 わわっつ・・!!!
 初めてのお客様だ!!!
 風猫さんコメありがとうございます。


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