ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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英雄の微笑
日時: 2012/01/19 00:51
名前: 猫飼あや (ID: 1SIM78Ht)



 みなさま、こんにちわ!
 猫飼あやですvvv

 私の小説ページを開いてくれてありがとうございます。
 小説を書くのは初めてなので、温かい目で見守ってやってください。

 ご意見、ご感想はいつでもお待ちしております☆

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Re: 英雄の微笑 ( No.1 )
日時: 2012/01/19 16:57
名前: 猫飼あや (ID: G.M/JC7u)




 〜〜〜序章 「理」〜〜〜





 生まれた瞬間から、人間は運命が定められている。

 


 農家の親から生まれれば、その子供は泥臭い農業者になる。
 商家の親から生まれれば、その子供は金汚い口達者になる。

 それが、この世のならわし。
 変えることのできない運命の連鎖

 苦しい家系は、その次の代、またその次の代の子孫まで苦しみが続くし、その反対に、金持ちの家系はいつまでたっても力を持ち続ける。

 全く運命とは皮肉なものである。
 本人の努力とは無関係に歴史は進み、知らぬ間に終止符を打たれる。


 ・・・これは、そんな皮肉めいた運命に翻弄される少年の物語。
 彼は自らの定められた運命に打ち勝つことができるのであろうか?

 長く歪んだ少年の人生が幕をあける。



Re: 英雄の微笑 ( No.2 )
日時: 2012/01/19 20:04
名前: 猫飼あや (ID: wp3SHXyR)  

〜〜第1章『奴隷』〜〜


 「うひゃああああああああああああああ」
 女の金切り声が地に響いた。
 ふと目線をむけると鞭を持った頑丈な男が老婆を打っている。
 いや、老婆というのは失礼かもしれない。
 白髪を乱れさせ痩せ細っているが彼女はその見た目と違い、まだ若いはずだ。
 バシッ...バシッ...
 尚も鞭で打たれ続ける女は痛みに悲鳴を上げ続けている。
 周りには、大勢の大衆。
 しかし、誰一人彼女を助けようともしない。
 このような日常に慣れてしまったからなのだろうか。
 それとも、ここにいる大衆はみんな心をなくしてしまったためなのであろうか。

 女は、ついに声を出さなくなった。
 しかし、男はまだ鞭で彼女を打ち続けている。
 彼女がどんな失敗をしたのかは予想がつかない。
 だが、死んでもまだ鞭で打たれ続けるとなると、そうとうこの男は鬱憤がたまっているのだろうとみえる。
 大衆は、そんな女と男に一瞥しただけで黙々と作業を進めている。
みな、男の次のターゲットにされないように目をそらしているのだ。
 そういう僕も、その大衆の一人である。
自らを危険にさらしてまで見ず知らずの女を助ける義理はない。
むしろ、あの女にとっては生を続けることのほうが地獄かもしれない。
この先、一生鞭に打たれ地べたを這いずる生き方をするよりは死んで楽になったほうが幸せだろう。
そして新しく生まれ変わって、この国ではないところで新たな生をむかえ新しい人生を送る。
・・・ここでは幸せになど絶対になれない。
 これは明らかなことだ。
彼女も含め、ここにいる大衆は、この国に生きる限り温かいベッドで眠ることはできない。

 なぜなら、僕らは「奴隷」だから。

 名前さえもつけてもらえない。
 牛や豚の家畜のほうが、僕らよりよっぽどいい待遇を受けている。
 つまり僕らは、家畜以下の人間である。

 「坊や、手がとまっているよ」
 隣で作業をしていた女性が僕にこっそりと告げた。
 僕にも名前がない。
 だが、奴隷たちの間では僕は「坊や」と呼ばれている。
 自分の確かな年齢はわからないが、こんな大きくなっても「坊や」だなんて笑える話だろう。
 僕は、隣の顔見知りの女性にうなずくと鍬を持ち上げ岩を砕いた。
 ここで俺たち奴隷は、新しい開拓地の土砂を処理している。
 30日間昼夜問わず働いても賃金はコイン3枚程度しかもらえない。
幼少からの過酷作業のため爪はほとんど死んでいる。
もちろん、食事だってまともにもらえない。
しかし、少しでも作業を休めば、経営者の雇った頑丈な男たちに鞭でたたかれ、場合によっては、その男たちの心理状態によって何もしてなくても暴行をうけることがある。

 この国は「奴隷」を人間だとも思っていない。
だからこそ、ここの経営者やその雇われた男共は遠慮なく奴隷に過酷作業をやらせ、気に入らなければ暴行を行う。
 国が、それを認めてしまっているのだからしょうがない。

Re: 英雄の微笑 ( No.3 )
日時: 2012/01/19 20:07
名前: 猫飼あや (ID: wp3SHXyR)  

「ちょっと〜。その汚いやつ早くどかしなよ」
 こんな状況の中、明るく発言したやつも、こんな腐った国の秩序が正当だと教えられ育ってきた者の1人だ。
 「ア・・アレックス様!!」
 頑丈な男たちが僕とそう変わらない年齢の少年にかしずいた。
 経営者の1人息子アレックスである。
 普段は、学術を学ぶために学び舎に通っているのだが、時折このように開拓地に来て、僕たち奴隷を笑いにくる。
 「こんなゴミが道の真ん中にあったら、僕が通れないだろ」
 アレックスが指すゴミとは、先ほどまで息があった女の遺体である。
 男たちはアレックスのいうまま、そのゴミといわれた女を物のように持ち上げ端に放り投げた。
「すみませんアレックス様。どうぞお通りください」
頑丈な男共も経営者の息子であるアレックスには頭があがらない。
なんにも力もない少年に大の男がごまをすっている。
全く、おもしろい構図だ。

 僕が、そう思っているとアレックスがこちらに気付いたのか、高価なブーツをカツカツ鳴らしながら近づいてきた。
「フン、相変わらず汚いなぁ。糞でもついてるのか」
アレックスは僕の前に来ると腕を胸の前で組みニタリと笑った。
いつもの皮肉である。
それも、僕はどうやらアレックスにターゲットにされているらしく、彼は訪れると決まって僕に皮肉を言って鬱憤をはらしていく。

 僕は、一瞬アレックスを一瞥し、また元の作業に戻った。
「うわ〜・・無視かい。兄弟なのに。たまにはお話でもしようよ、お兄ちゃん」
 そう、このアレックスが僕に執着する理由はもうひとつある。
 僕らは、血がつながっているのだ。
しかも、僕が泥だらけだからわかりにくいが、僕たちの容姿はとっても似ている。
僕が、正装をすれば誰もがアレックスだと間違えるだろう。
では、どうしてこんなにも環境が違うのか。
それには、彼と僕では違う点がひとつあるからだ。

 僕らは、同じ父親を持つ。
 まぁ、僕は息子だとも思われていないから「父親」だなんて呼べる間柄ではないのだが血が繋がっているのは確かなことである。
しかし、母親が違う。

 アレックスの母親は、父親の正妻。歴史的に由緒正しい貴族からでた女性である。

 一方、僕の母親は生まれながらの奴隷階級の女性である。
もちろんアレックスの父親とは恋人でも婚約関係の者ではない。

では、なぜ僕が生まれてきたのか説明しよう。
僕の母親は、若いころから奴隷としてここの経営者に遣われていた。
若ぃ頃の経営者は、とても女癖が悪く奴隷の中でも多少見目の良い娘は彼に手籠めにされ、時に強姦をされていたという。
そして、僕の母親もその被害者のひとり。
今では母親は亡くなってしまったが、奴隷の中では顔立ちの整った容姿をしていたらしい。
僕を妊娠してから、経営者はアレックスの母親と結婚した。
もちろん、僕たち奴隷は人間とさえも思われていないのだから、奴隷に子が宿ったって経営者は知らぬふり。
むしろ、同じくらいに生まれたアレックスだけを経営者は可愛がった。

 だから、僕とアレックスは普通でいうと異母兄弟となる。
もちろん誰も認めないだろうし、アレックスもからかうために僕を兄と呼ぶだけだ。


「ちょっとぉ〜。何その目つき。ぼくにケンカ売っているのぉ?」
 母親が違う、しかし顔が似ている、その2つがアレックスにとっては特に気に入らないらしい。
僕は泥だらけで彼に比べれば痩せ細っているが、赤茶色の髪や翡翠の瞳は、ほぼ同じものだ。
その同じ容姿をもつ少年が、今も僕を見つめ、いやらしい笑みを浮かべている。
 「あっ、そうそうお兄ちゃんにいいこと教えてあげるよ。僕ね〜今度、王宮に行くんだよ。学び舎の先生の同行者ってことで。だから、もしかしたら、お姫様にも会っちゃうかもしれないんだ〜」
 どうりで今日は機嫌が良いはずだ。
いつもなら、アレックスと会った数秒後に僕は、彼の命で男どもに鞭を打ちつけられる。しかし、今日はまだ彼の命がでていない。

(・・・王宮。・・・姫。どうでもいい)
僕にとっては、アレックスが王宮に行こうが姫と会おうが関係はない。
むしろ、このままアレックスが上機嫌なまま自分に害がでないことを望んでいる。
「そう・・・。よかったですね。アレックス様」
僕は、そう1言だけいって作業に戻ろうとした。
固い岩を鍬で砕く。
しかし、アレックスはお気に召さなかったようだ。
「良かったですね・・・?それって上目目線でいってるの?奴隷のくせに。こういうときは『さすがアレックス様』とか『おめでとうございます』とかでしょフツー」
 アレックスは近くにいた男を呼びとめ、いつものように命を出した。

 「この生意気な奴を躾けてあげて」

 ・・・・・本当に奴隷とは報われないものである。

Re: 英雄の微笑 ( No.4 )
日時: 2012/01/19 22:27
名前: 猫飼あや (ID: mUcohwxZ)  


〜〜〜第2章『奴隷と天使』

 ・・・あれから3日たった。
 アレックスの命で僕は、いつもより酷く男たちに暴行され身体はボロボロであった。
それでも、休むことはできない立場なので血を吐きながらも僕は3日間働き続けた。
3日間のことはほとんど記憶にはない。
無意識のうちに鍬を持ち岩くだいていたようだ。

「坊や、大丈夫かい?」
つかの間の休憩時間に老婆が声をかけてきた。
だいぶ痛みも緩和してきた。
「ああ」
腫れ上がった左頬を自分で撫でてみた。
「今回は特にひどくやられたね。目もむけられなかったよ」
 そういう老婆の頬にも以前つけられた鞭の跡がのこっている。
「でも、今日はやつらも手はださないだろうよ」
 老婆は男たちをにらむと汚れた両手を払った。
「・・・なぜ?」
 男ども暴行を毎日のように行っている。むしろ誰も傷つかない日のほうが珍しいくらいだ。
 老婆は、しわくちゃな顔で笑うと、僕の耳に口を近づけて囁いた。

 「聞いた話なんだがね。今日は、このお国の偉い方が視察に来るらしいよ。連中も、視察に来てるやつらの前ではいくらなんでも殴らないだろう」

 (なるほど・・・)
 そいえば、この開拓地はいずれ国の所有物となるらしい。
それなら国の偉い連中が視察に来るのも納得できる。
まぁ、偉い連中も奴隷なんて人間だとも思っていないから隣で奴隷が殴られていたとしても素知らぬふりだとは思うが。

 僕はこの時、その視察で僕の運命が変わる出来事が起こるなんて思いもよらなかった。




「ささっ、こちらです。」
久しぶりに経営者が開拓地に顔を出した。
僕にとっては父親でもある。
まぁ、僕に顔を向けることはないが。
そんな経営者が10名の客人を引き連れて開拓地へやってきた。
「おお、だいぶ進んでいるな」
客人のひとりである髭の長い男が開拓地をみまわして言った。他の客人は、みんな日よけのためか長いマントをかぶってしまっており顔が見えないが、この男だけはマントから顔をだし自慢の髭を指で触っている。
「ええ。私がいつも指導してますから」
経営者は、胡散臭い笑顔を客人に向けた。
(・・・嘘吐きめ。ほとんどここへはこないくせに)
僕は、そう感じながらも鍬を持ち上げ岩を砕く。
「さすがですな。あなたにだったら安心して事業を任せられますよ」
経営者と男たちの笑い声が耳に聞こえてくる。
(・・・どうせ、俺ら奴隷のことなんて見えてないんだな)
どうせ期待なんてしない。
期待なんてするほうが損をする。
「それでですね、この企画書ですが・・・」
客人たちは図のような紙を広げて、ああでもないこうでもないと討論を始める。

僕は、岩を砕く。
破片が連中に飛ぶくらい強く。

すると、僕の手元を影が覆った。
僕は顔を上げる。
すると、客人の中でも最も背の低いマントを被った人物が僕の近くまで来ていた。
(・・・奴隷をからかいにきたのか?)
僕は、そう思った。
しかし、マントの人物は何も言わずじっと立っている。他の客人は紙切れを見ながら話し合っているというのに、この人物はそれにも参加せずに客人の輪から外れていた。


「・・・・・。」
「・・・・・。」
お互い何も言わずに立っている。
そして、数秒後マントの人物が顔を覆っているマントを少しずらし顔を表に出した。
「!!!!!」
僕は、思わず鍬を落としそうになった。
それほどまでに衝撃を受けたのだ。
(・・・・女)
そう、マントの人物は女であった。
しかも女というよりは少女と呼んだほうがふさわしいいくらいに若い。
色白の肌に金色の大きな瞳。
桃色の前髪が少しだけ見えている。

 とても美しかった。
まるで昔1度だけ見た天使の彫刻かのように幻想的な雰囲気をかもしだしていた。
僕は、息をのむ。

「△■○◆・・・・」
少女がか細い小さな声で何かを言った。
周囲の騒音に消されてほとんど聞こえないため、僕は首を傾げる。
 すると、彼女はもう2・3歩近づいて口を開いた。

「・・・ごめんなさい」

 鈴のような声だった。
 しかし、言っている意味がわからない。偉い連中と一緒にいたこの少女が僕に謝る理由がない。こんな奴隷の僕に。
 そして少女は、その大きな瞳を悲しそうにうるませて立っている。
僕はその少女をみつめる。
その沈黙は一瞬のことであったが、まるで僕にとっては長時間続いていたかのように思えた。

「エリス様!!!」
客人の中の男が、こちらの様子に気づき少女に声をかけてきた。
「あまり離れないでください。」
そして僕と少女を交互にみると、険しい顔で僕をにらんでくる。
「・・・こいつに何かされましたか?」
客人たちは、みな僕を敵視する。しかし、少女は、すっと手を振り「何もない」といった。
そして、髭の男に手を引かれ少女はもといた位置に戻っていく。
その際、少女が一瞬だけこちらをむいて頭を下げた。

・・・・はじめてだった。
今まで、奴隷の僕に頭を下げた人間などいない。

僕は、その日から、その不思議な少女のことが頭から離れなくなった。

Re: 英雄の微笑 ( No.5 )
日時: 2012/01/19 23:09
名前: 猫飼あや (ID: mUcohwxZ)  


〜〜第3章『奴隷の恋』



あれから僕の頭の中は例の少女のことでいっぱいであった。
彼女に関する情報は「エリス」という名前と、一瞬だけみた顔しか知らない。

(・・・もう一度会いたい)
あの、謝罪の言葉の意味
そして最後に僕に下げた頭
その行動の真意も問いたかった。
(開拓地の作業が進んだら、また会えるだろうか)



「それは、恋だよ坊や」
ことの一部始終をはなすと、老婆はそう答えた。
「恋?」
器に少しだけのっているパンを手でつかむと僕はそれを口に入れた。
「そうだよ。坊やは、その女の子が気になって仕方がないんだろ?それはまさしく恋だね。一目ぼれってやつだろ」
ケラケラと老婆は笑う。
「私も若いころは恋をしたが、こう・・・胸がズンズンくるというかそんなかんじだろ」

「ズンズン・・・?まぁ、胸がこう変なカンジはするけどさ。僕が恋するなんて有りえないよ」
 時間までに食事をとらないといけない決まりなので、こう話している最中も僕と老婆は素早く口に食事を放りこむ。
「い〜や。坊やもそんな歳だ。こんな身分じゃなきゃ女の子と仲良くしてもいいころだ。」
少しだけ入ったスープを一気に飲み干す。
すると、それと同時に作業開始の合図がなり、みな立ち上がり始めた。
(恋・・・僕が恋・・・)


 作業中も僕は、ずっと考えていた。
 岩を砕きながらも頭の中は少女の顔が浮かび続ける。
 今まで、恋なんてしたこともなかった。
 異性に魅力を感じることもなかったし、こんなに胸がおかしくなることもなかった。

(恋か・・・)
だが、僕はうれしい気持ちにはなれなかった。
なぜなら、この恋は絶対に叶うはずのないものだからだ。
僕は奴隷だ。
絶対に、恋は実ることはない。しかも、相手は偉い連中と一緒にいた少女だ。正体は不明だが、きっと僕とは天と地ほどの身分の差がある相手だと思う。
(どうせ悔しい思いをする)
それは分かりきっていた。だけど・・・
だけど、なぜだが少女の顔が頭から離れなかった。



(・・・もう一度、会いたい)

岩を砕いている間も
鞭で打たれている間も
僕は、そんなことを考え続けていた。


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