ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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トワイライト・カーニバル
日時: 2012/06/30 21:29
名前: 織也 (ID: 4RLKS53x)

初めまして!!織也と申します(*^ω^*)
文才なんて一欠けらも持ち合わせていませんが
亀更新で精一杯頑張らせていただきます!!
コメント・アドバイスなど頂けると
とてもとても嬉しいです(*^_^*)
誹謗・中傷等はお止めください(泣)


・・・プロローグ・・・


「約束、してくれる?」
「・・・いいよ」

_それは、7年前の幼き日の思い出。


「僕と、君との約束だよ」
「わかってる。俺と、お前との約束だ」


_子供であったほんの僅かな時間での、約束。


「何があっても、絶対に」
「どんな壁が立ち塞がろうとも、絶対に」

_あまりにも、純粋で美しく・・・・・・


「僕を        くれ」
      殺して
「お前を       やる」


_残酷な物語。



そして、再び歪んだ歯車が廻りだす。


_目次
Episode01 >>01 Episode11 >>12
Episode02 >>02 Episode12 >>13
Episode03 >>03 Episode13 >>14
Episode04 >>04 Episode14 >>15
Episode05 >>05 Episode15 >>16
Episode06 >>06 Episode16 >>
Episode07 >>07
Episode08 >>08
Episode09 >>09
Episode10 >>10

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Re: トワイライト・カーニバル ( No.2 )
日時: 2012/01/30 22:14
名前: 織也 (ID: KuHgV/y.)

Episode02;Encounter


今日こんにち、世界ではある人間達によって安寧が奪われようとしていた。
人智を超える、人ならざる能力ちからを持つ者。
_アブノーマラーだ。

古来より発現が確認されてきた能力者だが、その数は増加傾向にあった。
世界の各機関は増加する能力者の反発を恐れ、公的に管理・制御することを決め、公的機関設置。
それが暁達の所属する機関_世界能力者保護機関、通称WLPOである。
表向きは様々な課に分かれ能力者の登録・管理をするのだが。
・・・国家機密を負う裏の課が存在していた。

_SMS。
特別魔法課。この課に所属する全ての人間は能力者であり、
WLPOに登録しない能力者、アブノーマラーを捕縛する任務を負う。
デスクワークが主だが、戦闘などもかかせない危険な場所である。


・・・そんな彼らに下された特務とは・・・。


「・・・潜入捜査、ですか・・・・・・?」

そうだ。と眉間にしわを寄せたひげ面の男がデスクに肘をつき、三人を睨みつける。

「ある学園にアブノーマラーが潜伏しているという垂れ込みがあってな、事実かどうかを調べてほしい。
 詳細はこの書類に記載している。定期報告を忘れるな。・・・健闘を祈る」
「「「了解!!!」」」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「よーし、お前ら注目しろよー。今日は転入生が二人も来てるからな!!仲よくしてやれよ?はい、じゃあ自己紹介して」

明るい物言いで促す教師に少し戸惑いながらも、暁は深呼吸して話し始める。

「えっと、芹沢 暁と言います。この大きなホーピアナーズ学園で新しく生活させていただきます、よろしくお願いします!!」
「暁は固いなあ。初恋 ゆづきです!!勉強は大体苦手です、皆と仲良くなれるように頑張るのでよろしくお願いします」

歓迎の拍手が響き、笑顔が生まれる。
そんな光景に暁もゆづきもほっとした。
・・・WLPOではいつも気を抜けない状況だったからだ。

「じゃあ芹沢に初恋、よろしくな。じゃあ席に着いてくれ。初恋は吉屋の横で、芹沢は藤崎の横だ」

名前だけを言われても、どこだか分からなさそうだが。
ご丁寧に全員の机の前部分にローマ字で名前が書いてあった。
暁は気をつけながら<藤崎>の名前を探す。

『ふじさき、ふじさき・・・・・・あ』

教室の一番後ろの窓際の机に<FUJISAKI>という字を見つけたのだ。
すぐにその横の空いている席に座り、隣の藤崎という人間に話しかける。

「あの、芹沢 暁です。よろしく」
「・・・・・・」

暁に声をかけられたその人間は、窓の方に向けていた視線をそちらに向けた。
肩から、長く艶やかな黒髪がさらりと零れた。

「・・・・藤崎 詠律(ふじさき ありあ)・・・」
「・・・・・・・え?」

少女の言葉に戸惑う暁。
しかしそんな彼を他所に、彼女はまた言う。

「藤崎 詠律。私の名前。貴方は芹沢 暁くん。・・・合ってる?」
「あ、ああ、そう。合ってるよ」
「そう。なら、いい」

そう言うとまた少女、詠律は窓の外に視線を向けた。
不思議な子だなあ。と暁は思ったが、あまり気にも留めずにもらったばかりの教科書を開いた。
・・・全ては必然なのだと、知らないまま・・・・・・。

Re: トワイライト・カーニバル ( No.3 )
日時: 2012/01/31 18:40
名前: 織也 (ID: KuHgV/y.)

Episode03;Strange


授業の終わりを告げるチャイムが鳴ると同時に、クラスの人間達がどっと暁とゆづきに詰め寄った。

「ねえねえ初恋さん、ここに来る前はどこの学校に通ってたの?」
「芹沢君と初恋さんって知り合い?」
「芹沢君の名前って変わってるね、かっこいい!!」
「暁って呼んでもいいか?俺のことも呼び捨てでいいからさ」
「ゆづきちゃん部活とかもう決めた?良かったらうちの部においでよ」

次から次へと止むことのない質問の声に暁とゆづきは戸惑う。
しかし、悪意を感じるわけではないので二人とも丁寧に答えていく。
暁は話している合間に、ちらりと詠律の方を見た。
何故、と聞かれると上手くは答えられないが・・・気になったのである。
視線の先には、相変わらず窓の外を見つめる詠律の姿があった。
後ろ姿だけが暁の目に映る。

『こっち、向かないかな・・』

心の中で呟いた言葉。何の意味もなく、消えて言った言葉。
暁が一瞬視線を伏せ、もう一度上げると。


暁を見つめる詠律の姿があった。


暁も、詠律も、視線を外そうとはしない。
ただお互いを見つめるだけ。

『・・・俺の声が、聞こえたのか・・・・?』

動揺する暁に対し、詠律はじっと暁を見つめる。
何の感情も表わさない表情。静かに閉じられている唇。
鏡のように暁を映す、翡翠の瞳。
揺れる暁の琥珀の瞳と交わり続ける・・・。
ふいに、詠律の唇が開き、音にならない言葉が漏れた。


『............You get lost.』


「・・・・・き、暁!ちょっと、大丈夫なの?」

ゆづきの声にハッとして顔を上げる。
そこには心配そうにこちらを見つめるゆづきの顔があった。
すぐに詠律の方を振り返るが、そこには空席の椅子と机があるだけだった。

「急に真っ青になって俯いちゃうんだもん、びっくりしたじゃない。もしかして緊張してたの?」

ゆづきの声にその場にいた皆が笑った。
しかし、暁だけは笑わなかった。・・・笑えなかった。
何故なら・・・・・・・詠律の言葉が、深く胸に突き刺さったからだった。



『・・・・・・・貴方、迷子なのね』

Re: トワイライト・カーニバル ( No.4 )
日時: 2012/04/01 18:39
名前: 織也 (ID: HHprIQBP)

Episode04;Past


「・・・え、暁、藤崎さんにそんなこと言われたの?」


昼食の時間、暁とゆづきは広い中庭の隅の木陰にいた。
この時間は、違う学年に潜入した弘一と連絡を取らなければならない。
なので、他の人間は寄せ付けないようにしなければならなかった。


「いや、言われたというか・・・囁きかけられたというか・・・」
「はぁ?なんでそんなに曖昧なのよ。いつもの<シックスセンス>はどうしたの」
「シックスセンス関係ないだろ・・・」
「何々?何楽しそうな話してるんだ?俺も混ぜてくれよ」


遅れてきた弘一がどかっ。と腰かける。
ゆづきはそれに文句を言いながらも暁の話を事細かに説明した。


「へぇ・・・そんなことがあったのか」
「そうなのよ、転校初日だっていうのに・・・変な奴と隣になっちゃたわね」
「・・・・・・・・・」

暁はゆづきの問いに答えなかった。
頭の中で、得も知れない<何か>が渦巻く。
黒いもやが晴れず、晴れないその向こうで<何か>が叫んでいる。
・・・それは、まるで俺を・・・・・・・・。

「というかその子さ、」

弘一の声に思考にダイブしていた意識が浮上する。

「アブノーマラーなんじゃないのか?」

どくり。

鼓動が大きく脈を打った。
まさか。彼女が?
今日初めて会っただけなのに、なぜか心に焦燥の念が湧きあがる。

「まさか!藤崎さんと目を合わせたけど、彼女にそんな能力見られなかったわ」
「・・・それは<千里眼>の力で確認したのか?」
「当り前でしょ。憶測で物を言うのは好きじゃないの」


<千里眼>
ゆづきの能力で、人と目を合わせるだけで
相手が何を考えていて、どんな行動をとるかが見える。
そのせいで嫌な思いもしてきたらしいが、今ではこの能力を有効活用することを誇りに思っているらしい。


「じゃあその詠律って子は違うんだな。杞憂に終わってよかったよ」
「ちっとも良くないわよ!そのあと暁体調崩しちゃったんだから!!
 あれ、でも暁、よく藤崎さんの言ってることがわかったわね」
「?何がだよ」

「だって、藤崎さん英語で話しかけてきたんでしょ?あんた苦手じゃない、英語」

「・・・・あ」
「そうなのか?それはすごいじゃないか。知らず知らずのうちに苦手を克服していたんじゃないのか、暁」


言われて初めて気がついた。
確かに自分はお世辞にも得意とは言えない英語を、聞き取っていた。
・・・・そもそも、彼女が囁いていた言葉をそれだと認識していなかったかもしれない。
拒絶どころか、快くその音を俺の耳は受け入れていた。
・・・・・・・・・・・どういう、ことだ?それに・・・・・。


何故彼女は、俺が迷子だとわかったのだろう。
・・・俺に、過去の記憶がないことを・・・・・・。


「・・・暁、また昔のこと考えてるでしょ」
「・・・・・・・ああ・・・」

ゆづきは暁の顔を心配そうに覗き込む。

「あまり気にするな。時が来れば思い出すさ」
「・・・・そうだと、いいんですが・・・」


三人の間を、誰かが笑うように密やかに風が駆け抜けた。




誰もいない教室。
静寂の支配するそこに一人、佇むのは微笑を湛える者。

「ははっ。まだ寝てるのか<アイツ>は。何をやっているんだか・・・」


その者は窓の桟に手をかけ身を乗り出し、目的の場所を見つめる。
その視線の先には・・・芹沢 暁。


「早く起きろよ、暁。目を覚ませ。白昼夢はもう終わりだぞ?それとも・・・・」


勢いよく拳を振り上げ、窓に叩きつける。
辺りにガラスが散乱し、光を受けながらキラキラと地面に落ちていく。
振り上げられた手には赤い血がじわじわと滲み流れる。


「二度と起きられないように、その目を潰してやろうか・・・?」



歪んだ心。狂った笑い声。
それらを所有するのは誰か。
・・・目覚めを期待されているのは、誰なのか。


Re: トワイライト・カーニバル ( No.5 )
日時: 2012/04/02 16:12
名前: 織也 (ID: l0EYH8mH)

Episode05;Language


『いい?!藤崎さんとはもう関わっちゃだめよ!!』


昼休みにゆづきは俺にそう言った。しかし・・・・・。


「いや悪いな〜芹沢。こんな荷物持ちみたいなことさせてしまって」
「い、いえ。これくらい当然ですよ」
「物理係にこのノートの束全部を一人じゃ運べないからなぁ、じゃあ藤崎、後は頼んだぞ」
「・・・・・・・・・わかりました」


いきなり関わる羽目になってしまったのだが。


『・・・まあ、藤崎さん無口みたいだし、こちらから話しかけなければ大丈夫だろう・・・・・・』


「・・・私とそんなに話したくないの?」
「!!!!!!!!!」


また、だ。
なぜ俺の考えていることがわかるんだ・・・?


「・・・別に、話したくないのならそれでいいいけど・・・・」
「あ、いや、そういうわけじゃ・・・・・すまない」

会話が途絶え、二人の間に気まずい空気が流れる。


「・・・・なぜ、俺の考えていることがわかるんだ?」
「・・・<なぜ>」

詠律は暁の言葉を繰り返した。
暁の瞳を覗き込む。


「言葉は、<私>だから」
「・・・・・」
「言葉は私、私は言葉、だから、理解の範囲を超えるものではないの」

・・・・・・・。
さっぱりわからない。

「わからなければそれでいい。無理に理解する必要もないのだから」
「・・・・・・・・君は一体・・・」

詠律は少し口角を上げて言う。

「私は、藤崎 詠律。それ以外の何者でもない・・・・・」



詠律の言葉が、<彼女自身>が、暁の中に溶け込んでいく。
二人の間に、距離はなかった。


Re: トワイライト・カーニバル ( No.6 )
日時: 2012/04/02 23:08
名前: 織也 (ID: l0EYH8mH)

Episode06;Puzzle


「・・・・暁、どうしたの?」
「・・え?な、何が・・・・?」
「いや、あんた昨日からなんか様子が変だから・・・」


そういわれて、暁は顔を真っ赤にした。
暁に関しては敏感なゆづきがそれを見逃すわけもなく・・・。


「・・・・藤崎さんと何かあったの?」
「っ、何にもないって言ってるだろ!!!!」


暁はゆづきの手を払いのけて、学校へと走って行った。
それを、ゆづきは寂しそうな目で見つめていた。
払いのけられた手を、強く握りしめながら・・・・・。

『昨日の今日だぞ・・・・藤崎さんにどんな顔で会えばいいんだよ!』

暁は昨日のことを思い出していた。
二人きりで歩いていた廊下。
疑問しか抱いていなかった彼女に対して俺は・・・・・・。



_私は、藤崎 詠律。それ以外の何者でもない・・・・・



その言葉に強く惹かれて、憧れて、焦がれて、・・・・・・
彼女の肩を強く抱き寄せ、紡がれる言葉を封じるように・・・キスをした。



「・・・・・・・・・・・・・・!!!!!!!!!!!!!!!!」


思い出して恥ずかしくなった暁は、また顔を真っ赤にしてしゃがみこんだ。
なぜ彼女に対してあんなことをしてしまったのか。
・・・・・・史上最大の謎だ。
悩み、寝られなかったせいで寝不足の頭痛が襲う。


「・・・・何してるの、暁君」
「っ・・・・・・!!」


上から降ってきた声に驚き、顔を上げる。
そこには、思考の渦中の人物、詠律が立っていた。
何の感情も浮かんでいない瞳が、真っ直ぐに暁を見つめる。


「・・・具合、悪いの・・・?」
「いや、具合悪くは・・・・・・・・」


ない。
と言い切る前に、詠律が暁の手を握った。

どくり。
暁の鼓動が強く脈打つ。


「<あなたはどこも悪くない、痛くない、苦しくない>・・・そうでしょ?」
「・・・・え、あ・・・・・・」


不思議なことに、先ほどまでの頭痛は治まっていた。


「・・・学校、早くいかないと・・・・・・」
「あ、ああ、そうだな・・・・・・」

詠律は、暁の手を握って立ち上がるように促す。
暁もそれに応えて立ち上がる。
そしてそのまま歩こうとした・・・・しかし。


「っ・・・・・・・・・・・・・」
「!!何をするんだ、ゆづき!!!!!!!!!!!」


ゆづきが二人の間に割って入り、詠律を突き飛ばした。
詠律は地面に突っ伏した。


「貴方なんなの!暁に変なことしないで!!もう二度と関わらないで!!」
「・・・・・<関わらないで>・・・・・・」


詠律はまた繰り返し、今度はゆづきを見つめる。


「それは、無理・・・何故なら私が関わることを望むから。願うから・・・・」
「っ、私だって、あなたと暁が関わらないことを望むわよ!!」
「・・・・・・・・」


詠律は少しの間目を伏せて、もう一度瞳にゆづきを映した。


「<拒否>」
「!な、なに・・・・」

詠律の言葉にゆづきは戸惑う。

「<拒否、拒否、拒否。貴方に私は捕われない、縛られない、絡め取られない。貴方の意思を拒否>・・・・・いいよね?」
「っ・・・・・・・うっ・・・・・」


ゆづきは何も答えない。
詠律はそれを見た後、暁を見た。

「じゃあ、また学校で。暁君」
「あ、また後で・・・・・・・・」


暁は詠律を見送る。
ゆづきの方をちらりと見つめれば、険しい顔をして俯いているばかり。


『そういえば、藤崎さん・・・・・・・』


俺のこと、暁君って呼んでた・・・・・。



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