ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- それ、死ねば治るよ。
- 日時: 2012/02/27 19:29
- 名前: 暁 ◆ewkY4YXY66 (ID: khvYzXY.)
何で私、ここにいるんだろう。
楽になりたかった、だけなのに。
意味、わかなんないよ。
※ ※ ※
1話 >>1
2話 >>3
3話 >>5
4話 >>6
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- Re: それ、死ねば治るよ ( No.5 )
- 日時: 2012/02/25 23:36
- 名前: 暁 ◆ewkY4YXY66 (ID: khvYzXY.)
- 参照: not主人公視点
『3話』
あ、あの人、笑ってる。
初めて意識した時…つまり、ついさっきの彼の印象がそれだ。白鳥(シラトリ)先輩が自殺した、という内容からだんだん逸れていく校長の話。最初は、啜り泣きと驚きで溢れかえっていた体育館は、今は欠伸と小声のおしゃべりばかりが聞こえてくる。失礼だなぁ、と思いながらも、私も大分うんざりし始めて、辺りをきょろきょろと見回していた。そんなとき、目に留まったのは、特徴的な色と形のヘッドホン。確かあれは、彼のものだ。そう、ほとんどのクラスメイトの名前を覚えている私が、唯一名前を覚えていない、彼。こういう時くらい外せばいいのに、と思ったが、私も校則違反してるから、人のことは言えないなぁ。でも、じっと、真面目に校長の話を聞いている彼。真面目に聞いているはずなのに、なんだか違和感を覚えて彼の顔を見つめて、違和感の正体がわかった。彼は、
笑っていた。
しかも、よく見ると彼は、ただ笑っているわけじゃない。かといって嘲笑でも苦笑でもない。偉業を成し遂げた人を讃えるような。そうかと思えば、新たな仲間を歓迎するような。不思議な雰囲気の、笑み。普段の彼からは、想像のつかないような笑みだ。…と、いっても、私は普段の彼をいまいち覚えていないのだけれど。
「 」
…え?
校長がやっと話し終え、解散の指示が出てすぐ。微かに、彼の口が動いた。確かに、彼以外の人たちだって、小声で「終わった」だとか「帰れる」だとか、ひそひそと話している。けれど、彼は違う。絶対に違う。だって彼
ようこそ
って言ってた。
「綾部、前」
「あ、ごめん」
再び無表情に戻った彼を、しばらくみつめていたんだけど、教室に帰るために進み始めた列に、中断せざるを得なかった。少し悔しい。憎むよ、杉山。
教室に戻るまでは、あの笑顔と、ようこそという言葉の意味を考えていた。考えていたけど。すぐにもどった表情と、話が聞こえているとは思えないあの大きなヘッドホンを思い出し、少し危ない人なんだ、という結論に至った。それ以外、考えられなかった。
…て、あれ?彼って、誰、だっけ?クラスメイト、だったよ、ね?
- Re: それ、死ねば治るよ。 ( No.6 )
- 日時: 2012/02/26 00:13
- 名前: 暁 ◆ewkY4YXY66 (ID: khvYzXY.)
『4話』
少女は、目を覚ました。辺りは暗く、静まり返っている。彼女は、ひどく困惑した様子で辺りを見回した。彼女が横たわっていたのは、記憶の最後にある、冷たくて硬いアスファルトでも、夢にまで見た、美しい花畑でも、無機質な病院のベッドでもなかった。見覚えのあるそこに、少女は小さく首を振った。
ありえない。
いるはずのない場所に、もう戻って凝れないはずだったその場所に彼女はいた。後悔なんてしていなかった。だからこそ、とまどいを隠し切れなかった。
「やあ、おはよう」
唐突にかけられた声。振り返ろうとした瞬間、身体の自由が奪われ、視界も何かに遮られた。背に触れる体温から、自分が、後ろから抱きすくめられるような格好だと理解した少女は、羞恥に顔を染めた。
「ねぇ、貴方、シラトリサユリさんだよね?」
耳元で聞こえる、若い少年の声。聞き覚えのあるその声に、少女はますます困惑した。しかし、状況を理解するより先に、逃げなくてはならない。本能的にそう感じ取った少女は、少年の問いかけに答えることなく、少年の腕から抜け出そうともがく。しかし、少年の力は強い。まるで、“人間ではない”かのように。
「ははっ。暴れないでくださいよ、センパイ。せっかく、“こっち側の住人”になったんですから」
少年が笑う。その、どこか乾いたような笑い声に、少女は確信を持った。声、口調、笑い方。
彼は、あの、ヘッドホンの後輩だ。
「放しなさいよ!こちら側って、なによ!」
少女は、ありったけの声で叫ぶ。これだけ叫べば、家族の誰かが、気付いてくれるだろう、と。しかし、彼女の声が、誰かに届いている様子はない。
「ははっ!センパイが取られたのは、声ですか?こりゃあ丁度いい!“食いやすい”!」
その言葉と共に、舐めあげられた首筋。少女は、嫌悪感に涙を浮かべる。
「何、なのよ!」
少女が叫ぶ。それと同時に、彼女の体が宙を舞う。不意に襲った浮遊感に、思わず目を瞑る。落ちた先は、ベッドの上。衝撃に咽る少女を、少年は押し倒し馬乗りになった。
「ほら、大人しくしててくださいって」
少年の、小柄なヘッドホンと赤い瞳が月明かりに光って見えた。その冷たい輝きに、少女は恐怖を覚える。動けなくなった彼女の首筋に、牙が突き立てられようというときだった。
バン!
大きな音がして、部屋の扉が乱暴に開け放たれた。二人は驚いて、そちらを見る。少年の手は、少女の首下に置かれたままだ。開け放たれた扉の前に立っているのは、今、少女の目の前にいる少年と、ほとんど変わりない体型の人影。少年は、その影を、忌々しげに睨み付ける。少女は小さく息を呑んだ。月明かりに照らされているにも関わらず、ぼんやりと歪んで見える影。そこで、やけに鮮明に光っているのは、非日常。人影が握るそれの正体を、少女が認識した。と、同時に鳴り響く発砲音。思わず目を瞑り、動けずにいる少女の腕をつかむ何か。少年かと思い、少女は手を引く。つかんでいる方の手は、面倒そうに、しかし優しく少女の腕を引いた。その力に、少女はそっと目を開ける。そこにいるのは、先ほどの人影。相当近い距離にいるはずなのに、人影は、人と形容するにはぼんやりとして見えた。
「う…」
撃たれたはずの少年が、うめき声を上げる。ふるえる少女に、立とでも言いたげに人影は彼女の腕を強く引いた。戸惑う彼女に、少年はめんどくさげに叫ぶ。
「馬鹿か、早く立て!」
凛、と響いた声は、酷く中性的だった。その美しい声に、聞きほれている少女の手を、人影は強く引く。少女は、ふるえる足で立ち上がると、半ば曳きずられるように走り出した。
- Re: それ、死ねば治るよ。 ( No.7 )
- 日時: 2012/02/28 16:39
- 名前: ステ虎 ◆hsbObi13GY (ID: x7Zm.RVc)
ども。
最初のネガティブっぷりはwと思ったら、どうも死の世界(?)のお話なのでしょうか?
続きが気になりますw
- Re: それ、死ねば治るよ。 ( No.8 )
- 日時: 2012/02/29 23:31
- 名前: 風猫(元:風 ◆Z1iQc90X/A (ID: R33V/.C.)
初めまして暁様。風猫と申します。
中々の文才で羨ましいですな。そして、一話一話が短いながら完成されていて雰囲気が出ていて良いです!
倫理的というか諦観的な中に何かがあるような……続きが気になりますね!
- Re: それ、死ねば治る ( No.9 )
- 日時: 2012/03/02 18:42
- 名前: 暁 ◆ewkY4YXY66 (ID: khvYzXY.)
>ステ虎様
はい、ハイパーネガティヴです。
死の世界…どうでしょうね。
ありがとうございました。
>風猫様
初めまして。お名前はよくみかけます。
なかなかの文才、ですか。ほめ言葉として受け取っておきます。ありがとうございます。
一話一話が短いのは、完全に仕様ですね。長いの苦手なんです。
諦観的…というよりはニヒリズムですかね。お察しのとおり、何かはあります。
またよろしければ読んでください。
コメント、ありがとうございました。
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