ダーク・ファンタジー小説
- Re: 神が導く学園生活 ( No.8 )
- 日時: 2022/01/24 11:22
- 名前: ベリー ◆mSY4O00yDc (ID: ae8EVJ5z)
《クロ》
ヌルヌルしている。手足がツタで縛られ、このヌルヌルしている液体は消化液だと本で見た事がある。
そしてこの植物の名前は幻影草 。巨大な葉が重なり合っている植物で、全生物が食物対象。獲物をトラウマから救い出す感覚の電波を出して誘い込み、捕まえるとヌルヌルの消化液を出し獲物を溶かす。そして消化中。獲物を暴れさせないようにトラウマを見させるのだ。そのため別名トラウマ草とも呼ばれる。ちなみに雷系統の植物だ。
って、知識をひけらかしてる場合じゃない!
俺の記憶が正しければこれからトラウマを見せられるんだ!
俺はこのまま死んでしまうという漠然とした不安と底知れない恐怖が襲ってくる。
するとどんどん意識が遠くなって言って……
俺はそこで気を失った。
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生まれた時。俺は純血の牙狼族の母のお腹から生まれた。母は高貴な貴族に飼われている牙狼族。父親はその飼い主だ。
そのため俺は人間と牙狼族のハーフということになった。
俺にも兄弟が居た。4人ほど。しかし、4人全員異型で、目が1つだったり、立つ牙狼族だったり、魔素が暴走したり。兄弟の中で唯一人型で、知能も人並みにあり、気が抜いたら出てきてしまう耳としっぽ以外を除けば人に見える見た目だった。飼い主である俺の父は俺の事を大層気に入ったようで、他の兄弟達は殺されてしまった。そして、母親である牙狼族に乱暴し続けていた飼い主の父。ついに母はキレたのか父に襲いかかるが、母は父に殺されてしまった。能力のリミッターを外せばあんなクズ父なんて一瞬で殺せるが、それをする前に殺されてしまったのだ。
それ以来、俺に対するあたりも強くなり、毎日虐待される日々を送っていた。
ある日、噂を聞いた貴族が通報したらしく、父は逮捕された。そして俺は貴重な牙狼族のハーフであるため、国から大きな支援を貰いながら生活していくことになったのだ。
しかし今でも離れない。異型でも愛し合った兄弟達が殺されてしまう瞬間。兄弟が俺だけになっても真摯に育ててくれた母親が殺される瞬間。
許さない。許さない。許さないっ!
しかし、兄弟、母の仇である父もこの世に居ない。絶滅危惧種の生物を殺した上、子供に虐待をする。そして、牙狼族のハーフでも人権はあるらしく、俺らの兄弟を殺したことにより、殺人、虐待の罪を問われ死刑にされてしまったのだ。
あの時俺はどうしたら良かったんだ?これからどうしたらいいんだ?
なぁ。教えてくれよ母さん。皆。
俺の心が悲しみの濁流で溢れてくる。そして頭がどんどん白に覆われていき……
ー何も考えられなくなった。ー
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《コウ》
「くっ、何この葉っぱ!ツルツルして気で引き裂けないんだけど!」
タミが嘆きながら気魔法を連続で出している。そんなにだせる魔素はどこからきてんだ。
かく言う俺とラナは葉に相性はいいためスムーズに葉をどかしていく。
俺たちは今、クロが囚われているであろう幻影草を攻撃している。葉をどかしている途中。変なビジョンが頭に流れてくる。これは…クロの記憶?
「え?え?クロの記憶が頭に流れてきてるんだけど!どゆこと!」
タミが魔法を辞めドタバタとしている。とりあえず魔法を続けてくれ。
それにしてもなんでこんな映像が脳内に流れてくるのか。
「幻影草は……自己防衛のため、消化を妨げるものには……トラウマを見せる。だけど、幻影草も……そんなに器用じゃない……だから消化中の人物のトラウマを見せるの。」
なんだそれ。残念な生き物図鑑に乗りそうな性質。それにしてもクロが牙狼族のハーフで、こんな壮絶な過去があったとはな。少し同情するぜ。
すると
「グァァァァァァァァッ!!」
何かの、狼の叫び声が聞こえた。なんだ?!奇襲か?!
すると、クロが閉じ込められていたであろう場所から猛スピードで葉を破りながらとっしんしてくる。俺たちはそれを辛うじてかわす。
「何何!一体なんなの!」
タミが叫んで余計混乱する。そんなん俺が聞きていわ!
目の前には、髪の毛が逆立ち、制服は所々破れ、黒髪に耳としっぽを生やした俺らの2倍ある身長の化け物がいた。
いや、化け物……じゃない?この姿には見覚えがある。もしかしてコイツ……
「「「クロ……?」」」
3人の声が重なった。そう。目の前にいる化け物はクロだった。
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