ダーク・ファンタジー小説
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- 理想郷の通行証
- 日時: 2015/01/21 21:02
- 名前: 御砂垣 赤 (ID: UIcegVGm)
はじめまして、だと思います。御砂垣赤です。
至らないところが多いと思いますが、宜しくお願いします。
※以下注意事項
・あらし、パクリ等やめてください。
・更新が遅いです。週一程度を目指して頑張ります。
・全体的に文章が拙いです。文才欲しいナ。
目次
legend>>1
0,only orthodox story>>2
1,nice to meet you>>5->>8
2,the ignorance is a crime>>9->>12
3,foreign person>>13
memo
番外,455・2
0,1069・5
1,7138・24
2,11575・41
3,2552・9
total,22334・79
- Re: 理想郷の通行証 ( No.1 )
- 日時: 2014/03/21 19:49
- 名前: 御砂垣 赤 (ID: atRzAmQi)
legend
その村にとって、湖は神聖且つ重要な物であった。
そしてそれを護るための様々な取り決めが存在した。
湖に舟を出してはならない。
湖から水を引いてはならない。
湖に流れる川を止めてはならない。
湖から流れる川を止めてはならない。
湖で魚を捕ってはならない。
湖にゴミを捨てるなど以ての外。
その他諸々の『掟』があった。
破った者には人を殺した以上の極刑が処される。当人は勿論、前後三代の親族さえ危うくなるのだ。
村人たちは、敬意と畏怖と恐怖によってその『掟』を守り続けていた。
唯一絶対神の様に村に君臨し続ける『掟』。その総歴は村の想歴に等しいという。
『掟』は絶対。『掟』は常識。『掟』は基準。『掟』は教訓。『掟』は隣人。『掟』は番人。『掟』は裁き。
完全無欠、唯一無二、一罰百戒、春蘭秋菊、一蓮托生、子々孫々、永遠不変、天地開闢。
半ば催眠に似たその固定概念を破るものなど居はしない。それが、村人共通の確信でもあった。
────暦上雪の降る唯一の月、雪月。
数名の村人は、身篭った一人の女が湖へ漕ぎ出すのを見た。
legend=昔話
- Re: 理想郷の通行証 ( No.2 )
- 日時: 2014/03/28 08:38
- 名前: 御砂垣 赤 (ID: mazIWFF0)
0,only orthodox story
「すまんな」
低くしわがれた声が響く。
私とお爺ちゃんしかいないこの部屋だ。お爺ちゃんの声に決まっている。
けれど、その本当に申し訳なさそうな声を本当にお爺ちゃんの物だとは思えなかった。
失礼だけど。
「…………どうしたんですか。貴方らしくもない」
うつむき加減のお爺ちゃんにそう言えば、お爺ちゃんは俄かに顔をあげて恨めしげにこっちを見る。
小さい頃は睨まれると足がすくんでしまったが、そろそろ威厳は無くなってきている。あんまり怖くない。
「言ってくれるな、チビ餓鬼」
そしてお爺ちゃんはいつもどおりに戻った。
それがなんとなく嬉しくてつい胸を張ってしまった。
「それでこそ、何時もの貴方です」
「…………そこに直れ」
直るわけないじゃないですか。
お爺ちゃんはごほんと一つ咳払いし、ぽつりと零した。
「しかし…………本当にすまなかった。本来ならばこんなことはしたくはないのだが──」
「仕方が無いのですよ」
慚愧懺悔が始まりそうになったので慌てて声を重ねた。すこし上擦ってしまったが、目的は果たせたのでよしとしよう。
この人は本質的に優しすぎる。それこそ、マフィアのボスなんて似合わないくらい優しい人なのだ。良心の呵責がどれだけのものか、口を開かずとも伝わってくる。
「仕方が無いのです。このような能力、気付けなかった私にも罪はありますし、なによりあなたに責任があるとは思えません。これは私の問題です」
「……しかしだな」
「しかしもなにもありません。寧ろ感謝しているくらいです。こんな檻のような場所を抜けて、外の世界で自由に過ごせるんですから」
もちろん外に出て順風満帆、謳歌謳歌と過ごせるなどとは思ってはいない。“名前”をもらった以上一般人には想像もつかないような現象が待っているだろうし、なにより今から漕ぎ出す世界は怪物揃いの危険な場所だ。
一説によれば“そこ”の平均寿命は成人に満たないとか。
しかし、
「私は、今まで育てて頂いて、あなたに感謝しているんです。笑顔で見送っていただけませんか?」
するとしわがれた老人は、静かに瞠目して静かに微笑むのだった。
「口が達者になったな」
「あなたの影響です」
「口が減らなくなった。嗚呼そうか、こいつは親の感情か」
「ふふ、いつかにジジくさいと言っていたのは撤回しましょうか」
「む?」
なので私も、頷いてから微笑み返すのです。
「ただの親馬鹿です」
「……そうか」
不器用な親へ。
私は、あなたより長生きすることであなたを見返し、あなたに孝行して見せます。
only orthodox story=オーソドックスなだけの話
- Re: 理想郷の通行証 ( No.3 )
- 日時: 2014/03/21 21:26
- 名前: 彼岸 (ID: xrNhe4A.)
御砂垣 赤さん、初めまして!
彼岸と言います!
(同じシリダク板で、駄作を生み出していますw)
お話、読ませて頂きました!
一言で言うと、引き込まれる文章、です。
大人びた文章でもあり、私的に
読み進むのが楽しいです^ ^
僭越ながら、応援させて頂きます!
続き、楽しみにしています!
また来ても宜しいでしょうか?
- Re: 理想郷の通行証 ( No.4 )
- 日時: 2014/03/22 07:53
- 名前: 御砂垣 赤 (ID: atRzAmQi)
はじめまして彼岸さん。
こんなもん読んでくださってありがとうございます!感謝感謝です!
応援ありがとうございますm(*_ _)m
ご期待に添えるよう頑張りますね♪
また来てくれるんですか?
待ってます!
- Re: 理想郷の通行証 ( No.5 )
- 日時: 2014/03/26 08:48
- 名前: 御砂垣 赤 (ID: XMukwujP)
1,nice to meet you
東端の港街、リスタレク。
王都よりはるか東に位置し、入り組んだ街路と河路で有名な街だ。
昼間は市場が大通りを占めるが、日が落ちると霧が立ち込める為外を歩くものは殆どいない。両極端な街だった。
「だぁからさぁ。もうちょっと、せめてもう二、三十分は休んでいけよな。まだ本調子じゃないでしょ?」
「だあっとけ。俺は何処ぞのMr,ボイコットとは違って忙しいんだよっ」
そんなリスタレクの長閑な昼下がり。
市場、店の多い表街に対し住宅の多い裏町においての異色、小さな喫茶店内に二人の男がいた。
片や言葉に似合わず必死の形相で引き止めにかかる男と、片や青筋を立てて引きずりつつも扉に手を伸ばす隻腕の男。
馬力が勝るのか、優勢なのは出ていこうとする方だった。
「Mr,ボイコットとはなんだ! 僕は仕事を選んでるだけだよ」
「それを言って片っ端から断ってんだ。大差ないだろ、Mr,ボイコット」
「そんな不名誉な敬称御免被る!」
「じゃあ仕事をしろぉ!」
見目十八前後に見える彼等はずるずる音を立てながら、会話と言う名の言い合いを続ける。
コートのフードが落ちるのを気にしながら進もうとする男と、コートを掴んで踏ん張る男。机に手をかけて進む足掛かりにする男と、柱に手を回して行かすまいとする男。
そして終いには軍用ブーツを真後ろに振り上げて腸を抉るように踵で蹴りあげる始末。
「ふげぇいっ?!」
無様な声をあげた男は敢え無くコートから手を離し、腹を抱えて床に伏すのだった。
「ったく。面倒な事しやがって」
「……ほんちょーしじゃないのはほんとだろーに」
眼下で肉塊が鳴く。
コートの男はフードをかぶり直し、肉塊を一瞥してそそくさとドアノブに手をかけた。
そんな男の対応になれきってしまった元肉塊は、丸くなって転げた状態で目だけでコートの男を見上げ、──疑問符を浮かべた。
常時の彼であれば、Mr,ボイコットを始末すれば真冬だろうがなんだろうが床に転がして放置してお怒り文句たらたら流してサヨナラだろう。
だが、彼は身支度を整えた上で触れたドアを開くことはせず、どころか振り向き更にこう言ったのだ。疑問符も出よう。
「……世話になった。悪かったな」
「悪かったと思うなら蹴らないでよ。え? どうした?」
疑問符より先に切実な要望が出た。誰しも自分に嘘などつけないものなのだ。
コートの男は期限が悪そうに、訝し気に顔を顰める。失言を悟った男は、しかし訂正する気はおきなかった。
床に胡座をかいてキャスケット帽を拾って言う。
「え。だってお前の口から謝礼が出て謝罪がでるなんてさ、」
有り得ないでしょ。ホントにもう少し寝ていきなよ。と、言おうとして言えなかった。
キャスケット帽の男はぴしりと音を立てて固まる。
何故なら、滅多に笑わないその男の顔に苦笑が浮かんでいたから。
何故なら、嫌な予感がしたから。
何故なら、……開け放たれた扉いっぱいに見える筈のリスタレク裏街の街並みは、大小の黒い異形に埋め尽くされていたから。
「引き連れてきちまったみたいだからな」
「……うっそぉ」
さーっと音を立てて二人の血が引いていく。
轟音が響き始めた数分の後、幼馴染みの姿が消えたことに気付いたMr,ボイコットは、“掃除”の途中であるに関わらず手を止め、仰ぎ立ってその名を叫んでいた。
「──ギルの馬鹿ーっ!」
瞬間、あるべき質量のない左袖がはためくのが視界を掠る。
追いかけて文句を言いたいのは山々だったが、泣く泣く諦めて“掃除”を続ける他無かった。
「悪いな、ライブラリ」
悪びれた様子もなく呟いて、男は路地に消える。