ダーク・ファンタジー小説
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- 君の涙に小さな愛を。【完結】
- 日時： 2016/12/24 14:46
- 名前： 榛夛 ◆OCYCrZW7pg （ID: MuN5clNF）
自由気ままに小説を書く人です。榛夛と漢字で書いて「はるた」と読みます。初めまして。
２０１５年夏の小説大会で金賞を頂きました。ありがとうございます。更新再開しましたので、また宜しくお願い致します。
虐待を受ける少年少女の闘いの記録です。生きることは死ぬことより苦しい、現実はそんなに甘くない。生きたいと願うことは死にたいと願うことと等しい。そういうニュアンスの小説です。苦手な方は閲覧を控えるように宜しくお願い致します。恋愛要素たまにあります。
お陰様で参照が４０００を超えました。ご愛読ありがとうござます。
◆登場人物 >>11
◇第一章 >>03
◇第二章 >>30
＊2015,01/11 執筆開始
＊2015,02/02 参照100突破
＊2015,02/13 参照200突破
＊2015,02/24 参照300突破
＊2015,03/22 参照400突破
＊2015,04/06 参照500突破
＊2015,04/25 参照600突破
＊2015,05/10 参照700突破
＊2015,05/18 参照800突破
＊2015,06/02 参照900突破
＊2015,06/10 参照1000突破
＊2015,06/20 参照1100突破
＊2015,07/01 参照1200突破
＊2015,07/19 参照1300突破
＊2015,08/07 参照1400突破
＊2015,08/25 参照1500突破
＊2015,09/02 参照1600突破
＊2015,09/06 執筆終了
＊2016,01/11 執筆再開
＊2016,01/21 参照2800突破
＊2016,01/31 参照2900突破
＊2016,02/09 参照3000突破
＊2016,02/20 参照3100突破
＊2016,02/28 参照3200突破
＊2016,03/10 参照3300突破
＊2016,03/20 参照3400突破
＊2016,04/03 参照3500突破
＊2016,04/24 参照3600突破
＊2016,05/10 参照3700突破
＊2016,05/25 参照3800突破
＊2016,06/10 参照3900突破
＊2016,06/29 参照4000突破
＊2016,07/14 参照4100突破
＊2016,07/30 参照4200突破
＊2016,08/14 参照4300突破
＊2016,08/27 参照4400突破
＊2016,09/17 参照4500突破
＊2016,09/26 参照4600突破
＊2016,10/05 参照4700突破
＊2016,10/13 参照4800突破
＊2016,10/26 参照4900突破
＊2016,11/08 参照5000突破
＊2016,11/14 参照5100突破
＊2016,11/25 参照5200突破
＊2016,12/02 参照5300突破
＊2016,12/15 参照5400突破
＊2016,12/20 参照5500突破
＊2016,12/23 参照5600突破
- Re: 君の涙に小さな愛を。 ( No.94 )
- 日時： 2016/12/22 11:59
- 名前： はるた ◆OCYCrZW7pg （ID: zG7mwEpd）
- 参照： 残り１話となりましたー！！！
Present08「君の涙に小さな愛を。」
お母さんの容体が悪いと、秋になってからはそればかり聞いていた。お母さんの良き相談相手の堀先輩は、病院に通ってくれ、私やお兄ちゃんよりも私のお母さんのことを心配してくれた。
もうすぐ死ぬというのはやっぱり本当みたいだ。ガン、らしい。それを聞いたときは今は亡き祖父のことを思い出した。元気だった彼もお母さんと同様にガンだった。私が小学生の時に亡くなったのだが、それまでぴんぴんして元気だったはずの彼が、どんどんと衰弱していく様子はその頃の自分にとっては恐怖のようなものに近かった。
病院で母の顔を見た。あまり調子はよくなさそうだが、自分の足でまだ歩けている。まだ、元気だ。私は病院まで行くことが出来たものの、病室に入ることはできなかった。たぶん、まだ怖かったのだ。
「へぇ、やっぱりなずなは白が似合うな」
「へぇ、ってなんですか。もっと褒めてくれてもいいんじゃないですか、あれですか、堀先輩は女の子のおしゃれを褒められない照れ照れチェリボー」
「お前はどうして後輩のくせに俺をそんなにいじれるんだよ」
堀先輩の告白は、やっぱり聞かなかったことにした。
彼の一時の気の迷いなきがしたからだ。私が堀先輩の人生を奪うことなんてどうしてもできなかった。あの頃みたいに依存して束縛することなんてもういやなのだ。
「ほらー、やっぱり似合うと思うんですけどね。自分で言っちゃなんですけど」
私は今、白いドレスに身を包んでいる。俗にいうウエディングドレスというやつだ。十六にはなったものの、このドレスとはまだまだ無縁な無垢な私でもお化粧をすれば、それなりに見えるものだ。
ずっとお願いしていたこと。堀先輩に再会した日、私が堀先輩にお願いしたことがこれだった。
お母さんに花嫁衣裳を見せてあげたい。
そんな子供じみた妄想が現実になるように、堀先輩は手伝ってくれた。病院側に説得して、ウエディングドレスを貸し出してくれるところを探した。ウエディングドレスなんて高いから宮下先生に安く借りれるところを教えてもらった。今更ながら、あの人の人脈は化け物だと思うし、一応今度会ったときは感謝しなくては。
白いドレスでお母さんと再会だなんて笑えるけれど、私にできることなんてそれくらいかなってそう思った。怖い、まだその気持ちは拭いきれないけれどそれでも、私を今まで育ててくれた彼女には感謝しきれない。ありがとうを何回言っても足りない。
私はあの時の弱くて脆くて、すぐに壊れるような存在じゃないんだよって。今ならそう思えるから。
「お母さんっ」
あの人の名前を呼んだ。どくんと心臓の音が大きく響いて、なぜか涙が出そうだった。
お母さんは「なず、な」と、びっくりしたような声で、それでも優しく暖かい声で私の名前を呼んでくれた。私がずっと呼んでほしかった名前。
涙は見せなかった。化粧が崩れるなんて言い訳だ。ぐっと我慢した、お母さんがちゃんと泣けるように——私が泣いたらだめだと、何度も何度も呪文のように唱えて、お母さんの涙の後の笑顔を見たら、やっぱり私も泣いてしまった。
＊＊＊
「お疲れ、なずな」
「え、あぁ、うん。はい、ありがと、う、ございました」
着替え終わって私が部屋から出てきたのと同じタイミングで堀先輩は私のもとに現れた。
「なずな、あのさ」
その声は、やっぱり心地がいいのだ。泣いている私にそっとハンカチを渡すジェントルマンな堀先輩は昔から変わっていなかった。
「三咲が言ってたんだ。後悔するなって、もう自分に嘘つくなって」
「ミサさん、が……」
三咲さんは今から一年ほど前に亡くなった。最後は「なずなちゃんって、本当最低」と笑って私のことを罵って逝ってしまった。
後悔するな。ミサさんが一番言いそうなことだ。
くすっと笑って私はハンカチで涙をぬぐった。いつお母さんが死ぬかわからない状況は変わらないけれど、私ができることはもう全部やった。何時間かわからなくなるくらいいっぱい喋って、もう一生分の会話をした気がする。
もう帰ろうと私が言ったときだった。静かに彼は、また私たちの関係を変えた。
「俺、なずなのことが好きだよ」
そんな、優しい言葉は要らなかったんだ。
- Re: 君の涙に小さな愛を。 ( No.95 )
- 日時： 2016/12/24 15:15
- 名前： はるた ◆OCYCrZW7pg （ID: MuN5clNF）
- 参照： 最終話です。
*
「キリトって本当に馬鹿だと思うんだよねー。もうすぐ死ぬからだからそれまで付き合ってとか言われて本当に付き合っちゃうところとか、あぁいつかこの子は誰かにすごく傷つけられて動けなくなっちゃうかもって思った」
点滴の管につながれて、もう動けなくなったミサさんは笑ってそう言った。
「だから、なずなちゃんの言ってたことは間違いじゃないのよ。あの子は弱いから、だから私をずっとそばに置いてた。罪悪感からだったの、全部さぁ。それでも私はいいと思った。それに漬け込んでひと時の幸せを噛み締められればって思ったの」
ミサさんは最後まで強がっていた。心の奥底、芯まで真っ直ぐで堅い彼女は私の憧れでもあった。「キリトを守ってあげてね」と言ったミサさんはそれから一か月もしないうちに亡くなった。きっとミサさんは今まで堀先輩がどれだけ辛い思いをしてきたかも私以上に知っていたんだ。だから、堀先輩を守ろうと必死だったんだ。
付き合おうと彼女が言ったのもきっと好きだからとかそんな単純なことじゃなかったんだ。自分が生きてる間は、堀先輩を守ってあげたい、そう思ってたんだろう。
お葬式に出席した時、お墓参りに行ったとき、心が酷く痛かった。私はミサさんとの約束を守ることなんてできないのに。堀先輩を唯一守れるのはミサさんだけだったのに。死人には何も届かない、分かっているのに私は彼女に縋っていた。
私はこれから、どうすればいいんですか。
やっぱり、ミサさんは何も言ってくれないんだよね。
青空の下、彼女にまたお花を手向けた。
＊＊＊
「俺、なずなのことが好きだよ」
今度は聞こえないふりは出来なかった。目の前でされた告白に、私は息を呑んだ。
病院のロビー。私たち二人しかいない空間で、先輩の声だけが静に響いた。
「嘘だ」
それは勘違いだと私は知っている。きっと堀先輩も私と同じなのだ。
一緒に居るうちに変に勘違いしちゃうアレなのだ。きっと。
感情だけがぐるぐると回転して、頭はそれに追いついてくれなかった。私は何もなかったかのように歩き出す。病院から出ると、外は青空が広がっていた。澄んだ空気を吸い込んで、私は大きく深呼吸をする。
「嘘じゃないよ」
私の後ろでまた声がした。
私は振り返って堀先輩を見る。少し顔の赤らんだ、りんごみたいなほっぺ。
「ずっと俺は、なずなを守りたいよ」
堀先輩の告白は卑怯だ。ミサさんと同じことを言う。私が、本当は私が守らなきゃいけない存在なのに。私はもう守ってもらわなくても大丈夫なのに。こんなに、強くなったのに。
拳をぎゅっと握った。感情を落ち着かせようと必死に唇を強く噛んだ。痛い、血の味がした。
堀先輩の瞳は、変わらず私だけを映していた。儚げなその表情に、私は心の制御が出来なくなってしまうのだ。
あぁ、どうしてこんなに心臓がばくばく音を立てるんだろう。どうしてこんなに苦しんだろう。どうしてこんなに涙が出るんだろう。どうして私は……
こんなに堀先輩のことが、まだ好きなんだろう。
「ほり、せんぱいっ、は……意地悪っだ……」
涙がぽろぽろと瞳から落ちていって地面に染みた。
お互い弱い存在の私たちは、強くなりたくて必死にもがいて、それでもどうしようもない現実にこの先も苦しむのだろう。
私たちは子供だ。弱っちい子供なのだ。
それでも望む。君の傍に居たいと。
「なずなの方が、意地悪だよ」
抱きしめられたその温度。どうしようもないくらい大好きな彼の暖かさを感じた。
堀先輩の隣にいる為に、私はゆっくり大人になろうと思う。
□ おわり
- Re: 君の涙に小さな愛を。 ( No.96 )
- 日時： 2017/08/13 18:05
- 名前： はるた ◆OCYCrZW7pg （ID: kXLxxwrM）
- 参照： 今までありがとうございました。
◯あとがき
「君の涙に小さな愛を。」が完結いたしました。
読んでくださった皆様、ありがとうございました。
シリダクに始めて来て書いた小説ですので、とても思い入れが深い作品となりました。昨年の小説大会では金賞を頂き、大変うれしかったです。
この作品のメインテーマは「児童虐待について」なのですが、最後の方は結構それを無視して書き進めてしまいました笑 ですが、児童虐待は年々増え続け、私もその痛みを知っている一人でございます。一時保護されたときに、親に殴られたり蹴られたりしていたことが「虐待」であったことを知り、正直「虐待」と感じられなかった自分がとても恐ろしかったです。虐待はループで、特に児童虐待の場合は殆どは両親からの虐待、自分の本当の親からの暴力です。例え苦しくて辛くても、親が殴ったことに関して「ごめんね」と何度も何度も謝るとこちらも自然と許してしまうのです。
昔お世話になっていたセンターの先生(カウンセラーの先生)にもそうなる子が多いと聞きました。ドメスティックバイオレンスもそんなことが原因で離れられない、そういうものらしいです。
少しでも児童虐待について考えるきっかけになっていただけたら嬉しいです。
またそういう関連で苦しんでいる子には「助けてあげたい」と思うよりは「話を聞いてあげたい」と思っていただきたいです。それだけでも心の具合は良くなります。
なずなと堀先輩の番外編等もまた時間が出来れば書きたいなと思っています。
その時はぜひ、またこちらのスレッドに足を運んでいただきたいなと思います。
約二年間、ほんとうにありがとうございました。
2016,12/24 はるた
- Re: 君の涙に小さな愛を。【完結】 ( No.97 )
- 日時： 2016/12/25 14:14
- 名前： とりけらとぷす （ID: AxfLwmKD）
お久しぶりです、とりけらとぷすです。
まず、完結おめでとうございます。
私がはるたさんの作品に出会ったのは去年の夏頃だったでしょうか。初めて読んだ時、ものすごく衝撃的で、授業に集中できなかったのを覚えています。
休み時間に見るべきでなかったと少しばかり後悔さえしました（笑）
私は多分人より正義感の強い方だと思います。多分、世に言う真面目なのでしょうね。虐待とか、戦争とか、差別とか……色々なことを知ったり、映画で見たりする度に、その事を必死に考え、自分に何ができるだろうと考えました。友人は「そんなの自分に関係ない」と笑いましたが、私は密かに腹を立てていたものです。
はるたさんの作品を読んで、もう一度考える機会をいただけたこと、本当に感謝しています。
また、この作品は私の生きる励みにもなりました。何か辛いことがあった時、悲しいことがあった時、この作品が更新されているのを見て安堵したことが何度もあります。この作品を読んで、また明日も頑張ろう、私なら大丈夫だと思えたのです。
なずなと堀先輩はそれぞれ悲しい事情を抱えているにも関わらず、それを鮮明に描きすぎず、前へ進む姿が素晴らしかったです。鮮明に描きすぎず、というのは、悲しいところばかりを書くのではなく、という意味です。
この先何があっても、この二人なら大丈夫。何だかそんな気がします。
この作品に心を奪われたのは、はるたさんの作品の内容が私の好きな作家さんに似ていたのも一つだと思います。瀬尾まいこという作家をご存知でしょうか。よかったら、読んでみてください。
はるたさんの巧みな文章、表現力を本当に尊敬しています。ファンの一人として、ただただ、この作品に出会えて良かったと思います。
長くなってしまいましたが、完結おめでとうございます。次にいつか番外編を更新された時には必ず見に来ますね(*^^*)
- Re: 君の涙に小さな愛を。【完結】 ( No.98 )
- 日時： 2016/12/29 22:23
- 名前： 朔良 ◆oqxZavNTdI （ID: raanz7.S）
こんばんは、朔良です。
二年間お疲れ様でした。完結おめでとうございます！
駆け付けるのが遅くなって申し訳ないです泣
まずは感想をば。
なずなちゃん丸くなったなー……と思いました笑 人そのものを毛嫌いしていたような雰囲気がある、という印象だったのですが、綺麗な綺麗なお兄ちゃんとの気持ちの上での卒業やお母さんにウエディングドレスの姿を見せるなど、人を好きになるために向き合う様子がすごく印象的でした。
堀先輩ぐいぐいきますね！笑 知らぬ振りをされてからの二度目の告白は流石だと思います(褒めてる)
なずなちゃんが立ち止まった時に堀先輩が手を引いて、暗闇の先まで先導していってくれたら、と思います。また、先輩が泣いている時にはなずなちゃんが大丈夫だって抱き締めてあげてくれたら、と思います。相手が弱っている時にお互いを導けるだろう素敵なカップルだと思いました!!
いつか本当の意味でウエディングドレスを着ることがあるといいですね(*´∀｀)
上手くまとめられずすみません泣
この作品は新たなはるたちゃんの一面を見られた作品でした。きっと、はるたちゃん自身にとっても読者にとっても大切なものだと思います。
素敵な作品ありがとうございました。
本当にお疲れ様でした‼
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