ダーク・ファンタジー小説
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- BULLET LIFE【完結】
- 日時: 2017/03/04 12:41
- 名前: ゼフィルス (ID: w7lzUlmG)
BULLET LIFE〜序章〜
何故こうなった、何があった、事の発端は何だ。
何でこう、日常は脆いのだろう、嗚呼、帰りたいよ...。
東日本 ○月○日 全ては此処から始まった
......眩しい、もう朝か...学校行かなきゃぁ。
少年は朝日に照らされて眼を細めた。
「眠いよぉ〜兄ちゃん...て、あれ?もういっちゃたの」
時計を見ると7時半、遅刻寸前だ。
「あああああぁぁぁぁぁ!遅刻だ!」
すると誰かの声がした。よく聞きなれた声だ。
「俺は休校日だよ、歩」
兄はおっとりした口調でそう告げた。
「歩、ご飯(いらないっ!)
そう言って少年は机の上に散乱した物を端に寄せ、
登校のための支度を始めた。
〜数分後〜
「行ってきまーす」
天真爛漫な少年は学校と無邪気に向かった、
この後の悲劇を知らぬまま......
緑川 歩 158cm 45kg 3/26生まれ AB型
今年、中学三年生になったばかりだ
......童顔ゆえ女や一年に見えるが。
少年、歩は学校へ向かうべく、足を早めた。
「いーそーげー、てーらーやーばーすーw」
なんてマイペースなんだ。
歩は学校へ着くと友人に挨拶をし、席に着いた
「おはよ〜」
今日も1日平和だといいな〜...
歩はまだ日常を信じているようだ......
哀しい末路も知らないで......
〜全授業終了〜
歩は、全ての授業が終わると
鞄を持って急いで家に戻った。
アスファルトで出来た道路に軽快な足音が響き渡る。
「ただいまー!...て、何これ?」
足元に謎の宅配物がある、歩宛の。
「俺宛?」結構重いな...
何だろうと思いながらも階段を上がり、
中身は何か考える。やけにガムテープで厳重に保管されている、どう考えても怪しい。
部屋に入ると鞄を降ろし、箱を置き、
「よし、開けよう!」
と、勢い良く開ける、すると中は...
「......。」
銃だった.........
「は?!」
嘘だろ...しかも二丁、弾有りで!
「どーしよーどーしよ!そうだ!寝よう寝て忘れよう!あ!今日の課題やってない!いや、これは夢だ、うん夢、課題も銃も全部夢だ、よし、そういう事にしておこう。」
そう言って布団を被り無理矢理寝た、
宿題もせずに。
〜次の日の朝〜
......銃は勿論ある。
「......夢じゃない......」
くそ、仕方ないどうしよう、学校と持って行くしか...
よし、持ってこう、バレたらヤバいし。
こうして、いつもより緊迫した日常を迎えた。
現在は登校している途中だ。
「...なんか変だな、人が見当たらないし、静か過ぎる、まるで...」
誰も居ないようだ
「...なんか怖い、早く学校行こ」
そうして足を早めたが、それは間違いだった......。
〜学校〜
...可笑しい、静か過ぎる...何で...何でみんな居ない...。
これだけで済めば良いのにと思った俺は、
この後、絶望のどん底に叩き落されることになるのだった.........。
BULLET LIFE 〜序章 〜 1
- Re: BULLET LIFE ( No.25 )
- 日時: 2016/07/28 23:31
- 名前: ゼフィルス (ID: w7lzUlmG)
BULLET LIFE〜3章〜
強い陽射しが、洋館の一室の窓から、蒼の寝ているソファーの真上に射し込んで来た。
「……眩しすぎてらわろ……。」
少し寝ぼけながら、抑揚のない眠そうな声でそう呟く。
「んー……と。」
「……ねる。」
ドサッとソファに倒れ込んだ、二度寝を試みているようだ。
「……緊張感の無い……。」
そんな蒼の側に、既に起きて館内を隅々まで調べて来た女、ドレイクが近付いてそう呟いた。
「ドレイクさん……お久しぶりです……。」
「昨日会ったけどな。」
蒼はまだ寝ぼけているのか、か細く消えそうな声で挨拶?を交わした。
「化け物は大半倒してきた、段々弾切れしそうだ、危険な状況が懸念される。」
「はぁい……弾補充して使えるの探してみまぁす……。」
「……また寝た。」
時刻は午後12時半、この前も起きては寝るを繰り返したので、実はこれで三度寝だ。
「仕方ない、桃子。」
「何や?」
桃子と呼ばれた幼い少女は、ぴょんぴょんと元気そうに近づいて来た。
「蒼を起こせるか?」
「駄目や、蒼にいちゃん低血圧なん。」
「はぁ?」
「嘘やないで、身体弱いゆーてはったで、それにここ数日大変なことばっかで疲れとるん、寝かせてやってや。」
「ああ、分かった……然し身体弱いのか……。」
意外な事実に驚くドレイク、蒼は背丈が180センチ位あるが、その割には結構痩せている、虚弱体質で食事も自由に取れないのだろうか?
「身体弱いか……他になんか聞いてるか?貧血とか。」
「それや、にーちゃん貧血もあるねん!……あと肺弱いのと、心拍数が不規則な時あるとか……あと、肌弱いねん、日焼けしたら死んでまうかもしれんのや。」
「は!?」
「肌と目が……何やっけ?しきそけっそん?」
「色素欠損……部分的なアルビノだろうか……?」
「目が銀?……灰色?やで。」
「……。」
ドレイクは改めて蒼を見た、昨日とは違ってサングラスを外している……髪は黒い……然しそれと相反する様に肌が異様に白い……顔色もあまり良くはない。
「……ちと厄介かもな……死なないでいてくれればいいが……。」
「怖いこと言うなや!」
桃子は怒りと、せっかく出来た仲間が失われる恐怖でそう叫んだ。
「あ……ごめんな……そう言う事言うものじゃあ無いよな……。」
その時、ソファの方で物音がした。
「あれ……もう朝……あっ…まだ昼だった…………。」
「お前にいつまで寝る気してんのおおおぉぉぉっ!?」
「明日おきます……。」
「ええええ。」
「しゃーないわ。」
「どうしたんですか!?」
バンッと、ドアが思い切り開いた。
桃子の叫び声を聞いて、探索をしていた歩が、部屋に飛び込んで来た。
「あ、歩!大丈夫だ、何でも無い。」
「せや、何ともないでえ!」
「ううん…そんな事無いあたまいたい……。」
「お兄ちゃあああああぁぁぁぁぁんっ!!どうしたの!?」
バンッと、更に部屋に蒼の妹、沙夜が飛び込んで来た。
「何とも……ないよぉ……。」
「本当!?」
「うん……。」
「ああ、沙夜ちゃん…ごめんな、びっくりさせてしまったな。」
「ウチが悪いねん、大声出したから、ごめんなぁ……。」
「え!?良いのよ、桃子ちゃん!私が心配性なだけよ!」
全員が集合したら少し騒がしくなった、煩いが数日前の沈黙に比べたら良いものだと言える。
「とりあえず、会議しよう、蒼は寝っ転がってていいから、一応聞いてくれ。」
「はぁい……。」
「よし、とりあえず収穫だ、私はここを探索して使える弾丸を見つけた、更に誰かのものと思しき……ナイフを一つ見つけた、しかもやけに新しい……ここら辺に人がいた証拠だ、桃子ちゃん達のものでは無いそうだ、それと水……ペットボトル3本、冷蔵庫にあった、食料は腐っていたから無い。」
「おお!凄いやん!」
「凄いです!」
「はい!次は俺が、えっと……俺も弾丸を見つけました!ライフルに使えるやつです、あと秘密の出入り口、書斎みたいなとこにありました。」
「歩君も中々やるなぁ。」
「すげーなー!」
「じゃあ、私の見つけたのは……これです。」
沙夜は部屋の中心の机にソレを上げた。
「!?」
「……これは?」
「私達の住んでた近くにある中学校のブレザーです……恐らく、やはり誰かが……。」
「いた事になるな。」
「……はい。」
血がこびり付いたブレザー、デザインだけど第一中学の物である事を示す……。
「歩は何中?」
「俺3中です。」
「ほう、じゃあ……蒼は?」
「……4中。」
「みんな違うんだな。」
「私は小学校だし当然私服、桃子ちゃんも……私服だし……サイズも……。」
やはりここにいる人物以外に誰かが訪れた事になる、だとしたらそれは誰なのか、生きているのか……。
「サイズからして170後半から180位の男だな。」
「……そう…言えば、ここ来た時……人影が…出て…行きました……。」
「蒼……お前本当に大丈夫か?」
「……。」
蒼は無言で寝っ転がったままゆっくり頷いた、真っ青な顔色……眼を閉じて静かに寝たまま……。
(……こんな少年まで……私達は…私は追い込んでしまったのか、私達の研究は……。)
「大丈夫?蒼君?」
「あゆむ……?……うん……。」
「お兄ちゃん……。」
「さやちゃんも……日光に…気を付けて……失明…しないでね……サングラス…を……。」
だるそうに呟く、弱々しく、か細い声が部屋にしいんと静かに響いた。
「まあ、今後の作戦は……とりあえずここを拠点にするか……。」
「ですね……。」
「せやなぁ。」
「せっかく安全な場所を見つけたんですからねぇ……。」
「……そうでも…ない……。」
「「え?」」
全員が怪訝に思った、当然理由は蒼がおかしな事を言い出したからである。
「……ここは……多い……早く移りたい……。」
「……っ!おい!多いって何だ!何がいるんだ!?蒼!!」
「……しんだひと……。」
「は?」
「しんだひと……たくさんいる……ずっとみてる……みんなこわいかおしてるよ……。」
「「!!!!!」」
見える人なのだろうか、そのような類いが。
「……どんな…人?」
「ドレイク…さんの…後ろは……三十代後半…位の髪の…短い男の人……名前は…カズさん……だって……かずひさ……。」
間違いなく見えている、和久は街から逃げる最中、ドレイク達と共に戦い怪物に喰われて命を落とした男性だ、無論この事は蒼に話してない。
「このひとは……こわくないひと……。」
「……そうか……。」
(ここを早く出よう……蒼にとってもショックやストレスになりかねんからな……。)
「……今日だけはみんなここで寝ろ、明日出るぞ……。」
「「……はい……。」」
(みんなテンションガタ落ちだ、当然だろうなぁ、幽霊なんて考えもしなかったんだろうから。)
しかしまさか見える人だとは、そう改めて考えた、見えているという事は相当辛いだろう、死者が増えた今は特に。
(……静かだな……みんな昼寝か……。)
さっきとは真逆にしーんとしている、みんな見たくないあまりに寝て現実を受け入れない様にしているのだろう。
「…………ドレイクさ…ん…………。」
「……何だ……。」
「別にね……怖かったり……辛くは無いです……虚弱体質も……見える事も……。」
「……私達の会話…聞いていたのか……。」
「きいて……ました……そのとうり…からだ弱いんです……でも…もう慣れました……。」
「……そうか……。」
「……幽霊も……慣れました……悪霊には…同情…しては…いけないんです……可哀想とか……いい霊以外…思いません…し……見えても…辛くないです……。」
「……ああ…そうか……。」
「……辛くないですよ……。」
優しく、弱った様な…か細い声が心に響いた…ふと笑ったその声は何だかとても慈愛に満ち溢れ……淋しそうだった……。
- Re: BULLET LIFE ( No.26 )
- 日時: 2016/08/13 22:33
- 名前: ゼフィルス (ID: w7lzUlmG)
BULLET LIFE〜3章〜
「今日こそはここを出るぞ、皆んな準備しとけ。」
「「「はい。」」」
今日はこの洋館を出て行く日だ、流石に同じ所には留まり続けられない。
「沙夜ちゃん、準備した?」
「うん、お兄ちゃんも?」
「うん。」
「歩君は準備終わっとるん?」
「オッケー、桃子ちゃんも?」
「終わっとる終わっとる、バッチリや。」
皆各々で忙しなく準備を進めていた様だ。
「皆んなオッケーちゃんだそうです。」
「……そ、そうか!行こう!」
(オッケー……ちゃん?)
ドレイクにどうでもいい疑念が生じた。
〜門の前にて〜
「……人の気配……。」
「……俺の後に誰か来たか……。」
「……敵か味方かわからない……隠れて様子を……。」
「……そろそろ出て来るか……。」
「……気を付けろ……。」
「……。」
…………。
「よし!化け物も出なかったし!無事に出られたぞ!」
張り切り屋なドレイクは門に出た途端にそう大声で叫んだ。
「おい!でっけーねーちゃん!!そないでけぇ声で叫んだら化けもんが寄って来るやろが!!」
「ごめんなさぁい!!!」
「2人共煩い。」
蒼の一言で2人は静かになった、ドレイクは歳下に怒られた事により、桃子は慕ってる人物に怒られた事により借りて来た猫の様になった。
「い、行きましょう!」
新たに集結した5人は門の外へ歩き出した。
〜???〜
「此方の味方か?敵ではなさそう。」
少年は物陰から様子を見ていた。
「でも、もう少し……。」
まだ警戒が必要と見なした。
「…………。」
〜街の果て〜
「もう直ぐでこの街も終わりか……。」
「隣の県になっちゃいますね。」
「所で、敵の居所は分かるんですか?」
「あぁ、目星は付いているさ、この先に奴等……化物を生み出した奴の研究所の本部がある、桃子はここ出身では無いが……ここが本部、前の街のは……会社で言う子会社だ。」
「へぇ。」
「……。」
禍々しさが増して来た、歩はむせ返るような感覚に襲われる、死体や死臭意外の理由が大きいだろう。
「然し……大丈夫だろうか……。」
シーンとして全員が黙り込んでいる、何故なら敵の本部がもう目の前に迫っていたからだ。
「弾丸は…………?」
「……。」
「大丈夫……だな。」
全員に緊張が走る。
「ッ…………行くぞ。」
その言葉を皮切りに、周りに潜んでいたであろう怪物達が此方を目掛けて襲撃を開始した。
〜ラボ本部〜
「舞羅、お前の不始末だ、お前が行け。」
「ッ…分かりました。」
「……中々根性ある人間もいたものだな。」
「……あいつ……あのチビとドレイク……知り合い?」
「おや、あの少年……歩君を知っているのかな?」
「……はい。」
「ヘェ〜、まあくれぐれも〜。」
「…………裏切るなよ?」
ドスの効いた声がラボの司令室に響く。
「……当然です……。」
舞羅は外へ向かった。
- Re: BULLET LIFE ( No.27 )
- 日時: 2016/08/17 15:50
- 名前: ゼフィルス (ID: w7lzUlmG)
BULLET LIFE〜4章〜
「くそ!罠か!計られた!皆んな!危なくなったら逃げろ!!!」
「「「はい!!」」」
銃声が飛び交う、血飛沫が飛び散る、内臓が飛び出る、理性がぶっ飛ぶ。
混沌とした殺戮。
「き"ぃいいいいぃぃい"%○^/…〒!?」
爆ぜる頭部、それは歩に和久の末路を呼び起こさせる。
「……っ!」
吐き気がしてくる、悪夢が……悪夢が!!!
「歩!惑わされるなよ!」
「……はいっ!」
クソッ、振り払え!そんな雑念など!あれは夢!人なんて……。
「死んで……。」
早くなる動悸、突然の襲撃、蘇る悪夢……ついて行けない。
「死に晒せぇっ!」
桃子の身体はウィルスによる突然変異で異常な身体能力をもつ、自分の身体の倍の大きさの銃も片手で容易く持つことが出来る。
ガトリングガンを改造して手持ちに出来るようにした様な銃を乱射する。
「ぎゃ"あ"あ"あ"あ"あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"っ!」
蜂の巣と化した怪物達のけたたましい断末魔が彼方此方から聞こえてくる。
「おーいっ!埒があかないから研究所へ飛び込むぞ!!!」
ドレイクの言葉に全員が動いた。
「沙夜ちゃん!桃子ちゃん!先に!」
「ウチはええ!沙夜行け!」
「分かった!」
ドレイクと桃子が気を引きつけてる内に沙夜が研究所に飛び込む。
「次!蒼!」
「はい!」
蒼もすかさず逃げ込む。
「歩!!!」
「分かりました!!!」
歩も研究所のドアに向かって駆け出した、研究所のドアは壊れていて簡単に入れた。
「私達も行くぞ!」
「おうよ!」
次々と出現する怪物達に背を向け走り出した。
「走れぇえええぇぇぇっ!!!」
少しの隙に2人は駆け出し、3人の後を追って行った。
〜ラボ本部〜
「外の怪物は如何します?」
「放っておけ、どうせ中には入れん。」
「ドア壊れてますよ。」
「怪物はドアを潜ろうとするとセンサーが反応して強力な麻酔を撃たれる。」
「撃つんですか。」
「撃つんだ。」
「……。」
「……麻酔銃だ。」
「そういう事ですか。」
「そうだ。」
「……舞羅は行ったか。」
「行きましたね。」
「そうか…………。」
〜ラボ内部〜
「……来てしまったな……。」
「……。」
「……みんな、怪我は……。」
「私はして無いです。」
「俺も。」
「無いです。」
「ウチも。」
「ならよかった。」
「……。」
真っ白な壁、病院の様な不気味な禍々しさがある。
「……覚悟は……。」
「……。」
暗黙の了解、全員が此処で死ぬ事や、1人だけ生き残る事などを覚悟していた。
「……。」
沈黙が続く中、ある部屋の前に辿り着いた、先頭は後から追い付いたドレイク。
「……ここは。」
ごくりと生唾を飲む音がドレイクの脳裏に響いた。
この部屋は…………
『第1培養室・実戦室』
- Re: BULLET LIFE ( No.28 )
- 日時: 2016/10/23 12:16
- 名前: ゼフィルス (ID: w7lzUlmG)
BULLET LIFE〜4章〜
「ここは……。」
『第1培養室・実戦室』
「……実戦室……。」
「……ウチも別んとこやったけど……研究所の実戦室に……。」
「……。」
鉄で出来た扉を見ただけで重く禍々しい雰囲気が伝わって来る。
歪みないその戸はぴったり閉じているはずなのに、僅かに血の匂いが漂って来る。
「……やるだけやる……しか無い……よな。」
ドレイクが先頭切って、ドアノブに手を掛ける。
ガチャリ
「鍵……?掛かっていない。」
ノブに力を掛ける。
ギィ…イイイ…ィィ
「……。」
鈍い音がしてドアが開いた。
「ぅ"……あ"……ァ"…………。」
其処には人の形をしている何かが居た、形こそは人だが肌色をして骨と皮だけのような怪物。
「なんだ……あれ……。」
「…………被験者……人の成れ果てや……。」
「…………ぅぅ"……ァ"…………。」
弱々しく呻くだけのそれは、シルエットこそ人だ、光の当たる所で見ると真っ黒な目玉、異常に細長い手足、肌色よりも不気味な色……例えるなら肉片の様な色をした皺の刻まれた皮膚、最早人間に戻る事など不可能だろう。
「…………他には何も…………。」
「「「グギャアあアぁァァぁぁッ!!」」
「「「!!」」」
一瞬の沈黙、油断したら殺される。
「前見てはしれぇ!!!」
「はいぃ!?」
思考が追いつかない。
「わかったわ!」
でも走れ、考えるのは後だ。
「はい!!」
そうしなければ……。
「……。」
「蒼!!!何してる走れ!!!」
「……いいです、此処で足止めしてます。」
「は?」
「足止めします。」
「……蒼。」
「……。」
怪物は大き過ぎた、ドアから出るのに手間取っている、まだ時間はあると見なしたドレイクは蒼に近付いた。
「……!!」
そして…………
「……ッ!」
皆んなが走っている方に向かって、思い切り蹴飛ばした。
「お前は、走れよ。」
「……っ、あぁ、わかったよ!!!!!」
蒼は痛みを堪え立ち上がって力強く駆け出した。
「始めてお前が声を荒げたな。」
ドレイクは、銃を構えて準備を整えた。
「思い残しは……お前らが生き残って、平和な所に放たれるのを見れない事かな……。」
ドレイクから見て正面と右側のドアを破ろうとする音が聞こえる。
「右隣の怪物だけじゃないと来たか……。」
正面の扉の向こうの怪物が目を覚ました、麻酔が切れたのだろう。
「距離的に右隣からか……。」
「「「グギイイ"イィ"ィィィィ"っ!!!!!」」」
ガンガンガンッ!!!!!
既に顔がドアから出ている、身体全体が出る迄時間はかからないだろう。
「もう……私は良いんだ……贖罪を受ける……時……。」
あぁ まだ 死にたくは無かったな
双方のドアが激しい音を立てて壊れた
- Re: BULLET LIFE ( No.29 )
- 日時: 2016/11/26 23:39
- 名前: ゼフィルス (ID: w7lzUlmG)
BULLET LIFE〜4章〜
「来たぞ!」
俺はその声が聞こえたと同時に持ってた銃で怪物の頭をぶち抜いた。
「ギャァッ!」
短く鋭い悲鳴が、鼓膜を劈いた。
「蒼にい!」
桃子が蒼に駆け寄って来た、慌てふためいているようにも見える。
「あっちにドアがあった!」
「鍵は?」
「付いてない!」
「行こう!!」
俺と沙夜ちゃんはその後を追って行くだけだ、2人よりも圧倒的に弱い。
「……。」
蒼は、狙撃が得意、殆ど外したのを見たことが無い。
桃子は、被験者、生物実験によって人外な力がある、狙撃だけでなく素手で怪物の頭部を破壊する。
沙夜ちゃんは……大きな銃を二丁も持っている、しかしあまり強くは無い。
俺は……体力と握力は強いが、怪物の前では皆無だ……
…………俺は…………
「歩さん!!」
あっ……しまった
銃撃戦により大破したドアが俺を目掛けて倒れて来た、鉄製で、とても重そう、縦の大きさは二メートル近くにもなる……分厚いドアだ…………。
ドアがガタンと倒れて来た、俺の真上に影を落として、そうして物凄い轟音と共に俺の意識は…………
…………ある
「大丈夫ですか。」
「沙夜ちゃん……。」
小さな少女がドアを支えている。
「沙夜ちゃん!!」
その声を聞いて、少女はゆっくりドアを下ろした。
「私は大丈夫です。」
「どうして?」
「そもそも、私が何でこんな銃を2つ持てるかが不思議でしょう。」
「そう言えば……。」
「それはですね…………。」
「私結構オタクなんでかなりやってました。」
「……そうか、なら話は早い、例えるとゲームであるだろ、条件を満たすと進化したりとか、それを……君の身体で実行させて頂く、君の身体にだな、ある試験薬を投与する、すると今までより身体能力が向上する、大丈夫、君を死なせたりしない、信じてくれ。」
「……!そんな事……。」
「……解りました。」
「……有難う、早速だがこれを投与する、注射だから少し痛いかも知れないが我慢してくれるか。」
「大丈夫です。」
「よし、それじゃあ……。」
「…………そんなことが…………。」
「それで、ドレイクさんに言われて内緒にしていたんですが、私は桃子ちゃんと同じ、人外な力があるんです、だから、本当はあんなドアも……でも、みんな驚くから……お兄ちゃんも心配するから。」
「…………そう言うことか…………。」
何故あんな力があったのか、その裏にはやはりbiological research divisionの力があったのか……。
「……先に行こう!お兄ちゃんも心配するよ。」
「……はい。」
沙夜は少し笑みを浮かべてそう答えた。
蒼達が駆けて行った階段を、同じ様駆けて行き、ドアの向こうへと行った。
〜BRD戦闘訓練室〜
「おや、化け物が皆んな総出で行ってしまったわ。」
戦闘訓練室、いつもはケースに入れられた怪物達が連れて来られて、戦闘の訓練をされる、人喰い、同族殺し、同族喰い、一通りやらせる。
『第1培養室・実戦室』との違いは、此処では人間も訓練する、そして厳選された怪物が訓練する。
実戦室では作り出された化け物を手始めに闘わせて生き残ったものを選別する所だ。
「あらあら、と言うことは……お客さん来てるのね。」
この女……池田錦は、ここの指導員であった、今はどう考えてるのか不明だ。
「まあ、ここも終わりそうねぇ、お客さんの方のお手伝いでもしようかしら。」
錦は、彼等にとって脅威か、安息か……どちらなのだろうか……?
〜管理・事務室〜
「……誰もいない……。」
「……食われた?」
「さあなぁ、ウチにはわからん。」
「何だか怖い、お兄ちゃん…。」
子供4人が逃げて来たのは管理・事務室だった、しかしその割には誰もいない、白い壁と真新しい机に、まだ新しい血がこびりついているだけだ。
「……ちょっと休む?」
「ウチ、腹減った。」
「非常食……減ったな……。」
ドレイクが見つけ、残した非常食があったが、5人で食べ続けた為かもう僅かしかない。
「……腹減らない。」
「ウチ食べてええ?」
「私も少し……。」
「俺も……。」
結局蒼以外は食べる事にした、しかし明日から困る、それほど少ない。
「事務室の冷蔵庫みてみん。」
「うん。」
蒼の指示を聞いて、桃子が冷蔵庫を開けた。
「……ちょっとある、でも賞味期限気になるし、今日はこれ食べる?」
桃子が取り出したのは賞味期限の近い弁当だ、コンビニの物だろう。
「俺賛成。」
「わ、私も!」
都合などもあり、今日はこれを食べ、この部屋で少し休む事にした。
〜『第1培養室・実戦室』〜
「……怪物共が全部倒されている。」
???は侵入者の形跡を見つけ、それを辿って来た。
「倒しておいた方が良いのか……。」
男は、培養室のシェルターにあるモニターで全て見ていた。
「……。」
この男は、敵が味方か?はたまたどちらなのかは……いずれ分かるだろう……。
「……。」
血生臭い部屋の中、男は唯独り、口元にニヤリとした笑みを浮かべていた。