ダーク・ファンタジー小説
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- 創造のクロス
- 日時： 2016/05/07 16:58
- 名前： 狂yuki （ID: fiow63Ig）
悪魔… そう呼ばれる悪しき存在のことは、多くの人間が知っていた。
彼等は人間の世界に拠点を置いた。日本でも、主要都市はほぼ悪魔に占拠され、人口は1000万程に激減…
最早、生態系の頂点であった筈の人間は悪魔の奴隷と化していた。
悪魔は、平気な顔で子供を労働させながら、自分達はのうのうと暮らしていた。
廃墟と化した人間都市の中に悪魔都市はある。
無機質な灰色の建物の中に優雅な黄金の建物…。
そんな中、悪魔に支配された都市のひとつ…東京にも、悪魔への憎悪が人一倍強い少年がいた。神童レオだ。
レオは、まだ何も分からない生まれたての時には既に悪魔のもとにいた。
人間である自分を悪魔が育てている ということに納得がいかないのだ。
「クソが…。」その言葉は、むなしく壁にぶつかって消えた。
…コツ、コツ、コツ レオの後ろから、革製の靴音が近づく。
「やあ〜、ハローハロー、僕のお気に入りの神童レオ君。」
「ミスターギル、相変わらず奴隷にも優しいんだな。」横の、水色の髪の悪魔が言う。
「そういう君も、相変わらず奴隷をなめてなぁい?」
…このクセの強いしゃべり方の悪魔はギルバート・ベリアル。背が高く、鋭く妖しい目と高い鼻
長い黄緑の髪は女性のように手入れを欠かしていないらしい……
とにかく全体的に、俗にいうイケメンと呼ぶに相応しい悪魔だ。常にヘラヘラしている。
隣の水色の髪の悪魔はネール・バロール。彼は口調こそ優しいが、子供を平気で蹴り飛ばす。
しかし、何故かギルバート・ベリアルの方が恐れられている。
…もっとも、レオもそうなのだが…。
一見ヘラヘラしているだけのベリアルだが、たまに見せる牙は
彼特有の企んだような笑いを、更におぞましいものにする。
「…俺の仲間を殺しといて、よくそんなヘラヘラ出来るな、悪魔。」
「もう、つれないなぁレオ君、そんな昔のことは忘れなよ♪」
軽い口調でそう言い、彼はいつもの鼻歌を歌う。「…いいから消えろ。」
「ひゅ〜♪怖ーい。」
…5年前…
いつものように、悪魔に隠れて仲間と休憩していた。その中で、直樹という男子がリーダー格だった。
しかし……
一人の悪魔が休憩していた彼等を見つけたのが悪夢の始まりだった…。
「貴様ら、何して…!」叫ぶ悪魔を、落石が襲う。
ガラガラガラ…ドスーン！！
しかし、悪魔は無傷だった。「……!!」
「ベリアル様!!」「呼ばなくても、見てた…よ〜☆」
「うおッ!?」叫ぶ直樹の首を、ベリアルの手が裂いた。
シュッ！ ブシューーーー!!直樹の首は、ドラゴンが火を噴くように血を噴いた。
「あ……。」レオは戸惑った。こんな状況で、否、こんな状況だから。
目の前で無慈悲に殺されていくのは、ついさっきまで…話していた…
生命を持った人間という個体。だが、だがどうだ?レオ。お前の前にあるのは
生命を持たぬ、否、持っていたがそれを落とした、ただの肉塊…。
違う、これは……。
レオは、目前にある具象の悪魔に恐れながら、自分の中に潜む、抽象の悪魔にもまた恐れた。
どちらもが、レオを苦しめた…。
…………
ギルは既に去っていた。「…俺は…。」ずっと、忌まわしいキオクを思い出していた。
「…サボっていたのか、俺は。」だが、レオは殺されていない。
労働をサボれば、女性だろうと子供だろうと殺されるこの世界で…レオは殺されなかった。
喜ばしいこと?勿論、普通の人間ならばそう思うだろう。
しかし、仲間を殺され、一人地獄のような世界に生かされているレオに
はたしてそのように言えるだろうか?
レオは強く拳を握った。そして血が流れ落ちた。強く握り過ぎた拳は血だけでなく、悔しさの涙にも濡れていた。
つづく
- Re: 創造のクロス ( No.11 )
- 日時： 2016/12/19 13:14
- 名前： 狂yuki （ID: lPEuaJT1）
一振りで、
ズドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン
ビル街が更地になった。
全てが吹き飛んだ。
人が、悪魔が、吹き飛んだ。
そして、天使の裁きが始まった。
レオの背中から白い翼が生え、剣が光を帯び、
虹彩が赤く染まった。
剣を振る度に、町が、全てが揺らぐ。
「っくそ・・・！」
リュウが呻く。
あんなバケモノに対処する方法は、軍でも習ってない。
だから、退散する。
「退けぇぇぇぇぇえっ!!!」
兵士達が退く。
風圧で後押しされる。
半端じゃなく強いバケモノは、
悪魔を殺しにかかる。
『死ねええええぇぇぇえぇぇぇえぇぇぇ!!!』
悪魔の血飛沫。大地を穢す。
大地が罪で穢れる。
天使が怒れる。
天使は罪深き大地を浄化し、罪を消し去る。
罪人の断末魔が響く。
「あああああああああ！」
「ぐおおおおおおおおおお！」
「きゃあああああああ！」
「ひぇえええええええええ！」
その声が、一つの詩の如く、鳴り響く。
地獄の歌。苦しげな天使と悪魔。
リュウは、神器の封印能力を発動した。
封印能力とは、普段は眠らせている強大な能力だ。
全ての神器に備わっている。
リュウの神器は、
無数の手が背中から生えてくる能力を持っている。
黒い刀を持った黒い手。
それが、レオの攻撃を受け止めるが、
『あああああああああああああああああああああ！』
風圧で、難なく弾き飛ばされる。
リュウは壁に激突した。
「がはっ！」
そして、
『ウウウウウウウ』
呻く。
呻いたあと、レオは、否、天使は、
剣を大地に差し込んだ。途端、
大地が叫んだ。
大きな衝撃波。
そして、
バタッ
力を使い果たしたのか、レオは倒れた。
続く
- Re: 創造のクロス ( No.12 )
- 日時： 2017/01/14 19:19
- 名前： 狂yuki （ID: iCfJImSu）
−あの戦いから数日後。
リュウは日本人再軍総本部の地下にある研究室にいた。
「……。」
研究資料に目を通す。常人には不可能なスピードで。
神器によってバケモノじみた力を得た人間の身体能力は、普通の人間を遥かに凌駕する。
かつて、日本最大の名家であった御厨家、神童家。
そして、その取り巻きのような
空等家、
草上家、
水代家、
火原家、
雷山家、
土宮家。
これら六つの旧家は、全て神童家を選び、「世界の死」に荷担した家々だ。
まあ、リュウもそのうちの一人なのだが。
リュウは片桐家という「無能な家系」に生まれた。
それでも無勉強でエリートしか通えないという東京帝国学園に一発合格した。
周りの生徒よりも圧倒的に優れた能力を持っていた。あまりにも優れすぎていた。
だから、御厨家の頭、御厨 玄刀によって家族を全員殺された。
無能片桐家の息子くせにと。嘲られた。生徒達も、それからリュウを見下しはじめた。
リュウに水をかけ、カツアゲし、挙げ句殴る蹴るの暴行…。
リュウは耐えた。いつか見返してやる。そう思って耐えた。
そんなある日
神童家の娘を名乗る美少女…神童サツキが、リュウにこう告げた。
「私は貴方と共にいたい。」
ただ、それだけ。
そして、彼女は…神童家は…リュウは…
世界崩壊を引き起こした。
「サツキと一緒に、世界を救って、奴等に借り作ってやる！」
その言葉が、世界を破壊した。
続く
- Re: 創造のクロス ( No.13 )
- 日時： 2017/01/17 20:11
- 名前： 狂yuki （ID: iCfJImSu）
サツキはこうも言った。
「神童の名を持てば、貴方は認められる。」
実際、神童家に刃向かえるほどの力を持った組織は、御厨家だけだった。
常に媚を売ってきただけの片桐家とは比べ物にならない。
そして神童家は日本最大の宗教、獄教の中でもかなりの権力を持ち、
本当に、御厨家と対等な立場にあったのだ。
神童家の頭・仁醍は、片桐家にも友好的だったが、
玄刀に殺された。
片桐も、片桐家の味方も偉大な玄刀様に刃向かう権力を持たぬネズミに過ぎなかったのか。
そう、皮肉ることで、解決してきた。心の奥底の怒りを消してきた。リュウは今、孤独な世界を生きている。
御厨那壬は、最強クラスの神器・煉火王を道に突き刺して眺めている。
これほどの力をもってしても、人間はまだ悪魔に勝てない。
何故？
(弱いからだ。)
神器に宿る天使が語りかける。
(人間は弱い。そして自らの弱さを認めない。)
それに、
「はは。弱さを認めてのこの結果だ。俺はサツキの奴を越えられなかった。そして、世界を破壊させてしまった。」
(認めて、受け入れたか？結果を受け入れなければああはなれない。)
「………………。」
サツキは強かった。異常に、壊したいほどに強かったのだ。
「…今は違うだろ。サツキは死んだ。理由はどうあれ、死んだ。」
(……………。)
「死んだ奴に勝利は有り得ない。これは、俺が天下をとるべきだという天命だ。」
(…………ほう。それで、どうする？)
「世界は俺が変える。明日、横浜で決戦を行う。今日がどんなに忙しくなってもだ。」
(準備は？)
「とうの昔に出来てるさ。既に軍の37%は俺達の味方だ。父の死期も近い。」
(ふふ。ようやくお前は…。)
「世界を握るのは『御厨家』じゃない。俺と、リュウ。才能のある若武者だけだ。」
(リュウは言うことをきくか？)
「そうなるよう、洗脳した。最高位の魔術でな。」
(……ふ。)
天使は最後に笑って、刀におさまった。
決戦は明日だ。だが、戦いはこれからだ。
人間は明日、悪魔を越える。悪魔を恐れずに済む時代を迎える。
減り過ぎた人口も元通りになるだろう。
壊滅状態にある各主要都市も復興するだろう。
日本は世界のどこよりも早く、あの実験によって復興する……。
「………リュウに連絡しないとな……。楓、本部へ帰るぞ。」
「御意。」
人類文再軍、真名・鎧王軍。その将軍・御厨那壬は、
鎧王軍本部へと、車を走らせた。
続く
- Re: 創造のクロス ( No.14 )
- 日時： 2017/01/17 22:50
- 名前： 狂yuki （ID: iCfJImSu）
「はぁ？明日決戦だと？」
「ああ、そうだ。」
リュウの最もな疑問に、那壬が答える。
「お前、あれだけの数の悪魔をどうやって潰すんだよ。」
確かに。悪魔は爵位の高い連中だけでも沢山いる。
鎧王軍はどちらかといえば劣勢に傾きかけている。
悪魔の連中を、どう相手にするというのか。まともに殺りあえば全滅だ。
「ついにあの兵器が完成した。」
「…………………。」
「どうした。あれは俺達の悲願だったはずだ。」
「…あれの実験台になって、サツキは…。」
「……サツキはリボーネアによって一時的に蘇る。」
リボーネア。大神器のひとつだ。ひと振りで生命の再生をもたらす。禁止された罪の神器。
死者に突き刺すことでその死者は再生し、復讐者となる。
もうひとつの大神器・カタストロフィアが、圧倒的破壊力とひきかえに保持者の生命を奪うのと逆だ。
「さあ。あと数分で『明日』だ。」
音もなく時計がすすむ。
23:57
59分
……
……
00:00
復讐の日が、始まった。 革命の日が、始まった。
続く
- Re: 創造のクロス ( No.15 )
- 日時： 2017/01/18 17:48
- 名前： 狂yuki （ID: lPEuaJT1）
「悪魔どもを一人残らず殺せ！」革命の時だ！」
御厨那壬が叫ぶ。
悪魔と人間の戦争を終わらせるための戦い。那壬はそう言った。
だが、
爵位の高い悪魔どもの一斉攻撃に人間軍は怯む。
「奴隷扱いは今日で終わりだ、悪魔ども！」
片桐リュウの部隊は悪魔を順調に殺していっていた。
刀から黒い氷を召喚し、その中に悪魔を閉じ込めた。
「爆裂！」
氷と悪魔は爆ぜた。
封印能力で爵位の高い悪魔を殺す。
遠くにギルとネールがいる。
笑っているのが分かる。
レオの分隊は爵位の低い悪魔と戦っていた。
数百体殺害した。
二時間程度の戦いで。
しかしそこで、運命がまた狂った。
「よし、兵器のスイッチを起動しろ。」
那壬の声が聞こえる。
すると
シュバッ
突然大地から、沢山の黒い手のような物体が出現した。
「………!?」
悪魔も人間も、目をうつした。
そして
ギュッ バリバリ グシャッ
その手は人間と悪魔を握りつぶしはじめた。
「何っ?」
レオは慌てて分隊を守る。
キィン！
剣戟
手を切り刻む。
「アイツ・・！何してやがるんだ！」
那壬の言う攻撃は、人間だろうと悪魔だろうとお構いなく殺す。
そして、
また来た。と思った次の瞬間
グサッ
レオの背中に何かが刺さった。
そしてそれが神器だと分かる。
「……！」
「レオ!!」
「…………ウウウウゥゥゥゥ」
呻く。
そして
「アアアァァァァァァァ!!」
レオの体がまるで天使のような羽に包まれた。
そして
「・・・・・・・・・・・」
「罪を壊せ。測って、壊せ。」
そう言って、
ガンッ!!!!
凄まじい衝撃。
那壬すら少し揺らぐ。
が、那壬はすぐに言った。
「よし、サツキとリボーネアを用意しろ。」
続く