ダーク・ファンタジー小説

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創造のクロス
日時: 2016/05/07 16:58
名前: 狂yuki (ID: fiow63Ig)

悪魔… そう呼ばれる悪しき存在のことは、多くの人間が知っていた。
彼等は人間の世界に拠点を置いた。日本でも、主要都市はほぼ悪魔に占拠され、人口は1000万程に激減…
最早、生態系の頂点であった筈の人間は悪魔の奴隷と化していた。
悪魔は、平気な顔で子供を労働させながら、自分達はのうのうと暮らしていた。

廃墟と化した人間都市の中に悪魔都市はある。
無機質な灰色の建物の中に優雅な黄金の建物…。

そんな中、悪魔に支配された都市のひとつ…東京にも、悪魔への憎悪が人一倍強い少年がいた。神童レオだ。
レオは、まだ何も分からない生まれたての時には既に悪魔のもとにいた。
人間である自分を悪魔が育てている ということに納得がいかないのだ。
「クソが…。」その言葉は、むなしく壁にぶつかって消えた。

…コツ、コツ、コツ レオの後ろから、革製の靴音が近づく。
「やあ〜、ハローハロー、僕のお気に入りの神童レオ君。」
「ミスターギル、相変わらず奴隷にも優しいんだな。」横の、水色の髪の悪魔が言う。

「そういう君も、相変わらず奴隷をなめてなぁい?」
…このクセの強いしゃべり方の悪魔はギルバート・ベリアル。背が高く、鋭く妖しい目と高い鼻
長い黄緑の髪は女性のように手入れを欠かしていないらしい……
とにかく全体的に、俗にいうイケメンと呼ぶに相応しい悪魔だ。常にヘラヘラしている。
隣の水色の髪の悪魔はネール・バロール。彼は口調こそ優しいが、子供を平気で蹴り飛ばす。
しかし、何故かギルバート・ベリアルの方が恐れられている。
…もっとも、レオもそうなのだが…。
一見ヘラヘラしているだけのベリアルだが、たまに見せる牙は
彼特有の企んだような笑いを、更におぞましいものにする。

「…俺の仲間を殺しといて、よくそんなヘラヘラ出来るな、悪魔。」
「もう、つれないなぁレオ君、そんな昔のことは忘れなよ♪」
軽い口調でそう言い、彼はいつもの鼻歌を歌う。「…いいから消えろ。」
「ひゅ〜♪怖ーい。」

…5年前…

いつものように、悪魔に隠れて仲間と休憩していた。その中で、直樹という男子がリーダー格だった。
しかし……
一人の悪魔が休憩していた彼等を見つけたのが悪夢の始まりだった…。
「貴様ら、何して…!」叫ぶ悪魔を、落石が襲う。
ガラガラガラ…ドスーン!!

しかし、悪魔は無傷だった。「……!!」
「ベリアル様!!」「呼ばなくても、見てた…よ〜☆」
「うおッ!?」叫ぶ直樹の首を、ベリアルの手が裂いた。
シュッ! ブシューーーー!!直樹の首は、ドラゴンが火を噴くように血を噴いた。
「あ……。」レオは戸惑った。こんな状況で、否、こんな状況だから。

目の前で無慈悲に殺されていくのは、ついさっきまで…話していた…
生命を持った人間という個体。だが、だがどうだ?レオ。お前の前にあるのは
生命を持たぬ、否、持っていたがそれを落とした、ただの肉塊…。
違う、これは……。

レオは、目前にある具象の悪魔に恐れながら、自分の中に潜む、抽象の悪魔にもまた恐れた。
どちらもが、レオを苦しめた…。


…………


ギルは既に去っていた。「…俺は…。」ずっと、忌まわしいキオクを思い出していた。
「…サボっていたのか、俺は。」だが、レオは殺されていない。
労働をサボれば、女性だろうと子供だろうと殺されるこの世界で…レオは殺されなかった。
喜ばしいこと?勿論、普通の人間ならばそう思うだろう。
しかし、仲間を殺され、一人地獄のような世界に生かされているレオに
はたしてそのように言えるだろうか?
レオは強く拳を握った。そして血が流れ落ちた。強く握り過ぎた拳は血だけでなく、悔しさの涙にも濡れていた。

つづく

Re: 創造のクロス ( No.1 )
日時: 2016/05/04 17:46
名前: 狂yuki (ID: fiow63Ig)

1話 新たなセカイ
日本における悪魔の主要都市、ベリアニア…
高い城壁に囲まれた聖域の中、悪魔は、安心しきっていた…。

「よし、突入すっか…。」その城壁を前に、背の高い黒い軍服の男が一人、立っている。
…突然、悪魔が二人、後方から男に斬りかかる。しかし、一閃、悪魔は血を噴いて倒れた。
「突撃ィー!」どこからともなく、大勢の軍服兵士が現れ、無謀とも勇敢ともとれる様子で、城壁に突撃する。

 レオは一人、体の異変に苦しんでいた。自分の体なのに、中にもう一人、別の何かがいる…。
自分の意思に、別の意思が語りかけてくる。ーお前は一体…何者だ…?
<ハハハ、ボクハオマエダヨ>毎日のように、この不快な会話が続き、レオは少し病んでいた。
「クソが…。何なんだよ。」

一人悩むレオ、その後ろから、ふざけたような声が言葉を投げかけてきた。
「おはよ〜☆」ベリアルに違いない。
しかし、レオが見たのは、全く知らない女だった。確かに、ベリアルもいた。しかし、
ベリアルの横にいる、ベリアルをも圧倒するオーラを放つコイツは…?
そういえば…。ベリアルはベリアニアでも二番目の実力の持ち主だという噂を、
例の非合法的な休憩中に聞いたことがある。悪魔から聞いたのだから確かな筈だ。
そして…。「姫様もギルバート様も、何がしたいのか分からないけどな。」

コイツが、その姫?姫ってことは…。そんな奴が俺に何の用なんだ?
「おい、奴隷。」見下ろす視線はまるで猫のように鋭い。
姫…か。とても美しいと思うが、態度は気にくわない。「…何……ですか。」
しかし、敬語を言わなければまずい気がして敬語を使った、不本意にも。
ギルバートはずっと、横で、姫の姿を見下ろしていた。見たこともない程うっとりしている。
…ギルバートは背が高く、姫は13のレオより少しだけ低い。

「…お前を利用した実験を開始する。来い。」高圧的な姫が言う。
それだけを言って、ついてくると思ったのだろう、姫は脚の半分を隠す黒いブーツを鳴らして踵を返した。

ー、刹那
ドオーン!
爆音が姫とベリアルの行方を塞ぐ。そして、……人のような影が姫にとびかかる。
ベリアルがすかさずサーベルを引き抜き、姫を庇う。
「……ッ、何だ!」「わぁ〜、もしかして人間の御到着かな〜♪」
「お強い家臣に感謝するんだな、ラニュイ・クルーエル!」
……やはり人間か、だとしたら俺達を救いに…?それとも…
「神童レオ!ここにいるな!?」「……あ。」
「いたいた、お前だな?」「…あ、ああ。」
「よし祐介、見つけたぞ…悪魔72柱会…例のアレだ。」そう言って黒髪黒軍服の男は、隣の金髪の青年に何かのノートを渡す。
「大佐!爵位が高い連中は、一般の戦闘に紛れて逃げた模様です!」「はっ、いつものことだろ、アイツら馬鹿みたいにはえぇからな。」
男は頭を掻き、此方に向き直った。「神童レオ、お前、悪魔は嫌いだろ?なにせお前をそこまで追い込んだんだからな。」
「ああ、勿論だ。出来るなら殺してやりたいくらいさ。」「殺せるって言ったら?」「馬鹿言え、そんなわけ…。」
「ま、そうだな。悪魔都市の中で『悪魔殺せますよー』とか言えるわけないもんな。」「…何なんだよ。」
「これ、見ろ。」そう言って男は刀を抜いた。白く、長い刀。
「こ…これは…?」「くはは、やーっぱ怖じったなぁ、おい。
これはな、神器っていうヤツだ。」「神器…。」
「そう、神器。まあ簡単に言えば…天使が宿る武器だな…。悪魔を殺せる武器…。」
「あ、悪魔を…。」「天使に認められた強い者だけが神器を扱える。扱えりゃ、悪魔を殺せる。」
「そ…それで…。」「お前には素質がある。」「ああ…。…………はぁ!?」
レオは思わず聞き返した。
「だーかーらー、そ・し・つ・が・あ・る っつってんだよ。」
「な、何で分かるんだよそんなの!つーか唐突過ぎて気持ち悪いんだよ!」
「あーうるせえ、こちとら時間ねえんだよ、さっさと来い。」「はぁ!?どこ行く…オイオイ待て待て待て!」

完全に無理矢理、レオが連れて来られた場所は、何もない白い空間だった。
「よし、俺は外から調節してやっから、ちっと待っとけ。」「調節?」
疑問に答えず、男は部屋を出る…「あー、俺の名前、片桐リュウな。」
レオは「…………」しばらく黙り「聞いてねぇーー!!」一人になってから突っ込んだ。
と…、『聖域展開』アナウンスが鳴り響く。「せ、聖域?…ぅぐっ!?」
レオは急に、胸を締め付けられる痛みをおぼえた。「がっ、な、何だ、コレ!」
苦しい……! な……何だ、何なんだ…
………
ピーーーー!ヴウウウン……
「………ッづあっ!!」痛みは、ピーという音とともに消えた。
扉が開く。レオは扉を開けた影に飛びつく。「いきなり何すんだあぁ!!」
その、素早く飛んできた拳を、リュウは軽く片手の小指で受け止めた。
「……っ!」「そう怒るなよ、褒めてやろうと思ってんだからさ。」
「も、もう少しで、し…死ぬところだったんだぞ」「なわけあるかアホ。」「あるね、超ある!」
「死ぬ奴はコンマ1秒で死んでるよ。それ生き残れたらあとは死なねえ。」
「よ…よく分からねえけど…。」「分かる必要ねえよ。とりまお前は試験合格だ。今日から俺らと一緒に戦え。」
「………ッぁああああ!?」「んじゃなー。」「おい待て!お前、全てにおいて唐突過ぎ……。」また一人、変な部屋に取り残された。
部屋から出て行く途中で、レオは足元に落ちていたものを見た。「……ん?何だコレ。」
 片桐リュウ 日本人類文明再興軍大佐

この荒廃した世界、人類再興を掲げて活動している組織がまだあった。
それが、人類文明再興軍だった。…しかし、それは人類の行方をどこへ導くのか、まだ誰も知らなかった…。

続く

Re: 創造のクロス ( No.2 )
日時: 2016/05/28 16:35
名前: 狂yuki (ID: fiow63Ig)

忘却、そして再開
日本人類文明再興軍、神童レオは、神器のセレクトルームにいた。
「んー、これもいいな。おっ、これ……うわーすげー!…おお!」
リュウはその様子を見て、フッと笑った。「ガキだなぁ…。」
しかし、そう言うリュウの目は、レオの様子を羨んでいるようにも見えた。
<俺も…俺も、こんなふうな時期が…あったんだな…。>

すると突然ー、

ドオオオオン!

大地を揺さぶる程の爆音と共に、セレクトルームの天井が崩れ落ちてきた。
「うおお!」咄嗟に避けたレオ、しかし、神器とレオの間の空間は瓦礫で引き剥がされた。
リュウが叫ぶ。「その辺の神器を持て!悪魔どものおでましだ!」「はぁ!?いきなりかよ!」
レオはしぶしぶ神器を探す。あった…中性騎士の剣のような神器だ。
レオは神器を持つ。ーと、「う…うおお!」
神器と、神器を持つレオは、白銀のオーラに包まれた。「っ!ち…力がわく…わいてくる…何だこれ!」
「それが神器の力だ!さあソイツで悪魔を殺せ!」

レオは、悪魔の姿を探す。「………」

ガコ

シュッ
…悪魔だ。猛スピードで突っ込んでくる。人間には不可能な動きだ。
しかし、レオはそれと同等の動きが出来た。
そして…

キンッ!

レオの白い剣と悪魔の黒い剣が冷たい音をたててぶつかりあった。
ーが、しかし、その悪魔の顔を見たレオは思わず怯んだ。
「…お…お前…!直樹!!直樹じゃないか!!」
しかし、「……誰だそれは。いいから死ね。」悪魔は笑う。
「……なっ…直樹!目を覚ましやがれスカポンタンが!
また俺に羽交い締めにされてえのかよオイ!」「……うるさい、死ね。」
「おい直樹…いい加減……。」「は ははははははは!人間の分際で騒ぐな!」
すると、レオは導火線が切れたように大きな声をあげた。
「なアアァァァァおオオォォォォきイイィィィィ!!」
しかし、その怒りに、リュウが水をかける。
「やめろ!神器は怒りを喰らう!お前まで悪魔になるぞ!」
「……ッ!だが、んなら俺はどうすりゃあいいんだよォ!?」
「殺せ!お前の戦闘力ならいける!」「無理言うんじゃねぇよ!コイツは俺の…。」
「黙れ!てめぇ甘ったれんなよ!なんなら、も一度悪魔どもの御殿に送り返してやってもいいんだぞ!」
「……ッ!それでも俺は!仲間殺したくねえんだよ!!!」

しかし、悪魔…いや、直樹の攻撃は強くなる一方だ。
早く目を覚まさせないと、皆殺しにされる。

ーすると、瓦礫の奥で、剣を抜く音が聞こえた。まさか…
「…!?リュウ!やめろ!」「うるせえよ。てめえがやらねえなら俺が
その悪魔を地獄に強制送還してやる。」

ガラッ!

瓦礫を破壊する音だ。天井があった場所から見える空が無慈悲にレオの体を冷やす中で、リュウが直樹を殺そうとしている。
「……くッ………!」

「やめろ!!……俺が…。俺が…!殺す!!」
瓦礫を破壊する音は止んだ。
すると悪魔は「はっ。人間が…悪魔を殺せるものか…。」
「なあ直樹…悪いけどてめえには死んでもらうぜ…。俺の罪を償うためにも、お前のためにも…。」

シュッ

鋭い音が再び大地を這う。キン キン キン キン
剣がぶつかりあう音は、更に強くなった。
「うおおおおおお!」「……!」
レオの鋭い剣が、直樹の剣を振り払った。

ヒュンッ

直樹の剣が宙を舞う。「…くっ!」
すると、一瞬、直樹の顔が、かつての純粋なケンカ野郎の顔に戻った。

「………え……。」レオが、つられて当時のガキ大将の顔に戻る。
「れ……レオ……た…助ける……な……に……げ……」
が、その声は途中で無慈悲に遮られ、再び直樹は極悪な顔になる。
「おのれ人間め……貴様の魂を壊してやる!」
悪魔はだいぶ冷静さを失っていた。
そんな直樹を、冷静さを保てるようになったレオは一撃で仕留めた。

ドスッ

「………アッ……!」「クソ…クソがぁ……!」
「レッ………レオ……!」「……!?直樹!?」
どうやら直樹は直樹になっていたようだった。
「直樹!何だってこんな…!」
「………ッ……。こんな…俺を…殺して……くれて……。」
「…は……は!?どういうことだよ!」
「お……俺…は……、俺は……、悪魔と…契約……した…。
悪魔に……なっ………た…。い。生きて…お前に…会う…ために…、
俺は……ギル…バート…と……契…約…した…。
ふふっ……醜いよなぁ……お前なんか……に…会う…ため…に…、
悪魔…と…契約……する……な……ん……て……。
………………………
…………レオ……。」「………な…何…だ。」「…あぁ…、あ、あ…り……が……と……ぅ……。」
最後まで言い切れないうちに、直樹はガクッと頭を垂らした。

しかしレオは泣かなかった。泣けなかった。
<直樹……お前…最後まで……俺に……。>
そう思うまでは…。

続く

Re: 創造のクロス ( No.3 )
日時: 2016/07/10 16:23
名前: 狂yuki (ID: fiow63Ig)

悪魔の「それぞれ」

戦闘に敗北し、数時間後に救出された直樹はだいぶ洗脳を解かれ、人間に戻ろうとしていた。
もっとも、一度悪魔になってしまえば、体は人間に戻れないのだが…。
だから直樹は、彼は今、少年の心を持ちながら人間の大人よりはるかに強いバケモノだ。
今直樹達悪魔の精鋭部隊は、霞ヶ関近くの宮殿で待機していた。いつでも出撃出来るように。

直樹は、あくまで平静を保っていた。
その直樹に、ギルがいつもの口調で話しかけてくる。「大丈夫だったかな?半人半魔の坊や。」
「……」
「…どーしたの?」
「殺す。」
「えー。ちょっと待って、僕と戦う気?」
「お前を殺す!!」直樹が凄まじいスピードで襲いかかる。ギルは余裕顔で避ける。
「おー怖っっっ!ケンカっ早いなぁキミ……。」
だが瞬きをする間もなく、その軽い口調から考えられない程の怪力で
ギルが直樹の首を絞める。直樹の首がもげる。
音が聞き取りにくくなる。といっても、人間の頃よりはるかに聞こえやすいが…。
「ふふふ♪反逆罪で姫様に処刑されるのも癪だから、僕の手で殺しちゃーう。」
「姫はお前の味方でも俺の味方でもない。無駄だ。」
「ははは、しかも今キミは首だけ坊やだからねぇ、
姫に見せたら気持ち悪がられて追放されちゃうかも。」

ギルは強い。一瞬戦っただけで分かる。
確か、レオ…あいつも人間の軍に…。

ギルとレオが戦うことになれば、レオは恐らく即死するだろう。

だが、言った。「ああ、しまった。キミはレオくんと友達だから
大切にしなきゃならないんだった。」
そういってギルは首を握り潰す。
すると首は粉になった。
その粉を体の方の切断面に塗る。
するとれ直樹の体から再び首が生えてきた。
「……ぅ…、…くう……。」
「直樹くん。今から僕の部隊は霞ヶ関にある人間軍の砦を攻撃することになってるんだけど、
キミはそこで多分、レオくんと再戦することになる。
その時、レオくんを殺しちゃダメだよ。彼もシリーズの一部なんだから。」
「……シリーズ?」
「ふふ、此方のこと。じゃあ、僕達も行きますかあ。」
ギルは立ち上がり、精鋭部隊の連中に言う。
「さあ行きますよー。霞ヶ関の砦を人間から奪っちゃいましょう。
ネールくんは既に前線で交戦しているので、
報告兵は出来るだけ早く伝達するように…。」

説明が終わり、戦争が始まる。霞ヶ関の方角から煙がたっている。黒い。
ギル率いる精鋭部隊が、霞ヶ関侵略作戦を開始したその頃

「おい、リュウ。」「あー?」
「何で俺がこんなガキども連れて…。」
14歳のレオは、突然実戦…それも前線に出されていた。しかも少尉として…。
他の子供達は皆8歳とかだから、確かにレオよりはひよっこだが。
一応リーダーはチーム最年長21歳の片桐リュウだ。

悪魔が地球の支配者になって以降、日本でも子供兵士は当たり前になってきていた。
子供でも悪魔と互角に戦えるようになる天使の武器…神器の開発のせいだろう。
そしてその神器のもととなるサンプルを探していた
当時の探索チームのリーダーは、片桐リュウだった。
そのリュウが言う「お前もガキだろーが、いいから早く進め………」
「ん?どうした?」
「…静かにしろ…。…あれ、悪魔の…五爵会の奴か…。」
リュウが指さす先から、いかにも高級そうな服装の、筋肉質の男が歩いてくる。
リュウがチームで唯一の少女、名前は確か…渋谷玲奈に命じる。「撃て。」
玲奈が、小型の銃で、接近してくる男を撃つ。随分と連射した。一発は当たるだろう。
しかし
「目覚めよ」
黒い剣が引き抜かれたと同時に、銃弾は全て破壊された。
「なっ……。」
「五爵会はそんな簡単に死なねえよ、あの弾だって、
あいつには亀みてえに見えたはずだ。」
そんなバケモノがいるのか…。レオは恐怖を覚えた。自分は生きて帰れるのか…。
と、

例の男は、さっきまでいた場所から消えていた。「……!?」
「ここだよ、遅い遅い。」
男は、いつの間にかレオの後ろで、剣を振り下ろそうとしていた。「うおおっ!」
レオは叫ぶが、間に合わない。

……
キイン!

「ボーっとすんな、ガキ!」
死んだと思った…。が
リュウがその剣を払いのけていた。
「おお速いねえ、凄いや。」
その顔を見たレオは思い出した。
「…あ…あいつ!ネール!!」
「ん?」
少し時間をあけ、
「……ああ、あの時の子かぁ、久しぶりだね。復讐はうまくいってるかい?」

こうして霞ヶ関で……、戦場で、
「彼等」は再び遭うことになるのだ。ある運命の糸によって。

……或いは、ある者が長きにわたりつくりつづけてきた、壮大なストーリーの
そのシナリオによって………。

続く

Re: 創造のクロス ( No.4 )
日時: 2016/07/17 20:28
名前: 狂yuki (ID: fiow63Ig)

望み望まぬ出逢い

「あいつ…ネールだ!」レオが筋肉質な青年風の悪魔を指差す。
そして西洋風の剣を構える。
しかしネールが、レオの剣よりひとまわりも大きい剣を構え、
「あんまり戦う気にならないでよ。キミを殺したら僕大変な目にあうから。」
「…。お前の都合なんか知るか!殺してやる、クソ悪魔ぁ!!」
レオがネールに突撃する。
「もう、柄悪いなぁ。」
ネールは連撃を軽々と跳ねのける。
リュウが叫ぶ。「おいバカ!前に出過ぎるな!」
そして、リュウは剣を振る。すると、剣から黒い衝撃波が出る。
「おっとこいつは重い。」しかしネールは、これも余裕顔で無効にする。

と、

「ぐあ!」「うぉ!!」「ぎゃあ!」
ネールより向こう側、目的地である人間軍の砦の方向、
人間軍の兵士が次々と血を噴き倒れるのを見た。
ネールが言う。「あ…、ギル兄さんかな?」
ギル兄さん…。ネールとギルはどうやら兄弟らしい。
そしていつの間にかネールの背後にギルがいた。
「やあ。この戦場も僕の芸術に染めてあげたよ。」
「相変わらずギル兄さんは変人サイコパスだな…。」
「変人サイコパスって…。まあいいけどさ。」
「いいのかよ。…で、この子たち、どうする?逃がす?」
「いや、ちょっと楽しみながら殺すけど。」
「それ笑顔で言うかよ。で、それなら僕も協力すべきかな?」
「僕が芸術に厳しいの知ってる?」
「ああ、そういえばフランスで…。」

コイツらは何を言ってる?わからない。しかし
リュウが言う。「撤退だ!ここを捨てて形勢を立て直す!片桐隊は撤退する!」
しかし、振り向くとすぐにギルが笑っていた。優しく妖しく嬉しそうな笑顔で。
「さあ、この子たちはこれからどうやって絶望に追い込まれるでしょう♪」
言ったあと、一瞬でギルが消えた。
「がっ!」後ろで誰かがうめく。確か…6歳になる…神谷だ。
そして…
1秒と立たないうちに、背後のレオの部下たちは全滅していた。
「ああ、その子たち、手加減したから死んでないよ。
もっと強くなってから殺してあげるね♪」
ふざけた奴だ。だが強すぎる。勝てない。リュウも少し身震いしている。
ネールとギルバート 二人を相手に人間軍砦守護隊は壊滅寸前…。

……

キィン!剣と剣がぶつかる。
リュウが横を見ると、レオがいない。ネール・ギルが見ている方向を見る。
レオだ。茶髪の悪魔と戦っている。
「なあぁおきいいぃ!」レオが叫ぶ。直樹という悪魔は冷静にレオを追う。
「お前が生き残るには、悪魔になるしかない!人間のままじゃ…。」
「………!なっ…直樹…。直樹!?お前…元に戻って…」「レオ!!」
剣戟がうるさいほどだ。リュウはただ見つめる。
ギルもネールも攻撃してこない。



しばらく二人が戦っていると、
「くっ…!」直樹は突然何かを避けるように跳んだ。
凄まじい爆発音。
リュウが呟く。「……おせぇよ…本部どもが…。」
どうやら人間軍の本部隊が到着したらしい。
レオはリュウの方を向く。リュウが、横に現れた大きな男に言う。
「おいおいもうお前らの仕事はねえぞ…。」
「俺たちの仕事は悪魔どもの始末だ。お前の部隊こそ仕事をしてないじゃないか。」
圧倒的な威圧感の男が言う。確か…リュウが言っていた。
人類文明再興軍大将・御厨 那壬<みくりや やすみ>
……しかし、
レオは思った。こいつは

味方なのか……?


続く

Re: 創造のクロス ( No.5 )
日時: 2016/08/19 14:39
名前: 狂yuki (ID: fiow63Ig)

ベリアニア侵攻計画

日本軍の兵士たちは本部で治療を受けていた。悪魔と対等になるには人間は弱い。
神器でようやく、実力差がかなり埋まる。
しかも少尉以下の兵士の神器はリュウやレオのそれより弱いという。
…それでも、日本は、一度崩壊した世界の中で、
ヨーロッパ諸国やアメリカ、中国、ロシアなどの大国に並ぶ戦力を持つ。
もっとも、それ以外の国はほぼ全滅したのだが…。



<おい、片桐、片桐リュウ。片桐リュウ大佐。>

…誰だ、俺を呼んでるのは。サツキか…?まだ俺はご立派な大将様のもとで戦いを…。…。…そうか、俺は確か…

目の前の幻影が消え、「お前、ちゃんと俺の話を聞いてたのか?」
御厨那壬が代わりに現れた。
「えあ?」
聞いてなかった。レオが横から何か囁くので、しゃがんで聞く。
どうやら京都で日本の悪魔五爵会を全滅させるという計画について話していたらしい。
が、幻影の中にずっといたので、頭がぼうっとして、理解する気力もない。
「…まあいいだろう。明日午前5時30分から作戦開始だ。解散。リュウだけ残れ。」
何で俺は呼び止められた?……ああ、「アレ」か……。めんどくせぇなぁ…、
此方は寝起きだぞ…。


レオ達がいなくなったのを確認して、那壬が言う。
「また思い出していたのか?サツキのことを。」
「………ああ。」
「相変わらず一途な男だ…。軍にいるお前のファンの相手もしてやれよ。」
「簡単に言うんじゃねえよ。だいいち、サツキを殺したのはお前だろうが?」
「まあそう怒るなよ。一時なお別れだ。「あの儀式」を成功させれば…。
サツキは甦る。そう言ったあとに、いつも薄笑いを浮かべる。
リュウは那壬の心を見透かせなかった、あの頃も今も。

かつて、まだ世界に人口が67億近くいた頃…
最大の勢力と権力を誇り、世界を裏から操っている宗教・獄教は
ある実験を行った。
その際、リーダーを任されたのが、御厨那壬と片桐リュウ、そして神童サツキだった…。
そしてその実験は…サツキを含む多数の人間の命を奪った。

リュウはその時心に決めたのだ。こんな惨劇を起こした奴をぶち殺す。

…結局俺も、復讐のために生きてる……。この世界に、「復讐したい」と思ってない奴なんて
もういないのかもな…サツキ……。

続く


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