ダーク・ファンタジー小説
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- 超能力者達の憂鬱
- 日時: 2016/12/29 20:26
- 名前: 藍兎 (ID: nsZoJCVy)
欲しいわけではないのに、手にしてしまった。そんな気持ちの超能力者達が、自身が超能力者だということを隠しながら現代社会の中を生き抜く…。
という感じの、ほんのり暗めな物語。ただし友情はある。だって人間だもの。
大体、1週間に1回の更新でいけたらいいなと思っています。
…思っていますが、一日一回更新になることも…?
- Re: 朝の嫌悪 ( No.2 )
- 日時: 2016/12/31 00:12
- 名前: 藍兎 (ID: nsZoJCVy)
「…いってきます」
そう言って、家を出た。
無口で人と接するのが嫌な僕でも、流石に学校は通っている。
通学路で人とすれ違うことさえも嫌な僕は、他の生徒が通う時間帯は避けているため、いつも学校には(部活を除いて)一番乗りである。
今日も、いつも通りに家を出て、教室で一人始業のチャイムが鳴るまで待つつもりだった。
過去形なのには、意味がある。
高校の校門、(言い忘れていたが僕は高校二年だ)そこには見知らぬ女子がなんだか迷っているような様子で佇んでいた。
制服からするに、同じ二年だろう。ただ、あの女子が見慣れないのは明らかに可笑しい。かといって、僕は記憶力は乏しいわけで…。人の顔、名前を覚えるのが苦手なのだ。
…つまり、僕は、あの女子が在校生か、転校生なのかの区別がつけられない。
「あ、あの!」
…やっぱり。
なるべく話しかけられないよう、自身が空気だと信じて学校へ入ろうとしたが、流石に駄目だったようだ。…まぁ、そうだよなぁ。
「…なんです?」
「すいません、中々他の生徒の方々が通らないので、まだなのかと…」
「基本的に、校門が開いていたら教室も開いてます。職員室はチャイムが鳴ってからですけどね」
わざと、冷ためにあしらう。もうこれ以上、僕と関わりたくなくなるように。
「そうだったんですね!私、転校してきたので…分からなくって」
「…そう、ですか」
そろそろここを離れても良いだろうか。女子からわざと目を逸らすのも簡単ではないのに…。
何故か嬉々と話す女子に、僕は嫌悪感を抱く。元々、女子は嫌いなのだ。それなのに女子と会話をしなくてはならない。それだけでも色々ときついのだ。
「えっと、超能力者ってご存知ですか?」
まさかの爆弾発言である。
動揺を隠し、知らないふりを全力でする。
「…なに、それ」
「あ、いえ、ご存知ではないのなら、大丈夫です。すみません」
「…そ」
これでやっとここから離れられるっ!そう思い、足を動かした時だった。
「私、北本 明日香っていいます!貴方のお名前は…?」
うっっそでしょ!?
これは嬉しいとかそういうのではない。断じて。
どうして僕が、知らない女子なんかに名前を教えないといけないのか…。そう思ったが、無視はいけないだろう。仕方なしに名乗る。
「…滝沢 祐太」
振り返らずに言った。
もう、これで良いだろうと学校に向かう。
もう、あの女子は声をかけてこなかった。
- Re: 放課後のカミングアウト ( No.3 )
- 日時: 2017/01/03 23:19
- 名前: 藍兎 (ID: H3TLDNR4)
HRの時間。
「今日、急遽転校生が来ることになった!」
「まじ!?」「男?女?」「誰、誰−?」
「じゃ、入ってきていいぞー」
まさか、と思った。
そんなぁ、漫画やゲームの世界じゃないのにそんなこと…
「初めまして、北本 明日香です」
…あったわ。
そもそも僕の超能力自体そうだったわ。完全に忘れてた。
気絶してしまいそうになりながらも、北本から視線を感じながら、必死で窓、外の風景を眺める。
あぁ、もう、今日は最悪の日だ…!
「…じゃあ、席は…お、滝沢の隣開いてるな。あそこの席に着いてくれ」
「はい」
…今日は本当に最悪の日だ。
どこの主人公設定バリバリの漫画だよ!ふざけんなよ!
そう、思った時だった。
鋭い、視線。
冷たい、視線。
…感じる、殺気。
それは、一瞬で分かった。…北本の、視線だ。
まるで、僕を本気で殺しにかかっているような。そんなものを僕は感じ取る。
…恐怖で固まる。
映画やドラマで、長く感じる一秒間。なんてものがあるが、それは本当にあるらしい。たったの一秒間。それは一分間のように、長く感じた。
「えっと、朝の…滝沢、祐太君…だよね?よろしくね」
隣に座った北本が、さっきまでのあの視線が嘘だったかのように、笑顔で話しかけてくる。
僕は、黒板を見ながら、あくまで北本に目を向けないように、ん。と返した。
北本の顔は、見ていない。けれども、微笑んでいたのは分かった。
それから、僕は隣からの異様な威圧感に耐えながら、時を過ごした。
普通に授業を受けているだけなのに、隣はやばいし、さらに、放課後に残って。と北本に言われてしまったのだ。
…最悪としか言いようのない状況。逃げ出すことさえ許されない。
もう、いっそ殺してくれればいいのにぃ!こんなの軽く拷問だ!なんて思っていると、授業の終わりのチャイムが鳴った。いよいよ放課後だ。
僕は、怪しまれないようにしながら教室に残った。
教室に一人きりになった所で、北本が教室に入ってくる。
カチャッ
刃物を抜く、小さい音が聞こえて、僕は思わず北本を見てしまった。
その瞬間、北本のありとあらゆる物事が頭に入ってくる。その中の、これから何をするつもりなのか、という事を確認しようと、じっと北本を見つめる。
「あ、やっとこっち見てくれたね」
「…」
「ごめんね、残ってもらっちゃって」
そういうと、おもむろに彼女はファイルを取り出す。表紙には、「超能力者 情報」と、なんとも簡潔に、超能力者についてのことが書かれていそうな題が書かれていた。
…でも、そのファイルは異様なほど、薄い。僕は、超能力者は翔にぃしか知らない。その為、残り数人しか居ないのだろうと思っていたが、それは案外当たっていたのかも知れない。
でも、ファイルが薄い、ということは、書かれている人の情報をすぐに確認することが出来る、ということだ。あれに僕の情報があったら、もう既に僕が超能力者だということがばれている!…なんてことも思ったが、北本はどうやら、僕は超能力者の関係者程度にしか認識されていないらしい。
「…君、超能力者について知ってることがあるなら、話してよ」
「だから、知らないって…」
「話してくれないのなら、仕方ないね、ごめんなさい」
そう言うやいなや、北本は隠し持っていたナイフを振り上げた。
僕は、そうしようとしている、ということが分かっていたため、横に避けて、後ろに回る。
「あれ、以外と避けられるんだ」
「…まぁ、ね」
「はは、余計にやりたくなっちゃうなぁ」
北本は、さらにナイフで攻撃をしてくる。一見デタラメに見えるが、それは対象物をしっかりと狙って攻撃をしているようだ。
どうしてこんなにナイフの扱いに慣れているのか…。北本の事を探れば、一瞬で分かった。
「…っ!殺し屋!?」
正しくは、何でも屋。
だが、問題はそこではない。驚きのあまり、僕は思いっ切り叫んでしまったのだ。
北本は、驚いてはいるが、そこはプロ。冷静を装っているようだ。
「なんで知ってるの!?…もしかして、貴方が超能力者…?…ありえる!」
「いや、ありえないから!」
「じゃあ、なんで知ってるの?情報漏れはありえない」
そこは、確かにそうなのかもしれない。だけれど、それだからって超能力者につながるのはおかしい!
勘が良すぎ!…なのか?
「あ、そういえば、貴方のお兄さん。超能力者でしょ?第一、その能力自体は知れてないけど」
「…あぁ、翔にぃのことね…」
「翔にぃ…って、そしたら貴方が超能力者の可能系はやっぱりあるってことね」
「…え!?ってかなんで超能力者のことを狙ってるの…?」
「お金」
「…お金?」
「そう。超能力者の首、賞金がかけられてるの。生け捕りが一番良いんだけど、難しいからね」
僕が、命の危険にさらされているということがわかった数十分間だった。
- Re: 赤の涙、それは感情の涙か ( No.4 )
- 日時: 2017/01/12 20:11
- 名前: 藍兎 (ID: nsZoJCVy)
「…だから、ちょっとおとなしく情報吐いてよ」
「絶っっっ対やだっ!」
「ちょっと!?」
僕、人生で一番の叫び声を出したような気がする。
…だけど、それだけじゃなかった。叫んだ反動で、顔を上げてしまったのだ。勿論、目の前には北本の顔があって、お互いに向き合っている。
再度、北本の事が頭に入ってくるが、気になる事が一つ。
少しの間だけだったが、頭をよぎったとある路地裏。気になって詳しく見てみる。
僕は、あまり人の事を見たりはしない(勿論、家族もだ)から、超能力を使いこなすことができていない。そのため、こういった特定の事だけを見る。というのが苦手だ。…これを機に、今度練習しよう。なんて思いつつ、やっとの思いで探し当てることができた。
…探し当てたのは、どうやら北本の記憶の一部だったらしい。随分と低い目線…まだ幼い頃なのだろう。北本が、路地裏を歩いているようだった。
複雑に、迷路のようになっている路地裏を、迷うことなく進んでいく。やがて見えたのは、鉄のドア。すると、そのドアから、とある男性が出てくる。
「…よくやった、明日香」
「はい」
北本から発せられた幼い声。それは、明らかに小学生の声だった。ただ、幼い子供特有の無邪気さ、そういったものが、感じられなかった。まるで…ただの、人形のような、無機質さ…_。
そこで、僕の意識は戻る。
北本は、何故か驚いた顔をしていた。
「…ねぇ、なんでさ…眼から、血が流れてるの?」
「…!?」
なぜだろう、なんだか、悲しくなってくる。
『僕なんて、北本と比べたらただの出来底無いも同然…なのになぁ。』
心の中の僕が、呟いた気がした。
- Re: 血の涙は代償 ( No.5 )
- 日時: 2017/01/18 21:51
- 名前: 藍兎 (ID: nsZoJCVy)
…私は、ただの、殺し屋。超能力者を追っている、殺し屋なんだ。ただ、それだけ。
なのに。
「…!?」
目の前で赤の涙を流すこの男、滝沢祐太。こいつは、超能力についての参考人だったはず。
だけど…この人は、今までに見た人達の誰よりも、幸せ、感情についてを知ってる。だからこそ、不器用で、自分を殺そうとした人にさえ、情の沸くような人なんだ。
…ふらっ
ドサッ!
「ちょっと!?」
滝沢が倒れた。
駆け寄ってみれば、気絶していた。…気絶してるくせに、その涙は止まらないんだ。なんて思ったが、今はそれどころではないのだ。取り敢えず、校舎から出ようと思うが、生憎、窓から出ようとしても野球部がグラウンドで活動している。滝沢がいる限り、普通に校舎から出て行くのは、無理だ。
このままでは、部活動が終わるまで下手にここから動くことができない。
「…どうしよう」
「お困りですか?」
突然、後ろから声がした。
振り返ると、前のドアに人がいる。
「…」
「あぁ、ごめん。…祐太の兄の、翔だよ」
「…え?」
なぜここに?
どうしてこのタイミングで?
なぜ弟が倒れているのに動揺しない?
質問したいことなんて、沢山あった。あったのに、何も言えなかった。
「…取り敢えず、ここから出て俺ん家来なよ」
「…は、い」
それからは、あっという間だった。
滝沢の兄だと言うこの人は、滝沢を簡単に背負って、私を連れて校舎から出た。
野球部には、私達が見えているはずなのに、誰も滝沢の赤の涙には反応を示さなかった。
滝沢の家にはすぐ着いた。
家から出てきた滝沢の母親も、驚くことなく、皆を家にいれる。そうしたら、今度はバタバタと何かを取りに行った。
「…さて、まず、背中のこいつを部屋に運ぶから…取り敢えず、一緒に部屋に来いよ」
「…はい」
滝沢の兄は、私を引き連れて滝沢の部屋へ向かう。
正直、何者かと思ったが、滝沢を背負っていても一度も休んだり、ふらついたりすることが無いことから、力で勝負を挑んでもすぐに負ける。そう分かって、大人しく後ろをついていく。
これが、懸命な判断だろう。
滝沢の部屋に入ると、滝沢はベッドに寝かされる。その後に母親も入ってきたが、水の張った桶に、濡れたタオルを滝沢の目に被せるとすぐに出ていった。
「…さて、ちょっとお話、しようか」
そう言って切り出したのは、滝沢の兄だった。
「もう、俺と祐太が超能力者ということは、知ってるんでしょ?」
「はい」
「…ってことは、君、賞金稼ぎしてるの?」
「…まぁ、そうですかね」
「そっか…祐太はね、まだ力を使いこなせていない。その上に、超能力の代償さえも知らないんだ」
「…代償?それって、どういうことですか?」
滝沢が超能力を使いこなせていないことは大体分かっていた。
…だが、超能力に代償があるのは初耳だった。
「超能力ってさ、レア度があるんだよ。レア度が高くなるにつれ、代償も大きなものになっていくんだ」
「…」
「今回の、目から血がでてくる現象も代償。しかも、何度もその現象を繰り返し起こすと、失明してしまうんだよ」
「滝沢さんは、それほどの超能力の持ち主だった…ってことですか?」
「まぁ、そうだね。詳しく言えば、相手の過去が見えたりする、過去、未来が見える能力はとってもレア」
「…貴方達の超能力って、なんですか?どうして、そこまで詳しいんですか?」
滝沢の兄は、詳しすぎる、そう思った。他の超能力者でさえ知らなかった情報が次々と出てくるのだ。
「…俺の超能力は言えないけれど、祐太は…眼で全てを見通すことができる超能力」
「…レア度が高い、超能力」
「そういうこと。祐太は代償を知らないから、危険を考えないし、今回の事だってただキャパオーバーでぶっ倒れた程度にしか思ってないんだ。…倒れた日の事は、殆ど忘れてしまうからね」
倒れた日の事は、殆ど忘れてしまう。
…それじゃあ、今日の事も無かった事になる。私の存在も、消えてしまう…。どこかで安心した自分がいたが、それは少し面倒だ。
…どうか、少しだけでも覚えていてくれていますように…。
滝沢の兄との会話は、そこで途切れた。
「…ん?なにこれ」
滝沢が起きたのだ。
「おぉ、案外早かったなぁ」
「滝沢…くん?私、分かる?」
「えぇ…っと、確か…北本…北本!?」
素っ頓狂な声を上げて、ベッドから飛び起きた。
「え?覚えてる?」
「…うん、全然覚えてる」
「…凶器、持ってないよね?」
「いや、流石に無理があるでしょう!?」
「…仲良しだなぁ。祐太、いつの間にこんなガールフレンドできたんだよ」
「別にそういうわけじゃ…」
そうして騒いでいると、母親が再度部屋に来た。
「良かった、起きたのね。お友達も、向こうでお菓子、どう?」
「いいえ、私はもうこれで。お邪魔しました」
そう言うと、引き留められる前に外へ出る。
「…超能力者についてもっと調べる必要がありそうだなぁ」
裏路地の家へ、帰るために足を進めた。
- Re: 僕だけが知らない話 ( No.6 )
- 日時: 2017/01/22 17:30
- 名前: 藍兎 (ID: nsZoJCVy)
浮遊感。
次に来るのは、喪失感。
なにか、探さなくてはならないような気がして、辺りを見回す。
そこには、ひときわ輝いている謎の光があった。
手を伸ばそうか。とも思ったが、それでは何か、いけないような…それこそ、何かを失ってしまいそうな気がして、やめた。
では、一体どうしよう。
もう一度、よーく辺りを見回すと、半透明な、硝子の破片があることに気がついた。手を、伸ばす。
触れると、なにかを得た。というより、取り戻したような感覚がした。
…すると、突然浮遊感が消えて、不思議な力が、押し潰そうと圧力をかけてくる。
なんだか、過去にもこんなことがあったような気がしたが、それどころではない。
苦しみに悶えている内に、意識が薄くなっていくことに気がついた。
最早、抵抗なんてすることが出来ない僕は、そのまま意識を失った。
妙な明るさに、目を覚ます。
混乱している頭で、必死に今の状況を確認しようとした。
辺りを見回すと、自分の部屋で、隣には翔にぃと北本が、何か考えているような様子で話していた。生憎、寝ぼけていて、話の内容は聞き取ることはできなかった。
暫く、ボォーっとしていると、段々覚醒してきて、今の状況が可笑しい。ということに気がついた。
「…ん?なにこれ」
思わずそう漏らすと、翔にぃと北本がこちらに気づいた。
「おぉ、案外早かったなぁ」
「滝沢…くん?私、分かる?」
北本が、恐る恐る問いかけてくる。 本当に、怯えながら。
「えぇ…っと、確か…北本…北本!?」
北本だということを、過去の記憶を探りながら確認していると、北本の正体を思い出して、素っ頓狂な声が出てしまう。
北本は、唖然とした表情で、
「え?覚えてる?」
と、さらに問いかけてくる。
「…うん、全然覚えてる
…凶器、持ってないよね?」
「いや、流石に無理があるでしょう!?」
こちらも、唖然としながら答える。ついでに、凶器の確認もしておく。…一応、命を狙われているからね。
まぁ、無い。って怒られたけど。
「…仲良しだなぁ。祐太、いつの間にこんなガールフレンドできたんだよ」
「別にそういうわけじゃ…」
翔にぃも混ざって、3人でわいわいと騒いでいると、騒ぎを駆けつけたのかお母さんが部屋に来た。
「良かった、起きたのね。お友達も、向こうでお菓子、どう?」
僕の心配をしてから、北本へ話しかけたが、もうこれで。と、北本は帰って行った。
「…あ、そういえば、なんの話をしてたの?」
忘れてかけていたが、ちゃんと、効いておかないと。そう思って質問したが、
「別に、只の世間話だよ」
そう言って、話を逸らされてしまった。
こういうときの為の僕の超能力なのだろうが、僕は家族には超能力を使いたくはない。仕方が無いから、諦めて、もう一度眠りについた。
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