ダーク・ファンタジー小説

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超能力者達の憂鬱
日時: 2016/12/29 20:26
名前: 藍兎 (ID: nsZoJCVy)

欲しいわけではないのに、手にしてしまった。そんな気持ちの超能力者達が、自身が超能力者だということを隠しながら現代社会の中を生き抜く…。
という感じの、ほんのり暗めな物語。ただし友情はある。だって人間だもの。

大体、1週間に1回の更新でいけたらいいなと思っています。
…思っていますが、一日一回更新になることも…?

Re:朝の憂鬱 ( No.1 )
日時: 2016/12/29 19:30
名前: 藍兎 (ID: nsZoJCVy)

生まれる前。僕は、母親の胎内にいたはずだった。
だけれどそこは、とても広い。それに、なにか、光が浮かんでいた。
興味本位に、僕は光に手を伸ばす。

だけれど、それは叶わない。
何か不思議な力で押さえ込まれているように、腕が動かない。

次第に、その不思議な力は僕の体を潰すかのように、圧力をかける。
苦しい。
苦しいのに、声を上げることさえ許されないのか、喉から音は一つとして出ない。

苦しい。重い。嫌だ。やめて…。


「っ!…はぁ、はぁっ!」

とうとう、押し潰されるか。というところで目が覚めた。
今回は、ちゃんとした現実の僕だ。生まれる前ではない。

自身の手を握ったり、開いたりしてみて、ようやく夢ではない。という実感がわく。

ふと、壁掛けの時計を見る。
時間は、朝の四時。いつもより、かなり早い時間に起きてしまった。
ベッドから出て、自分の部屋から出る。
部屋のドアの横には、誰の部屋なのかが分かるよう、名前が書かれたプレートがぶら下がっている。僕の部屋にも勿論、「祐太」と書かれたプレートがある。

廊下を、家族を起こさないようにそっと通って行く。
たどり着いたリビングは、早朝だからかとてもひんやりとしていて肌寒い。
早く起きたからといって、何かすることがあるわけではない。
かといって、二度寝をすれば、またあの夢を見るし、寝坊も確実だろう。
仕方がないので、ただただ、暖かくもないこたつに入り、ぼーっと過ごす。

こんな、ぱっとしないごく普通の男子が、この僕、滝沢祐太なのである。

ただ…本当に、何もない普通の男子なのか?と問われれば、確実に否である。
なにせ、非現実的ではあるが、僕は超能力者の一人なのだから。
超能力の説明をすれば、僕は「眼で全てを見通すことができる」といった所だ。
眼さえ開いていれば、相手の感情、思っていること、過去の記憶、親しい人などなど、全てが見通すことが出来る。
この超能力、制御が効かないので、一度に沢山の情報が流れ込んできてキャパオーバしたり、相手の悪巧み、自身に向けた感情が分かってしまったりする。だから、僕はこの超能力が嫌いなのだ。

こんな超能力のせいで、段々と人と接するのが怖くなり、無口な性格になっていった。
無口なら、誰も、僕に構ってはこないから。
実際、この判断は正解だったと思う。
こうしただけで、無駄に人の事を見通したり、キャパオーバしたりすることが無くなったのだから。

キャパオーバは、一度なってしまうと、とても面倒くさい。
良くて、状況の把握、整理がつかなくなる。悪くて高度の発熱により、気絶。
これまででも、気絶は三度くらいしかなかったが、状況の把握、整理がつかなくなっただけの場合は、一度しかない。
一番良い状況のクセして、あまりそうはならないのだ。ほとんど、高度の発熱である。
これも、僕がこの超能力が嫌いな理由に入る。

そうして、ただぼーっとしていると、いつの間にか時間は六時。
そろそろお母さんが起きてくるだろう。

ガチャ
「あら、起きてたの?おはよう」
「…はよ」
「今日は目玉焼きね」

因みに、お母さんとの会話は、殆どお母さんが話しかけてきているだけだ。
こんなにも無口な息子に対して、なんて健気な母親なのであろうか。

「祐太。今日は、調子はどう?」
「大丈夫」
「そう」

この、調子とは、体調ではなく、超能力についてだ。
お母さんは、僕が超能力者だということを知っている。僕にとっての一番の理解者だ。

ガチャ
「おっはよー、母さん、祐太」
「おはよう、翔」
「…はよ」

次にリビングに来たのは、僕の兄の翔。僕は翔にぃと呼んでいる。
翔にぃも超能力者で、「自身が浮いたり、高く飛んだりすることができる」超能力だ。
翔にぃは、超能力に対しての不満は何も無いらしい。本人がそう言った時は嘘かと疑ったが、それは本当のようだった。お気楽翔にぃは、本当に羨ましい。

翔にぃが、こたつに入ろうと歩いてくる。

「さてさて…っ!」
「…あ」
「冷てぇ、祐太、こんなに冷たいのによく平気でいられるな…」

注意しようとしたが、遅かった。
寒さに弱い翔にぃは、とても青ざめている。
申し訳ないなと思い、僕は、動けない翔にぃの代わりにこたつのスイッチを押した。


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