ダーク・ファンタジー小説

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lily of the valley
日時: 2017/02/08 21:04
名前: 琴夜 虚槻 (ID: o2imsHOu)

            プロローグ ある日の悪夢の裏側



「ここは、どこ…?」

彼女は何もない暗い世界に立っていた。周りを見ても何もなくただ暗闇だけが広がっている世界。どっちが前でどっちが後ろかもわからない。進んでいるはずなのに、しっかり前へと進んでいるのかもわからない。

彼女は孤独だった。

「あれは…。出口?」

この終わりのない世界に、一つの光が生まれた。ただ暗闇の中にいた彼女はそれを見つけた途端、その光に向かって走っていた。

何もないはずの世界で影が動いた。その影は彼女が光のもとへ行かせないようにと彼女の前に立った。何かを言っているようだったが、その言葉は彼女に届いていない。

「邪魔。」

彼女は冷たくそう言い放ち、その影を一瞬で消し去ってしまった。確実に光へと進んでいるはずなのに、いっこうに光との距離は縮まらない。その間も影達は彼女の前に立ちふさがる。彼女はそれを気にもとめず手の一振りで消し去ってしまう。

「あと少し…、あと少しであの光に…。」

彼女はそう言い残してこの世界から消えた。彼女が消してきた影達と同じように一瞬で。





この終わりのない世界を上から見ていた者が一人。

「また消えてしまったか。前回のほうがもっとおもしろかったのだが。今回は実につまらない。一番ひどく、弱さに負けた結果だ。次回はもう少しおもしろいといいな。今までのと同じように闇に飲み込まれ消え去っていくのか。それとも、光に辿り着き私でさえ知らない光の向こうへ行く事になるのか。それとも……全く違う答えを出すのか。」

その者はひとりでにつぶやき不敵な笑みを浮かべながら闇に吸いこまれていくように消えてしまった。


今度こそこの世界には何も訪れることはなかった。


————ただ一人の人物をのぞいて。


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琴夜です。初作品です。コメントやアドバイス、ダメだし等お願いします。よろしくです。



lily of the valley 第1章 ( No.1 )
日時: 2017/02/08 21:02
名前: 琴夜 虚槻 (ID: o2imsHOu)

           1 私も世界も空っぽで

「はぁはぁ……。夢、か…。」

久しぶりに悪夢を見た。……と思う。この目覚めの悪さは確実に悪夢を見たときのそれと同じだからそうなのだろう。だが、私が考えていた悪夢というのは『恐怖』そのものを夢として表される者だと思う。……だけど、今日見た夢は全く違った。最初の方なんかは暗闇の中にいたのに何も感じなかった。人間は『未知のもの』=『恐怖』に直結する生き物らしい。実際私はそうだし光もささない、完全なる闇に1人放り出されたら私の心はあっという間に恐怖に支配されていただろう。なのに恐怖どころか何も感じなかった。一体あの夢は何だったんだろうか。

ふと時計を見るといつの間にか7時30分を過ぎていた。

「え、うそ。やばい…寝すぎた!」

そう言って彼女——黒蝶 影華は今朝の悪夢の事など忘れて、急いで制服に着替えていた。

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「お母さん!なんで起こしてくれなかったの!」
「お姉ちゃんなにいってんの。今日休みだし。てかなんで制服きてんの?」
「へ?」
「てゆーか、今お母さんいないし。仕事だから。」
「あ…。そうだった…。」
「じゃ、夜宵はしたい事あるから。」
「あ、そう…。じゃね、あはは…。」

なんで私はこんなことをしているのだろう。みんな家が一番落ち着くなんて言うけどそんなのウソだ。外も家の中も変わりやしない。実際そうだったらこんなに気を使って妹に接することもないんじゃないか。ちょっと気が許せるくらいになるだけで、基本変わらない。もし家族と血がつながっていなかったら。それは寮と変わらないじゃないか。

意味なんてない空っぽの言葉並べて。空っぽの笑顔ふりまいて。無理してまでみんなに合わせて。

みんなと合わせよう。協調性を大事にしよう。

その言葉に深い意味なんてない。ただ、みんなと一緒じゃないと不安だから。自分が間違ってるんじゃないかと不安だから。何かを1人でやることなんて誰もできっこない。ましてや、みんなと全く違うことなんて。だってみんながいないと不安で仕方なくなるから。
そしてみんなと違わないように必死に合わせてきても、ちょっと違うことをするだけで、みんなと外れた考え方をするだけで、みんなが思いつきもしないようなことをするだけで、周りの目はとたんに変わってくる。

それには二つの種類がある。
一つはリーダーへの目線。
自分たちが出来ないことを出来る。自分にもあんなことをしてみたいとあこがれて、みんなに慕われてそのグループのリーダー格になることができる。
もう一つは変人への目線。決してよいものではない。
他の人と違う変わったことで目立つ。例えば勉強なら目立っても尊敬される目線になる。けれど少数派の意見を堂々と言ったり。周りの空気が読めない。いわばKY的な存在。そんな性格の持ち主であったりとことわざに「出る杭は打たれる」などというものもあったが、まさにその通りだ。そういった目線を受けたものはとたんに集団から弾き飛ばされてしまう。詰まり仲間外れ。集団の中でも最下位へ。
結局うまく世渡りが出来て慕われるようなことができるようにならない限り、最低辺の立場からは脱出は不可能。だからみんな空っぽの笑顔を作って必死で仲間外れにならないように頑張ってる。

だからこの世界はずっと空っぽのまんま。

そんな世界生きていたって意味などない。だけどこの世界に生まれた限りどうにかして生きていくしかない。

あと少し、あと少しでこの暗闇から抜け出せる。

もう何回こう思い続けたのだろう。ずっとこの暗闇が終わるのを待っているのに、いつまでたっても終わらない。もしかして、今日見た夢は、暗闇は終わらないということを意味していたのだろうか。

もうやめよう。考えるのは。これ以上考えても意味は無い。

「よし、気分転換に出かけるか。」

そう言って影華は家を出た。




———そして、この後もう2度と影華がこの家に帰ってこないとは誰も思っていなかった。






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琴夜です。暗い文章続きますけどすみません。
次回から明るい要素を入れられるといいかな?
コメントお願いします。

第1章 ( No.2 )
日時: 2017/02/10 23:44
名前: 琴夜 虚槻 (ID: o2imsHOu)

             2 とある書店にて、


「さて、どこに行こうかな〜。そうだ、久しぶりにゲーセンでも行くか!」

影華は、その見た目、成績からまじめでゲームなど縁がないと思われがちだが、全くそんなことは無い。むしろ勉強など全くせず、動画・ネトゲざんまいの日々。家の中では怠惰な日常を送っていた。ゲーム内でも成績は飛びぬけていて、まるで影のように音もなく近づき見事に不意を突き、敵を一掃し、キャラデザのほとんどが黒からできていることから、ゲーマー達には「シャドウ」と呼ばれていた。ゲーマーならば一度は聞いたことがあるほどだ。

そんなすごい成績をたたき出す影華ではあったが、そのことは学校では言っていなかった。イメージがというよりも、仲間外れになることを恐れてだ。昔、そのことを友人に話し、クラス中に拡散され、しばらくの間、接するときは仲が良い気がするのだが、どこか距離を感じるようになっていた。それから影華はゲームセンターにもほとんど行かなくなり、「シャドウ」は消えた。今では「クロアゲハ」と名乗っている。

「あ、そういえば今日発売日だったっけ。先に本屋行こ。」

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「あったあった。ずっと楽しみだったんだよね。」

そう言って手に取ったのは某有名作家のサスペンス小説———ではなく、ザ・ファンタジーなライトノベルだった。影華の容姿は見事なまでに真っ黒だった。長い黒髪に、吸い込まれそうなほどに黒い瞳。私服もほとんどが黒ベースだ。そのため、彼女の透き通るような白い肌はよく映えた。さっき言った通り真面目そうな雰囲気の上その格好となると、ファンタジーというよりもサスペンスの方が似合う気がする。でも好きなものは仕方がない。

影華の内面と外見の差は他の人よりも多少大きすぎた。

影華は実際の性格や内面とみんなが思っている性格などと正反対だったのだ。みんなが思っている性格と自分の性格、内面がほとんど同じならいいのだが、全く違ったりずれていたりすると、すごしづらくなる。そのイメージ通りにしていれば目をつけられにくくなる。ただ、実際の趣味や、性格は気がゆるんだりすれば出てくるものだ。それが、みんなと合えばそれはそれでいい意味のギャップになる。だがアニメのオタクだとかマイナーなほうの趣味だと仲間がいない限りクラスの中で変人扱いになる。そして、仲間外れになる。

影華はそのギャップのせいでクラスの中で孤立してしまった。
成績も抜群によく、運動も出来て、ゲームでさえ完璧。さらには容姿端麗ともなれば、みんなから完璧すぎて、うざく思われてしまうようになってしまった。

そして、そんな外の世界から離れ、唯一自分を解放できるはずの家でも彼女の居場所はなかった。

小さいころから、親とはどこが距離を感じていた。妹とは仲が悪い。家にいても学校にいたときのストレスは消えない。自分を解放することも出来ない。それどころか最近は自分の居場所がないとまで思ってしまうようになってきていた。

そんな時に本に出会い、本の世界にどんどん入り込んでいった。最も現実からかけ離れているファンタジーが大好きになっていった。影華はこれまで何回もまるで本の世界や、ゲームのような世界に行きたいと願っていた。

もうこんな空っぽの世界に、私の存在価値なんかないのだから。———と。

「あー、ほんといつかラノベの異世界召喚ものみたいに、ファンタジーの世界に行けないかな〜。」

影華はそう呟き、レジへ向かった。その時、ある少年が影華の事をのぞいていた事は誰も知らない。

「………やっと、見つけた…。」

その少年は、そう呟くとすぅっと消えてしまった。

「ん?なんだろ、あそこ。新しいコーナー?行ってみよ。」

影華がレジに向かう途中見つけたのは、どこか異様な雰囲気を漂わせる一角だった。結構この書店の常連である影華が、知らないところとなればかなり最近に出来たということになる。普通だったらその異様な雰囲気に近づくのをためらいそうだが、なにしろ影華はファンタジー好き、その異様な雰囲気でさえ魅力的に思えてしまったのだ。

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そのコーナーに入った瞬間、影華はその異様な雰囲気にのみ込まれた。そこに広がっていたのは影華が今までで一度も見たことがないような本が壁一面にびっしりと並んでいた。さらによく見ると、その本は日本語でも英語でもその他の外国語でもない言語で書かれていた。なのに、なぜか影華は

「なんか、懐かしい気がする。」

絶対読んだこともなく、実際今初めて読んだはずだ。何が書いてあるのかもわからない。なのに、なぜか懐かしく感じていた。

「やっほー、姉ちゃん。元気してた?」

唐突にその声は聞こえてきた。影華がその声の聞こえた方向へ向くと、そこには誰もいなかった。それどころか入ってきたはずの入口が無くなっていたのだ。

「え、ちょ…どういうこと?い、入口は?ていうか、妹いるけど弟はいないし。誰?どこから話しかけてきてんの?」

「あれ、もしかして姉ちゃん忘れちゃったの?まぁ無理もないか。ま、あんま時間ないし手短に説明するね。僕は姉ちゃんの本当の弟———あせらないで、事情は後で説明するから。そして今は魔法を使って話してます。僕たちは姉ちゃんをずっと探していたんだ。そして、今見つけた。———よって黒蝶 影華。あなたを、魔界都市エトワールへ招待します。じゃあ、どっかつかまっててね。今から送るから、着いた場所でしばらく待っててね?いろいろ案内しないといけないからさ。いくよ!————」

「え、ちょっと待って。まだ心の準備が———!」

「いってらっしゃーい!」

「待っててばー!」

そして、この世界から、あらゆる人の記憶から、黒蝶 影華はいなくなった。

「さてと、無事送れたようだし、じゃあ僕も帰ろ。」

とある書店にて、———ここから影華の新しい物語が始まった。

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琴夜です。今更ながら、読み方わからなそうな名前の読み方発表。

作者  琴夜 虚槻 ことよ むつき

主人公 黒蝶 影華 こちょう えいか

妹   黒蝶 夜宵 こちょう やよい

自分で考えておきながら

「なんか中2病ぽいな」

と思ってしまった作者でした。

面白かったらコメントください。ダメだし等お願いします。

lily of the valley 第1章 ( No.3 )
日時: 2017/02/12 15:01
名前: 琴夜 虚槻 (ID: o2imsHOu)

            3 慣れれば何事もすんなりと受け入れられちゃうもの。


「う…。どこだ、ここ…。」

影華はどこかの高級ホテルのスイートルーム並みの豪華さの部屋にいた。しかも、寝ていたベッドは天蓋付きの超豪華なベッド。部屋の調度品も高級そうなものばかりだった。

「なんか…、すごいなここ…。」

———コンコン

「どうぞ。」

「よ、姉ちゃん。こうやって会って話すのは初めてだね。ところでこの部屋気に入ってくれたかな?」

ドアを開けたのは、青みがかった白髪で満面の笑みを浮かべた青年だった。話の内容からすると、おそらく書店の時の人だろう。予想に反して、背が高く結構イケメンだった。影華は声とか、話し方の感じからしてもっと子供なのかと思っていたのだが…。声も最初聞いた時より大人な声になっていた。ま、かっこいいからいっか!的なのりでラノベを読んでいたおかげもありあっさりとこの状況を受け入れてしまった。(どんだけ慣れてんだよ)

「もちろん、気に入ったよ。調度品もなかなかセンスいいし、ベッドはふかふかだし。マジここ天国だよ!」

「そっかそっかー。気に入ってくれてよかったよ。」

「あのさ、少し質問なんだけどいいかな?」

「もちろん、何でも聞いて。」

「名前教えてくんない?あと詳しい事情諸々。」

「あー。うん。そういえば名前まだ言ってなかったね。僕の名前はルア・スワロウテイル。普通にルアって呼んでね。」

「うん。よろしく、ルア。」

「結構戸惑うと思ったんだけど、意外と大丈夫みたいだね。あ、それと詳しい情報諸々は僕からじゃ話せないんだ。今から会いに行く人から聞けるよ。」

「なんで、ルアが私の弟なのかっていう事とか?」

「うん、そうだよ。でも、その格好だと少し面倒だから。あのクローゼットの中にあるドレスを着てね。僕は、外で待ってるから。」

「あ、うん。わかった…。」

そういってルアは出ていった。名前がルアとは……全く異世界感丸出しだ。しかもファンタジーの匂いがぷんぷんする。影華は常日頃、いつかこんな世界に来てみたいとは思っていたが…。まさかこんな感じで叶うとは影華も思ってはいなかった。まぁせっかく召喚してもらえたんだし、楽しませてもらうとしよう。

「うわ…。何これすご…。」

クローゼットの中はもう、一つの部屋といってもいいくらいの広さだった。さらに、そこにあったドレスの豪華さといったら。とてつもない量の種類があった。

「いや、凄すぎるだろ。いくらなんでも。どっかの領主の屋敷なのかな。…にしてもいろいろあるな。何を着よう…悩む…。てゆーか、黒の服無いの!?」

————————————————————————————————

「お、おまたせ。」

部屋から出てきた影華は深紅のドレスに身を包んでいた。もともと容姿端麗だったことから、黒以外もよく似合うのだがいつにもまして雰囲気が華やいでいた。

「お、黒以外もやっぱり似合うねぇ。」

「う、うるさい。黒があったら黒にしてたし。」

「いいじゃん。似合ってんだから。じゃあついてきて。はぐれないようにしてね。」

「うん。」

部屋もなかなかすごかったのだが、廊下の内装もかなり凝られていた。窓の外から見えた庭もとても広く手入れが行き届いていた。それに使用人のひとつひとつのしぐさが丁寧で影華はだんだん緊張してきてしまった。廊下でさえこの状態なのだから、かなりすごい所に召喚されたのだろう。それにしても、廊下で人とすれ違うたび振り向かれるとなんか歩きづらい…。

「さ、着いたよ。入って———」

開かれた扉の向こうに広がっていたのは、どこかの城の大広間並みの広さの部屋だった。その部屋の一番奥には、この屋敷の主人らしき人物が座っていた。

「影華、よく来ましたね。ここへ来てください。」

「え、名前知ってんの!?…って当たり前か。わかりました。」

「じゃあ、あとは頑張ってね。姉ちゃん!」

「え、ついてこないの!?」

「うん、客は姉ちゃん1人だけだから。」

「ま、マジか…。まぁ頑張るよ。」

そう言って、影華はその主人らしき人のもとへ行った。

「先に名乗らせてもらうとしよう。私は、エトワール最強の一族スワロウテイル家の主人。セレーネ・スワロウテイルだ。さて、まずは影華。君が黒蝶 影華ではなく————」

セレーネは、そこで言葉を切るとこう続けた。

「————ローザ・スワロウテイルだった頃の話をするとしようか。」

コメント ( No.4 )
日時: 2017/02/13 15:40
名前: おんせんたまご (ID: A2yHVZ/p)

小説読ませていただきました!
ダークファンタジーで、全体的暗いイメージや舞台などが本当に良いです!
他にも細かく描写されていて場面を想像しやすい、主人公の心の声などで感情移入がとてもできます!
本当に見ていて素直に面白い、続きが気になると思いました!
影ながら応援してます!


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