ダーク・ファンタジー小説
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- 狙われた若人たち
- 日時: 2017/03/30 15:02
- 名前: ハチクマともふみ (ID: zXSVwxXi)
これは大学時代の夏、俺と友人3人が出くわした話
俺は友人に唆されて地元でも幽霊が出る場所として有名なトンネルへいくことになった、
大学の方も勉強が忙しくそれに加えてアルバイトの掛け持ち、俺は毎日へとへとだった、唯一残された自由な時間をくだらない噂話のために利用するのは少し抵抗があり、正直あまり乗り気ではなかった
しかもよりによって心霊スポット、
友人は、昼間なら大丈夫、どうせ何もないだろうしそのあと近くで飯食って帰ろうぜ、なんてお目当ての心霊スポットは二の次だと考えているようだった
当日、友人宅へ車で向かいその他2人、全員を車に乗せる
勿論運転は俺、助手席と後部座席に友人が乗り込むと圧迫間のある狭い軽自動車がより一層狭く感じた、俺は走らせてすぐ窓を全開にした
走って1時間、都市部からとばして来たが既に外は木々に覆われている、昼間の日差しがチラチラと木の間から差し込んできているのがわかった、友人たちは用意した音楽をガンガン流して盛り上がっている、俺も親しい友と過ごすくだらないその時間になんだか癒されていた
しかしそんな時間も忘れさせるかのようにひっそりとそいつは姿を現した
自然とは全く不釣り合いなコンクリートで固められた巨大なトンネル、俺は思わず息を飲みおよそ数十メートル付近で車を停車させる
止めるなよ、早くいこうぜ
友人は言ったしかしどこか他のトンネルとは違う禍々しいその姿にハンドルを握る俺の手は汗でぐっしょりと濡れる、だが他の友人からも促され再び車を走らせた
トンネル入り口に置かれた大量の花束、いよいよそれっぽくなってきたと助手席の友人がはしゃいでいる、幽霊にとりつかれることはなかったとしても彼にはそれ相応の罰が下されるのではないかと俺はその時思った、トンネルへ侵入
中は昼間なのに一切の光を遮断させるような作りになっているため非常に暗い、ライトをつけなくてはならないくらいの暗さだった、バックミラーにうつりこむ後部座席にいる二人の顔
少し不気味で滑稽だったが俺はすぐ目をそらし車を飛ばす
それにしても寒い、全開にした窓から入る空気が何だか寒い、太陽の光を一切受けない状況下だ、気温も下がるのも仕方ない、俺は窓を閉めた
長いトンネルを走り続けること1分、奥に光が、トンネルもそろそろ出口に近づいてきた、そして出口を抜けると再びそこは青い空と覆い繁る一面の緑
その光景を見た瞬間何だか妙な達成感が生まれた、結局何も起こらなかったそんな拍子抜けの結末に俺の顔から笑みがこぼれる、友人も少し残念そうだったが何も起こらないだけマシだと俺は宥めて再びトンネル内へ侵入自宅に向かって走り出した
トンネル内で俺は音楽を大音量で流す友人と談笑しながらどうでもいい話で盛り上がっていた、すると後部座席の友人一人が盛り上がっている話の流れでぼそりと言った
実はさっきトンネルに入ってすぐ後ろの方で妙な音がしたんだよな
でも暗くてよく見えなかったから特に気にしてなかったんだ
え、
俺がその言葉に驚き思わず声を漏らすと、その瞬間音楽が切れた
充電切れでも無く突然切れたのだ、変なこと言うなよと、助手席の友人が後部座席の友人に注意する、
寒い閉めて
後部座席に冷たい風が吹いてきていたのか寒いと言う奴も出てくる始末
だが窓は最初にトンネルへ入った時に閉めた風なんて吹くはずがない、もう窓は閉まっている、暖房でもつけようかと俺は後ろの友人をバックミラーが越しに見る、
顔が3つあった
後部座席にいるのは2人だけのはず、俺はその瞬間背筋を冷たいつららのようなものでスゥーっとなぞられた感覚に陥りパニック状態になった、一気にアクセルを踏み込みもうスピードでトンネルを出ていく、反動で友人たちは背もたれに打ち付けられ驚いているのも見ずにとにかく一心不乱に走り続ける
おい!!!!!
助手席の友人が叫ぶ、俺は我にかえり、あっと一瞬力が抜けると、友人に足を蹴りあげられる、友人は俺の座席とのわずかなスペースから足を出しブレーキペダルを踏み込んだ
気づくとトンネルを出てすぐのガードレールが目の前にあった、俺の手はガッチリとハンドルを握りしめておりそのハンドルは右側に捻られていた
何やってんだよ、お前
あまりの突然のことだったので周りの友人は真剣な顔で俺を叱りつける
だが俺はフロントガラスの向こう側にある生首に目がいっていて全く聞く耳をたてていなかった、生首はさきほどバックミラー越しでみたものだった
白くそして焼けただれたような肌、黒一色の眼は俺を確実に睨み付けている
口をパクパクと動かしていて最初は何をいっているかわからなかったが、
ちがう、ちがう、ちがう、
口はそう言っているように見えた、数秒それが続くと生首は木々の生い茂る山の中へ消えていった、俺はそのあと友人と運転をかわってもらい近くのファミレスで休むことにした、一部始終を話して友人たちとは和解した、ちなみにあの時窓を閉めてといった人間は誰もいなかったと言う
それ以来あの場所には行ってない、それのせいか特に変わったこともない、ただもしあの時友人がブレーキを踏んでいなかったら、そしてあの生首、ちがうという言葉、なにが違うのか、結末かそれとも狙っていた相手が俺じゃなかったという意味でのちがうなのか、、、
謎が深まるばかりだが俺はその後友人からとんでもないことを聞いた
とんでもないこと、それは
あのトンネルが心霊スポットなのは確かな情報だった、何でも深夜2時頃にトンネルを訪れた車のボンネットに黒い影が落ちてくるのだ、それに驚いた運転手が誤ってハンドルを切り事故を起こすと言う事件が多発しているということ
恐らく俺が見たあの生首はトンネルに潜むものでは無いのだろう、山の中へ消えていったということは今もどこかでさ迷っている、それ以来俺は車を運転することはなくなった
車を常用する方はくれぐれも気を付けてください、次はあなたの元に姿を表すかもしれない
ちがう
- はばたきおじさん ( No.6 )
- 日時: 2017/03/31 17:18
- 名前: ハチクマともふみ (ID: zXSVwxXi)
小学生の頃頻繁に近所に現れたとされる、地元の公園で昼間なのに首吊り自殺をした叔父さんの話
その名も「はばたきおじさん」
はばたきおじさんははばたくことは無いのだが常に浮遊しどこかをさ迷っているとされているおじさんで、とある小学生が帰り際にはばたきおじさんに出会い、その不思議な光景に唖然とした小学生を目の前におじさんは静かに
気を付けて帰りなさい
と言って去っていったという
このはばたきおじさんに出会った時
もし叫ぶと、おじさんの腕が伸び叫ぶ子の首を締め上げるという
また返事をすると家に帰るまで付きまとい、その夜窓から寝顔を見続けるのだと言うが
実際本当かどうかは不明、ただ実際に目撃したとされる噂話をかつてどこかで聞いた覚えがある、所謂嘘かまことかわからない情報である
税金で成り立つ公共の場で白昼堂々と首を吊るのはよくないことである
かといって夜だから良いのかというとそういうわけではない
はばたきおじさんは今もどこかで浮遊しどこかをさ迷っているかもしれない。
- 冷えた卵 ( No.7 )
- 日時: 2017/03/31 17:53
- 名前: ハチクマともふみ (ID: zXSVwxXi)
飼育が大好きだ
子供の頃はグッピー、そして犬を2匹買っていた
小学生の時はずっと飼育係で誰にもなつくことがなかった鶏の親玉とも仲良く交流していたくらい動物とのスキンシップが多かった私
動物との交流は多いが人間の友達が少なかった、動物と仲良くなりやすかったのも自分を受け入れてくれる存在だったからなのかもしれない
高校生になり部活を終えいつもの帰り道を歩いていると、歩道橋に差し掛かる場所、ちょうど階段で死角となり自転車と歩行者との衝突事故が絶えない場所なのだが
その隅に茶色い卵が落ちていた
こんなところに卵、と思った私は手でその卵をすくいあげる、すごく冷たい、見る限りスーパーに売っているような卵だったが、一個だけが割れずに転がっているのは少し不自然に思った私は、暖めてみようと思いつい好奇心でその卵を家まで持って帰ることにした
帰宅後、私は部屋にあるイグアナの照明を少しずらして、タオルでくるんだ卵を暖めることにした、ただの生卵か、そうであればそのまま腐って捨てることになってしまうと思いつつもとりあえずその日はそのまま寝た
次の日の朝
私は卵を見る、しかし何も変化はない、触ってみるとまだ冷たい
暖め方が足りないのか、私は照明を当てるのをやめて、自室にある電気こたつの中に入れた
少し熱を入れすぎると良くない思ったがこうも温度変化がないと荒療治もやむを得ないと私はそのまま学校へ向かった
休み時間、ふと図書館に行き動物図鑑を開いて卵について調べてみる
ダチョウ、鶏、合鴨とメジャーな鳥の中にひとつ、手に入れた卵に近い形の卵を生む鳥を発見する、少し期待感が増し、私は部活を終えたあとすぐに帰宅
すると自室のこたつが無い
母親に確認するとどうやら汚かったので洗濯をしてしまったのだという
なんてことをしてしまうんだと私は卵を探した、生憎床に転がって割れている形跡はなかった、いくら知らなかったとしても勝手に洗濯をするのはどうかと思う
私はそれから卵を常に常備するようにした
それから数日、一向に生まれる気配がない卵に私は少し愛着がわいていた分若干諦めも生まれてきていた、そしてその夜、その日は部活が忙しく本当に疲れていたので帰宅しそのまま横になるとついつい眠ってしまった、卵は私の制服の胸ポケットに入っている
深夜2時、ふと目が覚めると来ていた制服がゆさゆさと揺れているのがわかった
まさかと思い、私は胸ポケットにしまっていた卵を取り出した
カイロを付けて取れないようにタオルで巻き、それを接着テープで巻いていたため本体が見えない状態だった、私は急いで卵の本体を確認するためテープを取る
卵が動いている
これは生まれる
私は諦めていた希望が見えてきたのか深夜2時にも関わらず物凄いテンションだった
そして卵本体とようやくお目見え
カイロがくっついていたせいもあるが、以前よりも暖かい
あとはヒビさえ入ってくれればと思っていると卵の表面がぐにょっとうごめいた気がした
ん?
と私はその光景に目を疑うが、卵はまだぐにょぐにょとうごめきつづけている
そして表面はゆがみしわができると人間のまぶた、そして口のような形に成形し始める
なんなんだこれは、、、私は予期せぬそのおかしな姿に唖然としていると
その卵に現れたまぶたがかっと、開き、口のようなシワが開くとおもむろにこう言った
暑いんだよ
- ヤマンバ宿 ( No.8 )
- 日時: 2017/04/01 12:22
- 名前: ハチクマともふみ (ID: zXSVwxXi)
とある山奥に小さな民家がポツンと建っている
それはヤマンバ宿といって山で遭難した者や森で仲間とはぐれてしまった者が集う場所だと言われている、
何でもその宿の女将は昔から多くの人を喰らい寿命を伸ばしてきたヤマンバらしく、夜になると自室で一人包丁を研ぎながら、死ににいったものの死体から採取した血をすすっているのだという
ある男が、ハイキングの最中、ふと目を離した隙に、仲間たちとはぐれてしまった、山はハイキングには適さない場所だったためしっかりとした道などはなく、木々の間をくぐりながら上へ下へと進んでいく、しかし出口は見つからない、
途中の川で休憩していたところ、そこに熊が現れて、慌てて逃げ出したが最後
熊からは逃れたものの大事なバッグはどこかへ無くしてしまった
このまま死ぬのか、諦めながら最後のもう一踏ん張りと山を懸命に歩いていく、夜も暗くなりそろそろ本格的にマズイ状況になってきたと思っていると、奥にうっすらと灯りが見えた
こんなところに住んでいる人がいるとは、とにかく何とかお願いして今日はあの民家に泊まらせてもらおうと急いでその灯りの元へ向かう
家の入り口戸の前に着いて、おもむろに戸を叩く
「ごめんください、ごめんください」
するとうっすらと人影が戸に張られた障子に映し出される
開くとそこには、自分よりも数十センチ程の大きさの髪の毛で体全身を覆う痩せ細ったお婆さんが立っていた
「はい、どなたさまでしょうか」
お婆さんは言った
この時、一瞬大丈夫か、と思ったが考えている暇はない、生きるか死ぬかもわからない過酷な状況下で野獣よりも人間の方が遥かに信頼できる
「実は道に迷ってしまいまして、食料も全て熊に襲われなくしてしまったのです、誠に厚かましいとは存じますが、今晩だけ泊めていただくことはできませんか」
男は疲労でふらふらになりながら、懇願する
「いいですよ、入りなさい、疲れているだろう、先程夕飯の支度が出来たから、まずはそれを食べなさい、野草と猪でつくった鍋だ、味の保証はできないよ」
お婆さんの後ろにある囲炉裏にかかっていたのはグツグツと煮えた猪鍋だった
空腹だった男はその鍋をガツガツと食い、あっという間にたいらげてしまった
その後、お婆さんに火を任せて、お風呂に入り、贅沢にも布団まで用意してもらって
男はその日お婆さんの民家で就寝した
腹も満たされお風呂まで、満足な男が熟睡しかけたその時
ふと我にかえり、自分の状況と何か似ている話を思い出す、
「あの婆さん、すごいいい人だな、俺みたいな知らない奴にもあんな良い待遇までにして、まさか、ヤマンバ?」
ガサゴソッ
そうすると自分が寝ている部屋のふすまが一瞬揺れたように思えた
もしかして誰か見ていたのか?
男は心配になりふすまを開けるがそこには誰もいない
「婆さんの部屋はここから斜め向かいのところだったな」
男は部屋を出てお婆さんがいると思われる部屋の前にこっそりと身を隠す
シュリーシュリーシュリー
謎の不気味な擦る音
この音はと思い男はお婆さんの部屋のふすまをゆっくりと開く、するとそこには
蝋燭の火だけをたよりに大きな顔くらいある出刃包丁を研ぎ石でこするお婆さんの姿だった
男は確信した、このまま眠っていれば寝込みを襲われてしまう
生憎荷物はない、このまま家を出よう、そう思いふすまを閉めようとしたその時
「誰じゃ!」
お婆さんが気配を察知、男は一度尻餅を着いたが、急いで立ち上がり入り口までに急ぐ
「待てっ!!!どこへいく!!!!」
鬼の形相で追いかけてくるお婆さん、先程まであんなにもヨボヨボしていたはずのお婆さんがいつの間にか殺戮者に変貌しているかのような身体能力になっている
ここにいれば殺される、男は入り口を開き外に出た、
そこには数十メートルほどある木々よりも遥かに大きい黒い巨人が木々の向こう側にひっそりとたっていた、しかも数えきれないほどの数である
見たこともないその大きな姿に男は驚き、そのまま失神してしまった
翌日
お婆さんに起こされた男は体力が回復するまでしばらく安静にするよう言われると
昨日の鍋の残りでつくった握り飯をお婆さんからもらい、目印となる自然物を聞いて下山した
お婆さんはこの山に古くから蔓延る、魔物を追い払うために代々山を守ってきた主だった
遭難した者たちが行くヤマンバ宿は単にその姿に怯え逃げていき奇跡的に生き残った者たちが言い伝えるデマだった
下山した男はすぐに仲間のもとへかけつけ、その話をした
- いぬづかさん その3 ( No.9 )
- 日時: 2017/04/01 23:53
- 名前: ハチクマともふみ (ID: zXSVwxXi)
土曜の夜、ファミレスでとある集まりがあった
メンバーは上級生の野球部の先輩カタギリさん
そして校長先生、サラリーマンの山田さん
そしてバスの運転手で今日休みだったスギウチさん
あと僕
カタギリ「今日みなさんにお集まりいただいたのは他でもありません、実は最近とあることに悩まされておりまして、皆さんもお気づきかと思われます、いぬづかさんについてです」
一同は息を飲む
カタギリ「先週こんなことがありました」
というとカタギリは新聞を広げとある一面を指す
サラリーマン撲殺事件の一面だった
校長「これは存じています、これがいぬづかさんとどういう関係が?」
カタギリ「それについては、この人が」
というとカタギリさんは僕の方を見た
僕が経緯については僕が説明することに
「僕が帰り道、ふと路地を歩いていたときにたまたま見つけてしまったんです、いぬづかさんが若いサラリーマンの男性をマウントポジションでボコボコに殴り付けていたのを」
校長「なんと、ひどい話ですね、あのいぬづかさんが」
「これがただの暴力事件で済めば僕もこれ以上足を踏み込まないと思っていたんですけど、最近になってよく学校付近でいぬづかさんを見るようになり、ひょっとすると今度は僕が狙われるんじゃないかって、それで先輩に相談して一度見える人たちだけで集まってみようという話になったんです」
山田「それは必要なことですね、私たちにも関わることだ、明日は我が身です。」
「でも情報が気がついたらいる、ということだけで全く接点がない相手ですから、コンタクトをとるにしても相手が相手なので」
校長「標的を目前にして手詰まり状態というわけですな」
カタギリ「サラリーマンはその時、自分の所有していたカメラを握っていたそうです」
山田「ということは、私たちのように今こうして話し合いをしているのも実はよくないことなのかもしれないということですか?」
校長「というと?」
山田「殺されたサラリーマンはきっといぬづかさんを撮影しようとしたんです、ですがいぬづかさんはそんな不謹慎なサラリーマンに激怒し撲殺、そう考えるのが無難じゃないですか?」
カタギリ「探ろうとしたり自分のことを知ろうと近づく者を殺す、そういうことですか?」
山田「あまり良い印象ではないですが、、、」
校長「だとするならおかしいですね、今私たちがこうして話しているにも関わらず、等の本人は姿を現さない」
カタギリ「そうです、その話が本当なら、今ここにいる私たちはいぬづかさんいとって格好の的だ、それに一番接近している彼だってここにいるが、ここに来るまでいぬづかさんの姿は見ていないといっている」
山田「あくまで推測なので、それならそれでいいんです」
良い機会だと思った、こうして未知の生物が見える人間同士で意見を交換し合うことで普段抱えている不安などが少しだけとれるような気がした、皆はそれぞれの共通点を話し合いいぬづかさんの見える人間の条件を洗い出そうと話し出す
しかしそんな中、用意された飲み物にすら手を出さず、一切言葉を発しない一人の男がいた
校長「バスの運転手さん、先程から黙っていらっしゃるようですが、具合でも悪いのですか?」
カタギリ「校長、この人はスギウチさんです」
スギウチ「あ、いいんです、僕はそういう通称で通っていますし、その方がわかりやすいですから、気にしないで、、、」
「どうかしたんですか?」
スギウチ「いや、その、、、これは言った方がいいのか、ちょっと迷ったんですけど」
カタギリ「今日は互いの情報を共有するために集まったんです、どんなことでもいいので教えてください」
スギウチ「あ、はい、、、実はこの間、私の運転するバスにいぬづかさんがやってきて、僕はその時はじめてみたものですから、普通の乗客のかただと思って、無賃乗車させまいとつい扉を閉めて、出ようとしたいぬづかさんを足止めしたんです。」
「それ、僕も見ました」
スギウチ「でもその時わかったんです、間違いなくこの人は人間じゃないと」
カタギリ「なにがあったんですか?」
スギウチ「そのあとだったんです、いぬづかさんが後ろへ下がっていくのが見えたので、席に戻ったんだと思い、バックミラー越しでいぬづかさんを確認しようしたら、いぬづかさんはもうそこにはいなかったんです。」
校長「え、」
山田「消えたと言うことですか?」
スギウチ「それがわからないんです、ただ一瞬目を離した隙にいぬづかさんはどこかへ行ってしまったんです」
カタギリ「肉体であって肉体ではない、じゃあ触れることができる霊体、となると厄介ですね、普段のあの容姿はダミーで本当は幽霊、移動手段も霊体であれば限定されないわけですから」
スギウチ「ああああ!!!」
突然悲鳴をあげるスギウチさん
何事かと思い他の者たちがスギウチさんの見る方に向くと
そこにはいぬづかさんが立っていた
- 殺しのDVD ( No.10 )
- 日時: 2017/04/02 14:14
- 名前: ハチクマともふみ (ID: zXSVwxXi)
ある暑い夏の日の夜
俺はDVDレンタルショップへ向かい、パッケージを眺めていた
今日は良いことなかったし、何か気晴らしになるようなものを借りていこうか
俺はバラエティコーナーに移動する、しかしどれも一度見たことのあるものばかり、最近ではネットで上がっていて違法ではあるものの無料で見ることもできるため希少価値もない
弱った、映画といっても全部観る自信もないし、流し見する程度ならバラエティかと思ったが、アニメも捨てがたい、でもアニメそこまで好きじゃないしな、、、
近くにその手の詳しいやつもいなかったため情報共有もできない
アダルトものも借りるには少々抵抗があった
こうなればホラーかオカルトものにでも手をつけようかと、俺はホラー系のコーナーへ移動する、するとあるわあるわ見るからに胡散臭いタイトルの数、俺は少しテンションが上がる
ドラマ仕立てはぬきにして、ドキュメンタリーや衛星放送で流れていたもののDVD化などがいいかな、俺は企画ものからオムニバスの心霊映像特集系のものを探した
するとそこに他のものとは明らかに違う存在感を出す一本があった
「殺しのDVD」
そのいかにもというタイトルに俺は食いついた
これだ!
俺はそれとハズレだったら嫌なので保険で何本か借りて帰宅した
借りてきたDVDを早速確認、どれも本命以外のものはどれも微妙な感じだが、別につまらないわけではない、とりあえず時間潰しにだけはなった
そういえば、今日友人が休みだったはず、もしかしたら空いてるかも
そう思い俺は友人に連絡を取った、しかし応答がない、2本目を見終わり、いよいよ本命「殺しのDVD」を観てみよう、俺はデッキにディスクを入れた
ん?
このDVDちょっとおかしいな、いつも観ているやつは必ず配給会社とかスポンサーの画面が最初に入ってくるはずなのに、それにスキップが効かない、ホーム画面すらないのか珍しいな
内容は一人称の映像で目の前には暗い夜道が映っている
こういう感じのやつか、まぁ楽しめそうだな
そいうえば、このDVD内容欄に収録時間の記載がなかったな、どれくらいあるんだろう
俺はしばらくその単調な映像を見続けた
するとカメラはどこかの家にたどり着いた
そしておもむろに一軒家の壁をよじ登っている
なんだこれ、すごいリアルだし、どうやって撮影してるんだ?
それによくこんなことして通報されなかったな
俺はその変わった映像に釘付けになった
そしてカメラは2階の窓に到着し、窓を開ける
するとそこには若い男性がテレビを観ていて、こちらに気づき驚いている
カメラを持つ何者かはその男性を観るなり持っている刃物で腹部やらあらゆる箇所をドスドスと突き刺していく
こ、これは、、、
俺は目を点にして、その殺害映像を観ていた
血が飛び散り、刺したナイフには男性の肉らしきものもついている
男性は最初は抵抗していたものの、次第に同行が定まらなくなり、そのまま息を引き取った
そして映像は暗転
なんだこれは、本当に殺しているんじゃないかと思うくらいのリアリティで
俺は身の毛がよだつ感覚だった
すると暗転した映像が切り替わり、再びどこかの夜道
俺はまさかと思い見続けていたら、今度はマンションに着く、そしてまた壁をよじ登り
目的の階までたどり着くと窓を開けて再びその中にいた住人を刺し殺した
なんと次は女性だった
それから何度か同じようなことが繰り返されていき、23時から見始めたDVDも既に3時間ほど経過している
俺は今何を観ているのか、もしかしてこれマジでヤバイ奴なんじゃないかと俺は思ったが、俺は目が離せなかった、すると
あ!
俺は映像にある、8人目の殺された男性の部屋のある部分に目がいった
DVDを借りている、しかもこのDVDは、俺と同じやつじゃないか、もしかしてこれ、
俺は冷や汗と、手の震えが止まらなかった
そして暗転した映像は切り替わり、次の映像が映る、そこはどこか見覚えのある道路だった
嘘だろ、、、
カメラは何かに吸い寄せられるように迷いなく進んでいく
そして着いたのは、俺が住んでいるアパートの前だった
ガシガシガシ
草むらをかきかわけて、古いアパートの壁をゆっくりしかし着実に登っていくのが見えた
しかもその音はテレビからではなく、実際に生音として俺の部屋の外からも聞こえてくる
う、嘘だろ、俺、どうすりゃいいんだよ
ガシガシ、スタッ
音が止まった、窓の鍵は開いている
ピーンポーン!
俺は頭を抱えて、その恐怖に耐えようと必死になっていたところに窓の反対側にある玄関からインターホンが鳴り響く
「先輩!いるんですか?ビール買ってきたんで一緒に飲みましょうよ、ひっく」
酔っぱらった友人が俺の家に訪問してきた、俺は慌てて玄関に向かい扉を開ける
怖くなり、俺は友人に部屋の中を先導してもらった、酔っぱらった友人は何食わぬ顔で先程まで俺がテレビを見ていたソファーに座りへらへらしている
窓の向こうには気配がない
先程までつけていたテレビは砂嵐になっており
そこにDVDは無かった
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