ダーク・ファンタジー小説
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- びたーちょこれいと
- 日時: 2017/05/05 14:13
- 名前: 碧 ◆SOsDJiuk2Q (ID: zLrRR1P.)
【プロローグ】
「甘いものが嫌い」
そう言っていたから。
___だから、びたーちょこれいとを
買ったんだよ。
君のことばかり。
あれから何年も経ったというのに…
- Re: びたーちょこれいと[5] ( No.5 )
- 日時: 2017/09/13 19:37
- 名前: 碧 ◆mzvDsWHgxw (ID: zLrRR1P.)
【5】
「あら、久しぶり。
確か…芽衣ちゃんじゃなかったかしら」
芽衣、ではないけれど、
この名前とよく間違われる。
似ているから仕方ないし、
それに淆のお母さんとは
最近会っていなかった。
「いえ、違います」
あまりにも素っ気ない返事だったと、
自分でも思った。
でも、淆のお母さんは笑顔で言った。
「そうだったの。
ごめんなさいね。
そう言えば今日は、淆の一回忌だけれど…
芽衣ちゃん…じゃないわ、誰でしたっけ」
私は、淆のお母さんに名前を言った。
「そうなの。
今日、何かの用事って___」
もう、言いたいことなんか分かっている。
私は淆のお母さんが言い終わる前に
口を開いた。
「ありません。
けれど、私なんかが淆の
お墓参りに行くのは…」
「誰が来たって、淆は
誰が来たか分からないわよ。
もう、淆として、この世には
いないのだから…
小説とかでは、心の中では
生きているとか、そんな綺麗事ばかり。
本当は何処でも生きていないのよ。
だって、死んだんだもの。
何処でだって生きていないわ」
淆のお母さんは、淆を大切にしていた。
こんな言い方って…
そう思った。
でも、淆は死んだんだ。
それは何回寝ても、本を読んでも
食べても、息をしても、
変わりはしない事実___
「あら、陽葵ちゃん。
今日は有難うね」
「いえ、こちらこそ…」
「陽葵っ…」
私は唖然とした。
「陽葵、どうしたの…」
- Re: びたーちょこれいと[6] ( No.6 )
- 日時: 2017/09/13 20:41
- 名前: 碧 ◆mzvDsWHgxw (ID: zLrRR1P.)
【6】
___声が出なかった。
こんなこと、一体、何年ぶりだろう。
そんなことはどうでもいい、陽葵が…
陽葵は気が強くて、だから、よく
喧嘩していた。
でも、嫌いなわけじゃなかったし、
それは陽葵もよく分かっていたはずだ。
陽葵は私にとって必要な存在だった。
___淆の次に。
淆は…
どんな私にも、優しく普通に
接してくれたんだ。
だから、好きだった。
淆は那都さんのことが
好きだったんだけど。
だから、悔しかったけれど、
淆が幸せならそれでいいと思っていた。
___たとえ、既に死んでいても。
淆はそれを追うようにして、
死んでいった。
それに、陽葵も追いかけるのだろうか。
「救急車を呼ぶわね。
えっと…
警察への連絡をお願いできるかしら」
「あ、わかりました」
そんな重要な役、私に任せて
大丈夫だろうか。
そうは思ったけれど…
連絡するしかない。
「___あの…」
無事に連絡が終わった。
淆のお母さんは、
もうとっくに終わっていたらしかった。
「お、遅くなってすみません」
ペコリと頭を下げた。
何だか、さっきまでの淆のお母さんの
雰囲気が変わったような感じがして…
「大丈夫よ、初めてよね。
みんな初めてはそんな感じよ」
そんな感じは気のせいだったのか。
あの時の殺気は気のせいなのだろうか。
「一緒に行こうと思ってたんだけどね、
淆のお墓参りに。
この状態では無理そうね」
にこりと笑う顔だけを見れば殺気なんて
感じる方が馬鹿馬鹿しいと思えるだろう。
でも、殺気を感じるんだ。
「私は、淆のお墓参りには行きません」
そんな中でも拒否するのを忘れない。
「あら、どうしてかしら。
あんなに仲良くしてたのに。
淆に恋心も抱いていたでしょ」
えっ___
「それはそうですけど…
でも、それとこれとは話が別です」
どうして知ってるの。
勘かもしれないけど、それだったら
あまりにも決めつけすぎている。
「どうして知ってるか、
気になったのかしらねぇ」
- Re: びたーちょこれいと[7] ( No.7 )
- 日時: 2017/09/14 18:53
- 名前: 碧 ◆mzvDsWHgxw (ID: zLrRR1P.)
【7】
「どうして分かるのか、
不思議に思わないの、あなたは」
もちろん、そう思う。
でも、驚きのあまり声が出なくて…
「全部わかっているわ、
あなたのことなんて。
大丈夫よ、他の人のこともバッチリ
分かるの」
それって___
「ふふ、やっと分かったのね。
そう、私達は異次元から来たの」
私達って、淆も入るのかな。
「そうよ、当たり前じゃない。
あなたには分からないかもしれないわ。
あなたって馬鹿だもの。
でも一応説明しておくわね。
この次元とは別の次元、
つまりパワレルワールドよ。
そこから来たの」
パラレルワールドって、本当にあるんだ…
「まだ続きがあるわ。
人間がパラレルワールドの人と
関わりを持ってはいけないの。
でも、パラレルワールドの人だと
バレなければ関わりを持ってもいいのよ。
もしも、パラレルワールドの人だと
知っておきながら関わりを持っていたら、
殺されるわ。
それはパワレルワールド内の平和を
守るための決まりごとなの」
じゃあ私は___
「そうよ、あなたには死んでもらうわ」
- Re: びたーちょこれいと[8] ( No.8 )
- 日時: 2017/09/14 19:04
- 名前: 碧 ◆mzvDsWHgxw (ID: zLrRR1P.)
【8】
どうしよう。
殺されるって…
私は家に入ることにした。
幸い、家が真後ろにあったから
出来たことだ。
「あら、逃げるのね。
次会った時が楽しみだわ」
あの人の顔は普通の顔じゃなかった。
耳は先がとんがっていて、
口が普通の人間の倍ぐらい大きい。
目は瞳孔が小さく、緑と黄色の
オッドアイだ。
これが…
パラレルワールドの人の顔なんだ…
淆は普通だったよね。
何度も確認しようとして、
淆の顔を思い浮かべる。
思い浮かぶのは、至って普通の人間。
「わ…」
突然、黒いオーラに纏われた。
何これ。
何処かで感じたような気配。
淆のお母さんの殺気とは、また違う…
胸がチクチクする。
呼吸が…
止ま、り、そ___
「捕まえました。
此奴ですよね、ミスグリース」
- Re: びたーちょこれいと[9] ( No.9 )
- 日時: 2017/09/16 21:13
- 名前: 碧 ◆mzvDsWHgxw (ID: zLrRR1P.)
【9】
ここは何処なんだろう。
周りは暗いし、私しかいない…
感覚もないし、体の自由もきかない。
でも、縛られている感じはないって
どういうことなんだろう。
そう言えば、淆って
何でもわかるんだよね。
じゃあ、知ってたんだ。
私のこと___
突然聞き覚えのない声が聞こえてきた。
「ミスグリース、此奴、どうしますか」
だれの声だろう。
ミスグリースって誰なんだろう。
疑問は不安に変わっていった。
あっという間に、私は不安に囲まれて…
「勿論殺してしまうのよ。
私に任せておきなさい。
傷だらけにしてあげるの」
え___
「一発では楽しめないもの。
軽い傷を付けたりしてね、
甚振ってあげるわ。
その方がいいでしょう」
誰にそんなことするんだろう___
こんなこと、分かっている。
___自分だって。
「それはいいですね。
何日もに分けて行うのはどうでしょう。
一生の玩具です」
「なるほどね、それもいいわ。
逃がさないようにしておきなさい」
「はい、ミスグリース」
えっ…
これから、私はどうなるんだろう。
誰か、助けて…
「いたっ…」
突然、痛みが走った。
さっきまでの感覚はなく、周りには…
がっしりとした鉄格子が前にあり、
私の足と手に繋がる鎖が
括りつけられた柱があるだけの部屋。
男の人が1人と…
「淆の、お母さん…」
「ミスグリースよ、これからは
ミスグリースと呼びなさい」
いきなり鳩尾に拳が飛んできた。
「グハッ…ハァ、ハァ…」
反動により、背中を柱に打ち付けた。
口からは大量の血。
「まあ汚い」
せせら笑うような甲高い声。
頭がクラクラする…
立ち上がることも出来ないで、
肩で息をしている私を見て、
ミスグリースはさぞ嬉しそうに言う。
「あら、今日はこれで終わりかしら。
まさかそんなことはないでしょう。
もっと私を楽しませてくれるかしら」
もう終わらない…
私が死ぬまで。
私は初めて、死にたいと
思うようになった。
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