ダーク・ファンタジー小説
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- 結界の帝
- 日時: 2017/08/08 00:06
- 名前: 狂yuki (ID: WgIzNCa0)
- 参照: http://www.kakiko.info/upload_bbs3/index.php?mode=image&file=592.jpg
ーエリゴスが告ぐ。これから戦いが起こるであろう。更にエリゴスが告ぐ。その戦いは長きに渡るであろう。
魔導師が跋扈する世界。
雅王市の高校に通う普段の少年、御厨 志登(みくりや しと)は、魔導師の家系に生まれながら魔導とはほぼ無縁の生活を送っていた。長男の御厨 戎煌(みくりや じゅうこう)が優秀な魔導師であったため、次男である志登は父から期待されていなかった。
しかし、その戎煌は、現在行方も分からない。
いつものように、通学路を歩く。そして、いつものようにパトカーのサイレンの音が聞こえる。
ここのところ、毎日のように殺人事件が起きている。父は、犯人は魔導師だと主張しているが、魔導師は不必要に人を殺さないとも主張している。
確かに、犯人が全く捕まらないのは謎だ。ここまで連日報道されているのに、全く逮捕されたという情報がない。逮捕されていないということは証拠がないということだろう。
普通に殺せば少なからず証拠は残る筈なのに、それすらないという。
魔導師は、武器など無くても人を殺せる。触れなくても。だから、通りすがりの人間をその能力で殺してしまえば、証拠は残らない。
証拠が残らないからと言って、必要もないのに人を殺すとなれば、それは快楽殺人の類いであろう。全く質が悪い。
「...まーた殺人か」
このセリフも何回言ったか分からない。
まるでデジャヴのように繰り返される、悲劇、悲劇、悲劇。
高校に着き、いつものように、授業を受ける。いつもと全く変わらない。
..............................
チャイムが鳴る。授業が終わる。志登は荷物をまとめる。生徒手帳を落としたので拾おうと身を屈め、起き上がったところ、
「御厨 志登。ちょっと残ってて」
ホームルーム担任のヴァレンチーナが言う。
「え...と、何の用ですか」
と志登が聞き返したのに対し、
「いいから、残ってて」
と、めんどくさそうに言って、教室を後にする。
「...何だ?」
続く
- Re: 結界の帝 ( No.1 )
- 日時: 2017/08/09 21:30
- 名前: 狂yuki (ID: WgIzNCa0)
- 参照: http://www.kakiko.info/upload_bbs3/index.php?mode=image&file=593.jpg
「...............」
夕焼けで赤く染まる教室の中は静まり返っていた。
「...............」
ヴァレンチーナに命じられるがままに居残りをしているが、特別早く帰りたいとか、そういう感情は無かった。
しばらく夕陽を眺めていると、
コツ、コツ、コツ
靴の音。ヴァレンチーナだろう。
教室に入ってくるや否や、
「先生、いきなりどうしたんですか?」
と訊く。別にどんな理由で呼ばれたにせよ、そんなことはどうだっていいし、何ならこのまま明日迄居残りになってもいいくらいなのだが。
だが、呼び出しを喰らった理由を知らないまま30分待たされて、正直モヤモヤしている。
「ごめんなさい、ちょっとした頼み事がありまして」
「...頼み事?」
何でも完璧にこなすヴァレンチーナが、頼み事というのは珍しいし、何かありそうだ。
「最近、この辺りで殺人事件が多発しているのはご存知ですね、というかご存知である前提でお話しします。あなたに、あれらの殺人犯の討伐を手伝っていただきたいのです」
「...............は!?」
本当に、「は!?」だ。
「なななな、何をいきなり!?」
「いきなりなのは承知の上です。ですがあなたは霊王騎士団もその実力を認める御厨家の次男」
「次男だから期待なんてされてませんよ。俺は」
「いえ。『ダンタリオン』があなたの潜在能力を認識していますから、あなたに魔導の血が通っていることは間違いありません」
ダンタリオン?魔導の一種か?...と思っているのがもろに顔に出たのか、
「ダンタリオンというのは私の契約魔です」
飼い魔と言われても。むしろ、尚更解らなくなっただけだ。
「...契約魔とは?」
「魔導師が飼っている悪魔です。私は親近感を持てるように飼い魔と呼んでいますが」
「...はぁ」
...このまま解らない言葉の意味を訊き続けていたら流石に迷惑だろう。
「具体的に俺は何を...」
「契約魔は普通、調伏によって完全に魔導師の配下に置かれるものなのですが、一連の事件の犯人は悪魔に魂を売り、全ての意思を悪魔に託した『死祖』と呼ばれる者です」
「...死祖...」
「察するに、奴等を統べる上位組織があるのかもしれませんが、それは私には解りません。私は討伐機関の中でも下位の組織の魔導師ですから...。
...大変申し遅れました。私は、死祖を討伐するために設立された『霊王騎士団』の下位組織、魔導協会のヴァレンチーナ・アンディラウ。高校教師としてのヴァレンチーナ・アンディラウは仮の姿です。」
「...は、はぁ」
「まあ、奴等が下っ端だろうと、我々には関係ありません。我々魔導協会が霊王騎士団から委託されているのはあくまで『死祖』の討伐ですから」
「...............」
「というわけで、まずは会ってもらわなければならない人がいます。ついて来て下さい」
「...え?」
「おや、何か用事、ありますか?」
「...いいえ」
「では」
一体自分はどうなってしまうのだろう。何故か、ただで済む気はしない。
続く
- Re: 結界の帝 ( No.2 )
- 日時: 2017/08/10 23:10
- 名前: 狂yuki (ID: WgIzNCa0)
- 参照: http://www.kakiko.info/upload_bbs3/index.php?mode=image&file=594.jpg
ヴァレンチーナに連れて来られたのは、校舎の奥の奥。
「ここです」
言うなり、ヴァレンチーナは何かの呪文を唱える。すると、何処からともなく鍵が現れ、ヴァレンチーナの手中に収まった。
ガチャガチャ
鍵を開ける。
ガコン
如何にも古めかしい扉の奥には、当然、如何にも古めかしい部屋があった。
「...ここは...」
「魔導協会の管轄区域の中でも最も強い魔域にある場所なので、拠点のひとつとして使わせていただいているのです」
「なるほど。俺の理解はほとほと遠くにありますね」
「さ、行きますよ」
「あ、...」
しばらく歩くと、そこにはひとつだけ椅子が置いてあった。
「......何だこれ?椅子...」
ー、刹那。志登は気づいた。気配に。
「...............!?」
ドスンッ
鋭い何かが地面に刺さる。
「なるほど...。コイツを連れて来たのはお遊びではないのだな」
ーお遊び?
どこからとまなく聞こえてくるその声の真意が解らず、だが少しだけイラッとした。
「おいアンタ!どこから喋ってる!いきなり攻撃してくるとはどういうつもりなんだ!?」
「喚くな若造。後ろだ」
「......!?」
いつの間に後ろに?
「私はこの体をコウモリに変化させられる魔導の使い手、アルフレッド・フェーンストレムだ。突然攻撃したということについては謝ろう」
その男は銀髪で、白いローブのようなものに身を包んでいた。
「魔導師...?つまり魔導協会の...」
「いや。私は霊王騎士団の下位魔導師だ」
「...騎士団が俺なんかに何の用だって?」
殺人犯...死祖とかいう奴等の討伐を手伝ってもらうとかいう話だったが、
それと関係あるのか?
「詳しい話を聞きに来たのか」
「...」
「ったく。あまり仕事をサボるなよヴァレンチーナ」
「すみません。然し、貴方があまりにも暇過ぎて退屈だろうと思いまして」
「余計なお世話だ。...ひとまず、名前は聞いている。御厨 志登。君はこれから、
私と戦ってもらう」
......え?戦...う...?
「なな、何だって!?」
続く
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